初夏のVTuber講習〜押さえるべき10組を紹介  vol. 6

Review

YuNi 透き通った声質の魅力。歌のテクニックと表現力は、VTuberアーティストシーンでもトップレベル

YuNi 透き通った声質の魅力。歌のテクニックと表現力は、VTuberアーティストシーンでもトップレベル

魅力的なコンテンツを発信し続けるVTuber(バーチャルYouTuber=3DCGのキャラクターによるYouTuber)は、いまや日本のエンターテインメントに不可欠な存在。今年ついに1万人を超えたVTuberのなかから、精力的に音楽活動を行っている“アーティスト”を紹介します。“VTuberの音楽活動って、どんなことやってるの?”というビギナー方も大丈夫。優れたシンガー、クリエイターが集結しているバーチャル・アーティストの世界へようこそ!


【(自称)世界初のバーチャルシンガー】として2018年6月に登場したYuNiは、デビュー当初から現在に至るまで、“歌”にこだわった活動を続けている。最初の投稿は自己紹介ではなく、いきなり“歌ってみた”。坂本真綾の名曲「プラチナ」(1999年/アニメ『カードキャプターさくら』オープニングテーマ)を透明感のある声で瑞々しく歌い上げ、「また一人、VTuber界隈に歌のスゲー奴が現れた」「声の伸びが凄い綺麗」と高評価を獲得した。

ボーカリストとしてのポテンシャルの高さを強く印象付けたのは、「シャルル」(ボカロP“バルーン”こと須田景凪が2016年に発表したヒット曲)のカバー動画。原曲(及び須田景凪のセルフカバー)はヒリヒリとした緊張感に溢れた楽曲なのだが、YuNiバージョンは透き通った美しさ、可愛さがあり、それが彼女の個性につながっていた。この動画は2020年5月時点で890万回以上の再生数を記録。この投稿をきっかけにチャンネル登録者も一気に増え、VTuberシーンでの注目度もアップした。

歌い手してのYuNiの特徴は、幅広い選曲と楽曲の世界観をしっかりと表現するボーカル力だろう。昭和歌謡の名曲「異邦人」(久保田早紀)、「まちぶせ」(石川ひとみ)を叙情的に歌い上げ、「ultra soul」(B’z)ではキュートすぎる”ウルトラソウッ!ハァイッ!”というシャウトでユーザーを魅了。さらに「奏(かなで)」(スキマスイッチ)をエレクトロ風にアレンジして可憐に歌いこなすなど、独自のスタイルを少しずつ積み上げてきた。切ない曲、悲しい曲を歌っても、ポジティブで明るい雰囲気になることも彼女の魅力。その素直で真っ直ぐなボーカリゼーションは、10代から40代まで幅広い年齢層のリスナーに浸透しているようだ。

2018年10月に発表された初のオリジナルソング「透明声彩」は、彼女の最大の魅力である“透明感に溢れた声”にフォーカスを当てた楽曲だ。サウンドの基調は、儚いイメージのエレクトロ。穏やかなイメージのAメロから気持ちよく広がるサビメロへの跳躍、そして<透明な声はきっと空っぽじゃない><もう何も怖くない/走り出した>という歌詞からも、YuNiの歌のキャラや彼女自身の意思が真っ直ぐに伝わってくる。作詞・作曲は、YUC’e。シンガーソングライター、プロデューサーとして活動する一方、DEAN FUJIOKA、m-floの楽曲リミックスを担当するなど、多方面で才能を示しているクリエイターだ。

「透明声彩」によってアーティストとしての基本的なスタイルを提示した彼女はその後、新曲をリリースするたびに自身の音楽世界を広げてきた。2曲目のオリジナルソング「Winter Berry」は“冬を明るく楽しくしたい女の子”をイメージしたというウインターソング。軽快な4つ打ちのビート、ロマンティックな雰囲気のサウンド、ホーリーな雰囲気のメロデイが響くこの曲は、YuNiのキュートな表情を引き立たせている。この時期からYouTubeのコメント欄には、英語、中国語、フランス語なども増え、彼女の存在が海外に届き始めていることを感じさせた。

2018年のクリスマスイブには、初のVRライブ『YuNi 1st VR LIVE! 〜VeRy Merry X’mas〜』を開催。VRライブプラットホーム「VARK」(https://vark.co.jp/)を使用し、OculusGO(VRエンターテインメント専用のヘッドセット)のみで見ることができる前代未聞のスタイルで行われたこのライブでは、“YuNiが突然目の前に現れる”“部屋で2人きりになって、「きよしこの夜」を歌う”などVRでしかありえない演出も。楽曲の世界観に沿ったステージングを含め、参加者からの大きな反響を集めた。

さらに2019年3月には初めてのリアルライブイベント『UNiON WAVE -花は幻 -Supported by SPWN』を池袋HUMAXシネマズで開催。このイベントは、全国の劇場、映画館など様々なスペースをVTuberやバーチャルアーティストのステージに変える「SPWN」がサポート。ヒゲドライバー、YUC’eのDJやライブをはじめ、YuNiとYUC’eのトーク、さらに5.1chサラウンドシステムによる立体的な音響空間を実現させたYuNiのARライブなどが行われ。バーチャルとリアルの融合をさらに押し進めた。

2019年4月には1stアルバム『clear/CoLoR』を発表し、10月にはシックな手触りのミディアムナンバー「Beautiful World」をリリース。さらに同年の4月からラジオ番組「YuNiのオールナイトニッポン」がスタート。今年3月には日中同時に開催されたVRイベント「以心伝心-BorderlessLive5G-」(新型コロナウィルスの影響で無観客ライブ配信)に出演するなど、活動の幅を着実に広げているYuNi。最新の”歌ってみた動画”では、茅原実里の名曲「Paradise Lost」を力強く歌い上げるなど、シンガーとしても確実に成長を続けている。透き通った声質の魅力、歌のテクニックと表現力は、VTuberアーティストシーンでもまちがいなくトップレベル。彼女の歌がさらに幅広いフィールドで響くのは、そう遠い未来ではないだろう。

文 / 森朋之

YuNi – virtual singer – YouTube

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オフィシャルサイト
https://yunionwave.com

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