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生まれ変わった『ファイナルファンタジーVII リメイク』が問題作である理由

生まれ変わった『ファイナルファンタジーVII リメイク』が問題作である理由

2015年のE3で行われた制作発表から5年後の2020年4月、ついに発売された『ファイナルファンタジーVII リメイク』。伝説的超大作が蘇るとあって、熱烈なファンだけでなく、世界から注目を受けているリメイク作品です。オリジナル版のPlayStation®からPlayStation®4へとプラットフォームを変え、表現の幅は大幅に広がりましたが、いったいどのように仕上がっているのでしょう。この記事では気になるその全貌について、2回にわたり紹介していきます。まずはトレーラームービーで、生まれ変わったミッドガルを体験してみましょう!

※本稿ではゲーム内容に触れる点も多々あるので、全く情報を入れずにプレイしたい方はご注意ください。

文 / 内藤ハサミ


これは……ただのリメイク作品じゃない!

『ファイナルファンタジーVII リメイク』のことを語るまえに、少し昔話をします。
20世紀もあと3年で終わる1997年1月末。発売されるやいなや、大きな驚きを世のなかにもたらしたゲームがありました。それは、もはや説明不要の大人気RPGシリーズ最新作『ファイナルファンタジーVII』。当時高校3年生だった筆者に「ゲームの新時代がやってきた」という感覚を強烈に植え付けるに十分だった本作は、いったい何がセンセーショナルだったのでしょうか。そのひとつは、職人芸の極みともいえる美しい2Dグラフィックが主流の過去作品群から、ポリゴンで描かれたキャラクターをはじめ情報量の増した3DCGへと表現が変化したこと。当時、立体的に描かれたキャラクターたちが生き生きと動き回ることはとんでもない驚きだったのです。
もうひとつは、近代兵器や発達した科学文明が登場するなど、より現代に近い世界へとゲームの舞台も変化したこと。元々はあらゆる世界の文化や神話などを取り入れた世界設定を持つシリーズ作品ではありましたが、全体として感じられた“ヨーロッパ風のファンタジー”という印象が変わったことにも衝撃を受けました。前作の『ファイナルファンタジーVI』はスチームパンク的な世界が舞台で機械も多数登場しましたが、現代のテイストが強調されたのは初めてでした。
そして、スクウェア(旧社名)の関連会社であるデジキューブ提携のコンビニエンスストアでもソフトが買えるという、前例のない販売方法も大きな特徴。当時は流通のシステムなどをあまり理解していなかった筆者も、“コンビニでゲームが買える”ということに「ゲームは社会での市民権を得て、私たちの生活に根差してきたのだ」と強く認識させられたものです。どれも今では当たり前のことですが、当時は何もかもが新しく画期的でした。
このようにいくつもの驚きがあった『ファイナルファンタジーVII』は、シリーズで最も売れたタイトルとなりました。大剣を振り回す金髪碧眼の青年・クラウドをはじめ魅力的なキャラクターとドラマティックなストーリーは海外でも人気を博し、ライトなゲームユーザーや当時まだ生まれていなかった若者も名前と主要キャラくらいは知っているという、今や『ファイナルファンタジー』シリーズを代表するアイコンとなっています。

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▲ファンの人気も高い、花売りのエアリス。彼女の壮絶な運命については、当時のプレイヤーたちの間で盛んに意見が交わされました

とはいえ、筆者の発売直前までのテンションはそこまで高くありませんでした。なぜかというと本作は“複数作”で、今回発売されるのは“オープニングからミッドガルを脱出するまでのシナリオ”であるということが初めに知らされていたからです。オリジナル版の内容そのままであれば約5時間前後でプレイが終了する内容ですし、ほぼ序盤というところ。超絶美麗グラフィックでそれを表現したにしても短すぎると感じたのです。それに筆者はテレビドラマやアニメも次回放送まで1週間待つことに苦痛に感じるタチなので、まだ次回作の発売日も決まっていない複数作のひとつをプレイするのは怖かったという理由もあります。「できれば、全作発売されてから一気に遊びたいなぁ……」というのが、正直な思いでした。

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▲この情報満載の美しい画面をご覧ください……ロマンが溢れています

ですが、実際にプレイしてみると「今プレイして本当に良かった!」という気持ちしかありません。初めに説明すると、本作は“原作に忠実なリメイク作品”ではなく、原作では描かれなかった部分や新要素をこれでもかと詰め込んで、ミッドガル脱出までを大ボリュームに仕上げた作品です。さらに言えばそれだけではなく、ものすごく大きな“次回作につながる仕掛け”も仕込まれているのです。

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▲戦闘も歯ごたえ&爽快感たっぷり。バトルが面白いゲームはいいゲームです!

