Interview

東京に生きる男の20年を描いた『東京男子図鑑』。竹財輝之助が思う東京、そして、故郷・熊本とは?

東京に生きる男の20年を描いた『東京男子図鑑』。竹財輝之助が思う東京、そして、故郷・熊本とは?

2017年に実写化され、日本をはじめ、中国・アジアで大ヒットしたAmazon Primeドラマ『東京女子図鑑』。その男子版ともいえるドラマ『東京男子図鑑』が4月30日(木)より放送される。

カネにも女にも不自由しない生活を手にするため、東京でのし上がることを誓った主人公・翔太を演じるのは竹財輝之助。強い野心を持ち、竹財いわく「クズ」の翔太だが、飄々としていてどこか憎めないのは、竹財自身が持っている柔らかな物腰や声のトーンも影響しているのではないだろうか。翔太の一番の理解者として役に寄り添い、「(翔太は)クズだけど愛しい」と穏やかに笑う彼の姿が印象的だった。

取材・文 / とみたまい 撮影 / 斎藤大嗣


自分が演じる役は、自分が一番愛している。

東京男子図鑑 竹財輝之助 WHAT's IN? tokyoインタビュー

『東京男子図鑑』は主人公・翔太が東京を舞台に成長していく姿を描いた物語ですが、シナリオを読んだ感想は?

「(演じるのが)楽しそうだな」というのと、翔太については「クズだなコイツ」と思いました(笑)。

どんな部分を「クズだな」と感じたのでしょうか?

女性に対しての扱いとか……翔太の原動力って女性だったりもするんですが、基本的には相手にマウントをとって上に立ちたいヤツで。例えば女性と別れるときに「私って何だったの?」って聞かれて「渋谷」と答えたり(笑)。「女性に対してそれはナイだろ?」って思うところが多々ありましたね。男って往々にして若い頃はそういう感じもあるとは思いますが、翔太は特にそれがハッキリしている男で……「そこまで出さなくてもいいのに。クズだな」って思いましたね(笑)。

今回、竹財さんは翔太の大学時代から40代までを演じられています。各年代での翔太を演じるにあたって、意識したところは?

大学生の翔太を演じる際は、無邪気さ、楽しい感じ、弾ける感じを意識していました。商社の社員になってからは、上司にはすり寄って、同期には「オマエには負けねえ」ってマウントをとる。そのギャップというか、使い分けがあからさまに出るようにイメージしていました。

その後、ベンチャー企業に転職します。

転職してからは以前よりも本音を話すようになった気がしたので、挫折を味わって丸くなった翔太が、自分のことだけじゃなく、一緒に働く仲間のことも考えられるようになった“気持ちの余裕”みたいな部分を表現できるように意識しました。終盤で演じた40代は、生きるうえでの核になる部分=お金でもなく、女の子でもないっていうのを見つけられたんじゃないかな? と思ったので、包容力はあんまりなかったですけど(笑)、大人の余裕が見えるように演じ分けたつもりです。

世代ごとの翔太がすごくリアルに感じました。「こういう人いるなあ」って(笑)。

ははは! リアルでした?(笑)

はい。「ITベンチャーに勤めている知り合いにヒアリングでもしたのかな?」と思うくらいリアルで……。

ベンチャーに勤めてるヤツはいるんですけど、良い人すぎて全然参考にならなかったので(笑)、想像ですね。あとはもう、森岡くん(転職先のCEO・一馬役の森岡 龍)に助けてもらった部分が大きくて。転職するまでは翔太が一番のクズでしたが、一馬というさらに上のクズが出てきてくれたので(笑)、すごくやりやすかったです。森岡くんに限らず、今回はどの年代においても共演者のみなさんに恵まれていた現場でした。

先ほどおっしゃったように、転職するまでの翔太は特に本音を出さないので、まわりとの掛け合いで本当の気持ちがチラリと見えてくるようなところもありました。

そうですね。今作において、秋山さん(脚本担当の秋山竜平)の台本は「本心はここじゃないんだろうな」っていうセリフが多かったので、現場でのやり取りが大事だなと思ったんです。「相手の役者さんはどういう話し方をするんだろう? どういうテンポで来てくれるんだろう?」ってまったく想像できなかったので、その場で出てきたものにどんどん反応していく感じで、「ああ、芝居が楽しいな」って、ずっと思いながらやっていました。

松本(佳奈)監督とは今回が初めてとのことですが、ご一緒された印象は?

