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『美食探偵』も好調! “おうち時間”で観たい中村倫也の沼落ち傑作5選

『美食探偵』も好調! “おうち時間”で観たい中村倫也の沼落ち傑作5選

ここ数年で大ブレイクを果たし、好調をキープし続けている俳優、中村倫也。カメレオン俳優ならぬミミックオクトパス(擬態するタコの一種)俳優を自認する演技力は本物だ。現在放送中の、東村アキコの同名コミックを実写化した主演ドラマ『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ)も話題で、原作を完全再現したビジュアルや、いつの間にか明智の助手になっている小林苺を演じる小芝風花、マグダラのマリアを演じる小池栄子らキャスト陣との息もぴったり。

その魅力にハマるファンの増殖が止まらない中村倫也の過去作から、おススメ作品をピックアップ! 有名どころから掘り出し物まで、じっくり浸ろう。

文 / 望月ふみ


ドラマ『ホリデイラブ』
ドSっぷりを爆発! 狂気のインテリ男

2018年の1月期に、テレビ朝日系にて放送された漫画原作の大人の深夜ドラマ。あるとき、夫と娘との平凡な日々を過ごしていたヒロイン・森高杏寿(仲 里依紗)の、夫・純平(塚本高史)にW不倫が発覚。そこから、純平の不倫相手である井筒里奈(松本まりか)、その夫・渡(中村)を含む二組の夫婦のドロ沼の愛憎劇が繰り広げられていく。毎話ジェットコースターのようにアップダウンする展開に振り落されないよう、時に悲鳴をあげつつ、見入る視聴者が続出した。脚本は『泣かないと決めた日』『ファーストクラス』の渡辺千穂。中村は、妻の不倫に激高するモラハラ男を演じた。

オールバックでメガネをかけたスーツ姿がばっちりハマっていた中村。上から射るような冷たい視線で、立っているだけでも渡の神経質さがにじみ出ていたが、特に大評判を集めたのが二組の夫婦が一堂に会した第4話。浮気をしていた純平と里奈に、「全部説明しろ!」と攻め立て続ける狂気のドSっぷりを爆発させて場をさらった。狂気のモラハラ、サイコパス男として登場した中村だが、物語が進むにつれ、里奈の闇が暴走していくのとは対照的に渡は家族とのこれまで、自分自身の言動を見つめ直していく。その変化を中村が違和感なく見せる。狂気のインテリ男、中村を堪能するには申し分ない作品で、里奈を演じた松本とともに、最凶カップルを誕生させた。

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ドラマ『凪のお暇』
来るもの拒まず! 最強の「人たらし」

©TBS

お次は打って変わって、中村自身の持つふわりとした柔らかな空気を生かした『凪のお暇』(19/TBS)。優しさゆえに女性を傷つける「人たらし」役でもある。常に周囲の空気を読んで過ごしていたOLの大島凪(黒木 華)が、極度のストレスから過呼吸で倒れたことをきっかけに、会社を辞めて家財を処分し、新しい生活をゼロからスタートさせる。主人公・凪役の黒木、凪を支配してきたモラハラ気味の元カレ・我聞慎二役の高橋一生、そして凪が新たに住み始めたアパートの隣人・安良城ゴン役の中村と、演技派ぞろいの素晴らしいキャストで作品は成功したが、キャスティングが発表された当初は、原作ファンから、「3人ともイメージが違う!」と叫ばれた。しかしいざ放送が開始されると、3人ともにドラマ版での彼らを生み出して物語を紡ぎ、視聴者をくぎ付けにした。

ゴンは、危険な香りのするクラブイベントのオーガナイザー。生真面目な凪とは、一見合いそうになかったが、その優しい人柄で距離を縮めていく。しかし自由気ままなゴンは、来るもの拒まず精神の持ち主。誰からも好かれ、モテるが、その分け隔てなさゆえに「メンヘラ製造機」とも呼ばれる男だった。確かに優しいし、ステキな人だけど、「好きになったら苦しむだけ!!」と友達から絶対に止められるタイプである。その「人たらし」ゴンを、中村が慎二までたらしてしまうオープンさで好演。さらに物語が進むにつれ、凪を「特別な存在」として好きになってしまったことで、自分自身の気持ちの変化に戸惑い、揺らぐ姿を見せて、世の女性たちを悶絶させた。

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ドラマ『双葉荘の友人』
イケボ封印! セリフ一切なしの画家

©2016 WOWOW INC.

インテリ空気が伝わる『ホリデイラブ』の渡、みんなに寛容な『凪のお暇』のゴンと、全く違うキャラクターながら、どちらを見ても、中村の“声”の良さを感じる。冷たい声も、穏やかで柔らかな声も、いずれも器用に自然に、その人の声として心に入ってくる。そんな“声”も魅力の中村が、その武器を封印しているのが、2016年に「第8回 WOWOWシナリオ大賞」受賞作としてWOWOWで放送された『双葉荘の友人』だ。舞台は2000年。高台のテラスハウス「双葉荘」に移り住んだ川村正治(市原隼人)と妻の美江(臼田あさ美)。隣人の主婦・八井沙季(陽月華)との相性も良く、新天地での生活に前を向いていたが、ある日、正治は誰もいないはずの自宅で人影を見る。

