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『コウノドリ』傑作選――山口まゆ・望月 歩の演技に脱帽&小栗 旬の新たな魅力が開花! 今だからこそ噛みしめたい命の尊さ

『コウノドリ』傑作選――山口まゆ・望月 歩の演技に脱帽&小栗 旬の新たな魅力が開花! 今だからこそ噛みしめたい命の尊さ

春ドラマの放送延期に伴い、傑作選が放送されるやいなや、SNSを中心に再び大きな反響呼んでいるドラマ『コウノドリ』(TBS)。本作は温厚でありながらも冷静な判断力を持つ産婦人科医の鴻鳥サクラ(綾野 剛)が主人公の医療ドラマで、悩みを抱える妊婦とその家族を中心に物語が展開されていく。産婦人科と聞くと、新しい命の誕生=幸せなテーマを扱っているように思えるが、本作では未受診妊婦や先天性の病気を持つ赤ちゃんなど、現代のリアルな出産事情について触れており、ドラマ内で描かれる医師たちの葛藤や母親の心情に涙する視聴者が続出。再放送にもかかわらずネットには「もう全話観ているのに、やっぱり泣いちゃう」「こんな時期だからこそ改めて命の尊さについて考えさせられた」「どの回も何回観ても泣ける」「自分の出産を思い出した」といった感動の声が寄せられた。

そんな今もなお高い人気を誇る『コウノドリ』の傑作選の放送を記念して、WHAT’s IN? tokyoでは編集部ピックアップのオススメの回を紹介。ドラマは『Paravi』などでも配信しているので、GW中のこの機会にぜひチェックしてほしい。

文 / 近藤加奈子


交通事故に遭った臨月の妊婦、その結末は――

まず『コウノドリ』を鑑賞するうえで欠かせない回となるのが第1シーズン(2015)の第2話『答えのない選択』。臨月を間近に控えた妊婦の永井晴美(川村ゆきえ)は交通事故に遭い、病院に搬送され一命を取り留めるも、脳の損傷によって意識が戻らなくなってしまう。駆けつけた夫の浩之(小栗 旬)は、サクラに「奥さんや赤ちゃんの容体はいつ急変するかわかりません。永井さん、その場合、奥さんと赤ちゃんどちらを優先しますか?」と聞かれるもその状況が受け入れられず、「俺に決めろっていうんですか?」「どっちも助けろよ!」と激怒。永井は晴美の回復を祈り続けるも、ある時容体が急変。パニックに陥る永井だったが、その時彼の脳裏に晴美とのかつての会話が頭を過り、彼女の望みを叶えるためにも赤ちゃんの命を優先することを決断。女の子が産まれてきた後に、奥さんは帰らぬ人となってしまうのだった。愛する人の命を取るか、その愛する人が望んでいる命を取るか――。この回では究極の決断を迫られた男の葛藤を描いているが、多くの女性視聴者も涙しただろう。あらためて出産というのは命懸けであり、生まれてくる赤ちゃんはいくつもの奇跡が結実した結果ということを思い知らされる回だ。しかし、永井があの時現実から目を背けることなく決断できたのは、それだけ彼が奥さんを深く愛していた証だろう。ドラマでは、その後の永井の様子も描かれていく。

星野 源演じる四宮春樹の辛い過去が明らかに

第1シーズンの第3話『2つの手がつなぐ奇跡』では、サクラとは対照的に無表情で冷徹な男に見える産婦人科医・四宮春樹(星野 源)の人間性がわかるのも面白い。5年前、四宮は喫煙者の妊婦を担当しており、何度もたばこをやめるように諭したが、彼女は言うことを聞いてくれなかった。しかし、妊娠32週目の時、その妊婦は喫煙が引き金でオペの最中に亡くなり、生まれてきた女児も重度の脳性麻痺を患い今も意識が戻らないでいる。このオペの後に四宮は、「どんなに嫌われてもやっぱり患者に優しくなんてするもんじゃないな」「こんなに苦しいなら嫌われていたほうがマシだった」と肩を震わせて泣き出し、後悔に苛まれるのだった。患者からもクレームが来るほど冷血漢に思える四宮だが、その背景には悲しい過去が存在していた。そして、四宮は今も目を覚まさないでベッドの上にいる女児に絵本を読み聞かせるため、5年間毎日小児科病棟に通い続けている。こんなふうに四宮の本当の人間性がわかると、彼に対する見方も変わってくる。たとえ妊婦から冷たい医者だと思われても、命を最優先することを考え、合理的な判断を貫く――。四宮に魅力を感じる人の多くは、単純に医者として優秀だからではなく、きっと彼の根底にある優しさを感じ取っているからだろう。たしかに笑い顔はめったに見せないが、それも四宮を形成する個性として面白く感じるし、むしろあの無表情さがだんだんと癖になってくるから不思議だ。