今作のあらすじについて簡単にさらっておきましょう。星から吸い上げた“魔晄”という生命エネルギーで、階層都市ミッドガルを牛耳る巨大企業“神羅カンパニー”。魔晄の浪費を止め星の命を守るため、反神羅組織“アバランチ”は魔晄炉を破壊するミッションを実行に移します。主人公は、そのアバランチに傭兵として雇われた元ソルジャーのクラウド。クラウドは爆破ミッションのあと、死んだはずの宿敵セフィロスの幻影を見ます。そして、魔晄炉爆破に街が混乱するなかで出会う花売りの女性エアリスは、クラウドに“再会”という花言葉の花を差し出すのです。すると、彼女とクラウドを黒い影“運命の番人”たちが取り囲み……おや、ここまでで既にオリジナル版とやや展開が違いますね。特に、運命の番人はオリジナル版にはまるで登場しませんでした。彼らはいったい何者なのでしょうか?

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▲私の知っていた話と違う……! これはかなり大きな変更なのでは?

そういった物語の流れに大きく影響を及ぼしそうな要素以外にも、以前はあまりフィーチャーされなかったアバランチの一員ジェシーの存在感が目立っていたり、クラウドは何でも屋としてスラムの住人からクエストを受けて稼いでいたり、変更や新要素もあらゆるところに盛り込まれています。たとえば……詳しくは次回の記事で触れますが、オリジナル版をプレイしたことがあれば忘れることのできないキャラクター、無法の歓楽街“ウォール・マーケット”を取り仕切る好色漢ドン・コルネオのクエストについても、「ここまでやるか!?」とプレイヤーの度肝を抜く演出がなされています。そのひとつひとつは決して時間稼ぎや水増しではなく、前作では描ききれなかったミッドガルの姿をプレイヤーに体験させるためのいい作用をしていると感じます。

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▲ウェッジと混んだ電車に乗っているというシュールな場面。さすがスラム行きの電車、大剣を持ったクラウドが乗っていても気にも留められない!? 徹底的にリアルさを追求した描写だからこその可笑しさがあります

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▲廃材を組み合わせた家屋のごちゃごちゃ感がステキなだけでなく、置かれているオブジェクトひとつひとつに意味を持たせていて説得力を感じます

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▲なんと、アバランチは活動資金を工面するために浄水フィルターを作って売っています。こんなところにも妙なリアリティがあるんです……

特にスラム地域の描写は素晴らしいのひと言です。23年まえにプレイしていたときは私たちの想像で補完していたスラムの細部が、想像を超えたクオリティで再現されています。細かいところを眺めつつひとつの地域を歩くだけでも数時間は楽しめてしまうくらい作り込みが緻密で、そこに暮らす人々の息遣いも伝わってくるのです。『ファイナルファンタジーVII』発売当時、ミッドガルに強く魅了されて「魔晄中毒になってもいいから、ここに住みたい」と熱望していたS君という友だちがいましたが、彼のような熱烈なファンにはもちろん、新規プレイヤーにも魅力を十二分にアピールしていることでしょう。

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▲「オリジナル版からいましたけど?」と言わんばかりの存在感を出してくる新キャラクター、ソルジャーのローチェ。既存のプレイヤーにも新鮮さと驚きを……若干与えすぎかなというくらいの勢いで、クラウドにグイグイ迫ります

スラムで生き生きと暮らす人間たちを丁寧に描いたことで、オリジナル版では感じにくかった恐怖が筆者のなかに生まれました。スラムの人々を含めたミッドガルの住人は、魔晄のエネルギーにかなり依存した生活をしています。アバランチが魔晄炉を破壊するということは、そこで一生懸命に暮らしている人々の生活を根こそぎ奪うことなのです。アバランチが行おうとしていることはどういうことなのか、こうして実感させられるとは……。丁寧な状況の描写でプレイヤーの心理に訴える手腕には舌を巻きました。本作にかける開発スタッフの気合いが伝わってきます。

臨場感に溢れて飽きさせないバトル

先ほど“バトルが面白いゲームはいいゲーム”と書きましたが、本作の戦闘システムはオリジナル版より面白くなったと個人的に感じています。エンカウント制のアクティブタイムバトル(ATB)から、フィールド上に見えている敵に近づくことでそのままシームレスに戦闘に突入するアクションバトルになりました。だいぶシステムが変わった戦闘ですが、溜めたATBゲージを使って魔法・アイテム他を使用するなど、前作のエッセンスも効果的に取り入れているのが心憎いところです。

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▲スピード感と派手な演出が実に爽快!

