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死と隣り合わせの孤独『深世海』たったひとりの生き残りは何を体験するのか

死と隣り合わせの孤独『深世海』たったひとりの生き残りは何を体験するのか

朽ち果てた世界が沈む深海でたったひとり生きている主人公が、未知の機械に導かれながら広大な“世海”を探索するという潜水探検アクション、『深世海 Into the Depths』。定額で100以上のゲームが遊び放題になるというサブスクリプションサービスのApple Arcade用に開発された完全新作です。今回は、新規要素を追加し2020年3月に配信開始となったNintendo Switch™移植版(※新要素は、Apple Arcade版でも遊べます)をプレイし、その個性的なプレイ感や面白さについて紹介します。まずプロモーション映像で、独特の雰囲気を感じて下さい。

文 / 内藤ハサミ


ひたすら海底を目指すサバイバル

美しく、静かで、どこか恐ろしい深海の世界でひとり生きる主人公の“潜海者(せんかいしゃ)”。たったひとりで海中生活を送っていた彼の根城は、突然侵食してきた氷河に覆われて住めなくなってしまいます。 潜海者は世界の異変の謎を知るため、さらに海の底へと潜っていく……そんなシーンから物語は始まります。難易度はイージーとスタンダードの2種類から選ぶことができますが、どちらでプレイしても取得できるアチーブメントなどにまったく差はありません。筆者は、初回プレイでは海中の探索をまったり楽しみたいのでイージーを選択し、2周目はスタンダードを選択しました。

深世海 Into the Depths WHAT's IN? tokyoレビュー

▲雰囲気のいい海中の家。こういう秘密基地感、素敵ですねえ。しかし、ゲーム冒頭で真っ先に失われてしまいます……

海中を探索していると、さまざまな海洋生物に出会えるでしょう。ヤドカリ、フジツボ、ミツクリザメなど一般的に良く知られるものから、トガリムネエソ、コンドロクラディア・リア、スケーリーフットなど深海魚に詳しくなければ馴染みのないような生物まで29種類を見ることができます。そしてさまざまな形のガラス海綿や、通称“海の羽ペン”と呼ばれるウミエラなどの環境生物が11種。それに加え実在しない機械生物類や、多くが謎に包まれた大型生物類も登場します。特に実際の姿を見ることはほとんどない生物の姿は神秘的で、目を奪われます。

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▲大型のエイであるチヒロカスベ、日本ではミシマオコゼと呼ばれるスターゲイザーなど、インパクトのある生物たち

出会った生物は、タイトルメニューから選べる図鑑に登録されます。グラフィックも非常に美しく、海中に漂う姿はずっと見ていられるほど……ですが、海洋生物たちの多くは潜海者を敵とみなし襲ってきます。このような生物を倒したり、海中にある岩盤などから採掘することで得られる素材を使って潜水服の耐圧性を上げることで、潜海者はもっと深くまで潜れるようになるのです。そうして行動範囲を広げながらどんどん海の深い底まで探索を進めて、最深部にたどり着くのが本作の目的となります。

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▲ひたすらに深くて暗い海の底を目指す理由は、潜海者にもプレイヤーにもはっきりとはわかりません。そこにはいったい何があるのでしょうか?

筆者もスキューバダイビングを体験したことがあるのですが、水中を進む浮遊感、水の重みやエアーの音などがとてもリアルで、本当にダイビングをしているような感覚を味わうことができました。ゲームの冒頭でもアナウンスがあるとおり、ヘッドフォンやイヤフォンを装着してのプレイをぜひおすすめします。深海での浮遊感や独特の閉塞感をより濃密に体験できるでしょう。同時に、背後から虎視眈々と迫る死についても強く認識せざるを得なくなるはずです。潜海者は敵と戦うことで強くなることはありません。その代わり酸素ボンベを複数持つことができ、それが本作での“体力”に当たります。ボンベのエアーは何もしていなくても微量ずつ減っていき、浮遊状態でBボタンを押して発動するブーストなどではエアーをかなり使用します。ボンベと潜水服の空気がすべて切れれば死にますし、たとえ海中であっても岩盤に衝突したときや敵からの攻撃など、激しい衝撃を受けてエアーボンベが全て壊れてしまえばやはり死んでしまいます。エアーはセーブポイントのほか、エリアのあちこちにある酸素が噴出しているポイントから補充できます。ボンベの損傷などは自作できるアイテムで補修するほか、新しいボンベを拾うことでも回復できます。生身で生きていけない深海においては、つねに潜水服とボンベの状態に気を配る必要があるのです。

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▲セーブポイントはあちこちにあるので、こまめにセーブができて安心です

敵に対抗する手段は初めから所持しているギャフ(先端に鉤のついた棒)のほか、複数の銛を連射する“連出銛”やロープ付きで敵を引き寄せられる“射出銛”など、探索を進めるにつれ個性の違う武器が手に入ります。これらは敵を倒すだけでなくギミックを解除する手段にもなるので、状況に応じて使いこなす必要があります。

