発掘!インディーゲーム総研  vol. 1

Review

口コミで伝わった恐怖『夜勤事件』低価格作品が突きつけたゲーム性とは

口コミで伝わった恐怖『夜勤事件』低価格作品が突きつけたゲーム性とは

小規模ながら評価の高いホラーゲームをリリースしているインディースタジオ、Chilla’s Art。なかでもゲーム実況という枠組みで話題になったのが、300円ほどでDL購入できる『The Convenience Store | 夜勤事件』だ。どんな作品で、どんな恐怖を味わわせてくれるのか。そのゲームシステムやホラー要素に着目していく。

文 / 板東篤


コンビニ夜勤で謎のビデオが……!

2020年2月にリリースされて以来長期で注目を集めた『The Convenience Store | 夜勤事件』。一人称視点の3Dホラーアドベンチャーゲームで、コンビニで働く主人公が不可思議な現象に巻き込まれていく……という作品だ。本作の主人公は自宅近くのコンビニで夜勤のアルバイトをしている女子大生。名前をはじめとする詳細な情報は何も語られない。毎日、自宅からコンビニへ出勤し、働いては帰宅する日々を送るワケだ。
さて、筆者がプレイを開始してまず驚いたのは、その映像だ。全体的にちょっとぼやけ、少しぶれているようなエフェクトがかかっており、まるでアナログ時代のVHSテープみたいな映像に仕上がっている。ちょっとおどろおどろしい雰囲気を醸し出しており、夜という時間帯の暗さも相まって恐怖を演出している。要するに常時ちょっと怖いのだ。

The Convenience Store | 夜勤事件 WHAT's IN? tokyoレビュー

▲画面は全体的にボヤけて色がにじんだようなエフェクトがかけられており、独特の雰囲気を出している

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▲設定でエフェクトを切ることも可能。ただし独特の雰囲気は失われてしまう

そんな雰囲気のなか、プレイヤーにとっては初となる出勤。ご飯を食べたりして準備を行い、懐中電灯を片手にコンビニへと向かう。主人公の自宅近くは街灯が少なく、出勤の時間帯ともなれば近所のコンビニまで行くにも懐中電灯の明かりは必須なのだろう。懐中電灯が玄関そばの棚の上に置かれていることからも、主人公が日常的に利用していることがわかる。しかし懐中電灯を利用しても夜道は非常に暗くて視界が悪く、歩くだけでも何か出てきそうで怖い。やけに入り組んだ道を抜けて橋を渡ると、目前には煌々と輝く建物が飛び込んできた。職場であるコンビニだ。人は暗闇のなかで明かりを見つけると安堵すると思うが、本作でもそれを味わってしまった。

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▲懐中電灯を片手に、深夜の住宅街を歩いて勤務先へと向かう。非常に暗くて視界が悪いが、じつはこれでも明るいほうだ。翌日以降はもっと暗闇に包まれる

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▲暗い道を抜けた先に、皓々と光るコンビニが見えてきた。ホッとする瞬間

タイムカードを切り、いよいよ夜勤スタート。仕事は接客に加え、店長から指示された内容の作業を行うことになる。初日は賞味期限が切れた食品があるみたいなので、調べて廃棄してほしいという内容だった。陳列棚の商品を調べて指示どおり廃棄品を裏のゴミ箱に捨て、レジにて接客を行う。正直なところ怖いことは何も起きず、現段階ではホラーゲームと言うよりコンビニ店員シミュレーターに近い。とはいえ、コンビニのバックヤードや事務所など普通は見られない裏側が見られたりして、これはこれで意外とおもしろい。

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▲主人公よりまえのシフトで働いている、店長と思わしき人物。「近所で自殺者が出た」などと嘘をついて主人公を怖がらせると、すぐに帰ってしまう。ムカツク

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▲冷蔵庫の裏側をはじめ、一般人ではなかなか見る機会がないコンビニのバックヤードを見られるのはけっこう楽しい

