放送終了でも今から観たい!イッキ見推奨アニメレビュー  vol. 12

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これで面白くならないはずがない…!! チートコンビが繰り広げる“恋愛×伝奇×ミステリ”全部乗せアニメ、『虚構推理』総括レビュー

これで面白くならないはずがない…!! チートコンビが繰り広げる“恋愛×伝奇×ミステリ”全部乗せアニメ、『虚構推理』総括レビュー

アニメファンの間で定番の挨拶になっている「今クール、なに観てますか?」。確かにこれは気になるところだ。しかし、観るべきアニメは最新作だけではない。うっかり見逃してしまった準新作にだって、自分にフィットする作品があるかもしれない(今ならラストまでイッキ見できるのも良いところ)。そこでここでは、すでにオンエアを終えたTVアニメの中から、ライターお薦めの佳作アニメをピックアップ。今回は2020年冬クールに放送された『虚構推理』を紹介する。

文 / 山下達也(ジアスワークス)


約180年の「ミステリ」史の中でも、凄まじく“変化球”で“最先端”

皆さんは『虚構推理』というタイトルを聞いて、どんな内容を思い浮かべるだろうか? 「推理」と入っているのだからミステリに決まっている? その理解は3分の1正しい。確かに本作は探偵役・岩永琴子と助手役・桜川九郎を主人公にしたミステリものだ。しかしそれだけではない。『虚構推理』は「ミステリ」に加え、ここ10年ほどで急激に新規ファンを増やしている「伝奇」、そして永遠の定番ジャンルである「恋愛」という3要素を高レベルにミックスしたハイブリッドアニメなのである(公式曰く「恋愛×伝奇×ミステリ」)。しかも本作は単なる“全部盛り”ではない。これまでのあらゆるミステリ作品で見たことも聞いたこともないような驚くべきヒネりが加えられているのだ。

それがタイトルにもなっている「虚構」。

本作において探偵役・岩永琴子(CV:鬼頭明里)が披露する「推理」は、犯人の意図を暴き、事件に隠された真相をつまびらかにするものではない。事件を知る誰もが納得する「虚構」を騙り、真相から目をそらすことこそが彼女の目的。事件・陰謀ものの定番のオチとして、「真相はこうだったが、世間に向けては“それらしい嘘”を発表、かくして真相は闇に葬られた」……というものがあるが、それを主人公自らが率先して行うというのだから驚かされるし、新しい。

ではなぜ、そんなことをしなければならないのか? それは琴子が「怪異たちの知恵の神」だから。本作で語られる事件には多かれ少なかれ怪異(妖怪)が関わっているため、真相を明らかにするということは怪異の存在を世に知らしめることになってしまう。それは怪異の望むところではないし、第一、そんなことを信じる人間はいない。しかし、事件には人間が納得する決着をつけねばならない。だから琴子は怪異の世界を守り、人間の社会を納得させるため、虚構の推理を展開するのだ。

また、「伝奇」の要素にもヒネりがきいている。

まず、ヒロインの岩永琴子の設定が刺激的だ。先ほど彼女を「怪異たちの知恵の神」と紹介したが、彼女自身は普通の女子大生(初登場時は女子高生)であり、怪異そのものではない。しかし彼女は11歳の時に怪異に誘拐され、そこで彼らの「知恵の神」になる契約を交わしたという過去をもつ。この世界の怪異はおおむね知能が低いため、自分たちに知恵と力を貸して(主に人間社会との)トラブルを解決してくれる存在を探していたのだ。その対価として、彼女は怪異を自由に使役できるのだが、怪異の神として相応しい「一眼一足」の姿となることを求められ、左脚を切断され、右目をくり抜かれてしまうことにもなった。

助手役である桜川九郎(CV:宮野真守)はもっとすさまじい。彼は琴子とは異なり、存在として限りなく怪異に近く、その肉体は不死で、さらに強力な予知能力(後述)も備えている。彼がそうなってしまったのは、幼い頃、食したものに永遠の命を与えるという人魚の肉と、未来を的確に言い当てる予言獣・くだんの肉を食べさせられたから。

