Interview

タヌキ主人公は“変身”の象徴。アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』でTRIGGERは獣人をどう描くのか、監督&シリーズ構成にインタビュー

タヌキ主人公は“変身”の象徴。アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』でTRIGGERは獣人をどう描くのか、監督&シリーズ構成にインタビュー

2020年4月からフジテレビ「+Ultra」にて放送が始まったTRIGGERの新作アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』(以下『BNA』)。本作では、普通の人間から獣人になってしまった女子高生・影森みちると、人間嫌いのオオカミ獣人・大神士郎との出会いを軸に、人類と獣人という相容れないモノ同士の関係性が描かれていく。本稿では、そんな本作でタッグを組んだ監督・吉成 曜とシリーズ構成・中島かずきの対談から、『BNA』制作に対するこだわりや制作秘話に迫っていく。

取材・文 / 福西輝明


人間社会とは異なる“獣人”の街を描く

『BNA』はどんな経緯で制作が始まったのでしょうか?

吉成 曜 僕が以前に手掛けたTVアニメ『リトルウィッチアカデミア』では、主人公が魔法で変身するシーンがたびたび描かれました。その“変身”の部分をよりクローズアップしたアニメを作ってみないか、とオファーを受けたのがそもそものきっかけですね。その時は、手塚治虫先生の『ふしぎなメルモ』みたいな変身魔法少女作品を提案されたんですけど、“変身”を題材にするなら『バンパイヤ』の方向性をめざしたいと思いまして。それで、獣に変身する種族“獣人”をモチーフにした作品へと舵を切ることになったんです。

中島かずき 僕が制作チームに合流した時点では、人間社会の影の部分に獣人たちの世界があって、彼らは人間たちに知られないようにひっそりと生きている。そんな“闇の獣人社会”に、ある日突然、獣人になってしまった少女が入っていき、さまざまな壁にぶつかりながらも自分の生きる場所を見出していく、という物語の大枠が固まっていましたね。“人”と“人でないモノ”との関係性を描くというテーマは面白そうだと思いました。

その頃、たまたま『ルポ川崎』というルポルタージュを読んで感銘を受けまして。『ルポ川崎』は川崎の貧困層の若者たちが、ラップによって社会の中で生きる場所を見つけていくという内容だったんですが、これが非常に面白かった。そして『ルポ川崎』で描かれていた“若者と街”、“若者と社会”といった構図を、吉成監督の獣人作品でも活かせるのではと思ったんです。“獣人”というモチーフを通して十代の女の子の物語を描くのならば、獣人の存在を隠れたものにするのではなく、いっそのこと表立った“獣人の街”を舞台にしてはどうかと。そのうえで、人間にとって獣人とはどんな位置づけなのか、といった物語の設定部分を僕の方で固めていったという感じですね。僕自身も社会構造をしっかりと描く作品をやってみたかったので、新鮮な気持ちで臨ませていただきました。

獣人たちの存在が、闇に隠れた存在から、人間社会から独立した街を形成するほど表立ったものになっていったわけですね。

吉成 大きな都市が丸ごと全部特殊な人たちの集まりという作品は、あまり聞いたことがなかったので、中島さんのアイディアに新鮮さを感じました。でも、それを実際に作るとなると、とても大変で……。まず、街の人間すべてが変身能力を持つ獣人なので、人間形態と獣人形態の二つを全キャラ分用意しなければなりません。キャラクターの個性を出しつつも統一性を図らなければならないし、変身前後の姿を効果的に見せる必要もある。だから、内容は面白そうだけど、大変そうだな~……と。

中島 ちゃんとやろうとすると大変なんですよね。獣人とは、そして獣人たちの街「アニマシティ」とは何なのか、といった説明すべきことがあまりに多いですし。ただ、あまり解説ばかりになってしまうのもよくない。視聴者に作品世界のリアルさを実感させるためにも、あえてみちるの視点で見えている範囲で作品世界の構造を広げていくにとどめているんです。

作中に登場する獣人とは何なのか、改めて教えていただけますか?

