Interview

ラスボスと見せかけて、実は…!? 宮野真守、シリーズ初参戦『PSYCHO-PASS サイコパス 3』予想外の結末に秘めた思い

ラスボスと見せかけて、実は…!? 宮野真守、シリーズ初参戦『PSYCHO-PASS サイコパス 3』予想外の結末に秘めた思い

人間の心理状態を数値化し管理する「シビュラシステム」が導入された近未来の日本を舞台に、公安局刑事課の刑事たちが追う事件を通して、人々の心の在りかや葛藤を描く人気アニメシリーズ『PSYCHO-PASS サイコパス』。そのTVアニメ三期の結末が描かれる『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』、本作は2020年3月より劇場公開、Amazon Prime Videoにて編集版が日本・海外独占配信中、さらに、7月15日にはBlu-ray&DVDの発売が決定している。

『PSYCHO-PASS サイコパス 3』では、慎導灼(しんどうあらた)、炯(けい)・ミハイル・イグナトフという新たな主人公たちが登場。謎の機関「ビフロスト」のコングレスマンや、彼らが操るインスペクターたちも加わり、シリーズ屈指の壮大な物語を展開してきた。

この中でも、ビフロストにおいてひときわ存在感のある人物であり、『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』のキーマンでもある法斑静火(ほむらしずか)を演じているのが、押しも押されもせぬ人気声優の宮野真守。今回は彼に、『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズを通じた魅力とともに、法斑静火としての演技のこだわりを聞いた。

取材・文 / 杉山 仁


注:こちらのインタビューには、『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』の結末などにまつわるネタバレを一部含みます。作品をまだ観ていない方は注意のうえご覧ください。

静火が「まぎれもないメインキャラクターのひとり」だったということが明かされてよかった

法斑静火についてお聞きする前に、まずは宮野さんが『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズ自体にどんな魅力を感じているかを教えてください。

宮野真守 まずは、近未来を舞台にした設定と、その中で繰り広げられる硬派な刑事ドラマが魅力的だと思います。だからこそ、TVシリーズ三期では、通常のTVアニメの30分枠ではなく、1時間の枠でもじっくり見せられる強みがあったと思いますし、僕が収録のたびに、自分が演じる静火について(塩谷直義)監督にお話をうかがっていても、いまだに作品では語られていない伏線や膨大な設定が、まだまだ大量に用意されていて、「ああ、監督の設定力があるからこそ、物語が魅力的になるんだな」と感じました。

新作の『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』(以下、『FIRST INSPECTOR』)でも、本当に膨大な伏線が張り巡らされていますが、それは監督の作品への愛情やこだわりゆえだと思いますし、強い自信でもあると思うので、それが垣間見られるのが、すごく面白い作品だと思っています。

『PSYCHO-PASS サイコパス 3』からは、「シビュラシステム」に加えて「ビフロスト」という新たな機関が登場し、入国者の存在もテーマになるなど、作品の世界観がさらに広がっているようにも感じました。

宮野 それに、主人公2人の在り方や、彼らの能力についても、今までの『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズとは違う描かれ方をしているので、シリーズの中でも、また新たな見せ方の作品になっていて。そのあたりが、新しくも深みがある、すごく絶妙に折り重なっている作品だと思います。

そのうえで、『PSYCHO-PASS サイコパス 3』の最後は、続きを示唆するような終わり方でした。なので、静火を演じる僕としては、「これからじゃないか」とも思っていたんです。今回の『FIRST INSPECTOR』を観ていただければ、静火がまぎれもないメインキャラクターのひとりだったということが、みなさんにも伝わると思うので、「ちゃんと明かされてよかった」と思っているところです。

法斑静火

今回、静火の役作りについては、どんなふうに進めていったんですか?