ジャンルとしてはサスペンスに属するが、ヒューマンドラマの趣。中村が演じるのは、主人公の正治が双葉荘で出会う画家の倉田誠司で、はじめは幽霊なのかと思わせるが、実は26年前の「双葉荘」に住んでいた元住民だと分かる。「双葉荘」は、2つの異なる時間を繋げていたのだ。倉田からも正治が見えており、どこか境遇の似ている二人は次第に不思議な友情を育んでいく。互いにおぼろげな姿は見えているものの、触れ合うことも会話を交わすこともできない二人は、筆談で語り合う。倉田を演じる中村には、セリフが一切ない。なおかつ穏やかな人柄の倉田は、身振り手振りも大きなわけではない。それでも倉田の佇まいからは、驚きや喜び、悲しみといったさまざまな心の内が雄弁に伝わってくる。物語は、26年前の「双葉荘」である出来事が起き、急転。真相が明らかになるクライマックスへと進んでいくが、限られた空間、限られた出演者、そしてサスペンスというジャンルながら、観終わったあとに胸に温かさが残る作品であり、その温かさの一翼を中村が確実に担っている。

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映画『孤狼の血』
無鉄砲に暴れまくる! 血の気の多いチンピラ

©2018「孤狼の血」製作委員会

映画からは傑作を1本。人気推理作家、柚月裕子の長編警察小説シリーズの第1作を、東映が『凶悪』『彼女がその名を知らない鳥たち』の白石和彌監督により映画化した『孤狼の血』(18)。コンプライアンスが叫ばれる現代で、深作欣二監督の傑作『仁義なき戦い』(1973)と比較されるほどのバイオレンス度満点のヤクザ映画になった。昭和63年、暴力団組織が街を牛耳る広島で、新勢力の「加古村組」と地元の「尾谷組」のにらみ合いが続く中、ベテラン刑事の大上章吾(役所広司)と新米の日岡秀一(松坂桃李)がある事件の捜査に乗り出す。中村は尾谷組の構成員・永川恭二を演じた。

今の時代では考えられない、ヤクザ以上にヤクザ然としたぶっ飛び刑事を演じた主演の役所がさすがの存在感で作品を牽引するが、出演シーンはさほど多いわけではない中村の若手ヤクザもインパクトを残した。その姿は、無鉄砲に暴れまくる血の気の多いチンピラそのもので、『ホリデイラブ』やドラマ『闇金ウシジマくん Season3』(16)の洗脳男に見られる狂気さとはまた全く違う熱を放ってみせた。

ちなみに2018年に「第5回 Yahoo!検索大賞」俳優部門、2019年に「エランドール賞」新人賞を受賞するなど、ここ数年で一気にブレイクした感のある中村だが、『孤狼の血』でのチンピラ役には、2016年から続く上野樹里と共演の「ダイワハウス」CMでの愛らしい年下メガネ男子や、ドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』(17)での呑気な警察官と同一人物だとは気づかない人も多かった。

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残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』
妖艶なオーラ! 孤独の中で狂っていく帝王

©古屋兎丸/ライチ☆光クラブ プロジェクト 2015

最後に舞台作品から。2005年に俳優デビューを果たした中村は、いわゆる遅咲き俳優のひとりだが、その演技力を培ったのは、2006年からほぼ毎年出演を続けている舞台での活動も大きい。『スーパーサラリーマン左江内氏』のエンディングダンスでは賀来賢人と中村のキレキレダンスが話題になったが、中村は多くのミュージカル舞台に出演しており、ダンスも歌もお手の物なのだ(賀来と中村は2012年の『RENT』でも共演している)。歌唱力についてはディズニーが長編アニメを実写リメイクした『アラジン』(19)でのアラジンの吹き替えでも存分に披露しているが、残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』(15)での主人公・ゼラは、中村の声の良さ、歌唱力、魅力をさらに伝える。

残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』は、菅田将暉主演でヒットした映画『帝一の國』(2017)の原作でも知られる漫画家・古屋兎丸の作品を、河原雅彦が演出しミュージカル舞台化したもの(古屋の漫画は劇団「東京グランギニョル」の作品を基としている)。2016年には野村周平主演で映画化もされた、大人になることを拒否している少年たちの狂気を描いた群像劇だ。中村は少年たちが作った秘密基地「光クラブ」の帝王として君臨し、孤独の中で狂っていくゼラを、美しい歌声とともに演じる。学ラン姿の少年でありながら妖艶なオーラをまとう中村のゼラは、浴びる真っ赤な血がよく似合う。舞台作品は、観られる機会が限られるが、こうした収録版からも役者の肉体から発せられる生々しい魅力を感じ取ることは可能であり、ドラマ、映画でしか中村を観ていない人にも、ぜひとも舞台での中村を知るきっかけになればと思う。

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ミミックオクトパス俳優・中村倫也を堪能できる待機作が続々!

©2020『水曜日が消えた』製作委員会

この先も待機作が並ぶ中村。まずは“ひとり七役”を演じて、ミミックオクトパス俳優の実力が堪能できるだろう主演映画『水曜日が消えた』。そして大泉 洋を主人公として書かれた小説を、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督が大泉主演で映画化する『騙し絵の牙』、「アンフェア」シリーズ原作の秦 建日子のサスペンス小説を佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊らオールスターキャストで映画化する『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』と注目作が目白押し。また『凪のお暇』の黒木 華と、舞台初共演を果たすことで注目を集めた、中村が宮沢賢治、その妹・トシを黒木が演じる舞台『ケンジトシ』もある。映画も舞台も、観られる時期が今は不明確だが、今は家にこもって中村倫也の魅力を再確認しながら、新作を待とう。