Interview

西川貴教 無限のポテンシャルを秘めた若き実力派・ASCAとの「+」のコラボレーションとは

西川貴教 無限のポテンシャルを秘めた若き実力派・ASCAとの「+」のコラボレーションとは

荘厳かつダイナミックに構築されたスケール感溢れるサウンドと、エモーショナルに絡み合う歌声にたちまち心を奪われる。西川貴教が若き実力派シンガー・ASCAと初タッグを組み、“西川貴教+ASCA(ニシカワタカノリ アンド アスカ)”として世に放つニューシングル「天秤-Libra-」。4月からスタートしたアニメ『白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE』のオープニングテーマとしてもすでに大きな話題を呼んでいるこの曲が、遂にリリースされた。西川にとって女性ヴォーカリストとのデュエットソングは2013年以来、実に7年ぶりとなる。そんな今作について、コラボレーションの経緯や制作過程、ASCAとの関係性、必見のMVに関してなど、西川貴教にたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 本間夕子


純粋に今回の楽曲と世界観に合う歌声っていうところで選ばせていただいた

今回のコラボはどういった経緯で生まれたものなんでしょうか。やはり最初にアニメ『白猫プロジェクトZERO CHRONICLE』オープニングテーマというお話があって、そこからASCAさんとのタッグが決まったというような?

そうですね。最初にオープニングテーマのお話が僕のところに来て、どういった形で作品に落とし込むかを(『白猫プロジェクト』を手掛ける)コロプラさんといろいろディスカッションしていく中で、作品の世界観を反映させてほしいというオーダーをいただいたんです。『白猫プロジェクト』には闇の王子と光の王・アイリスっていう男性と女性、2人の主人公が出てくるんですけど、その2人の立場や世界観というものを、楽曲を通して表現できないかと。そこで、じゃあどういった方と一緒に組むといいのかを探っていく中で、ASCAさんと歌わせていただくことになったんです。

ASCAさんとはもともと交流があったんでしょうか。

交流というか……よく一緒に楽曲を作っている澤野弘之くんのプロジェクト(SawanoHiroyuki[nZk])に、お互い違う楽曲で参加したことがあったり、昨年の澤野くんのライヴに僕もゲストで参加させてもらったんですけど、そのときに会場でお会いしたりはしてたのかな。あと、僕が観ていたアニメの主題歌をASCAさんが歌っていたり。今回のタッグは周りもすごく勧めてくれたこともあって実現したんですけど、ご本人とお会いしていろいろお話を聞いていたら、以前から僕の音楽を聴いていてくれていて、将来の目標としてるところに僕の名前を挙げてくれたりしていたらしくて。後から知ったので、びっくりしました。

そうだったんですか! 声の相性もバッチリだし、掛け合いの息もぴったりで、これが初タッグというのが信じられないぐらいだったので。

純粋に今回の楽曲と世界観に合う歌声っていうところで選ばせていただいたので、そう思ってもらえたならよかったです。

楽曲の制作にあたって、作家陣へのオファーというのは西川さんからなさったわけですよね。

そうですね。Elements Gardenさん(※今作の作曲・編曲を手掛ける菊田大介氏も所属する音楽クリエイターチーム)にお願いしたいなっていうのはわりと早いうちからイメージしてたんですよ。以前、T.M.Revolutionで水樹奈々さんとタッグを組んだ(「革命デュアリズム」)ときに一緒にやらせていただいたのがElementsさんだったということもありましたし、『白猫プロジェクト』のどこかゴシックな世界観、異世界を舞台にして起こる主人公2人の機微を描いた物語というのを音楽にすると考えたときに、ただダイナミックなだけじゃなく、クラシックの要素とか様式美の雰囲気も持っているような楽曲をイメージしたので、そういったところからも今回の布陣になりましたね。

彼女のアイデンティティの中に少なからず自分が影響を与えることができたということ、今こうやって頑張ってる姿を見るとすごくうれしい

ASCA

荘厳な世界観とロックのダイナミズムが共存した、『白猫』ファンの間でもすでに神曲と呼び声の高い楽曲に仕上がっていますが、これも西川さんの狙い通りですか。

こっちはオーダーするだけだから(笑)。でも、しっかりお話はさせていただいたし、こっち側が意図していることをスムーズに汲み取ってくださったおかげで、リテイクも全然なく、これをより高めていくにはどうするかっていうところでスピード感を持ってお話ができたので、すごくよかった。実はこれ、納期が早かったんですよ。このアニメプロジェクトの進行自体、かなり早いうちからスタートしていたので。

いつ頃です?

