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おうちにいながら旅する気分が味わえるマンガ! 海外編+国内編6作品をご紹介

おうちにいながら旅する気分が味わえるマンガ! 海外編+国内編6作品をご紹介

今年のゴールデンウィーク、楽しみにしていた旅行の予定がキャンセルになってしまった人は多いだろう。残念だけれど、こんな時こそ自宅にいながらにして日本中を、世界中を旅した気分になれるマンガがある! 主人公たちと一緒に旅を楽しみつつ、いつか旅するときのためのエネルギーを蓄えておこう。

文 / 兎来栄寿


『MASTERキートン』(浦沢直樹 ストーリー/勝鹿北星・長崎尚志)

©1989 浦沢直樹/スタジオナッツ・勝鹿北星・長崎尚志

非常に有名なマンガ史に残る大傑作ですが、少し古い作品なので読んでいない方にはぜひこの機会に読んで欲しいという願いをこめて紹介します。

主人公の平賀=キートン・太一は考古学者であり大学教授を目指す保険調査員(探偵)で、元英国特殊空挺部隊の教官という異色の経歴の持ち主。広範な知識と武力を兼ね揃えながらも、優しく少し抜けているところもあるキートンのキャラクターが非常に魅力的です。

本作の連載が開始したのは1988年で、ちょうど冷戦が終わる頃ですが、世界情勢を踏まえて民族間の複雑な歴史や戦争などにも深く踏み込んでいく内容となっています。重いテーマを複数扱い、苦いストーリーも展開されますが全体的に温かみと未来への希望を感じられるのが本作の美点です。

作中ではヨーロッパを中心にさまざまな国のさまざまな地方が舞台として登場し、文化や歴史なども紹介されて学びを得られます。ドイツに行ったらグラーシュのクネーデル添えを食べ、ルーマニアに行ったらツイカを飲みたいと本作を読んで思わされました。キートンの恩師であるユーリー先生の言葉、「人間は学びたいという心さえあれば、どんな所どんな時でも学べる」など含蓄のあるセリフやエピソードもたっぷり詰まっており、読むと確実に人生のプラスになります。人生という長い旅の「達人(MASTER)」になりたいと思える作品です。

また2012年に復活した正統続編の『MASTERキートン Reマスター』(浦沢直樹 ストーリー/長崎尚志)もぜひ。

『MASTERキートン 完全版』ご購入はこちら(小学館コミック)
https://comics.shogakukan.co.jp/book-series?cd=27944

『紛争でしたら八田まで』(田 素弘)

©田素弘/講談社

最近連載が始まり1巻が発売したばかりですが、一押しの作品です。歴史、宗教、政治、経済、軍事etc…ありとあらゆる情報と腕力を活用して世界中を巡り事件を解決へと導く「地政学コンサルタント」の若い女性・八田が八面六臂の活躍を見せる物語となっています。

主人公が各国を転々としながら武力行使も含めた手段を用いてさまざまな事件を解決へと導いていく様子、そしてその中に詰めこまれている数多くの雑学、「Troubles」と呼ばれる北アイルランド問題を始めとした歴史的・民族的な問題に踏み込んでいく内容は『MASTERキートン』に通じるところがあります。2020年現在の世界情勢をベースに描かれており、日本人にはあまり馴染みのない問題にも触れられているので楽しく読みながら学ぶこともできます。

強い女性が武装した男たちに侮蔑されながらも、頭と体を使ってやり込めていく姿はとても痛快です。2020年現在の最新の世界情勢を踏まえて描かれているため、読んでいて勉強になります。

マーマイトを食べハーフパイントのエールを飲むシーンから始まる第1話に象徴されるように、異国の文化が随所に登場し、実際に飲み食いしたり足を運んだりしてみたくなります。イギリスから始まり、ミャンマー、タンザニア、ウクライナなど世界を股にかける八田から今後も目が離せません。

『紛争でしたら八田まで』試し読み・ご購入はこちら(講談社コミックプラス)
https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000338642

『女一匹シルクロードの旅』(織田博子)

©織田博子/イースト・プレス

ユーラシア大陸の東から西までの女性一人旅の様子を描いたエッセイマンガです。カザフスタンやウズベキスタンといった中央アジア諸国を描いたマンガは珍しいですし、どういった国でどういった人々がどのような生活をしているのかイメージがつきにくい方も多いかもしれませんが、本作を読むと知識が刷新されます。

かわいらしい絵でフルカラーで描かれているのが特徴で、とりわけ各国の美味しいものや入浴施設の様子、美しい伝統工芸品や建造物などがビビッドに紹介されています。作者がとても感動したという世界遺産であるサマルカンドの景色は特に力が入っており、実物を見に行きたくなります。ウルムチで出会った屈強な男性から警官すら不法行為を行ってくるカザフスタンに女性一人で行くことの危険性を説かれ、宿の主に迎えを頼んだら「強くありなさい」というメッセージが返ってきたというエピソードには世界の広さを感じました。

