山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 83

Column

火を絶やさないこと/ ライヴハウスという場所

火を絶やさないこと/ ライヴハウスという場所

「それは音もなくやってきて 本来音が溢れる場所を 静かに破壊していきました。
 (中略)
待っていてください。
世界中の音楽家や 劇場や 店が耐え忍び 再び生み出そうとしているから。
それを目前で 生身で体感し 確認できる場所は
手にする端末ではなく ここにしかありません」
あるライヴハウスからのメッセージ。
火を 灯し続けるために。
最後まで 読んでください。


ライヴハウスに自腹でチケットを買って、足を運んだことがある政治家はいったいどのくらいいるんだろう?そこで毎晩繰り広げられていたことを、想像してみたことがあるのだろうか?

初めてそのステージに立ってから、40年近くの時が流れた。そこに育てられた者として、記しておきたいことがある。僕らを支え、音楽のために身を削って働いてくれている仲間たちのこと。

そこは青春の夢と希望、挫折と屈折が交錯していて、やり場のないエネルギーを受け止めてくれる。鬱屈した想いを誰かが歌に昇華させたとき、心おきなく大声で、あるいはささやくように歌える場所でもある。

photo by Nakatuka Akira

ひとびとはリアルな体験を求めて、その薄暗い場所に足を運ぶ。それはたいてい地下にあって、階段を降りていくとき、ひとは自分のこころの深みにも降りていく。踊って発散するも、壁にもたれて聞くも自由。制約はない。

ロック界のほぼすべてのスーパースターがこの場所から輩出された。ここで研鑽を積み、憧れと情熱と失意を抱いて、夢に取り組んでいた。

その場所は決して高くはない報酬のもと、溢れる情熱をもって、身を削りながら取り組むたくさんのスタッフによって支えられている。今や娘や息子のような世代が懸命に働いていたりする。

敬愛するアーティストとツアー中のこと。彼はハコのスタッフの名前をあらかじめ調べておいて、リハーサル時にステージから実名で話しかける。若いスタッフにしてみれば、一生忘れられない経験になるだろう。レジェンドと仕事をした経験。そのときの彼らの目の輝きが忘れられない。

そうやって、伝承されてきた。

たとえば、僕がハコに到着したとき。彼らはまっさらなステージと楽屋、変わらぬ体温で待ってくれている。美味しいコーヒーを淹れてくれるハコもあれば、楽屋に歓迎のメッセージが書かれていることもある。ステージの後ろに看板なんてことも稀にある。それがツアーで疲れた身体にどれだけ染みることか。

その気遣いが僕らを奮い立たせる。

熱狂の夜が終わったら、乾杯することもなく、彼らは翌日の公演の準備を始める。機材を片付け、清掃し、明日のセッティングをする。書けばこれだけのことだけれど、これを毎晩毎晩続けてきてくれたのだ。

ただ、奇蹟のような「あの一瞬」のために。

今、この国にあるほぼすべてのハコが苦境に立たされている。一度失われてしまったら、再建するのは容易ではない。金だけの問題ではない。そのハコが永い時間をかけて育んできた個性、ブッキングや音響照明の技術。ミュージシャンにとっては表現する場所、オーディエンスにとっては身を委ねる場所。

積み重ねてきた文化と歴史。すべてが失われる。

どうにか火を絶やすまいと、今日も努力を続けているひとたちがいることを覚えておいてくれると嬉しい。


スターパインズカフェ(吉祥寺)
スタッフの音楽愛最高!音響、照明もすばらしい名店。

https://mandala.gr.jp/SPC/

いわきSONIC(いわき市)
震災時、線量が高く出歩けなかった高校生たちに音楽というエネルギー発散の場所を提供。

http://www.sonic-project.com/~sonic-iwaki/

サムズアップ(横浜市)
仕事帰りに、飲んで、食べて、音楽を楽しめる大人のための名店。

http://www.stovesyokohama.com/thumbsup/

photo by Nakatuka Akira

ヒマール(岩国市)
文化のためなら労を惜しまない名店。

https://himaar.com/

ロビンズネスト(弘前市)
ビールにも音楽にもホスピタリティーにも一切手を抜かない名店。

http://robbins-nest.jp

ブルーブルース(岡山市)
行くたびにマイナーチェンジを繰り返す、向上心の店。

https://www.facebook.com/blueblues1999/

拾得(京都市)
磔磔と並んで、日本最古の名店。ちなみに正式名称はコーヒーハウス拾得。一度は訪れたし!

