横川良明の演劇コラム「本日は休演日」  vol. 28

Column

今こそ名作をプレイバック。きっとあなたも走り出したくなる舞台『プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE』

今こそ名作をプレイバック。きっとあなたも走り出したくなる舞台『プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE』
今月の一本:舞台『プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE』エピソード1

ライター・横川良明がふれた作品の中から、心に残った1本をチョイス。独断と偏見に基づき、作品の魅力を解説するこのコーナー……なのですが、現在、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するべく、ほぼすべての公演が中止という状況です。そこで、少しでも演劇にふれる時間を増やしてもらえるように、オンラインで観られるオススメ舞台を紹介します。
今回選ぶのは、dアニメストアで配信中の舞台『プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE』エピソード1。観ているだけで心が走り出す青春のきらめきをぜひ液晶画面越しに体感してください。

若き俳優たちが繰り出す本格パルクールに目が釘付け

舞台『プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE』(以下、『プリステ』)は、架空の競技・ストライドに青春を懸ける高校生たちの物語。ストライドとは、塀やガードレールなど街じゅうに存在する様々な障害物を巧みに利用しながらゴールを目指すエクストリームスポーツだ。

チームは、5人のランナーと、1人のリレーショナーで構成される。一般的なリレー競技と違うのは、走者の交替をバトンの手渡しではなく、ハイタッチで行うこと。定められた区間内にハイタッチができなければ即失格。この呼吸の鍵を握るのが、リレーショナーだ。リレーショナーは走者の現在位置をGPSでチェックしながら、次のランナーにスタートのタイミングを指示する。2人のランナーと1人のリレーショナー。三者が心をひとつにすることで生まれる最高のリレーションが勝敗を決めるのだ。

そんな架空の競技に挑む若き俳優たちの躍動が本作の見どころ。長期間に及ぶパルクールレッスンを受けた俳優たちが、舞台に設えられた様々なギミック(装置)を使って、目の覚めるような動きを見せてくれる。

これは演出の松崎史也がエピソード5の稽古中にアップした動画だが、これを見てもらえれば一目瞭然。何メートル跳んでるの?という軽やかな跳躍に、いつからこの星に重力がなくなってしまったんだろうとしばし考えこんでしまう。

本番でも1メートル以上あるギミックとギミックの間をジャンプで渡っていく光景に目が釘付け。バク転などアクロバティックな技を繰り出す俳優も多く、ショーとしての楽しさも十分。客席通路を使ったレースシーンも多いのだが、俳優が真横を突っ切っていく迫力もさることながら、ステージに戻るときに見せる飛び乗るようなジャンプも鮮やかで、一切失速のないシームレスな動きにアドレナリンが湧き上がるのだ。

対戦校は敵役じゃない。知れば知るほど好きになるキャラが勢揃い

だが、パフォーマンスだけなら演劇とは呼べない。シリーズ終了から2年が経過した今もなお、こんなにも『プリステ』について語りたくなるのは、そこに決して色褪せることのない高校生たちの汗と涙と絆がつまっているから。

エピソード1は、八神 陸(伊崎龍次郎)、藤原 尊(蒼木 陣)、桜井奈々(桃瀬美咲)が方南学園高等学校に入学。尊と奈々がストライド部の門を叩くところからスタートする。しかし、かつては名門と謳われたストライド部は今や部員はたった3人。ある事件がきっかけで、過去の栄光はすっかり失われていた。

部を再興させるべく、尊と奈々は奔走。抜群の運動神経を誇る陸をスカウトし、マネージャーをするつもりだった奈々をリレーショナーとすることで、なんとか試合に出られるように。

そんな方南ストライド部の復活のための第1戦となるのが、古豪・三橋高等学校とのレースだ。『プリステ』が観ていて気持ちいいのは、物語上は敵役となる対戦校のバックボーンもしっかりと描いてくれるところ。

