マンスリーWebマンガ時評  vol. 5

Review

アニメが北米でも話題に! 日本でも放送開始の『神之塔』をはじめ、手に汗握るアクションが満載の韓国ウェブトゥーンをご紹介

アニメが北米でも話題に! 日本でも放送開始の『神之塔』をはじめ、手に汗握るアクションが満載の韓国ウェブトゥーンをご紹介

韓国・NAVER Webtoon発の人気ウェブトゥーン『神之塔』がアニメ化され、日本でも放送が始まった。縦スクロールで読み進めることを前提としたウェブトゥーンだからこそのアクション表現や、同国の映画にも通ずるサスペンスフルな展開が面白い! 自宅で一気読みにもおすすめな3作品+αをご紹介。

文 / 飯田一史


韓国の『HUNTER×HUNTER』!? 複雑であざやかな伏線と練られた試練/ゲームの連続に驚け!

©Tower of God Animation Partners

『神之塔』(作:SIU) LINEマンガで配信中

塔の頂上に登ると願いが叶えられる……すべてを手に入れられる。そんな塔の頂上を目指す少女ラヘルによって、暗闇に閉じ込められて生きてきた人生から救われたと信じる少年・夜を主人公にしたアクションファンタジー作品だ。

塔を登っていく途中では『HUNTER×HUNTER』のハンター試験のようにさまざまなテストが各フロアで課せられ、それをクリアできない者は脱落していく。塔の外部からやってきた例外的な存在である「非選別者」――塔の内部で育った者たちからは警戒される――の夜は、塔で出会った仲間たち、そしてラヘルとともに塔の頂上を目指す。

張り巡らされた伏線、階層ごとに様相を変える塔とそこで用意されている仕掛け/ルールに凝った試験、夜の盟友となるクールで頭の切れるクンやケンカっ早いワニのラークといった魅力的なキャラクターたちによるチーム戦、塔の王ザハードの姫同士の勢力争い、意外な人物の裏切り……と、とにかく話がめっぽうおもしろい。ただしキャラクターが多く、伏線も複雑なのであるていど一気読みすることをオススメしたい(LINEマンガでは2020年5月13日まで50話無料)。

韓国のNAVER Webtoonで2010年に連載が開始され、その後、日本のLINEマンガや英語版のLINE WEBTOONなどでグローバル展開して全世界累計閲覧数45億ビューを突破。アメリカのクランチロールが投資と流通に参加し、日本のテレコムアニメーションフィルムが制作を統括する座組で、2020年4月からは韓国、日本、北米で同時にTVアニメが放映・配信開始。アニメのOP曲はJYPエンターテインメント所属の男性アイドルStray Kidsが韓国では韓国語詞、日本では日本語詞、北米版では英語詞でそれぞれ歌っており、この作品の広がり/受容のされ方と軌を一にしている。

アニメの第1話が公開されるとアメリカのTwitterリアルタイムトレンド9位に入り、有名コミュニティサイトReddit内の週間アニメランキングで1位となるなど、北米で大きな注目を集めている。ただこの作品、10年連載しているだけあって長い! アニメでは物語の入り口のところまでしか描けないのではと思うので、ぜひマンガ(ウェブトゥーン)で「その先」まで読み進めてほしい。ネタバレを避けて言うのは難しいが、衝撃の裏切りの「あと」がとにかくおもしろくなってくるからだ。

ちなみにLINEマンガで読める今期映像化作品にはほかにMnetで放送中の『他人は地獄だ』もある。こちらは中盤までひたすら不穏な空気や怪しい人物たちが延々描かれるが何も起きず、しかし……というのが魅力のサスペンスホラーになっている。

LINEマンガ『神之塔』配信ページ
https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0000197

初期の平成仮面ライダーを彷彿とさせるシリアスでハードなバトルが読ませる

©Rel.mae/JIN Entertainment

『RUGAL~ルーガル~』(作:Rel.mae) ピッコマで配信中

世界支配を目論む赤蟻という暴力組織(テロリスト集団)と、赤蟻鎮圧を目的とした組織RUGAL。彼らはともに、頭部以外のすべての骨を人工物にするなど人体に改造を施し、超人的な身体能力を持つ存在を作り出す技術を持っていた。

主人公は妻子を赤蟻に殺され、自身も両目を潰されるも、妻の殺害嫌疑をかけられた桐谷刑事。その桐谷の脱獄をRUGALが手助けし、銃弾すらスローモーションに見えるという特殊能力などを持った人工眼などを移植。人間兵器として改造された桐谷は「RUGALに加われ」と誘われ、訓練させられる。戸惑いながらも赤蟻に対する復讐心から、凶悪犯を収容する孤島の刑務所でのサバイバルミッションなどを乗り越え、RUGALの一員として赤蟻との戦争に挑む。

