Review

名作リメイクのひとつの答え!『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』が凄い理由

名作リメイクのひとつの答え!『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』が凄い理由

『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』は“リメイク作品”という括りではあるものの、画面写真を見るとまるで別のゲームのように感じる。キャラクターの等身が大きくなった衝撃は大きく、発売まえの時点では“懐かしさよりも新しさ”を重視した作品であろうと予想していた。
ちなみに『聖剣伝説2』のリメイクである『聖剣伝説2 シークレット オブ マナ』は、『聖剣伝説2』を現行ハードで体験させるということに注力し、価格も実にリーズナブルで手に取りやすさが魅力だった。3Dで描き直されたとはいえグラフィックの随所にはどこか懐かしさを感じたし、アクションの手触りもかなりレトロ。このように古き良きRPGの手触りを変えずにリメイクするというのは、名作の復活におけるひとつのセオリーと言えるだろう。そのセオリーから外れたかのように見える『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』は、想像していたよりも遥かに素晴らしい作品だった。
本稿では、かつて『聖剣伝説3』をプレイしたライターが『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』の見どころと魅力を紹介する。ただ“新しい”だけではなく、“懐かしさ”もしっかりと残した良リメイクをぜひ皆さんも楽しんでいただきたい。

文 / 浅葉たいが


新しい表現で『聖剣伝説3』の世界が生まれ変わる

スーパーファミコン用ソフトとして発売された『聖剣伝説3』(以下、スーパーファミコン版『聖剣伝説3』をオリジナル版と表記)は、ドット絵で描かれたキャラクターたちが画面狭しと暴れまわるアクションRPGであった。6人のキャラクターからひとりを主人公として選び、それぞれの過酷な状況や境遇を打破するために旅へと繰り出す。そして自らの運命が世界の危機とつながっていることを自覚し、巨大な悪に立ち向かっていく。この時代のRPGの“お約束”である勇者と悪との闘いを描いたゲームながら、当時この作品はカジュアルに遊べるアクションRPGとして多くのプレイヤーに受け入れられた。
そんな傑作のリメイクである本作の大きな見どころは、オリジナル版への強いリスペクトを持ちつつ描き直されたグラフィックだろう。3Dで表現されたキャラクターは躍動感に溢れており、冒険することになる世界もたびたびスクリーンショットを撮りたくなるくらいに美しい。本作には”クラスチェンジ”という育成システムがあるのだが、このクラスチェンジをするとキャラクターの見た目がガラリと変化する。そして、ひとつひとつのクラスのグラフィックが細部に至るまで美しく描かれている。

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲『聖剣伝説3』のキャラクターたちが、アニメを感じさせる3Dグラフィックで蘇った。筆者は主人公のひとり“リース”がお気に入り。祖国を滅ぼした軍勢に連れらされた弟・エリオットを探して旅する気丈なヒロインだ

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲キャラクターの強化システムのひとつである“クラスチェンジ”を行うと、見た目も大きく変化する

冒険の途中で立ち寄ることになる街も実に見ごたえがある。オリジナル版を元に作られた地形や建物の雰囲気や配置には驚かされる。オリジナル版と全く異なる表現ではあるものの、どこか重なる部分を残しているのだ。街については、冒険の途中で少し立ち寄るだけの場所なので「ここまでこだわらなくてもいいのでは」と思ってしまうくらいだ。何せ本作は親切設計で”次に行くべき場所”がマップ中にマーカーで表示されるため、クリアすることだけを考えるなら街をじっくり探索せずとも先に進めてしまう。筆者もプレイを開始したばかりの頃はこのマーカーだけを追いかけるようにプレイし、街では新たな装備が売られているか確認する程度だったが、街の作り込みに気づいてからは探索を楽しむようになった。

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲オリジナル版のデータを元に描き直した街はどれも驚きの作り込み。次の目的地を示すマーカー(画面右上、ミニマップ上の☆マーク)で最短の移動ができるため街を素通りしがちだが、じっくり立ち止まってみるのもいいだろう