去年のうちにはもう納品してましたね。

そんなに前!?

だから満を持してという感じですよね。やっと皆さんにお披露目できるなって。

歌に関しては西川さんとASCAさんの間でどんなディスカッションがなされたのでしょうか。

どういったものを目指しているかっていうところを楽譜とか理論的なもので説明するより、とにかく聴いてもらったほうが早いだろうと、まずは僕が歌った音源を届けまして。実際に僕が歌っているスタジオにも彼女が来てくれて。歌い分けの部分にしても、僕が先行だったんですけど、それを受けてどう返すのか、そこはこちらがあまり細かく指示するより彼女自身に考えてもらいたいと思って。そうしたら僕の歌入れが終わってからも、かなりじっくり聴き込んでくれたみたいで。

阿吽の呼吸というか、ホントしっくりハマっています。

僕のこれまでのパフォーマンスを彼女が観たり聴いたりしてくれてたことが関係しているのかどうかは分からないですけど、押しどころや引きどころ、僕のクセみたいなものをすごく汲み取ってくれた感じがしましたね。MVでも、自ずと動きにもリンクする部分が出てきていたり(笑)。別に示し合わせてるわけじゃないんだけどね。

へぇ!

それぐらいよく聴いてくれてたってことなのかな。ありがたいなと思います。自分の音楽のリスナーだった人が今度は伝える側になっていて、彼女のアイデンティティの中に少なからず自分が影響を与えることができたということ、今こうやって頑張ってる姿を見るとすごくうれしいなって。自分を振り返ると、ちょうど彼女の今の年齢くらいの頃にやっとソロとしてやっていこうかなって感じだったじゃない? そう思うと彼女はすごく堂々としてるなって思うんです。

いちシンガーとしての脳というよりプロデューサー脳の方が比重としてちょっと大きかった気がする

ちなみに西川さんご自身はこの歌に対してどう臨もうと?

ここしばらく使っている音域から考えるとちょっと下なんですよ今回は。物語の世界観も含めて闇の王子と光の王・アイリスっていう存在を音色やトーンの部分でも作り込もうと考えると、普段よりもレンジを下げて歌うのがいいのかなって。そうすることで彼が背負っているものの大きさを声で表現できるんじゃないかなって……僕なりの解釈ですけど。あと、やっぱり僕はクセが強いので(笑)、特に女性が相手だと、どうしても声で圧し潰しちゃうみたいなところがあるんですよ。だからASCAさんと自分とのボリューム感、そのバランスは最後まで悩みましたね。同じように聴こえていても、並べるとどうしても僕が前に出て聴こえちゃうので、思っている以上に自分のほうが下がって聴かせないとなって。逆にいうと、それがデュエットならではの面白さかな。

音域を低めにしたのも、声の対比を考えたからですか。

ASCAさんにとってのいいレンジに合わせた感じですかね。

お互いが引き立つところを探った、と。

そう。自分も歌唱として立ってはいるんですけど、オープニングテーマの話をいただいた時点で、作品全体を俯瞰で見るプロデューサーとしての立ち位置もあるというか。『白猫プロジェクト』っていうモチーフがあって、それに合わせて僕ともうひとり女性のシンガーってものを組み合わせていって、それぞれの良さをきちんと考えた形で作品作りしていくという流れの中で、もちろん自分の作品ではあるんだけど、一つの楽曲を2人のシンガーに歌わせるっていう観点で考えたときにお互いの魅力をどう引き出すかというのは常に考えていましたね。だから、ちょっと不思議な感覚でしたよ。いちシンガーとしての脳というよりプロデューサー脳の方が比重としてちょっと大きかった気がする。彼女がまだまだ可能性を秘めた、伸びしろのある素材だったからというのもあるでしょうね。彼女の魅力が発揮されることで、僕自身も押し上げてもらえるというか、結果、全体としてよくなるんじゃないかなって。

押し上げてもらう、という感覚もあるんですね。

僕自身、まだまだ自分を完成形だとは思ってないですから。もっとガツガツしていきたいですし。

先ほどMVのお話が出ましたけど、これまたカッコいい映像で。しかも、ここ最近のものと比べてもかなりシンプルというか、西川さんとASCAさんというアーティストそのものにフォーカスされているのがとても新鮮でした。

