Interview

北原里英が映画『HERO~2020~』で伝える明日への活力。俳優として新しい一歩を踏み出した彼女の勇気

北原里英が映画『HERO~2020~』で伝える明日への活力。俳優として新しい一歩を踏み出した彼女の勇気

2012年に作・演出の西条みつとしが主宰を務める劇団、太陽マジックの旗揚げ公演として初演され、昨年『HERO~2019夏~』として再演された舞台の映画版にあたる『HERO~2020~』が6月、全国で公開される。監督・脚本は、国内外の映画祭で絶賛された齊藤 工の初長編監督映画『blank13』の脚本を手がけたことも記憶に新しい西条みつとしが、舞台版に続き務める。さらに本作は彼の長編映画監督デビュー作となる。
とある“秘密”を抱え、2年間限定で恋人の関係を続ける男女の、笑いあり、涙ありのハートフル・コメディー。主人公の広樹 役には、『弱虫ペダル』シリーズをはじめ数々の舞台に出演、映画『刀剣乱舞-継承-』や公開中の『貴族降臨 -PRINCE OF LEGEND-』など、映画・ドラマにも活躍の場を広げる若手人気俳優・廣瀬智紀。広樹の恋人の浅美 役を、2018年にAKB48グループを卒業後、つかこうへいの舞台「新・幕末純情伝」FAKE NEWSや『どろろ』など話題作に出演し、映画『サニー/32』、『映画 としまえん』では主演も務めるなど、俳優として邁進している北原里英。さらには、本作が映画デビューの小松準弥や、前島亜美、小早川俊輔をはじめとする舞台版キャストに加え、松尾 諭と斎藤 工も登場し、ひと味違った顔を見せる。
舞台版を振り返りながら、北原里英がバージョンアップした映画の魅力を語る。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶


私は浅美に共感できる部分が少ないから演じるのが難しいかもと思った

舞台が終わってから映画の撮影に入られたそうですね。

舞台を上演して約1ヶ月後に撮影に入りました。舞台を経て、同じ役柄で映画にも出演するという経験は初めてでしたが、セリフは覚えていましたし、ほぼ舞台の座組みで顔馴染みのキャストとの共演だったので違和感なく臨めました。こういった斬新な試みでみんなと一緒にまたお芝居ができるのは新鮮な気持ちでした。

映画『HERO~2020~』 北原里英 WHAT's IN? tokyoインタビュー

緊張するという感じではなかったんですね。

そうですね。さすがに撮影の前は緊張しましたが(笑)、初対面の方と接するような緊張感はなかったので、どんな新しい経験が待っているのだろうとワクワクした気持ちのほうが大きかったです。

©「HERO」~2020~製作委員会

北原さんの演じる浅美はどんな人物だと思っていますか。

女の子らしい控えめな女性で、これまであまり触れたことがなかった役ですね。舞台「新・幕末純情伝」FAKE NEWS(2018)や『どろろ』(2019)では、感情を爆発させる役で、そちらのほうが私にとっては演じやすかったので、舞台の稽古中は、どうすれば今まで演じたことのない浅美のような女性になれるのか考え続けました。

初めて浅美を演じられた舞台のときにはどのように役づくりをしましたか。

稽古初日の顔合わせのときに「私は浅美に共感できる部分が少ないから演じるのが難しいかもしれません」と西条さんに正直にお伝えしたんです。そうすると、西条さんが「そういうスタートのほうが、このあと浅美がどうなっていくのか楽しみになるから、その違和感を大切にしよう」とおっしゃってくださって。そのアドバイスもあって、難しいことを考えずに稽古を重ねて、自然と浅美に近づいていくのを楽しみながら、役づくりをしていきました。

舞台で完成させた感情をあえて抑えて

映画の撮影で大変なことはありましたか。

序盤の恋人の広樹くん(廣瀬智紀)との切ないやりとりが続くシーンは大切な場面なので、舞台のときも稽古場でたくさん稽古をしましたし、セリフに入れる感情も出来上がっていたので、映像になったときにどういうふうにすればいいのか、最初は戸惑いましたね。

映画『HERO~2020~』 北原里英 WHAT's IN? tokyoインタビュー

戸惑いというと?