シナリオについてはオリジナル版とほぼ同じだが、冒険中の台詞が追加され、オリジナル版ではやや唐突だったシーンに少しアレンジが加えられて、違和感が削られるなどの調整がされている。こうした細かな変更は“気にしていなければ気づかないレベル”のものだが、プレイフィールをなめらかなものにしてくれている。世界とキャラクターを彩る音についても大満足のものとなっている。ボイスがついたプレイアブルキャラクターたちの声や、オリジナル版とともに収録されているBGMのアレンジ音源などは“原作のイメージを壊さない”ものとして見事に存在感を放っていると言っていいだろう。

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲探索中にキャラクターたちのセリフが追加され、冒険がより賑やかに

オリジナル版に“ちょい足し”の遊びやすいバトル

バトル面は実にシンプル。アナログスティックで移動し、ボタンを押すことで攻撃を繰り出す。弱攻撃と強攻撃を組み合わせたコンビネーションが戦闘の軸となり、そこにアイテムや魔法などの行動を選択する”リングコマンド”というシステムがアクセントとなる形だ。リングコマンドの最大の特徴は、時間を停止して行動を選択できること。つまり、アイテムや大技を使う際にはリングコマンドで時間が停止するため、落ち着いて行動を決定できるのだ。このリングコマンドの存在により、アクションRPGでありながらコマンド選択型RPGのようなプレイフィールをもたらしていることが、本作のバトルの最大の特徴と言えるだろう。

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲弱攻撃と強攻撃によるコンビネーションが、基本となる攻撃手段。アクションのレスポンスは実に心地いい

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲こちらがリングコマンド。選択中は時間が停止するため、相手の攻撃アクションが見えていても落ちついて考える時間が得られる

このようなバトルシステムもオリジナル版をベースにして作られているのだが、行動のバリエーションやテンポはリメイクにあたって大きく作り直されている。まずアクション面については、しっかりと技のモーションが描かれているにも関わらず、ボタンを押してから攻撃が出るまでのテンポが実にスピーディ。そのうえクラスごとの多彩なアクションのバランスも見直されている。こうしたバトルのバリエーションやテンポの部分はオリジナル版を踏襲するのであれば、今となってはやや古く感じてしまうのではと懸念していたところだった。しかし本作においてはこうした部分を丁寧に見直し、それでいて古き良きアクションRPGの気安いプレイフィールも失わせていない。地味ではあるが実に効果的な刷新が多数行われている。

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲バトルの根っこの部分は同じだが、味付け部分は新作のようだ。どのキャラクターやクラスでも動かしていて楽しい

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲レベルが上がると得られる“育成ポイント”を力、守、知性などに振り分けられる。振り分けたポイントによって新たな能力や魔法を習得でき、育成の方針やアビリティの組み合わせで戦術が大きく変化する

アクションRPGというと難度が高く、プレイヤーを選ぶジャンルであるように感じる方がいるかもしれないが心配は無用だ。確かに本作では、状況によって攻撃を使い分けるような仕組み、ジャンプや回避といったシステムなどが追加されたことでオリジナル版にはないアクション性が増したが、これらを使いこなさなければクリアできないということはない。道中の小型モンスターとの闘いは苦戦しにくいように作られているし、ジャンプや回避を駆使して攻撃をさばくシーンが増えたボス戦でもレベルを上げてごり押すという攻略が可能だ。アクションゲームは苦手という方は、育成と準備に少しだけ時間をかければいい。

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲ボス戦は相手の攻撃範囲が表示され、それをジャンプや回避で避けるといった工夫も必要となる。レベルを上げていればある程度無視して強引に突破できるので、アクションゲームは苦手という方でも安心してプレイできる

クリア後のお楽しみ要素も注目!

本作には、オリジナル版にはなかったクリア後の要素も追加されている。まずクリア後には、クラス4という新しいクラスチェンジが可能になる。クラス4になるためにはキャラクター別のキーアイテムが必要となるが、これらを入手する過程では、オリジナル版にはなかった追加エピソードが見られる。物語のファンには嬉しい要素だろう。
本作の難度設定はプレイ中にも変更可能なうえ、難度設定で最大のハードに上げたとしても一部の魔法があまりにも強力なため、苦労せずにこの追加ボスも倒せてしまうはず。個人的には難度ハードの上が用意されていればよかったと思うのだが、プレイヤー側のちょっとした工夫で難度のコントロールは可能であることも忘れてはならない。たとえば、“縛り”や“タイムアタック”的な遊びかたをしてみるのはどうだろうか。オリジナル版では敵の攻撃に必中のものが用意されていたが、本作ではほとんどの攻撃を回避、もしくは発生まえに中断できるように再設計されている。この性質を活かせば、低レベルクリア、クラス1のままクリアといったことも実現できる。