くだんは生まれると同時に未来を予言し、そしてすぐに死んでしまう妖怪なのだが、九郎の一族は、この能力を不死の力と組み合わせることで自由に使いこなせるようにしようと考えた。九郎は多くの犠牲者を積み上げた上に生まれた、この生体実験の成功例。くだんのように一度死ぬことで(人魚の力ですぐに甦る)、起こりうる未来の中から、自分の望む未来をつかみ取る「未来決定」という強力な特殊能力を持っている。

ここまで書くと、そんなチートコンビなら推理なんてまどろっこしいことをする必要がないことに気がつくだろう。その通り、実際、琴子はほとんど推理らしい推理をしない。配下の怪異を駆使して最速で事件の真相を把握し(事故現場にいる地縛霊を呼び出して犯人を聞き出すなど、かの「ノックスの十戒」もぶっ飛ぶズルである)、不死者にして預言者の九郎の力も借りて事件の原因となった怪異を排除し、事件を「誰もが納得する合理的な虚構」による解決に導いていくのだ。

アニメでは長編1本分+短編1本分の「虚構推理」が描かれるのだが、そのどちらも従来のミステリ作品にはなかった面白さがある。世界初の推理小説とされるエドガー・アラン・ポー作『モルグ街の殺人』以降、「ミステリ」という表現は約180年の時を経て拡大・拡張してきたが、本作はその最先端の1つだと断言できる(凄まじい変化球ではあるが)。

琴子×九郎が繰り広げる恋愛(ラブコメ)要素の上質さ

そして、その上で「恋愛」である。

義眼義足のヒロイン・琴子や、不死でありながら死から逃れられない九郎の存在はいかにもダークで陰鬱な空気を感じさせるが、実は本作、「ラブコメ」としてもかなり上質な作品に仕上がっている。

琴子は15歳の時に病院で出会った九郎に一目惚れし、以降、ストーカーのように彼をつけ回し、後にいつの間にかつき合うことになっているのだが(どうしてそんなことになったのかは本作最大の謎の1つ)、どうも九郎の側がその状況を全面的には受け入れていないらしく、琴子のストレート(でやや行き過ぎな)愛情表現をとことん拒絶しているのだ。一緒に撮ったツーショット写真が全て仏頂面だったり(琴子曰く「先輩は照れ屋」)、怪異からの深夜の呼び出しに同行することを「昨日作った豚汁をゆっくり食べたいから一人で行ってくれ」とすげなく断ったり……肉食系?の琴子と草食系?の九郎のディスコミュニケーションがとにかく微笑ましい。

ちょっと琴子がかわいそうにも思えるのだが、琴子は琴子で、近年のアニメヒロインとしてトップレベルに下品だったりするから同情しきれない(知恵の神なのに……)。怪異に突き飛ばされた痛みを無駄に生々しく「破瓜(はか)の痛み」と例えたり、九郎に向かって「混浴! 混浴! 同衾! 同衾!」と(想像上の発言ではあるが)叫んだり、とにかくヒロイン的NGワードを連発するのだ(そんなセリフを若手女性声優人気No.1の呼び声も高い鬼頭明里さんに言わせるのだから素晴ら……罪深い)。

しかも作中では九郎の元カノや、初恋の女性も登場。露骨にライバル心をむき出しにする琴子の暴走っぷり、外道っぷりは目を覆うほど。この琴子の恋心が、九郎に受け入れられる日は来るのか……。“ラブ”要素がだいぶ薄く、かなり“コメ”寄りなのだが(公式はよくもこれを「恋愛」と言い切ったものだ)、その軽さ、明るさが、ミステリ・怪異要素との良い対比になっているように感じる。

なお、コメディ的な要素としてはその他、「ちょっとオツムのたりない」怪異たちのかわいらしさや、ストーリーの中核をなす「鋼人七瀬」編に登場する人気アイドル・七瀬かりん(CV:上坂すみれ)の出演する作中ドラマのテーマソングPV『青春! 火吹き娘!』の過剰な作り込みなども必見だ。

ミステリ、伝奇、恋愛(ラブコメ)の3要素それぞれにこれまでにないヒネりを加え、それを見事に融合させた『虚構推理』。人気ジャンルの盛り合わせ、これがつまらないはずがない。この3要素のうち、どれか1つでも興味のある方にはぜひともご覧になっていただきたい。

さらに、『虚構推理』はここからもっと面白くなる!