今回の監督は僕と長年の付き合いのある方で、去年の西川貴教としての初めてのツアーでもステージ映像を手掛けてくれたりもしてるんですよ。ストーリーを作ったりドラマとして魅せていくのが得意な監督なんですけど、今回は敢えてパフォーマンスだけで魅せたいっていう提案をいただいて。“あ、そうなの?”って僕は意外だったんですけどね。

西川さんは違うものをイメージされていたんですか。

最初に映像プランを組んでるときは、せっかく『白猫』っていう物語もあるから、その世界観を取り込んだ形でドラマ仕立てにしたらどうだろう、とかいろいろプロットを考えていたんですよ。でも、監督からそういうリクエストをもらったので、一旦全部をフラットにして、監督の手に委ねてみよう、と。結果的にはシンプルに楽曲と歌の組み合わせが伝わる、すごくいいものになったんじゃないかなって思います。ただ、自分の中ではもうひとこだわりしたい想いがあったんですよね。CDだとちょうど間奏の部分に当たるんですけど……。

あ! 台詞の箇所ですね。

そう。それぞれの想いをお互いにぶつけ合うっていうか、そういった場面をさらに強調することができないかなと思って映像では台詞を加えたんです。ASCAさんは演技の経験がないし、このアイデアをコロプラさんに理解していただけるかどうか懸念もあったんですけど、ありがたいことにコロプラさんの方からいくつか使用可能な台本をお借りできたので、そこからさらに僕がチョイスして組み上げていったっていう。

そういった意味でも必見のMVですね。ちょっと細かい話になりますが、今回“西川貴教+ASCA”という名義の中で新たに“+”という記号を使われているのは何か意味があるんでしょうか。これまでのコラボでは“×”を用いるか、“feat.”と表記されることが多かったと思うのですが。

本来、フィーチャリングやコラボレーションって掛け合わせの法則みたいな発想から行われるものだと思うんですけど、『白猫』の場合は、闇の王子とアイリス、どちらか一方が主人公というより2人によって世界観が成立しているので。だからこのコラボレーションも、相対するものというよりも世界の一つとして捉えてもらいたいという意味合いですね。

きっと転換期なんだと思います。我々自身、いろいろと考えを変えていくきっかけになるんじゃないかなって

なるほど! ところで「天秤-Libra-」というタイトルに掛けるわけではないですが、今世界中が、絶望と希望、悲観と楽観の間で揺れ動いてる状況です。そうした中、西川さんはどういった心持ちでいらっしゃるのかなと思って。

きっとみんな頭のどこかで“いつ元通りの生活に戻るんだろう?”って想像していらっしゃると思うんですけど、多分もう戻れないんですよね。

戻れないですか。

元と同じような生活には多分戻れないだろうと僕は思ってます。もちろん戻れたらいいし、戻れているような気持ちになれたとしても、やっぱり常にどこかで感染症っていうものを意識しながらになってくると思うんですよ。そうなると、この感染症とどう付き合っていくか、その上で、これからというものを考えていかなきゃいけないわけで。諦めとは違うんですけど、それはそれとして切り替えて物事を考えていかないと……特にエンターテインメントの世界、ライヴをやったりパフォーマンスしたりすることって、お客様がいらっしゃって初めて成り立つものじゃないですか。安心や安全が担保されてこそ楽しめるもの、価値を見出だしてもらえるものであって。

おっしゃる通りです。

その安心と安全がまず、今はまだ手に入れられないし、求めようとしても難しい問題が目の前に大きく立ちはだかってしまうので。だったら、そうじゃない形で届ける方法っていうのを考えていくしかない。そういった意味ではきっと転換期なんだと思います。我々自身、いろいろと考えを変えていくきっかけになるんじゃないかなって。

前向きにこの状況を捉えようとされているんですね。

だって誰を恨んでも仕方ないじゃないですか。文句を言っても、たぶん状況は変わらないから。僕だって言いたいことはたくさんあるし、文句を言い始めたらキリがないんだけど(笑)。でも言っても誰も変えてくれないなら自分が早いうちに適応していくしかないなって。でもホント、年末年始の頃にはこんなこと想像もしてなかったよね。誰も想像しなかった未来が今ここにあって。来年は東日本大震災から10年になりますけど、あのとき味わった悔しさや無力感を、またこんな形で味わうことになるなんて……しかも今回は誰かのためになりたい、何かしたいと思っても動いちゃいけないっていう新たな問題に直面せざるを得なくて。