最初に選べる難度は3種類です。アクションは自動操作で行われコマンド選択に集中できるCLASSIC、易しめのEASY、標準的な難度となるNORMALから選択します。NORMALはやや難しめです。アクションバトルが好みでない場合はCLASSICを選択するといいですね。どの難度を選んでもストーリー進行をはじめ他に何も影響はありませんから、好みで決めていいと思います。何百、何千と繰り返すことになる戦闘ですから、自分に一番しっくりくるスタイルを選びたいですね。

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▲筆者はNORMALでプレイしました。特にボス戦は、考えなしに通常攻撃を連打しているだけだと勝てないくらい歯ごたえがあります

最初に出会うボス、“ガードスコーピオン”戦に手こずるプレイヤーは多いでしょう。このバトルで敵の弱点となる攻撃を当てて敵をバースト(ダウン)させ大ダメージを叩き込むという、効率のいい戦闘の組み立てかたを練習することになるのですが、筆者は初回のプレイでメタメタにやられ倒されてしまいました。……ゲーム中に表示される説明を適当に流し読みしただけで始めたからですね。しかし慣れてくると、毎回のバトルが新鮮な楽しみになるくらいハマります。クラウドだけではなく、そのときパーティにいるメンバーも操作できます。状況に合わせて操作キャラを切り替え、的確に立ち回れるようになる面白さをぜひ味わってほしいです。

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▲懐かしいバイクのゲームは今回も登場します。通常戦闘とはまた違ったスリルが楽しい

ひとつ残念に思ったのは、カメラの位置が近すぎたり微妙な位置に入り込んでしまったりする点で、周辺の状況が把握しにくい場面がたまにあることです。カメラが近いことで味わえる臨場感やダイナミックさが増すといういい点もあるのですが、とくに乱戦になっているときにはもう少し引いたカメラ位置だと嬉しかったですね。しかし、その部分を差し引いてもキャラクターにより近い感覚で楽しめる本作のバトルには魅力がいっぱいですから、オリジナル版の仕様が気に入っているプレイヤーも一度はNORMALモードでプレイしてみてほしいです。
23年まえに大ヒットした超有名RPG『ファイナルファンタジーVII』が、現代の美麗なグラフィックで蘇った……と昔を懐しみ、すでに知っているストーリーをなぞる感覚でプレイを始めたとしたら、きっと面食らうはずです。本作は“完全リメイク!”、“忠実再現!”という類の作品では決してありません。ネタバレを恐れずに言えば、ゲーム中で“オリジナル版とは別の展開”を匂わせるシーンが何回も出てくるのです。それに既存のシーンであっても描写がよりリアルになったことで、プレイヤーのイメージと違った印象に仕上がっているところもあるでしょう。そして次作以降のストーリー展開を予感させて終わることについては、きっと賛否が分かれることになると思います。オリジナル版のストーリー展開に忠実であることを求めていたり、お遊び要素やサブ要素の追加は不要と考えるプレイヤーもいるかもしれません。本作は、ソツなく万人に受け入れられるとは断言できません。しかし、オリジナル版に忠実なだけで終わらせずに新たな展開や新キャラクターを加えたりなど、あえて本作を保守的に仕上げなかったスタッフにはきっと確固たるヴィジョンと自信があるのだということがしっかり伝わる作品です。オリジナル版のリリースから20年以上経ち、技術力もより成熟した“今”の開発陣が並々ならぬ情熱をもって再構築し、ほかに前例のないリメイクとして生み出した本作は、プレイヤーの心をグッと掴んで忘れさせない超問題作であることは間違いありません。今、体験するべきです。

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▲薄暗い部屋でティファとふたり。ドキドキするでしょ、こんなの……

おまけ。上のスクリーンショットはティファの部屋で、ティファのオシャレ服について聞かれるシーンです。そんなのひとつに選べなくないですか? 令和始まって以来の難問で、体がねじ切れるほど悩みました……。ここでの選択は、のちの“あの”シーンに影響します。その結果がどうなったかは次回の記事で!

フォトギャラリー

■タイトル:ファイナルファンタジーVII リメイク
■発売元:スクウェア・エニックス
■対応ハード:PlayStation®4
■ジャンル:RPG
■対象年齢:15歳以上
■発売日:発売中(2020年4月10日)
■価格:パッケージ版・ダウンロード版 各8,980円+税


『ファイナルファンタジーVII リメイク』オフィシャルサイト

© 1997, 2020 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA/ROBERTO FERRARI
LOGO ILLUSTRATION: © 1997 YOSHITAKA AMANO
※画面は開発中のものを含みます。