と思っていたら、また入店時のチャイムが鳴り響いた。今度はどんなお客が来たのかな、と思って入り口を見てみると、誰もいないのにドアが何度か開閉している。少しゾッとしたが、いよいよ怪奇現象が始まったか! という興奮がこれを上回った。その後も店内の巡回を続けていると、今度はダンボールを持った人が来店。深夜にもかかわらず配達に来たそうで、しかも宛先は自分。受け取ると場面は翌日の自宅へ。荷物はどうやらビデオテープらしい。早速見てみると、そこには“立入禁止”のテープが貼られた、どこかの家の入り口と思しき映像が数秒録画されていた。これは何を意味するのだろうか。その答えも出ないまま、また出勤時間を迎えてしまった。昨日のように懐中電灯を手にして玄関を出ると、急にノイズのような音と共に真っ黒な画面に“第一夜”と表示されて、一日目の終了が示唆される。唐突に切りかわる画面と効果音が相まって、この演出はわりとドキッとしてしまう。

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▲謎のビデオの映像。ブロック塀と郵便受けが見られることから、どこかの家の入り口かと予想される。この映像にはどんな意味が……?

徐々に増えていく超常現象……このコンビニはなんかヤバイ

バイト二日目は、怪奇現象がさらに増加する。店の裏のゴミ箱がネズミに荒されていて(これは昨日の廃棄食品が原因かもしれないが)、お店を娘の家と勘違いして激昂する老婆が来店してきた。誰もいないのに入り口のチャイムが鳴るのは、未だに続いている。こうなってくると、先日は安堵すら覚えたこの“コンビニ”という空間自体が徐々に怖くなってくるから不思議だ。自分以外誰もおらず、その静寂が恐怖をかき立てる。入り口のチャイムの音にも恐怖を感じ始め、自分で入り口のドアを開けたにも関わらず、そのチャイムの音にビクっとしてしまうほどだ。

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▲引き続き、誰もいないのに入り口のドアが開いてチャイムが鳴る現象も発生。防犯カメラで見てみると、子どもがイタズラで開けていたようだ。なーんだ……って納得できるわけがない!

三日目はあいにくの雨。傘を手に取って出勤しようと家を出ると、荷物が置かれていた。中身はそう、ビデオテープ。今度は薄暗い家の庭と思える映像が、数秒映し出された。何とも言えない恐怖を拭い去りながらコンビニに至ると、怪奇現象が本格化。バックヤードのドアの鍵が勝手に閉まって閉じ込められたり、トイレに閉じ込められたり、やっと出たと思ったら商品が床にぶちまけられていたり……。

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▲三日目の住宅街。雨のせいかさらに視界が悪く、マジで何も見えない

もう勘弁してくれ……そう思っていると、今度は事務所からキーボードを叩く音が聞こえてきた。しかし、事務所には誰もいない。そのままパソコンを操作して監視カメラの映像を見てみると、無人のはずの店内に人影が! とうとう幽霊を目撃してしまったのか!? さらにいつの間にかその場所には、わら半紙に達筆の文字が描かれたようなお札(ふだ)が散らばっているなど、心霊現象が次々と巻き起こる。さてこのお札、じつは店の裏の倉庫に貼り付けることで内部に入れるようになる。そこでは、なんと椅子に座ったままコンビニの関係者が死んでいたのだ。既知の人物が死亡していた現場を突然目の当たりにした主人公は、驚きのあまり声も出ない。ホラーゲーム的な展開として当然のようにドアは開かなくなり、おまけに誰かが外からガンガンと叩いている。死体は勝手に首が動き、こちらと目が合ったその瞬間に画面が切り替わり……“第三夜”の文字が出て三日目は終了。この体験は、現実なのだろうか?

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▲防犯カメラで店内を見てみると、誰もいないはずのレジのまえに人影が……

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▲店の裏にある倉庫。どこかで鍵を見つけ、さらにお札を貼ることで内部に入れるようになる……が、お札を貼ったことで怪しさMAX