それが歯痒いです、本当に。

だからこそ、ここから先はもう、かつてを取り戻すというやり方じゃなく、新たな何かをここで生み出していかなきゃならない。そういうタイミングにきてると思うので、僕自身も前向きにいろんなことを考えていけたらって。

そんな西川さんに励まされる人もたくさんいると思います。こうやって今回、新しい作品を聴けたことが何よりうれしいですし、これからもぜひ、どんどん歌声を届けてください。

はい。まだもう少し先になるかもしれないですけど、エンタテインメントやスポーツ、カルチャーやアート、そういったものが皆さんの力になるタイミングもきっと来るはずなので、そういったときに率先して自分も手を挙げられるように頑張っていきたいと思っています。

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西川貴教(にしかわ・たかのり)

1970年9月19日生まれ。滋賀県出身。1996年5月、ソロプロジェクト「T.M.Revolution」としてシングル「独裁-monopolize-」でデビュー。キャッチーな楽曲、観る者を魅了する完成されたステージ、圧倒的なライブパフォーマンスに定評があり、「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」など大ヒット曲を連発する。故郷・滋賀県から初代「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、県初の大型野外ロックフェス“イナズマロック フェス”を主催、地方自治体の協力のもと、毎年滋賀県草津市で開催している。2016年5月、T.M.Revolutionデビュー20周年を迎えリリースしたアルバム『ALL TIME BEST』はオリコン・アルバムチャートで1位を獲得。2017年5月には20周年プロジェクトの集大成としてさいたまスーパーアリーナ2days公演を開催した。
2018年から「西川貴教」名義での活動を本格的にスタートさせ、3月に1stシングル「Bright Burning Shout」、10月にFear, and Loathing in Las Vegasとコラボレーションした配信シングル「Be Affected」、11月に2ndシングル「His/Story / Roll The Dice」をリリース。2019年3月6日に西川貴教としての1stアルバム『SINGularity』をリリースし、4月から全国ツアーを開催。追加公演を含む14公演を大盛況のうちに完走した。さらには、NHK連続テレビ小説『スカーレット』にジョージ富士川役として出演し話題になるなど、役者、歌手、声優と常に新たなエンタテインメントに挑戦を続けている。

西川貴教 オフィシャルサイト
https://www.takanorinishikawa.com

西川貴教 オフィシャルTwitter
@TMR15

ASCA

愛知県出身、9月5日生まれ。A型。
中学生時代、大倉明日香として第5回「全日本アニソングランプリ」に出場、応募者10,000人以上の中からファイナリスト3名まで勝ち抜き注目を集める。
2017年8月、アニメ音楽誌『リスアニ!』誌上にてASCA初となるオリジナル楽曲「RUST」を発表。
2017年11月22日に1stシングル「KOE」(TVアニメ『Fate/Apocrypha』2ndクールEDテーマ) でデビュー。
2018年2月21日、2ndシングル「PLEDGE」(TVアニメ『グランクレスト戦記』EDテーマ)をリリース。
2018年5月9日、3rdシングル「凛」(TVアニメ『グランクレスト戦記』後期オープニングテーマ)をリリース。同年9月から3カ月連続で配信シングルをリリース。9月「アインソフオウル with Ayasa」、10月「偽物の恋にさようなら with 分島花音」、11月にASCA VSぼくのりりっくのぼうよみ名義で「Suspected, Confused and Action」を配信リリースした。
2019年2月27日に4枚目となるシングル「RESISTER」(TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』第2期オープニングテーマ)をリリース、10万ダウンロードを突破しゴールドディスクに認定されるヒットを記録。
同年、9月にトリプルA面シングル「RUST / 雲雀 / 光芒」をリリース。そして2019年11月6日、1stアルバム『百歌繚乱』を発表。12月より自身初の東名阪ツアーを敢行。
2020年2月に「CHAIN」(TVアニメ『ダーウィンズゲーム』オープニングテーマ)をリリース。今年11月に自身の全国ツアー“ASCA LIVE TOUR 2020 -華鳥風月-”を開催予定。

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