おうちでライブ三昧  vol. 12

Review

UNICORN 圧巻300分のライブ映像+ドキュメント。3枚組だからこそ立体的に“ユニコーンの今”を味わえる作品。

UNICORN 圧巻300分のライブ映像+ドキュメント。3枚組だからこそ立体的に“ユニコーンの今”を味わえる作品。

見応え十分のBlu-ray&DVD3枚組だ。超元気なベテランバンド“ユニコーン”の2019年の活躍の全貌が、あますところなく収められている。

2019年のユニコーンは、驚くべき活動を展開した。テーマもスケールも、規格外。まずは『働き方改楽-なぜ俺たちは楽しいんだろう- 』をスローガンに掲げて、2019年のスタートを切ると、手始めにアルバム『UC100V』を3月にリリースして、4月から『ユニコーン100周年ツアー“百が如く”』に出発。ツアー前半を終えると、夏にはレコーディングに入ってもう1枚のアルバム『UC100W』を制作。10月からは『UC100W』を中心としたツアー後半に挑んだ。

つまり1年間にアルバム2枚を発表して、通常の2倍の内容を持つロングツアーを敢行。ベテランバンドならではの質と、ベテランバンドとは思えない量の活動を展開して、そのタフネスを音楽シーンに見せつけたのだった。

中でも『ユニコーン100周年ツアー“百が如く”』に盛り込まれたアイデアが素晴らしかった。川西幸一の還暦“60”歳、現メンバーになって初めて制作された傑作アルバム『服部』から“30”年、再始動から“10”年を足して“100周年”という奇想天外なアニバーサリーをツアー・タイトルにして、なんと演奏時間を100分に限定。残業なしのライブ=働き方改楽という、ロックバンドがいまだかつて成し遂げたことのない快挙を達成した。その2019年のユニコーンの活躍のすべてを収めたのが、この3枚組『MOVIE 38 ユニコーン100周年ツアー“百が如く”』というわけだ。

DISC-1は『ユニコーン100周年ツアー“百が如く”』前半のハイライトの武道館ライブを収録。DISC-2にはツアー後半のファイナルとなった大阪フェスティバルホールの模様が収められている。そしてDISC-3は、2019年のユニコーンの活動を追った、リーダーのABEDON監督によるドキュメンタリーになっている。スタジオや楽屋など、5人のキャラクターが全開のバンドマン・ライフが映し出されていて、貴重なカットがこれでもかと楽しめる。

ちなみに残業なしライブの性質上、DISC-1とDISC-2の収録時間は100分強で、それに合わせてDISC-3のドキュメントも約100分に編集されている。ユニコーンのユーモア精神が徹底的に貫かれているというわけだ。

さてDISC-1の舞台は武道館だ。ツアーの立ち上りでキーワードになったのは、やはり“100分”だった。メンバーが登場してからカウントダウンが始まり、ぴったり100分を知らせる「ハッタリ」(アルバム『服部』の1曲目に収録)が流れるとライブは強制終了になるという前代未聞のセッティング。曲の途中であろうが、MCが盛り上がっていようが、100分でメンバーが退場するのがお約束。できるだけ最後ののんびりトークを楽しみたいメンバーは、MCを極力短くしてライブをサクサク進める。マイペースが身上のユニコーンのライブではあまり見られないシーンに、それはそれでオーディエンスは大喜び。メンバーとオーディエンスは、共にハラハラしながら100分ライブに臨む。映像が客席を映すと、武道館全員の笑顔が見ることができて、このライブの雰囲気が伝わってきて楽しい。

ライブの構成は、非常にわかりやすい。オープニングは『UC100V』の1曲目「10Nuts」。ライブを想定してのアルバム作りだったから、ピタリとはまる。その後、懐かしい曲の「働く男」で会場を盛り上げた後、『UC100V』からの新曲コーナーに突入する。全員が曲を作ってリードボーカルを取るユニコーンらしく、EBIが歌う「大航海2020」、手島いさむが歌う「365歩のマッチョ」、川西が歌う「気まぐれトラスティーNo.1」と、ステージのセンターが目まぐるしく変わる。この交代劇も見物のひとつだ。