片言の英語しか解らない筆者が旅先で出逢う人々と不思議と何時間も楽しくお喋りできてしまう様子を読んでいると、語学力に自信がないことで海外に行くのを躊躇している人もこんな風に楽しめるんだと勇気づけられることでしょう。他にも『女一匹シベリア鉄道の旅』などシリーズで数冊発刊されているので、併せて読んでみてください。

『女一匹シルクロードの旅』試し読み・ご購入はこちら(MATOGROSSO)
http://matogrosso.jp/silkroad-tabi/01.html

『ざつ旅-That’s Journey-』(石坂ケンタ)

©石坂ケンタ/KADOKAWA

新人漫画家・鈴ヶ森ちかが行き詰まりを感じてSNSで行き先のアンケートを使って旅に出たところ旅の魅力に目覚めてしまい、定期的にさまざまな場所へ旅に出かけるようになるお話です。

面白いのは、架空の漫画家である鈴ヶ森ちかのTwitterアカウント(@suzugamori2)が現実に存在しており、日々雑多な呟きをしているところです。そこで行われたアンケートによって実際に次の旅の行き先が決められ、マンガの内容とリンクしていくのが新鮮な試みです。マンガ単体でも楽しめますが、鈴ヶ森ちかアカウントをフォローしておくと一粒で二度美味しい作品となっています。

行き先も近場から始まって、徐々に日本全国へと行動範囲が広まっていく感覚が楽しいです。また、この作品の大きな魅力として背景がとても緻密に描かれているという部分が挙げられます。この作品を基に「聖地巡礼」をすると、細部まで作品世界と一致する感覚を味わえて楽しめるでしょう。

ご当地グルメや名所の魅力はもちろんのこと、話が進むにつれて旅を通して揺れ動く心の描写も深みを増していき、百合好きの方にお薦めできる内容にもなっていきます。心のデトックス効果がある旅マンガです。

『ざつ旅-That’s Journey-』試し読み・ご購入はこちら(ComicWalker)
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_AM01200853010000_68/

『新・駅弁ひとり旅 〜撮り鉄・菜々編〜』(監修/櫻井 寛 作画/はやせ 淳)

©櫻井寛・はやせ淳/双葉社

2005年~2011年にかけて「漫画アクション」で連載されていた、日本全国を巡りながら鉄道と駅弁を紹介する『駅弁ひとり旅』シリーズ。本編の完結後、「がんばっぺ東北編」「ザ・ワールド 台湾+沖縄編」といった番外編を経てシリーズ最新作となるのが本作。関門トンネルを歩いて横断するエピソードなど少しだけ九州から外れたところも登場しますが、基本的に九州の鉄道と駅弁をメインに掘り下げて描く内容となっています。鉄道や駅弁、各地の名所や風景が非常にディティール細かく描かれており臨場感抜群なのは、シリーズを通して変わらない魅力です。

美しい景色や美味しい食べ物を綺麗に撮るために良いカメラを使いながらもフォーカスの仕方もよくわかっていない、若い女性の菜々が本作の主人公。そのため、鉄道や撮影に特に詳しくなくとも色々な知識に触れながら楽しめる作りになっています。お酒好きの菜々が、美味しい駅弁に合ったお酒を抜かりなく用意するところなどには共感します。2015年から運行を開始した、高級ホテルのような内装で地元ワイナリーのワインから始まる豪華な料理が提供される「或る列車」には、実際に乗ってみたくなりました。

九州に行く際に読んでおくと楽しみを増やすことができるであろう作品です。

『新・駅弁ひとり旅』シリーズ 試し読み・ご購入はこちら(双葉社)
https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/smp_bookfind.html?type=a&word=%E3%81%AF%E3%82%84%E3%81%9B%E6%B7%B3

『まんが家女子、旅に出る。』(COMICポラリス編集部 編)

©フレックスコミックス

釧路、函館、白石、浦和、奥多摩、京都、神戸、広島、福岡、屋久島、九份、北投、台北、バンクーバー、ホワイトホースと、国内では北は北海道から南は大隅諸島まで、海外では台湾とカナダ。15人の漫画家による15通りの紀行エッセイマンガが楽しめる濃密な一冊です。

オーロラを見に行く旅からサッカー観戦、近場の蚤の市に出掛ける話まで非常にバラエティ豊かで飽きさせません。京都は京都でも日本最大級の温室がある京都府立植物園に行く話や、宮城蔵王キツネ村のキツネや北海道のシカの叙情的な描き方などマンガ家ならではの着眼点を感じさせられるところも多々あり面白いです。

また、旅につきものなのが「失敗」。空港への到着が10分遅れてしまったことで5万円余計に払わねばならなくなったり、土足文化の海外にはスリッパも持参した方が良かったりといった失敗談を読むことで、自分が旅に出る時には教訓とすることができるでしょう。

旅はそれ自体が特別なものでありながら、ありふれた日常こそ特別なものだと気付かせてくれるものなのかもしれない……という話が一冊の最後にあるのがとてもいい構成で、すっきりとした気分で本を閉じることができます。

『まんが家女子、旅に出る。』試し読み・ご購入はこちら(COMICポラリス)
https://comic-polaris.jp/tabipolaris/