中島 『BNA』における獣人は、生物の進化の過程で人間から枝分かれした“もうひとつの人類”です。徐々に数を増やし、やがて地球の覇権を握った人類に対して、獣人はいわば“知られざる少数民族”のような存在で、僻地でひっそりと隠れ住んでいました。それが、人間の自然開発やさらなる人口増大によって住環境が広がったことで、獣人との接触がたびたび起こるようになった。人々の間では、怪物や妖怪といった形で神話や伝説として語り継がれていったんですが、それがある時、獣人の存在が公になる時がやってきた。当然ながら大騒ぎになったけれど、「やっぱり本当にいたんだ!」という驚きの方が大きく、時間が経つごとに獣人たちの存在は受け入れられていった。そのうち、「獣人にも人権を認めるべき」といった動きが出てきて、お互いに共存する道を模索していった、という感じです。

吉成 作中ではいつ頃に人類は獣人と出会ったのか、あまり説明していません。我々の間では産業革命以降、20世紀に入ってからというイメージでとらえていますね。

視聴者に強烈な印象を植え付ける独特の色使い

『BNA』は色使いも非常に個性的ですよね。

吉成 一目で視聴者の目を引くスタイルにしたかったんです。でも、自分の感覚でやると、どうも地味になってしまう傾向にあるので、強烈なイメージを作ってくれるアーティストを探しました。そうしたら、Genice Chanさんという海外のアーティストを見つけて「これだ!」と思ったんですよ。

中島 海外出身の方にお願いしたことで、日本ではあまり見られない感じの色彩感覚になりましたよね。

吉成 今の日本のアニメの考え方だと、同じような感じになりがちなんですよね。非常に緻密で美しい背景は、まるで実写のような印象を受けます。『BNA』では今の日本アニメの主流とは違う方向性をめざしたかったんです。背景を担当してくれた野村正信(美峰)さんは長く一緒に仕事をしているため、共有するイメージの部分で大分助けられました。とんがったビジュアルを強烈に打ち出すために、色彩を強く出しながら、できるだけ単純化して見せたいところだけを見せる。映画『プロメア』で見せたやり方を、『BNA』ではもっと極端に、そして単純化してやってみました。

獣人社会に新風を吹き込むみちるという存在

お次は主人公であるみちるについてですが、彼女を描くにあたって特に念頭に置いたことはありますか?

吉成 みちるは人間からある日突然獣人になってしまった、という以外はごく普通の女子高生です。そんな彼女が人間社会から飛び出し、獣人社会に身を投じていく中でさまざまな事件に関わっていくわけですが、十代の女の子がどういう気持ちでそういった状況にアプローチしていくのか。その過程と心の変遷をきちんと描きたかったんです。

みちるは颯爽とあらわれて悪を退治する“正義のヒーロー”ではありません。彼女が関わるのは、あくまでも現実社会でも起こりうるトラブルです。よそ者として「アニマシティ」にやってきたみちるが、獣人社会のことを理解していくにつれて、自分もこの世界で何か役に立ちたいと思うようになっていく。そして、そんな彼女の思いが少しずつ獣人社会そのものを変えていくんです。

ちなみに、みちるをタヌキの獣人にしたのには、どんな狙いが?

吉成 本作はもともと“変身モノ”という企画からスタートしました。そこから発想を広げて、何にでも変身できる“変化の象徴”としてタヌキの獣人を主人公にしました。

中島 作中でみちるのしっぽが大きく膨らんだり、手が伸びたりしていますが、“変身”の形が変わったものだと思っていただければ。でも考えてみれば、「タヌキが化ける」というのも日本人的な発想ですよね(笑)。現実ではタヌキが何かに変身するというのはありえないんですから。

吉成 最初は「さまざまな事件をタヌキ寝入りで解決する」というアイディアもありましたね。

中島 そうそう。ショックを受けるとタヌキは失神する。その動物的特徴を活かして、みちるも事件の時は「タヌキ寝入り」しちゃう。そして、失神している間に、それまでに得た情報を脳内で目まぐるしく思考して、解決策を導き出すという。このアイディアは結構真剣に検討して3話分くらいシナリオを作ったけど、どうにも物語が膨らまなくて諦めました(笑)。

突飛な設定ですけれど、それはそれで面白そうですね。では、みちるの現時点でのパートナーである士郎はどんな存在なのでしょうか?