さて、そんな『虚構推理』だが、近年の多くのアニメがそうであるよう、本作も原作付きの作品だ。原作小説『虚構推理 鋼人七瀬』(2011年刊行)を執筆したのは、マンガ原作者としても活躍する推理作家・城平 京。城平の作品は過去にも漫画原作を担当した『スパイラル -推理の絆-』(2002年)、『絶園のテンペスト』(2012年)がTVアニメ化されており、本作は彼にとって3作目のアニメ化作品ということになる(小説作品のアニメ化という意味では初)。

ここで少し面白いのが、アニメ化において本作のコミカライズ版(画:片瀬茶柴)が大きな影響を及ぼしていること。コミカライズ版『虚構推理』は片瀬の作家性を活かす形で、原作よりもややコミカルでさわやかな描写になっているのだが(ただし物語の展開は原作にかなり忠実)、これがうまくマッチし、作品の持つ魅力を大きく盛り上げているのだ。結果、掲載誌でトップレベルの人気を誇るまでになり、『虚構推理 鋼人七瀬』の続きを漫画原作者でもある城平が書き下ろす形で連載を継続することに(現在も『月刊少年マガジン』および『少年マガジンR』にてダブル連載中。原作も小説シリーズとして講談社タイガから刊行中)。TVアニメ化決定にはこのコミカライズ版の大成功が貢献しているのは疑う余地もない。内容的にもこのコミカライズ版がベースとなって構成されている。

なお、城平が書き下ろす形で生み出している後続エピソードはどれも「鋼人七瀬」編と比べてコンパクト。琴子と九郎のコンビが次々と新しい事件に巻き込まれていき、そこで新たな一面を見せてくれるのが楽しい。「鋼人七瀬」編のじっくり読ませるストーリーも悪くないが、個人的にはこちらの方が好みだ。

TVアニメ版では、こうしたシリーズ感を感じさせるため、「鋼人七瀬」編の前に短編エピソード「ヌシの大蛇は聞いていた」編を挿入。きちんと整合性のあるかたちで上手に組み込まれており、物語構成の妙を感じることができる。アニメのシリーズ構成に興味のある方は、原作と照らし合わせるかたちで物語がどのように改編されたのかを確認してみると勉強になるのではないだろうか。

個人的に心残りなのは、「鋼人七瀬」編以降の後続エピソードの多くが未アニメ化で終わってしまったこと。「鋼人七瀬」編のボリュームが大きかったため仕方ないのだが(12話中ほぼ10話が「鋼人七瀬」編)、原作(コミカライズ版)『虚構推理』はその後、どんどん面白くなっていくのだ。個人的にはいつかアニメ第2シーズンとして続きが映像化されることにも期待したい。そのためにも、ぜひ皆さん、本作を今からでも遅くないので観てほしい!

TVアニメ 『虚構推理』

dアニメストア、GYAO! ほかにて配信中

【キャスト】
岩永琴子:鬼頭明里
桜川九郎:宮野真守
弓原紗季:福園美里
七瀬かりん:上坂すみれ
寺田刑事:浜田賢二
桜川六花:佐古真弓
ほか

【スタッフ】
原作:城平 京(講談社タイガ刊)
漫画:片瀬茶柴(講談社『月刊少年マガジン』、『少年マガジンR』連載)
監督:後藤圭二
シリーズ構成:高木 登
キャラクターデザイン・総作画監督:本多孝敏
アニメーション制作:ブレインズ・ベース
制作:NAS

『虚構推理』Blu-ray&DVD

■第1巻(第1~3話収録)

発売中
品番:<Blu-ray>KIZX-399~400/<DVD>KIZB-292~3
価格:¥6,800+税

■第2巻(第4~6話収録)

発売中
品番:<Blu-ray>KIZX-401~402/<DVD>KIZB-294~5
価格:¥6,800+税

■第3巻(第7~9話収録)

2020年5月27日発売
品番:<Blu-ray>KIZX-403~404/<DVD>KIZB-296~7
価格:¥6,800+税

■第4巻(第10~12話収録)

2020年6月24日発売
品番:<Blu-ray>KIZX-405?406/<DVD>KIZB-298?9
価格:¥6,800+税

©城平京・片瀬茶柴・講談社/虚構推理製作委員会

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