基本的には演出をされない方で、自由に演じさせてくださる監督でした。そのなかで、役の感情が動くところをちゃんと切り取ってくださるイメージです。とはいえ「ただ役者任せにしている」というのではなく、役者さんから質問されたら「私はこう思います」としっかり説明されていましたし、「いまのシーンはこう見えましたが、こうしてみませんか?」といった、要求ではなく、相談みたいな感じで投げかけてくださるので、とてもやりやすかったです。現場の雰囲気を大事にして、現場で出てきた空気感の切り取り方を常に考えていらっしゃるのかな? と思いました。

翔太を取り巻く登場人物はそれぞれインパクトが強く、とても面白かったのですが…。

ふふふ(笑)。ね?

演じていて特に面白かった掛け合いはありましたか?

やっぱり、先輩を演じてくださった山中(崇)さんとのシーンですね。何をやっても返してくれるし、受けてくれる。翔太が唯一、懐いてる人間なのかな? と思って演じていたので、山中さんとのやり取りは楽しかったです。並んでタバコを吸うシーンも、全然意識していないのに吸うタイミングが一緒だったんですよ(笑)。あれはすごく気持ちがよかったな。山中さんと落合くんとの3人のシーンも、編集でカットされている箇所も多いんですが(笑)、お芝居ではふたりがずっとアドリブに付き合ってくれて、楽しかったです。

東京男子図鑑 竹財輝之助 WHAT's IN? tokyoインタビュー

竹財さんが特に共感した登場人物は誰でしょうか?

人間って良いところも悪いところもあるし、クズだなあって思うところもあれば、尊敬できるところもあるので、それぞれに共感する部分がありましたけど……やっぱり翔太が共感というか、「うん、わかるわかる」って一番思ったかな。僕もどちらかというと、レーダーチャートにすると特に飛び出たところがない、平均的な人間だと思っているので。翔太は全部平均以上にできちゃうけど、突出したものがある人ではないと思うんですね。「何でも持ってるけど、何も持ってないヤツだな」って、可哀想だなとも思いましたし、愛しくも感じました。クズだけど愛しい(笑)。どんな役でもそうですが、自分が演じる役は自分が一番愛しているし、誰よりも理解があると思っているので、翔太が一番好きです。

翔太の言葉には印象的なものが多かったのですが、竹財さんが演じるなかで大切にした言葉はありますか?

終盤の「軽い気持ちで東京で生きるために、結構必死で努力してたんだ」っていう本音をポロっと言うところは好きですね。努力しているところを画では見せていないですし、本人もたぶん見せない人だと思うんですけど、そんな彼がポロっと言うあのシーンはすごく大事にしていましたし、好きなセリフです。

フラッと来てポロっと言って、またフラッと帰っていく感じがいいなと思いました。

そうそう(笑)。なんか軽い感じですよね。「アイツ、自分の言いたいことだけ言って去って行った」っていう感じが、翔太っぽいなと僕も思いました。

自分のルーツは熊本。ロボット掃除機みたいに充電しに帰りたくなるときもある。

東京男子図鑑 竹財輝之助 WHAT's IN? tokyoインタビュー

竹財さんが熊本から上京したときのお話も伺いたいのですが、そもそもいつ頃から上京したいと思っていたのでしょうか?

高校の頃です。雑誌に出てた伊勢谷友介さんを見て「カッコいいな」と思って。「伊勢谷くんに会いたい、伊勢谷くんと雑誌に載りたい」と思って調べたら、東京に行かなきゃダメだってわかったので、「じゃあ東京に行こう」と(笑)。だから、翔太みたいに東京に憧れたり、わけもなく惹かれたりっていうことは全然なかったです。

大学を卒業して上京する際も「伊勢谷さんに会いたい」という理由で?