中島 獣人たちを守る士郎は、いわば“悲劇のヒーロー”と言える存在です。鋼のような強い意思を持つ男なんですが、自分の考えに固執しがちなところがある。そこがみちるからすると頑迷に映ることもあります。獣人は守るべき同胞であり、人間は敵。そんなふうに考えて戦ってきた士郎が、身体は獣人なのに心は人間というあいまいな存在であるみちると出会い、大きく揺さぶられます。男の強さともろさの両方を描ければいいなと思っています。

吉成 士郎はみちるにとって頼りになる相棒であると同時に、乗り越えるべき存在でもあるんですよね。しかし、ただ倒せばいいというものでもない。お互いの主張に折り合いがつかずに衝突することもあるけれど、一緒に行動しなければならないという事情もある。そうして関わっていくうちに、お互いが影響し合って少しずつ心の内が変化していくんです。

中島 まさしく“相容れない者同士の化学反応”ですよね。

『BNA』という作品自体も、吉成監督と中島さんの化学反応によって、新たな境地が拓けた作品だと思います。

吉成 いやもう、僕の方は中島さんにご迷惑をおかけしっぱなしで……。僕からの無理難題に付き合っていただいて、本当に感謝しきれません。

中島 いやいや、僕も楽しみながらやらせていただいていますよ! 吉成監督の作品が素晴らしいものであることは、きっと視聴者の方々はおわかりのはず。そこに「中島かずき」というスパイスをぶち込んだら、どんな化学反応が生まれたのか。最終話まで見ていただければ、僕らがある種ぶつかり合い、わかり合った結果として『BNA』という“吉成 曜×中島かずきのエンタテインメント作品”が生まれたことが伝わるかと思います。

諸星すみれさん&細谷佳正さんのインタビューはこちら
諸星すみれ&細谷佳正、未知の“獣人”アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』に挑む。吉成 曜×中島かずき×TRIGGER新作に宿る“生きた芝居”とは?

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2020.04.07

TVアニメ『BNA ビー・エヌ・エー』

フジテレビ「+Ultra」ほかにて放送中
Netflixにて1話~6話 独占先行配信

【STORY】
21世紀、それまで歴史の闇に隠れていた獣人達がその存在を明らかにし始めていた。普通の人間だった影森みちるは、ある日突然タヌキ獣人になってしまう。人間たちから逃れるために向かった獣人特区『アニマシティ』は、10年前に獣人が獣人らしく生きるために作られた獣人のための街。そこで人間嫌いのオオカミ獣人・大神士郎と出会ったみちるは、彼と行動を共にするなかで、人間の世界にいた頃には知らなかった『獣人たち』の悩みや生活、喜びを学んでいく。なぜ、みちるは獣人になってしまったのか。その謎を追ううちに、予想もしていなかった大きな出来事に巻き込まれていくのだった。

【STAFF】
監督:吉成 曜
脚本:中島かずき
コンセプトアート:Genice Chan 
キャラクターデザイン:芳垣祐介 
総作画監督:竹田直樹
美術監督:野村正信 
色彩設計:垣田由紀子 
撮影監督:設楽 希 
編集:坪根健太郎
音楽:mabanua
アニメーション制作:TRIGGER

【CAST】
影森みちる:諸星すみれ
大神士郎:細谷佳正
日渡なずな:長縄まりあ
アラン・シルヴァスタ:石川界人
バルバレイ・ロゼ:高島雅羅 
マリー伊丹:村瀬迪与
石崎浩一:乃村健次
立木勇次:中 博史
ジェム・ホーナー:家中 宏
メリッサ・ホーナー:斉藤貴美子
ジュリアーノ・フリップ:多田野曜平
白水総理:大塚芳忠

© 2020 TRIGGER・中島かずき/『BNA ビー・エヌ・エー』製作委員会

『BNA ビー・エヌ・エー』オフィシャルサイト
https://bna-anime.com/
『BNA ビー・エヌ・エー』オフィシャルTwitter
@bna_anime