宮野 とにかく、監督に静火のことを聞きまくりました。というのも、静火はとても謎めいた、ミステリアスなキャラクターなので、彼が「これまでどういうことをしてきたか」「どういう目的で動いているのか」「そして、なぜ今ここにいるのか」を知らないと、演じることはできないと思ったんです。最初のうちは、静火の生い立ちを中心に監督に話を聞いて、彼がどんな気持ちでビフロストのゲームをやっているのか、ということを理解していきました。今回迷いなく演じられたのは、それが大きかったと思います。

なるほど。ミステリアスなキャラクターだからこそ、その生い立ちや内面を理解することからはじめていったのですね。

宮野 彼には彼なりの大きな正義感やポリシーがあって、その信念に基づいて行動しています。と同時に、彼は自分の中で感情が揺れ動く瞬間があっても、目的も含めて、決してそれを表に出さない人物でもあって。そんなふうに色んなことを考えながらゲームを進めている、自分の目的を進めている人物なので、「そこはブレないようにしたい」と思いながら演じました。

確かに、TVシリーズでは、静火が何を考えているのかは分からないけれども、「何かを秘めているんだろうな」とは感じられるような、宮野さんの繊細な演技が印象的でした。

宮野 静火は、人には見せないけれども、彼の中ではとても明確な目的にもとづいて動いているところが面白い人物なんです。なので、ある意味、静火自身が「ものすごく芝居が上手い人だな」という印象で(笑)。ポーカーフェイスも含めて、「食えないヤツだな」と思います。彼の目的がしっかりしていることには、実は生い立ちも関係しているので、彼自身はきっと苦労して生きてきたと思うんですよ。でも、静火の芯の強さはそこに表われていて、「人間くさくはないけれど、人間らしい部分はもっている」という雰囲気の人物だと思っています。

すべてのシーンを、「彼にとっては他愛もないこと」のように演じようと思っていました

『PSYCHO-PASS サイコパス 3』の段階では、公安局一係のメンバーと比べると登場シーン自体は多くはなかったものの、一方でとても存在感のあるキャラクターであることも印象的でした。

宮野 いわゆる「ラスボス感」ですよね。でも実は全然ラスボスではなく、完全にメインキャラクターだったという(笑)。TVシリーズの時点では「宮野は一体何者なんだ!?」とみなさんが思っていたはずですし、実際にそういった声も色々といただいていました。

その「ラスボス感」「黒幕感」のようなものは、もしかしたら、宮野さんがTVシリーズの時点で意識的に演じていたことだったりもするのでしょうか?

宮野 その時点では、僕も物語の結末は知りませんでしたし、ラスボス感を意識していたわけではありません。もしかしたら、彼自身に、ポーカーフェイスでいようとしながらも、どこかヒリヒリした雰囲気があるからこそ、そう見えたのかもしれないですね。彼はヘマをしないように状況を進めて、自分の目的を達成するためにすごく集中しています。そして、感情を見せずにさらっと受け答えしているように見えても、その実、心の中では虎視眈々と目的の達成を狙っています。そういう気持ちをちゃんと秘めながら演じようと思っていたので、みなさんからすると「静火は何か秘めている」というふうに見えたのかもしれません。

「選択を間違えてはいけない」という緊張感が、その魅力につながったかもしれない、と。

宮野 もちろん、彼は自分が負けるとは思っていないんですけどね。そこも面白いところで、静火はもし負けたとしても、それは「自分の力が足りなかっただけだ」と考える人間で、その死もいとわない姿が、よりミステリアスに見えたんじゃないかと思います。

ただ、『FIRST INSPECTOR』を終えてもなお、静火にとっては、まだまだ重要なシーンはなかったんじゃないかと思えるほど、彼は色々なことを抱えているんです。なので、本当に言い方は難しいですが……「ところどころしか出演シーンがないから、ひとつひとつに気合を入れて演じる」とは違って、むしろすべてのシーンを、「彼にとっては他愛もないこと」のようにも演じようと思っていました。もしこれからシリーズが続くとするなら、ここからの展開も、すごく気になっているところです。彼は、本当は何をしたいのか? そのあたりは、僕もすごく楽しみにしています。

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