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▲ショッキングな光景が……

この不条理を受け入れることで楽しめること

四日目は自宅からのスタート。先日の倉庫での事件は“夢だったのだろうか?”と独りごちる主人公。あれははたして現実か、それとも悪夢を見ただけなのか。真相は語られぬまま四日目も出勤する主人公。あれはただの夢であってほしい、コンビニに行けばいつもの日常が待ち受けている……そんな願いを抱いていたのであろうか。だがそんな願望むなしく、今日のコンビニは最初からおかしい。いつもは居るはずの店長がおらず、事務所から出ると店内が急に異界化。電灯は消え、床にはゴミが散乱し、商品棚にはなぜかブラウン管テレビが無数に置かれている。その禍々しさ、おどろおどろしさに恐怖を感じつつも防犯カメラで店内の様子見てみると、子どもがウロウロ歩いている。もちろん彼も幽霊だろう。この世のものではない異界に足を踏み入れてしまった恐怖を感じつつ、この世界で何かを行わなければ現実に戻れない。さて、子どもの様子をよく見ると、特定のテレビを数秒間見つめているようだ。彼が見つめていたテレビの電源をすべてオンにすると、物語は進行する。バックヤードでなぜか座っている子どもを発見すると画面が暗転し、現実世界に戻る。これもまた悪夢なのだろうか。動揺しながらコンビニ店内をウロウロすると、入り口には例のビデオテープがむき出しで置かれていた。誘われるようにそれを手にして自宅へ帰り、このテープをどうするのか選択に悩む主人公だった。

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▲急に異界化してしまったコンビニ店内。謎を解き明かして脱出するしかない

さて、本作をひととおりプレイし、もっとも魅力的に感じたのはゲーム全体を通しての雰囲気だ。画面を粗く見せるエフェクトのおかげで、終始昭和時代にレンタルで借りてきたホラービデオを見ているかのような怖さを味わえる。コンビニの再現度もけっこう高く、ホラーとは関係ない品出しや接客など、コンビニ店員としての労働も意外と楽しめた。最後のビデオテープをどうするかでエンディングが分岐する。筆者はどこかに送る手段を選択したが、異なる結末が気になった人は別の選択肢も試してみるといいだろう。
ここで辛口になるが、楽しめたもののいささか不満も感じた。テクスチャの粗さや登場人物のモーションが古めかしいのは、まあ魅力にも貢献しているので仕方がない。本作ではアクションを起こせるポイントにマークが表示されるのだが、これが表示されない場合もあり、加えて何をすればいいのかという目標も表示されないため、行動がわからなくなることが多々ある。そのためプレイしにくい。
ストーリーも残念だ。四日目のビデオをどうするか選択するとエンディングとなるのだが、そこで主人公がネットでコンビニのことを調べ、なぜ怪奇現象が発生するのかという原因がずーっと文章で語られる。事件の核心となる最終章が文字だけで語られている感じで、かなりの肩透かしを味わった気分だ。ほぼ毎日送られてきたビデオテープだが、なぜ送られてきたのか、誰が送ってきたのか、なぜあの映像を主人公に見せようとしたのか。残念ながら筆者はこれといった結論を導き出すことができず、エンディングを迎えてもスッキリしない終わりかたであると感じた。考えるとこれらはいやな感じや怖さを抱かせる恐怖のパーツ群であり、積み重ねる効果でホラー演出をしただけかもしれない。

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▲なぜコンビニで怪奇現象が起きたのか、コンビニはその後どうなったのか、が約3分半ほど文字だけで語られるため、解き明かした感は味わえない

セーブ機能がないことは特に注意したい。ゲーム自体は2時間程度で終わるボリュームだが、途中でちょっと休憩しようと思ってゲームを終了すると、また最初からのスタートになってしまう。セーブ&ロードが機能すれば、価値は高まるだろう。
残念な要素はあるが、300円ほどの価格を考えると大概のことは許してもいいかな、と思えてしまうのも事実。出勤のために通る夜道で感じる恐怖、恐怖演出のパーツ群のインパクト、建物自体は変わらないのに恐怖現象が起きるだけで残酷な静寂となるコンビニ店内など、この雰囲気を味わえれば悪くないだろう。なお開発元のスタジオChilla’s Artは短期間で作品を制作しており、4月25日には新作『Onryo | 怨霊』がリリースされている。本作が気に入ったならば、こちらもプレイしてみてはいかがだろうか。

フォトギャラリー

■タイトル:The Convenience Store | 夜勤事件
■発売元:Chilla’s Art
■対応ハード:Steam®
■ジャンル:アドベンチャー
■発売日:発売中(2020年2月17日)
■価格:ダウンロード版 281円+税


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