山口まゆと望月 歩の演技のふり幅に脱帽

先日傑作選としても放送され、反響を呼んだ第1シーズンの第5話『14歳の妊娠 少女が母になる時』。ある日、妊娠が発覚した14歳の吉沢玲奈(山口まゆ)は、産婦人科を受診。玲奈はすでに妊娠8か月だったが、エコーでお腹の子供を見ても「なんだかCGアニメみたい」と他人事のような態度。結局赤ちゃんは養子に出すことで話が進むが、その時ずっと黙っていた赤ちゃんの父親で元カレの元倉 亮(望月 歩)が、「俺嫌だ。まだ生まれてもないのに他人に渡す相談なんて」と口を割る。玲奈と亮は同じ年で互いに中学生だが、赤ちゃんについて初めて真剣に向き合った時、彼らに変化が表れ始める。玲奈は胎動を感じる度に優しい顔を見せ、自分のこと以上にお腹の子を心配しては、「養父母さんは可愛がってくれるよね? 血が繋がってなくても家族になれるよね?」とサクラに相談していた。そして、陣痛が始まり玲奈は叫び声を上げ全身の力を振り絞るように我が子を出産。その時、分娩室の外で赤ちゃんの産声を聞いた亮は、どうすることもできず無言で涙を流し崩れ落ちた。一方、亮が来ていると知らない玲奈は赤ちゃんを抱き、大量の涙と笑顔が同時にこぼれる。サクラが「じゃあ連れていくよ」と言っても首を横に振り、我が子を抱きしめる。そして、赤ちゃんが去った部屋で玲奈はひたすら泣き続けるのだった。この回で注目してほしいのは、何と言っても山口と望月の演技のふり幅だ。最初は出産の意味すらよくわかっていなかった中学生2人が、初めて妊娠と向き合い自覚を持つことで、だんだん母親・父親の顔に変化していく。当時山口は14歳、望月は15歳でこの役を演じたが、その表現力は何度観ても驚かされる。リアルな14歳の母と父を演じ、たくさんの視聴者の心を動かした若い2人の役者にはこれからも大いに期待できそうだ。

父親役として小栗 旬の新たな魅力が開花

続けて紹介するのは、第1シーズンの第6話『タイムリミット 最後のチャンス』。竹下敦子(森口瑤子)は43歳の妊婦。不妊外来を受診し、これまで着床してから3回の流産を経験。今度こそ我が子を産みたいと願っていた。予定日より早めではあったが、無事女児を出産した敦子。しかし、母体の出血が止まらず、子宮摘出手術に切り替えて何とか一命を取り留めた。また、第2話でシングルファザーとなった永井もこの回に再登場。娘の発熱で病院にやって来た永井は、我が子の誕生と妻の死から半年経過し、仕事と慣れない育児でてんてこ舞いになっていた。そんな永井を演じた小栗が本作で魅せる表情はとても柔らかく、穏やかで、1つ1つのシーンに父親としての説得力を感じることができた。これまでに数々の作品に出演してきた小栗だが、この回では彼の新たな魅力が開花されていたのも印象深い。

まるで本物の親子のようなナチュラルな雰囲気に感動もひとしお

そして、最終話では葛藤の末、シングルファザーとして生きる決断をした永井の様子が描かれている。この回も先日傑作選として放送され再び大きな注目を集めた。第1シーズンの第10話『母と子を救う チームが起こす奇跡』では、仕事と子育ての両立が上手くいかず、娘を田舎の母に預けようかと考え始めていた永井。娘の芽依はもうすぐ1歳の誕生日を迎えようとしていたが、「この先ずっと芽依は自分の誕生日を母親の命日に迎えるんです。そのワケをいつか話さなきゃいけないと思うと気が重くて」とサクラにこぼし、苦しそうな顔を見せた。しかし、サクラが自分も母親の命と引き換えに生まれて来たと明かすと、永井は表情を変える。その後、自分なりに考えた結果、永井はこの先も娘を自分で育てると決断。娘を抱き上げ微笑む永井は、頼もしい父親の風格を漂わせていた。そして、まだ言葉は話せなくても芽依の嬉しそうな表情も実に愛おしい。この話がフィクションであるとは承知しながらも、思わず永井父娘の幸せを願わずにはいられなかった。


今回は第1シーズンを中心に紹介したが、ドラマ『コウノドリ』は第2シーズン(2017)を含む、全21話涙なしでは観られない神回ばかり。鑑賞後はきっと「生まれてきてくれてありがとう」「産んでくれてありがとう」と、そんな気持ちが芽生えてくるだろう。そして、今このような時だからこそ、生きることの素晴らしさ、命の尊さを噛みしめてほしい。

ドラマ『コウノドリ』主な配信先

第1シーズン
Amazon Prime Video
Paravi
Hulu
U-NEXT

第2シーズン
Amazon Prime Video
Paravi
Hulu
U-NEXT

※配信情報は4月30日(木)現在

ドラマ『コウノドリ』

原作:鈴ノ木ユウ『コウノドリ』(講談社)※『モーニング』連載中
出演:綾野 剛 松岡茉優 吉田 羊 坂口健太郎 星野 源 大森南朋 ほか
製作著作:TBS
プロデューサー:那須田 淳 峠田 浩
企画:鈴木早苗
演出:土井裕泰 金子文紀 山本剛義 韓 哲 加藤尚樹

©TBS

原作本『コウノドリ』