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▲ときには、こんなに大きな生物と戦うことも

武器は素材を集めて強化することもできます。特に強化した連出銛は生物と戦うときに役立つので、終盤までかなり重宝した武器です。至近距離から発射し、連続ヒットさせて大ダメージを与える爽快感にハマりました。どの武器も攻略の際は必ず使うことになるので、強化しておいて損はないでしょう。探索をして素材を集め武器などを強化することは、未知の敵や状況に備えて安心を自ら作り出す楽しみでもあります。水中での戦いは水の抵抗が加わるので、全体的にスピードが遅めです。早く動く敵がそれほどいない代わりに、潜海者もキビキビとは動けないのです。というわけでダメージを受けずに戦うためには、敵の動きを先読みしながら立ち回ることがポイント。潜水服は着ているものの主人公は生身で深海を探索します。過酷なサバイバル生活を切り拓いて、襲い来る脅威への対抗手段を豊かにしていくという充実感が味わえるのです。

冒険の果てに潜海者が見るものとは?

主人公である潜海者はひとりきりで、初めから海中の家で暮らしていました。赤ちゃんのときからひとりだったとは考えにくいので、ある程度大きくなるまでは誰かに育てられていたのではないかと予想できるのですが、そういった説明や描写は一切出てこず謎のままです。潜海者は喋りません。潜海者を導き狭路のアイテムを取るなどのサポートをしてくれる小さい機械“潜導”にも身振りだけで感情を表し、意思疎通を行います。

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▲可愛らしいルックスの潜導。なぜ同行してくれるのか、なぜ助けてくれるのか……不明なことだらけです

どんどん探索を進めていくと、どうやらこの“世海(せかい)”にはかつて繁栄を極めた文明があったようだ、ということがわかってきます。明らかに人工的かつ高度なテクノロジー、人が暮らしていたような街並みの跡、基地のような施設などを探索するうち、「こんなに発展していた文明なのになぜ滅んでしまったの?」という疑問と、「潜海者のような生き残りがどこかにいるかもしれない」という根拠に乏しい希望が生まれました。さて、それを明らかにするためにも探索を続けます。

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▲ピンク色の点が並ぶ罠のようなギミック。スイッチを押すと上下に動くので、できた隙間を縫って進みます。なぜ滅びた人類は、このようなものを作る必要があったのでしょうか?

中盤のとある場所で入手する潜水艦にもドリルやソナーなどが備えられていて、一部の氷河を切り崩して進むなど探索の幅を広げます。乗船している間はエアーが減りませんし、降りてもある程度の長さまでエアー供給のロープが伸ばせるので、じっくり周辺を探索したいときにも安心です。潜水艦の通れる広さがあれば、潜海者には耐えることができない水圧限界エリアにも入っていくことができます。

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▲かなり長くまでロープを伸ばすことができます。自由に着け外しできるだけでなく外したロープをその場に置いておけるので、簡易エアー供給ポイントとしても使えます

さまざまな道具や工夫を使いこなしながらついにたどり着いた最深部で、潜海者(プレイヤー)は衝撃的な光景を見ることになるでしょう。そして運命は、その後起こる戦いの結果に委ねられるのです。エンディングは2種類用意されています。筆者は両方を体験したのですが、どちらも“生を全うするということはどういうことなのか”と考えさせられる結末でした。ぜひ最初は心のまま体験し、2周目で残ったもうひとつのエンディングも見てください。筆者がクリアまでにかけた時間はおよそ11時間ですが、プレイ時間以上の濃密な体験ができたと感じています。生活の拠点を失い、何が待っているかもわからない海の底へと導かれる潜海者。死と隣り合わせの深海に対する恐怖、神秘的な深海生物への憧れ、ロストテクノロジーへのロマン……これらを味わっているのは、もしかしたらこの広い“世海”のなかで自分ひとりかもしれないという不安を感じながらも、どこか心地よい孤独を味わうことができました。
文明が滅び海底に沈んだ世界の描写が美しい『深世海 Into the Depths』はBGMやSEも秀逸で、滅びと命の表現にとびきりの美意識が感じられる良作です。探索を進め、敵との戦いやギミックの解除をしていくごとに行動範囲が広がるというのは、他にもよく見られるゲームの形式です。しかしそこに深海という要素を加えたことで、斬新な作品に仕上がっていると感じます。新規IPということもあり、今後の展開にも期待していきたい一作です。

フォトギャラリー

■タイトル:深世海 Into the Depths
■発売元:カプコン
■プラットフォーム:Apple Arcade、Nintendo Switch™
■ジャンル:潜水探検アクション
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2020年3月26日)
■価格:Nintendo Switch ダウンロード版 1,809円+税

※Apple Arcadeストアリンク


『深世海 Into the Depths』オフィシャルサイト

『深世海 Into the Depths』オフィシャルTwitter

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