http://www2.odn.ne.jp/jittoku/

磔磔(京都市)
いわずと知れた名店。ここには確かに音楽の神様が棲んでます。

http://www.geisya.or.jp/~takutaku/

メロメロポッチ(金沢市)
北陸が誇る魔界。この春、移転。演劇、音楽、漫画、写真、その他もろもろ、なんでもあるけど、ほんとうは生ジュース屋。笑。

https://www.meropochi.com

ヲルガン座(広島市)
店主、ゴトウイズミの愛と希望と忍耐と夢を詰め込んだワンダーランド。

http://www.organ-za.com/

ラフハウス(高松市)
うどん県の魔界。なぜ魔界か?来ればわかるさ。笑。

https://www.barruffhouse.com

LIBERATE(出雲市)
客席から飛んでくるヤジは日本で一番パンチがある。店主の強面度と比例するのかも。笑。

http://www.liberate1996.com

Bluemoods (水戸市)
老舗ジャズクラブにはオーナーにしておくにはもったいない名ドラマーがいる。毎回ここでしかありえないライヴが繰り広げられる。

http://blog.livedoor.jp/jazz_bar_bluemoods/
http://www.mito-tv.com/shop/shop.php?id=00000727

仙台CLUB JUNK BOX (仙台市)
長いことバンドでツアーに行かなかった(行けなかった)難攻不落の仙台。このハコの協力がなければ実現不可能だった。

http://www.junkbox.co.jp/sendai/indexpc.htm

ANGA(千葉市)
どうがんばっても垢抜けないところがHEART OF CHIBA(褒めてます)。一年に一度は行かないと生きてる気がしません。

https://anga-hp.com/top/

Knave(大阪市)
南堀江にある名店。若い世代の音響照明スタッフがほんとうにみずみずしく素晴らしいのです。

http://www.knave.co.jp

Neon Hall(長野市)
ミュージシャンに圧倒的な人気を誇る歴史あるハコ。木の響きに古いアルテックのスピーカー。ぜひ、体験されたし。

http://www.neonhall.com

ROOMS(福岡市)
故郷でソロをやるときのホームです。

http://saito-kikaku.co.jp/rooms/

POLEPOLE(福山市)
ライヴじゃなくても、ふらっとコーヒーを飲みに行ってください。福島に声援を送るライヴを2011年から毎月続けてくれています。

https://www.cafe-polepole.com

TOKUZO(名古屋市)
ライヴのあとは朝までやっている居酒屋に変身します。素晴らしいよ!

http://www.tokuzo.com

スペースの都合で紹介したのはほんの一握りのハコでしかありません。
ほんとうにたくさんのユニークなハコがこの国には存在しています。


著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。90年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』に収録された「満月の夕」は阪神・淡路大震災後に作られた楽曲で、四半世紀を経た現在もなお、多くのミュージシャン、幅広い世代に歌い継がれている。“ミュージシャンズ・ミュージシャン”としてその名を挙げるアーティストも多く、近年は野外フェスやR&Rイベントへの出演も多い。バンド結成40周年となった昨年は、40thツアーとして全国を廻り、スタジオ・アルバムとしては2年ぶりとなる新作『Blink』をリリース(オフィシャルサイト、レコード店、大手通販サイト、配信等で販売中)。山口洋 (HEATWAVE) solo tour『Blink 40』後半を中止せざるを得なかった状況を受け、4月12日には自身初となるインスタライヴを決行。その後も、この状況下における新たな試みを発信中。6月にはバンドでニュー・アルバムの曲を中心に演奏するHEATWAVE TOUR 2020“Blink”、2011年東日本大震災直後に始めたプロジェクト“MY LIFE IS MY MESSAGE”(今年は“Brother&Sister”として仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳、おおはた雄一とステージに立つ)を予定している。なお、延期となった高知市、高松市公演を含め今後のライヴ開催については、逐次オフィシャルサイトを参照のこと。

オフィシャルサイト
http://no-regrets.jp/index.html

ライブ情報

「ミスター・アウトサイド」#001(イベント)

5月19日(火)古書ほうろう ※SOLD OUT
詳細はこちら

HEATWAVE TOUR 2020 “Blink”

6月4日(木)東京 duo MUSIC EXCHANGE
6月6日(土)仙台 CLUB JUNK BOX
6月17日(水)京都 磔磔
詳細はこちら

MY LIFE IS MY MESSAGE 2020|Brother&Sister

6月12日(金)山口洋(HEATWAVE)×矢井田瞳@横浜THUMBS UP(サムズアップ)※SOLD OUT
6月13日(土)山口洋(HEATWAVE)×おおはた雄一×仲井戸”CHABO”麗市@横浜THUMBS UP ※SOLD OUT
詳細はこちら

HEATWAVE OFFICIAL SHOP

vol.82
vol.83
vol.84