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲後半は強力な魔法が多数使えるため、小型モンスターとの闘いがワンパターンになりがち。ボス戦も魔法やアイテムを駆使すればそれほど苦労しないため、難度を求める人は“自分ルール”を決めてプレイするのもありだろう

いろいろな名作のリメイク、リマスターが出るとついついプレイしてしまう。名作が新しくなって遊べるというだけで期待が膨らむのだ。しかし残念なことにオリジナル版の体験が強烈すぎて、なんだかイマイチに感じてしまう作品というのも珍しくない。その原因はさまざまで、オリジナル版で面白かった部分が変わり果ててしまったり、昔は気にならなかったテンポが気になったりすることもある。オリジナル版をプレイしていたときの感覚と、今の自分の感覚が異なっているから“面白いと思わなくなった”という大変自分勝手な都合もあったりする。
『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』は時代に合わせたアップデートを行ったことで、前述のリメイク、リマスターを遊んでみるとイマイチに感じるという問題をクリアしている。古き良きアクションRPGを手厚く“再現”するという幹があり、その幹を見失わなずに新規ユーザーにも受け入れられる形でアレンジするという設計思想が随所から感じられるのだ。ただのリメイクに収まらない贅沢な作りを見ていると全く別のゲームにするということもできただろうが、“あえてオリジナル版のプレイフィールを残す”という選択をしたのだろう。ちなみに“マルチプレイ”がなくなっていることはオリジナル版との比較対象にされやすいポイントだろうが、ここは“サードパーソン視点のアクションRPG”を優先するにはやむを得ないところだったのではないかと想像している。ゲームを実際に遊んでみると、このオミットが決して手抜きによるものではないことがわかるはず。
シナリオや世界設定については、オリジナル版をほぼそのまま引き継いでいる。新たなシーンが足されたとはいえやはりそれは古き良きRPG時代のもので、今の感覚でいくと新しさは希薄だ。今のエンタメに慣れた人からすると意外な展開はないし、人の死や国の滅びについてもあっさりしていると感じるだろう。しかし本作に登場するキャラクターたちは、今の時代に見てもどこか人を惹きつける魅力にあふれていると思う。グラフィックは描き直されたことで、よりキャラクターたちの魅力が強烈に光って見える。懐かしさを感じながら本作を遊ばせてもらったが、このキャラクターたちは今の時代にも刺さる存在感を放っていると確信している。

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』は、昔『聖剣伝説3』を楽しんだ方はもちろん、本作がシリーズ初プレイという方にも刺さるだろう

本作とほぼ同時期に発売された『ファイナルファンタジーVII リメイク』は新しさをびっしりと詰め込み、全く新しい『ファイナルファンタジー』体験をもたらす作品だった。ストーリーや演出のなかで原作を忠実に再現した部分も多かったが、プレイ中の多くの時間を占めるバトルや探索については別のゲームのように進化していた。この新しい体験もプレイヤーとしてはとても楽しかった。『ファイナルファンタジーVII リメイク』、『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』の順に間を空けず遊べたことは筆者にとって幸福で、リメイクの多様性を気づかせてくれるプレイ体験となったと思う。ひと言にリメイクといってもいろいろな方法があり、全くリメイクの方向性が違うこのふたつの作品はどちらもとてつもなく面白かった。名作を数多く抱えるスクウェア・エニックスがこれから発表するかもしれないリメイク作品を考えると、ますます楽しみである。

フォトギャラリー

■タイトル:聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ
■発売元:スクウェア・エニックス
■対応ハード:Nintendo Switch™、PlayStation®4、Steam®
■ジャンル:アクションRPG
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2020年4月24日 ※Steam®版は2020年4月25日)
■価格:パッケージ版・ダウンロード版 各5,980円+税


『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』オフィシャルサイト

© 1995, 2020 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.