ソムリエ推薦! アニメ原作マンガ  vol. 5

Review

2020春クールアニメの原作マンガを読む! 作者や監督の関連作品にも手を伸ばしたくなる3作品

2020春クールアニメの原作マンガを読む! 作者や監督の関連作品にも手を伸ばしたくなる3作品

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響はアニメ業界にも。続きを楽しみにしていた作品の放送中止・延期は残念だが、そんな時こそ原作マンガや過去の関連作品に触れてみるのも良いかもしれない。
アニメ版をきっかけに、数珠つなぎに興味を広げたくなる3作品をご紹介!

文 / 兎来栄寿


爽やかで熱い野球少女たちの青春の汗

©マウンテンプクイチ/芳文社

『球詠』(著:マウンテンプクイチ)

本作は『まんがタイムきらら』系作品の特徴である主要キャラの大半が少女という世界観の中で、従来の王道スポ根野球マンガに真剣に取り組んでいる作品です。

入学したての高校でかつて子供の頃に「大人になっても一緒に野球しよう」と約束した幼馴染みと再会を果たし、暴力事件で活動休止になっていた野球部を再始動させるところから物語は始まります。魔球のような変化球を投げられるにも関わらず中学生の頃は周囲とのモチベーションの差で真剣に野球をやれたことのなかったヒロイン・詠深が、高校に入って一緒に頑張れる仲間と出会い、それぞれの想いを抱えながら同じ目標に向かって努力していく姿には胸が熱くなります。本作の最大の魅力は、何といっても勝利を目指してお互いに支え合いながらひたむきに努力する少女たちの尊さです。

アニメ版の監督を務めるのは、大人気野球マンガ『MAJOR』のアニメ版3〜6期でも監督を務めた福島利規。3話までは『きらら』系作品の序盤らしい、チームメンバーが集まるパートを中心に描きましたが、「アニメーションで野球を描く」プロによる熱い試合シーンにも期待したいところです。

また、アニメ版は音楽を担当しているのが主にゲームの制作を行っている、ビジュアルアーツであるということも特筆すべき点です。自作品でも野球ネタや野球回を盛り込んでいる大の野球好きであり、『AIR』や『リトルバスターズ!』で知られるシナリオライター・作曲家の麻枝准がOP・EDを手掛けています。劇中でもビジュアルアーツの手がけるゲームを彷彿とさせる独特のメロディのBGMが流れ、ファンとして嬉しくなりました。

なお、1話から「帰りにレイクタウンに行きたい」というセリフが喋られ、実際に3話では重要なシーンの背景として越谷レイクタウンが使われていたり、地方予選の試合会場として大宮公園野球場が登場したりと、舞台に地元に密着した描写もあるので埼玉県民の方には特に注目して欲しいです。

単行本では毎回カバーのイラストに細かすぎて伝わらない野球ネタが仕込まれていたり、登場キャラクターたちの選手名鑑が載っていたり、幕間やカバー下におまけマンガもあるのでアニメを観て更に深く『球詠』の世界に浸りたい方はぜひマンガの方もお手に取ってみてください。

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国民的ヒーローの「新世代」を描く

©円谷プロ ©清水栄一・下口智裕/ヒーローズ

『ULTRAMAN』(著:清水栄一・下口智裕)

神山健治・荒巻伸志コンビといえば4月23日よりNetflixで配信の始まったアニメ『攻殻機動隊 SAC_2045』が大きな話題ですが、昨年4月にNetflixで独占配信されていた『ULTRAMAN』もこの春から地上波での放映が始まりました。

本作は初代『ウルトラマン』の数十年後の後日談という設定で、かつてウルトラマンに変身して戦っていた早田 進の息子である早田進次郎が主人公として据えられています。普通の高校生男子として生活していた進次郎が、戸惑いながら自分もウルトラマンとして戦うことになるという内容となっています。

特撮の『ウルトラマン』シリーズを知っていれば随所でニヤリとできるのですが、まったく知らない人でも楽しめる新しいストーリーとなっているのが特徴のひとつです。テーマ的にもただの勧善懲悪のヒーロー物とは一線を画しており、異なる種族との共存や正義のあり方などについて考えさせられます。

原作マンガを手掛けるのは、『鉄のラインバレル』の清水栄一と下口智裕のタッグ。高い画力で描かれるスタイリッシュなキャラクターや戦闘シーンは秀逸です。派手さと格好よさは、フル3Dのアニメ版で更に進化を遂げています。かつてウルトラマンたちを苦しめた怪獣たちとの迫力溢れるバトルアクションの見応えは抜群です。特に序盤では3話のカラータイマーが鳴り始めるシーンの熱さにぜひとも注目してほしいです。

また、アニメ版ではヒロインである女子高生アイドル・佐山レナのライブシーンが作り込まれており、歌われる楽曲も書き下ろされていて、力を入れて作られているのが解る耳に残る曲でいい追加要素となっていました。全体的なキャラクターデザインも刷新されており、マンガ版で読んだ人も新鮮な気持ちで楽しめるでしょう。

アニメは13話で一旦の完結を見せていますが、原作は更にその後も熱い展開を見せているので、アニメで楽しんだ後はマンガで続きを追うのもいいでしょう。

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ドタバタコメディの裏に隠された純情な感情

©久米田康治/講談社

『かくしごと』(著:久米田康治)

『かってに改蔵』や『さよなら絶望先生』などで知られる久米田康治の最新作。溺愛している小学4年生の娘・姫に自分の仕事を気取られないよう必死に隠すマンガ家・後藤可久士の「隠し事」である「描く仕事」を描いた内容となっています。

基本的には過去作品と同様にさまざまなパロディや時事ネタ、あるあるネタも盛り込んだコメディの様相を呈しながらも、母親のいない父子家庭の悲喜交々を感じさせる描写が織り交ぜられます。

たとえ他社の作品であっても作中に固有名詞を沢山出してくるのは久米田作品の特徴ですが、アニメ版ではあまりに露骨なものは省略されていました(ただし「やりくりサーカス」や「漫画の実情と筋肉」といったパロディネタのサブタイトルは一部そのまま使われています)。

また、原作では毎話の終わりにつくマンガ雑誌の巻末コメントを模した可久士の一言が秀逸です。更に単行本では幕間に「描く仕事の本当のところを書く仕事」という制作秘話が記されており、作者である久米田の実体験がどれくらい物語に反映されているかが赤裸々に書かれていて非常に面白いです。

原作のマンガ版は次に発売する12巻で完結。これまでの刊行ペースを考えると、アニメと同時期に完結を迎えそうです。アニメは3話の段階で原作単行本1巻+αというペースで進んでおり、もし1クールで完結まで描くのであればカットされるエピソードも多いでしょう。純然たる久米田節を楽しみたい方、『かくしごと』の世界をじっくり堪能したい方は原作を読むこともお薦めします。

一方でアニメ3話の仕事場のデジタル環境化のシーンでは実際の作業現場で使われているとおぼしき資料用の城の3Dモデル画像が「協力:赤松 健」のクレジットの下で登場するなど、アニメならではの豪華な描写もあるので両方を見比べていくとより楽しめるでしょう。

他の代表作でも終盤の展開の巧さに定評があり、『かくしごと』でも序盤から伏線が積み重ねられてきました。完結直前の11巻には予想外の展開もあり、ラストへの盛り上がりを予感させられているのでどういった結末になるのか、非常に期待が高まります。

『かくしごと』試し読み・ご購入はこちら(講談社コミックプラス)
http://www.gmaga.co/comics/kakushigoto/

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