中盤を盛り上げるのは「服部」メドレー。選曲も面白いが、キモは曲の切り取り方だ。「えーっ? そこをやるんだ」と「えーっ、そこしかやらないの?」の連続で、笑える、笑える。これは見てのお楽しみということにしておこう。ユニコーンの言う“音楽で遊ぶ”精神がよくわかるこのメドレーは必見だ。

終盤はバンドの実力通りのチカラワザが炸裂。最後は再始動後初のアルバム『シャンブル』からのナンバーで感動させてくれる。ユニコーンの歴史を振り返りつつ、100周年の根拠になった『服部』と『シャンブル』をきっちり抑えたセットリストは、本当によく出来ていて見飽きない。

一方、DISC-2はツアーの後半を収録。リリースしたばかりのアルバム『UC100W』からの曲が中心になっていて、他の曲もツアー前半戦とは重なっておらず、セットリストはDISC-1とまったく異なっている。ただテイストは同じで、オープニングは『UC100W』の1曲目「M&W」。その後、懐かしの大ヒット「すばらしい日々」と「おかしな2人」で絶好のスタート・ダッシュを決める。続いてDISC-1と同じくリードボーカルをくるくる変えて『UC100W』からの新曲を披露。「服部」メドレーもバージョンアップされていて、さらに面白くなっている。ラストは『シャンブル』からの名曲で締めるという構成。

このツアー前半と後半の対比は、見事というしかない。曲がまったく違うのに、受ける印象は限りなく近いのだ。こんなことをやってのけられるのは、ユニコーンしかいないだろう。

DISC-2の最大の特徴は、DISC-1と比べて川西がより前面にフィーチャーされていることだろう。実は川西の誕生日は10月20日なので、正確に言えばツアー前半は“ユニコーン99周年”だった。ツアー後半が始まって間もなく、尼崎でのライブの日に、川西は60歳を迎え、ユニコーンは記念すべき100周年となる。その日から川西のドラムが特注の真っ赤なセットに変えられた。もちろんファイナルの大阪ライブは、この真っ赤なセットでのパフォーマンスとなった。このあたりの気配りの細かさが、実にユニコーンらしい。そんなこともあって、DISC-2のライブも大いに盛り上がるのだった。

そしてDISC-3である。このドキュメントはまず、ツアーに出る前に行なわれたリハーサルの様子をじっくりと追う。ライブ全体の演出の意図を踏まえながら、選曲に時間を掛ける。ライブの内容を100分に収めるために知恵を振り絞る。単純に曲を減らしてしまえばいいようなものなのだが、100分の範囲内でできるだけ多くの曲を演奏し、なおかつ面白タイムも確保するというギリギリの攻防がとても興味深い。

またスタジオでのレコーディングや、ツアー中の楽屋でのメンバーの誕生日祝いの模様などを赤裸々にドキュメントする。笑いに満ちたシーンの連続は、これぞ“働き方改楽”と言いたくなる。

特に興味深いのは、これらのシーンを切り取っているのがABEDONだということだ。ABEDONはユニコーンの活動を客観的にプロデュースしながらも、DISC-3では個人となってバンドを見つめる。リーダーとしてではなく、かといってファン目線でもない。5人がそれぞれに全力を出し合って、アルバムを作り、ツアーを続ける。そんなユニコーンというバンドの一員であることの歓びを、ABEDONは隠さない。その編集のタッチが、胸にグッと来るのだ。もしかしたらDISC-3が、いちばん繰り返し見たくなるのかもしれない。

そしてこの3枚のBlu-ray&DVDもまた、2019年のユニコーンの活躍のひとつであり、3枚組だからこそ立体的に“ユニコーンの今”を味わえるセッティングになっている点を特筆したいと思う。

文 / 平山雄一

詳細は特設サイトにて。
https://www.unicorn.jp/special/100th/movie38/

UNICORN

ABEDON、奥田民生、川西幸一、EBI、手島いさむ。1986年、広島で結成。1987年10月アルバム『BOOM』デビュー。バンドブームを牽引し、「大迷惑」「働く男」「すばらしい日々」など次々とヒット曲を生み出す。1993年解散発表。それぞれのソロ活動を経て、2009年に再始動を発表し、以降も楽曲制作、ライブと精力的に活動を続ける。

オフィシャルサイト
http://www.unicorn.jp/

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