それが一番の原動力でしたね。というか、それ以外なかった。「東京にしか売ってないオシャレな洋服を着たい」とか、「有名なレストランに行きたい」とか、そういうのは全くなかったです。

「伊勢谷さんに会いたい」というだけで上京する行動力がすごいと思います。

「どこに行っても俺はやっていける」っていう、根拠のない自信はあったんですよね(笑)。無知の強気というか、知らないからこそ動けるというか。そういうのはあったと思います。良く言えば“若者らしさ”ですよね(笑)。

実際に上京してみて感じた東京は?

「みんな、歩くのが早いな」と(笑)。あとはやっぱり、何でもあるけど、何もない。希薄というか、無機質というか。そんな印象ですね。

上京されて20年ちかく経つ今、そのイメージに変化は?

相変わらず冷たい街だなとは思いますけど、努力ができる人、目標がある人、意識が高い人にはチャンスをくれる街ですよね。チャンスがいっぱいあるし、ご褒美もくれる。でも、ちょっと立ち止まった瞬間にスッと置いていかれるような冷たい部分はいまだに感じます。

東京男子図鑑 竹財輝之助 WHAT's IN? tokyoインタビュー

「上京したい」と思っている若者たちに、アドバイスをするとしたら?

ちゃんとした目的があれば楽しいと思います。でも、「なんとなく東京に行きたい」と思って来てしまうと、誘惑も多い街なので、すぐに埋もれちゃうし、暗いほうへ歩いて行っちゃうと思うので、東京を住処にしたいんだったら、やりたいことを決めてから来なさいってことですかね。じゃないと……大変だよ、たぶん(笑)。東京はキラキラしてないからね。どす黒いからねっていうのを言いたいかな(笑)。

そんな東京を、竹財さんはどんな気持ちで生きているのでしょうか?

僕のやりたいことは、やっぱりお芝居なので、お芝居をやるために東京で生きている。お芝居をするための熱量は未だに持ってます。ふふふ(少し照れた感じで笑う)。でも、住むところじゃないなとは思っていて。だから、お芝居に興味がなくなったらすぐに東京を離れると思います。地元に帰るか、ほかのところに行くか……。

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翔太は「地元には帰らない」という思いが強いですが、竹財さんは若い頃からそういった思いはなかったですか?

ないですね。すぐに帰りたい(笑)。ホームシックになってるわけじゃないですけど、翔太みたいに「帰らない」って、強い気持ちで東京に生きてはいないです。「逃げ帰る」っていう考えもないし、「充電しに帰る」イメージですかね。僕のルーツは熊本だと思っているので「充電が切れちゃったから、充電しに帰ろう」みたいな。ロボット掃除機みたいな感じです(笑)。

短期間ではなく、帰郷して地元で暮らすこともありえる?

可能ならば今でもそうしたいです。柳葉敏郎さんや財前直見さんも地元に住んでいて、仕事があるときだけ東京に来ていらっしゃいますが、すっごく羨ましくて。僕もそこまで魅力のある役者さんになりたいですね。

どんなときに「充電しに帰りたいな」と思いますか?

関係が希薄な人たちと過ごすことに疲れたときは、熊本にいる仲間に会いたくなります。いまだに毎年一度、連絡をくれるんですよ。「この日に飲むけど、オマエ帰ってきてないの?」って。ありがたいし、温かみを感じます。でも「帰る場所がある」みたいなことは、あんまり考えないかな。東京出身の役者仲間に「“仕事する場所”と“育ってきた場所”が違うのは羨ましい」って言われたこともありますけど。だからたぶん、「何で東京にいるんだろう?」っていうのは、すごい贅沢な悩みなんだと思います。

東京男子図鑑 竹財輝之助 WHAT's IN? tokyoインタビュー

自分に置き換えても、いろいろと考えさせられる作品でした。最初はわりと気楽に観ていましたが、だんだん「あれ?」と(笑)。

そうですね(笑)。特に、東京に長いこと住んでいる人が観たら“あるある”を感じることも多いんじゃないでしょうか。僕も演じながら、完成したものを観ながら、「なんか痛いなあ」って思うところが多々あったので。

「痛い」とは?