2年生ながら高い統率力を誇る鴨田 慶(鐘ヶ江 洸)率いる三橋高等学校は、登場時こそリレーショナーが女性であることをバカにするような発言でヒール感を漂わせるが、一緒に走ってみれば全員がライバルであり、仲間。単細胞すぎる熱血漢・長塚乃彦(横山真史)や、スピードを信じ、速い者に対してリスペクトを隠さない永福武志(澤田拓郎)など、知っていくほどに「結構いいやつじゃん」と思わず肩を叩きたくなるキャラクター揃い。中でも慶と鴨田 侑(影山達也)の兄弟の反発と素直になれない愛情は心にすっと爽やかな風を吹かせてくれる。

伊崎龍次郎&蒼木 陣の熱演は、僕はずっと忘れない

僕はこの『プリステ』を、“越える”物語だと定義している。ギミックを飛び越え、ゴールを目指すのと同じように、登場人物それぞれが自分の中にある弱さや迷いを、少しずつ、でも確かに乗り越えていく。

エピソード1ながら、その片鱗を感じさせるのが、レース中、大幅なショートカットでチームに貢献する門脇 歩(白石康介)だ。練習中から「ギミックは苦手」と弱音を吐き、奈々からも「自分のペースで走ってください」と励まされていた歩が、苦手なギミックで見せた勝利への執念。もともと将棋部で、数合わせのために無理矢理ストライドの世界に巻き込まれた歩は、対戦相手の良心につけこもうとレース前に嘘までつくような、どちらかというと情けないタイプのキャラクターだ。でもそんな平凡な人間が仲間のために自分の弱点を克服しようとする姿が、観る人の心に自分も何か変わりたいという熱い衝動を呼び起こさせる。

メインキャラクターである陸と尊を演じるのは、伊崎龍次郎と蒼木 陣の2人。舞台『刀剣乱舞』の獅子王 役が決まった伊崎と、陸奥守吉行 役で観客を大いに泣かせた蒼木が、本作でも心に残り続けるエバーグリーンな熱演を披露している。

伊崎龍次郎の大きな口には笑顔がよく似合い、その曇りのないスマイルが陸の明るさのシンボルに。ちょっと高めの声が、人なつっこい陸にぴったりで、試合中に盛り込まれるハイテンポなモノローグからも陸の全力感が伝わってくる。一方で、物語が進むにつれ見えてくる陸の陰の部分も、泣き出しそうな声とよく感情の伝わる大きな瞳で表現し、登場人物の多い本作の支柱の役目をしっかりと担っていた。

蒼木 陣が演じる尊は、クールに見えて、ストライドへの情熱と仲間に対する友情は誰よりも深いキャラクター。誰かれ構わず足の筋肉のつき具合を確かめてしまうところや、特注ジャージの着心地を一心にチェックしてしまうところなど、尊のちょっとズレた性格を、蒼木が生真面目に演じることで、観客もつい微笑ましい気持ちに。そんな尊が「行けー! 藤原ー!」という陸のエールに拳を掲げて応えるシーンは、エピソード1随一の胸熱ポイントだ。

また、こうした男子がメインの作品では、女性キャラクターの立ち位置が非常に難しいのだけれど、桜井奈々 役の桃瀬美咲は、同性が見ても応援したくなる愛らしさとまっすぐさを備えていて、非常に好感の持てるヒロインだったと思う。

物語は、高校ストライド東日本大会「エンド・オブ・サマー」優勝をめざすエピソード1〜4と、その先を描いた舞台オリジナルのエピソード5の全5部作で構成。ぜひ未見の方は、この機会に『プリステ』の世界に飛び込んできてほしい。

現在、舞台公演を本業とする制作会社はどこも苦しい状況下にある。この逆境がいつまで続くのか、まだ先が見えないけれど、こんなふうに過去の名作を掘り返すと、改めて舞台づくりに携わるすべての人たちへの感謝で胸がいっぱいになる。