初期の平成仮面ライダーを思わせるシリアスでハードな世界観とアクションが魅力の作品。序盤の孤島での修行パートは若干ダレるが、それを終えて赤蟻 vs RUGALの全面対決に突入していくとめっぽうおもしろい。日本式の白黒マンガでは背景は何も描かなければ白いが、フルカラーのウェブトゥーンである本作は背景の基調が黒。暗闇でのミッションが多いこともあるが、作品全体を韓国らしい“恨(ハン)”に満ちたダークなトーンで統一し、緊張感を演出したかったからだろう。

人間離れした人間兵器同士のバトルの迫力だけでなく、なぜ元・赤蟻メンバーがRUGALにいるのか? なぜRUGALを裏切って赤蟻サイドに付いた研究者がいるのか? といった謎が謎を呼ぶ展開、狡猾に捜査陣を攪乱する赤蟻の戦略も読ませる。

韓国で実写ドラマとして2020年3月28日ケーブル局OCNで放映されているほか、Netflixでも配信中。主演はチェ・ジニョク、サバイバルオーディション番組『PRODUCE X 101』出演のパク・ソンホなどが出演するアクション作品となっている。

ピッコマでは続編『ルーガル2 -ZERODAY-』も読める。

また、ピッコマ配信作品で2019年に映像化されたものは『恋するアプリ』『ITEM』があり、今年はこのあと『六本木クラス〜信念を貫いた一発逆転物語〜』『メモリスト』が予定されている。

ピッコマ『RUGAL~ルーガル~』配信ページ
https://piccoma.com/web/product/3337

人類は地球に存在してよい種なのかを「蚊」との戦いを通じて突きつけるSFアクション

©JH・レジンコミックス

『蚊取り戦争』(作:JH) レジンコミックス、ピッコマで配信中

2019年に韓国のSF賞「SFアワード」マンガ・webコミックを受賞したレジンコミックス発の、知性を持ち人間と対話可能な「蚊」によって滅亡の危機に瀕した人類と「蚊」との全面戦争を描いたSFアクション作品。

ふざけたタイトルだし、序盤だけ読むと全身まっ白で筋肉ムキムキ男の金田博士なる人物が人類の切り札扱いされていたり、コミカルなやりとりも多く「ギャグなのこの作品?」と思うだろうし、戦闘シーンでは『ドラゴンボール』や『新世紀エヴァンゲリオン』、『進撃の巨人』『刃牙シリーズ』のパロディともオマージュとも読めるような描き方がされている場面もあってやはり「コメディなのこの作品?」と思うこともある。また「蚊」は『テラフォーマーズ』や『キリングバイツ』のように生物としての蚊の特徴を活かした攻撃をしてくるわけではないし、どころかその一部は白か黒のオバケのQ太郎のような造形をしていたりする(悪魔や天使のようなデザインの「蚊」もいるが)。

いったいどこが評価されて「SFアワード」なのだろうと思うかもしれないが、読み進めていくと、「蚊」は「人間は他の生物、そしてお互いにとって残酷な生物だ。人類が滅ぶときこそすべての生物が平和を迎える」と人類殲滅の動機を語りながら迫り、また「蚊」と融合して強化された人間は、人間への嫌悪感が生じて「なぜ人間のために蚊と戦わなければならないのか」と悩み、「蚊」のボスとおぼしき存在が人類サイドのあるキャラクターと深い関係があったことがわかってくる。人類とは地球にとってなんなのか、他の生物を大量に殺し続けている人類が生存してよい理由とはなんなのかと問いかけてくるのだ。

SFでは古典的なテーマではあるものの、昨今話題の気候変動・環境破壊イシューとシンクロした思弁的な対話が繰り広げられながら、絵も世界最終戦争にふさわしい神々しさを増していく。考える余地を読者に与える余白を大胆にとった画面構成、映画を思わせるスクリーンサイズでの横長でコマを連続させてスクロールさせる演出、ほとんど赤・黒・白だけで描かれた神秘的な印象を与えるシンメトリーな構図……。序盤のノリがウソかのようにシリアスで壮大な物語へと様相を変えていくのだ。

日本で人気の韓国ウェブトゥーンにはひたすらバトルしている作品も少なくないが、本作はただ戦うだけでなく、そのなかで「人類とは一体なんなのか」を問うてくる点に突出した魅力がある。

レジンコミックス『蚊取り戦争』配信ページ
https://www.lezhin.com/ja/comic/mosquitowar

vol.4
vol.5
vol.6