僕は会社員を経験していないので、現実はもっと辛いこともあるかもしれませんが、翔太を通して会社員として生きてみて、「どの職業も一緒なんだな」って強く感じたんです。どんな職業であっても、生きていればいろんな波が来るわけで、「まあ、生きてりゃ悩みぐらいあるよね」って。辛さや悩みの痛さは同じだなって思いました。

まさに、東京の荒波を越えていく翔太の20年を、固唾をのんで見守るような気持ちでした。

30分×10本で、ひとりの男の20年をさくっと観られる作品はなかなかないと思います。もちろんこれが東京のすべてではないですが、東京の一端を感じてもらえたらいいなあと思いますし、それぞれにクセの強い東京男子たちがでてきますので(笑)、どこかに共感できるところがあると思います。1話ごとにオチもあるので、ぜひ全部通して観ていただいて、翔太という男の20年間を見つめていただければと思います。

ヘアメイク / 菅野綾香(ENISHI) スタイリスト / 大石裕介
衣裳協力:サルトーレ / パラブーツ

竹財輝之助

1980年、熊本県生まれ。2004年、『仮面ライダー剣』で俳優デビュー。近年の主な出演作に、映画『ママレード・ボーイ』(18)、ドラマ『ポルノグラファー』(CX/18)、ドラマ『ランチ合コン探偵〜恋とグルメと謎解きと〜』(NTV/20)、ドラマ『今夜はコの字で』(BSテレ東/20)などがある。現在はドラマ『女ともだち』(BSテレ東)に出演中。

オフィシャルサイト
https://official.stardust.co.jp/takezai/

オフィシャルTwitter
@terutakezai

フォトギャラリー

ドラマ『東京男子図鑑』(全10回)

4月30日(木)24:25からカンテレにて放送スタート
以降、毎週木曜日24:25より放送開始予定(関西ローカル)
※放送翌日午前10:00より、カンテレドーガ、TVerほかにて配信

出演者:竹財輝之助 市川由衣 落合モトキ 水間ロン 牧田哲也 花影香音 愛加あゆ 鎌滝えり 早織 田中シェン 瀧川英次 森岡 龍/山中 崇
原作:東京カレンダー「東京男子図鑑」(東京カレンダーWEBにて連載中)
監督:松本佳奈( 「デザイナー 渋井直人の休日」 ) 
脚本:秋山竜平(「流れ星」)
オープニング曲:ちゃんみな「Call」/ エンディング曲:「アーカイブに保存した曲」(ワーナーミュージック・ジャパン)
プロデューサー:松本 整(電通)張瞳(電通)張微菡(bilibili)松村 尚(カンテレ)中間 恒(ワタナベエンターテイメント)
制作:カンテレ
制作協力:ワタナベエンターテインメント
製作著作:「東京男子図鑑」製作委員会

【STORY】
あなたの目に映る東京は、どんな街ですか
これは、ある東京男子の20年間の物語。千葉県浦安の実家から都内の有名私立大学に通っていた翔太(竹財輝之助)は、恋人が年上の金持ち男と遊んでいることを知り、「女は結局、カネなんだ」と東京でのし上がることを誓う。一流商社に就職し、カネにも女にも不自由しない生活を手にした翔太。しかし、女遊びもせずに働く同期の小島(落合モトキ)との出世争いや、年収3000万円以上の男との結婚を望むみなみ(田中シェン)との恋愛を通して、少しずつ価値観が変わっていく。ベンチャー企業のCEOになっていた同級生・一馬(森岡 龍)との再会によって人生が大きく変わった翔太は、部下として出会った瑠璃子(市川由衣)との付き合いを経て、東京で生きることの意味を見つめ直すことになる。金と仕事と女に奮闘しながら年齢を重ね、翔太が辿り着いた場所とは…。

オフィシャルサイト
https://www.ktv.jp/danshi-zukan/

オフィシャルTwitter
@Tokyoboy_2020