舞台と映像のお芝居は違いますし、舞台ではラストのシーンに向けて大胆に感情を出していったのですが、「映画では控えめにしよう」と西条さんから提案されて、舞台で完成させた感情をあえて抑えて演じてみることになったので。

©「HERO」~2020~製作委員会

それをどう克服しましたか。

私がとにかく大切にしていたのは、西条さんにおっしゃっていただいたとおりに演じることでした。西条さんとは舞台で演出家としてすでに接していたので信頼関係は出来上がっていましたから、映画も西条さんを信じて身を委ねました。今作は舞台をつくり上げるまでの稽古がまず1ヵ月あって、本番も含めてみんなと良好な関係を築きながらじっくりと役と向き合えたおかげで、映画の撮影では不安なく演じることができたと思います。

お客様に感情移入していただけるようなキャラクターにしたい

恋人同士なのに、彼氏である広樹から理由もわからぬまま「2年しか付き合えない」と言われる瞬間が胸にぐさりと刺さりますね。舞台も映像も浅美の抱えるもどかしさや切なさがリアルに伝わりました。

そう言っていただけると嬉しいです。とにかく何があっても、広樹くんのそばに寄り添う浅美が健気ですよね。私としてはふたりの関係をいじらしく見せながらも、お客様に感情移入していただけるような浅美になりたいと思っていました。きっと、浅美も2年限定の付き合いとわかっているとはいえ、彼の言葉を鵜呑みにしているわけではなくて、心のどこかではまだ大丈夫だと捉えていたんじゃないかと思います。それでも、私だったらもっと期間は伸びるはずと浅美よりポジティブに考えていたところがあって。その感覚の違いを稽古で詰めてはいたのですが、映画でもそのあたりの齟齬をなくして浅美を演じました。

映画『HERO~2020~』 北原里英 WHAT's IN? tokyoインタビュー

主人公の広樹が仲間や浅美の存在によって成長するお話でもありますが、彼が新しい自分を見つけるために、北原さんは浅美としてどんなことを意識して彼のそばにいようと思いましたか。

たしかに、広樹の成長物語ですが、わずか数日のドタバタ劇に巻き込まれたことによって浅美も成長していたと思います。なので、浅美が広樹を支えようという一方的な想いだけではなくて、支え合っていきたいという気持ちで演じていましたね。お互い高め合いながら成長するほうがこの作品には合っていると思いました。

©「HERO」~2020~製作委員会

©「HERO」~2020~製作委員会

広樹 役の廣瀬智紀さんとの関係性をどのようにつくっていこうと思いましたか。

時間があったら話したり、全員が集まるご飯会で親睦を深めたりしましたが、必要以上に近づき合わずに、それこそ浅美のようにいじらしくお付き合いをさせていただきました(笑)。

廣瀬智紀はのほほんとしていて、広樹という役に合っていた

(笑)。舞台の初演から出演していた廣瀬さんからアドバイスはありましたか。

特になかったんです。廣瀬さんは偉ぶらないし、のほほんとしていて(笑)、広樹という役に合っていました。特別なアドバイスをおっしゃられることもなかったですし、先輩なので敬う気持ちはありつつも、平等に歩んできたのが正解だったと思います。

映画『HERO~2020~』 北原里英 WHAT's IN? tokyoインタビュー

舞台と映画の座組みもほぼ変わらなかったので、映像からキャスト同士の仲の良さも伺えます。

私は今回も先頭切って「ご飯に行こう!」と場を盛り上げさせていただきました(笑)。『HERO』は私の経験してきた座組みの中でもキャストの年齢も近くて、皆さん個性的でしたね。舞台の初日前に円陣を組んで「まだひとつになれていない。同じ方向を向いていない」と西条さんから“ゲキ”が飛ぶほど個性的すぎたのですが、映画の撮影になると、全員のその個性が大きな武器になっていると思うようになって。舞台のときも仲が良かったのに、映画の撮影でもっと仲良くなっていて、このカンパニーにいることができて幸せでした。

©「HERO」~2020~製作委員会

©「HERO」~2020~製作委員会

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西条みつとしさんと再び一緒になりましたが何か言われて印象に残ったことはありましたか。

舞台稽古の序盤に「お芝居が映像向きだ」と言われて、映画の関係者向けの試写が終わったあとも「やっぱり映像向きだ」と言われたので、映画に関しては成功ですかね(笑)。

(笑)。あらためて西条さんの印象はいかがですか。

初監督とは思えないぐらい板についていて驚きました。舞台では、会場がヒューリックホール東京とキャパシティが大きかったので、マイクはつけていますが、声を大きく出さないといけません。西条さんは、稽古の初めは声量や身体の向きなどを気にせず、役者がリアルな感情で動くこと、そこから役に見合った感情を込めてシーンをつくることを意識されていました。私にとっては初めての経験だったし、丁寧で優しい方だと思います。

映画『HERO~2020~』 北原里英 WHAT's IN? tokyoインタビュー

舞台と映画の期間で演技の価値観が変わった

今回のような試みだと、舞台と映画で同じようなシーンでも、映画の場合はカメラが寄ったりと、俳優は演技の違いを意識してしまう気もしますが、実際いかがでしたか。

おっしゃるように、どうすればいいんだろうとつねにカメラを意識しながら演じていました。舞台と映像も同じ作品に出演することになって、同じシーンでも演技の違いを求められたときに、あらためて女優を始めた頃を思い出したんです。映像は稽古がないし、開演すれば感情の流れもしっかりしている舞台と違って映画はラストシーンから撮ることもあるし、初めてお会いした人と段取りとテストだけで本番をこなすのは大変だなって思っていたことを。ただ、舞台ではシーンによってセットもない素舞台で状況を表現しないといけないし、カットを割ってもらえないから全身、指の先まで気にしていないといけない。だから、映画の撮影中にやっぱり舞台も大変だと思うようになって、この期間で演技の価値観が変わりました。結局どっちもすごいって!(笑)