いつかまた劇場で再会できる日を信じて、一日一日を大切に過ごしたい。

舞台『プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE』

<エピソード1>
東京公演:2016年12月9日(金)~12月14日(水)シアター1010
大阪公演:2016年12月23日(金)~12月25日(日)森ノ宮ピロティホール
<エピソード2>
東京公演:2017年4月22日(土)〜4月30日(日)シアター1010
大阪公演:2017年5月5日(金・祝)〜5月7日(日) 森ノ宮ピロティホール
<エピソード3>
東京公演:2017年6月17日(土)〜6月25日(日)シアター1010
大阪公演:2017年6月30日(金)〜7月2日(日)森ノ宮ピロティホール
<エピソード4>
東京公演:2017年8月14日(月)〜8月20日(日)シアター1010
大阪公演:2017年8月26日(土)〜8月27日(日)豊中市立文化芸術センター 大ホール
<エピソード5>
東京公演:2018年5月31日(木)~6月4日(月)シアター1010
大阪公演:2018年6月15日(金)〜6月17日(日)森ノ宮ピロティホール

企画・原作・デザインワークス:曽我部修司 [FiFS]
キャラクターデザイン:ののかなこ [FiFS]
ロゴデザイン:内古閑智之 [CHProduction]
原作プロデュース:電撃Girl’sStyle
演出:松崎史也
脚本:葛木英
パルクール指導・演出:HAYATE [アトリエ ヴィサージュ]

出演:
【方南学園高等学校】
八神 陸 役:伊崎龍次郎
藤原 尊 役:蒼木 陣
桜井奈々 役:桃瀬美咲

小日向 穂積 役:熊谷魁人
支倉ヒース 役:岸本卓也
門脇 歩 役:白石康介

久我恭介 役:鮎川太陽

壇 悠次郎 役:新井裕介
河原崎莉子 役:水越朝弓

【西星学園高等学校】
諏訪怜治 役:平牧 仁(エピソード1と2のみ)
黛 静馬 役:小林 涼
千代松万太郎 役:松本ひなた
妹尾 匡 役:仲田博喜
黛 遊馬 役:田中尚輝
奥村 楓 役:三原大樹
諏訪怜治 役:小早川俊輔(エピソード3と4のみ)

【三橋高等学校】
鴨田 慶 役:鐘ヶ江 洸
鴨田 侑 役:影山達也
嶋 葵 役:勧修寺玲旺
針ヶ谷久人 役:中島拓斗
永福武志 役:澤田拓郎
長塚乃彦 役:横山真史

【一条館高等学校】
姫宮悠李 役:村田 恒
堂園志貴 役:谷 佳樹
獅子原 馨 役:田邊 謙
鷲見紀世斗 役:船木政秀
鮫島 改 役:阿瀬川健太
蜂屋 鉄 役:松本 唯

【市場高等学校】
伊泉 忍 役:村上 渉
戸丸寛助 役:田口 涼
益成一騎 役:岩瀬恒輝
碓氷 光 役:新井雄也
間瀬暁嗣 役:大島 崚
相良 潔 役:天野周平

【椿町高等学校】
湊 柊護役 / 菅原 昌規
颯田 佳月役 / 中村 太郎
閑野 誠役 / 黒崎 澪音

【花京院高等学校】
八神 巴 役:北村健人
維田 天 役:校條拳太朗
夏凪瞳弥 役:原野正章
青葉南平 役:塩口量平
五十公野哉 役:丸山直之
五十公野了 役:大橋典之

桜井 護 役:増田裕生

【OTHER】
DJストライド 役:林 修司
石動 敢 役:HAYATE

主催・制作:トライフルエンターテインメント

オフィシャルサイト
舞台オフィシャルTwitter(@pos_stage)

dアニメストア:プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE Episode1(全4話)

詳細はこちらにて

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