あはは。

今回、舞台からの映像化という経験をさせてもらって、映像と舞台の違いが少しずつわかるようになって嬉しいですね。今までは“舞台や映像のお芝居はこうだ”と意識するまで自分の技術が追いついていなかったこともありますが、今作を通して、女優として大きな一歩を踏み出せたし、新しいお芝居を発見できました。

映画『HERO~2020~』 北原里英 WHAT's IN? tokyoインタビュー

北原さんの演技観を変えた特別な作品を経て、ご自身はどのようになっていきたいと思っていますか。

舞台や映像で演じることも、喋ること自体も好きだし、お笑いも好きなので、バラエティーもお芝居もできる女優になりたいです。西条さんとの出会いも大きくて、尊敬できる監督であり演出家に出会えたと思っているので、機会があればもう一度西条さんとご一緒したいです。私にとっての人生の夢が、この作品で生まれました。

ちなみに、「新・幕末純情伝」や『どろろ』、『HERO〜2019夏〜』の演技もインパクトがありましたが、北原さんの俳優としての強みは何だと思いますか。

とにかくいいやつです(笑)。今はそれしかないんです。懸命に演じることが人一倍好きで、舞台の稽古も楽しくて、どんなことでも楽しむ気持ちをブレずに持っていたい。AKB48の頃から、歌もダンスも上手にできないことがコンプレックスだったぶん、みんなには優しく気を遣えるようになろうと心がけてきたことが、現在につながっていると思います。

©「HERO」~2020~製作委員会

©「HERO」~2020~製作委員会

©「HERO」~2020~製作委員会

今作でおすすめのシーンはありますか。

舞台では描かれない回想シーンが盛りだくさんなので、舞台を観た方も楽しみにして欲しいのと、舞台とは違う方法で笑いをとりにいくコメディーシーンにも注目してください。

映画『HERO~2020~』 北原里英 WHAT's IN? tokyoインタビュー

明日からの人生が楽しみになってくれたら

それでは、最後にお客様へのメッセージをお願いいたします。

どなたにもオススメですが、舞台を観たことのない方は新鮮な気持ちで心から楽しんでいただけると思います。そして、舞台を観た方も、映像との違いや舞台では描かれていなかったことを発見できる作品です。この映画を観て、明日からの人生が楽しみになってくれたら嬉しいです。

スタイリスト / 丸山恵理子(オサレカンパニー)
ヘアメイク / MARVEE、オサレカンパニー

舞台『HERO~2019夏~』廣瀬智紀インタビュー
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映画『HERO~2020~』

2020年6月19日(金)よりシネ・リーブル池袋にて
全国順次公開

【STORY】
2年間限定の約束で始まった広樹と浅美の恋。広樹には、こんな約束を言い出さなければならない“秘密”の理由があった。そして2年後、運命の日。怪我で入院中の広樹を見舞った浅美は、彼の別れの決意が変わらないことを知って沈み込む。そんな時、ふたりの幸せを願う広樹の妹・真菜の行動が、入院患者から“死神”まで巻き込んで、とんでもない大騒動に! 果たして広樹の“秘密”とは?

監督・脚本:西条みつとし

出演:
廣瀬智紀
北原里英
小松準弥
前島亜美
小早川俊輔
小築舞衣
中村涼子
米 千晴(TAIYO MAGIC FILM)
小槙まこ
加藤玲大
後藤拓斗
双松桃子
飛鳥 凛
伊藤裕一
根本正勝
今立 進(エレキコミック)
松尾 諭
斎藤 工(友情出演)

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@HERO2019summers)

©「HERO」~2020~製作委員会

北原里英(きたはら・りえ)

6月24日生まれ、愛知県出身。女性アイドルAKB48グループの元メンバー。主な出演作品に【映画】『サニー/32』、『映画 としまえん』、『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!』、『爆裂魔神少女 バーストマシンガール』【テレビ】『ろくでなしBLUES』、『家族ゲーム』、『フルーツ宅配便』、フジテレビヤングシナリオ大賞『パニックコマーシャル』【舞台】「新・幕末純情伝」FAKE NEWS、『どろろ』、朗読劇「いつもポケットにショパン」、『HERO〜2019夏〜』、『THE BAMBISHOW 3RD STAGE』などがある。

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@Rie_Kitahara3)
オフィシャルInstagram(rie_kitahara_3)

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