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終わりから始まるRPG『勇者死す。again』余命5日間で愛する人を探せるか

終わりから始まるRPG『勇者死す。again』余命5日間で愛する人を探せるか

『リンダキューブ』や『俺の屍を越えてゆけ』など、一風変わった作品が目を引く個性派ゲームデザイナー桝田省治氏が手掛けたRPGゲーム『勇者死す。』のリマスター版『勇者死す。again』が発売されました。『勇者死す。』はストーリー展開が異質で、“終わりから始まるRPG”という斬新さや世界設定で話題になったRPGです。2007年にケータイアプリの配信から始まり、2016年にPlayStation®Vita版が発売されています。“限られた時間で物語を進める”といった基本ルールの本作は、 桝田省治氏による“濃いシナリオ”も相まって13年の時間が経ったいまでも 類似作品が存在しないほど強烈なオリジナリティを放っています。 タイトルからわかることは勇者が死んでいるということだけ。”終わりから始まる”とは一体何が始まり、どのように終わるのか。”限られた時間”とは長いのか短いのか。本作が長く支持され、プレイヤーを惹きつけてやまない理由とその内容を紹介していきます。

文 / みかそ


何を成して何を成さぬのか……取捨選択の5日間

『勇者死す。again』は、通常だとラストシーンとなるラスボスの魔王との戦いから幕を開け、勇者が魔王と刺し違えて決着したところから物語がスタートします。勇者が目を覚ますと目のまえに天使ユリアが現れ、自分が魔王との戦いの際に命を落としたことを知らされます。そして魔王と戦ったその勇気を称えた神様から”余命5日間”が与えられたことを告げられ、勇者は生き返ります。

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▲死んだ理由を告げられ、余命5日間と知り戸惑う勇者

プレイヤーは勇者となり”5日間”を過ごしていくなかで、勇者が魔王の脅威から救ったと思っていた世界が新たな問題を抱えていることを知ります。限られた時間で何を成すのか選択しながら、6日目に再び死を迎え葬儀が執り行われるまでを一緒に体験していくことになります。
リマスター版の本作では桝田省治氏書き下ろしのシナリオ、伊藤賢治氏による新メインテーマ『Reincarnation』をはじめ新規BGMが実装されました。クロサワテツ氏による新規メインビジュアルとギャラリーモードも追加され、キャラクターやモンスター、武器、楽曲をゲーム上で確認したり、キャラクターや武器のコンプリート、イベント回収の有無がアイコンで確認できるようになりストーリーの達成率が明確になっています。さらに、勇者が強い状態だと弱い敵との戦闘がキャンセルされる”簡易戦闘”、コマンドをオートで選択し戦闘を進めてくれる”オート機能”、2周目以降のプレイ時に会話がスキップができる”早回し機能”等が実装され、よりプレイが快適に行えるよう戦闘及び周回時に助かる細かなアップデートが行われています。書き下ろしシナリオにより勇者が選択した行動がその死後、どのような結果をもたらしたのかを知ることもできます。
マルチシナリオ型RPGになっており、登場するヒロインたちがそれぞれ問題を抱えて勇者を待っていますが、彼女たちの依頼に取り組んでいくとすべての問題を解決することの難しさにぶつかります。そんななかで、勇者は記憶を失ったことで自分の愛する人が誰だったのか思い出せずにいます。”愛する人を探す”こと、これが本作の大きな目的となっています。

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▲シスターであるサラからは大聖堂再建のために御神体と寄付金を依頼される

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▲商人のビビは依頼もなく仲間になってくれるが、勇者に同行することで彼女は彼女なりの利がある模様

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▲王女フローラはアイテム支援の交換条件に結婚を提示してくる

問題を解決するとフローラ以外のヒロインが仲間になります、彼女たちが使用する魔法の種類、攻撃職か回復職か、補助支援の実際などを念頭においておくと仲間の入れ替えの際に役立ちます。さて、3日目くらいで依頼を受けたタイミングや内容によって「どう考えても依頼達成は無理! 」ということがわかってきます。筆者の場合はアイテムを森人リューに渡した瞬間、同じアイテムを依頼されていたメリーアンの依頼達成が絶望的になりました。必死にそれ以外のメリーアンからの依頼アイテムを集めて渡したりしましたが、やはり依頼達成にはなりませんでした。わかっていてもやれるだけやってあげたいという気持ちはありましたが、手探り状態の1周目ということもあり5日間では全然足りず、結果として失敗となりました。この流れで衝撃的なのは……依頼を達成しても失敗しても勇者は日に日に衰弱してゆき、死に向かってゆっくりと着実に進んでいくのがわかります。

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▲時間が経つにつれてひとつひとつ魔法を忘れ、装備が重く感じるようになる。この場合、その装備は扱えなくなるため軽量(攻撃力・防御力の低い)の装備に変更する必要がある

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▲ゲーム中どのような行動をしたか把握するのに便利な日記では、勇者の刻一刻と弱まっていく体の変化なども併せて見ることができる

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▲貴重な勇者の時間を節約するため、各移動手段について把握しておくことが重要。王都グランダムからナンマカへの移動は徒歩で9時間。ただし800Gを払って馬車を使用すると4時間、移動魔法を使用すれば0時間で移動できる

勇者は全体攻撃魔法、主要都市にワープできる魔法、ダンジョンから脱出する魔法など便利な魔法を多数所持していますが、衰弱が進むにつれて徐々に魔法を忘れてゆき使えなくなってしまいます。装備も初期の勇者装備が重くなり始めると「アルテマが重く感じる……」というアナウンスとともに胸を押さえ、心臓の「ドクン!」 という音と赤い画面が表示され苦しそうな勇者を見ることになります。プレイヤーのメンタルをガツガツ削るこのアプローチに最初は驚くとともに感動すらしました。筆者はあまりの切なさに早々に装備を軽いものに変更しましたが、そうなると必然的に防御力の低い装備を使わざるを得ません。ということは勇者は1日目が一番強く、5日目になると戦闘面ではあまり期待ができなくなります。また会話やステータス表示、店、選択などのウィンドウが開いている間以外の時間は常に進み続けるため、思っている以上にあっという間に時間が過ぎていきます。特にワールドマップの移動の際は長時間の消費となるため、限りある勇者の時間を無駄遣いしないためのショートカットを考える必要があります。

衰弱までは数段階あり、勇者は時間経過とともに正常→疲労→過労→減退→衰弱と状態が変化していきます。正常以外の状態を長時間続けると体力の低下や魔法を忘れるスピードが通常よりも速くなるため、宿屋(6時間)で状態とHP・MPを全回復させるか、休憩(3時間)で状態を1段階回復させHP・MPをある程度回復させるかなど、宿屋と休憩をうまく利用しなければなりません。この頃には怒涛の勢いで勇者の命のカウントダウンを実感させられます。後半はパワータイプのヒロインや回復支援系のヒロイン、移動魔法を持っているヒロインなどが仲間にいるかどうかで進行に違いが出てきますが、1周目ではそんな本作の雰囲気を感じ取ることが重要になります。

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▲ボス戦以外の戦闘は比較的苦労せず進められるが、仲間のレベルを上げることにより勇者が弱体化する後半も問題なく戦うことが可能。依頼により多くの敵を倒す必要があるものの、オート戦闘で気兼ねなく進められるので周回しても戦闘が苦になることはない

筆者は1周目に事前情報を仕入れずプレイしたのですが、ヒロインたちの依頼を達成するために奔走してあっという間に4日目になり、下手に行動することもできなくなりました。最後は釣りをしたり、アイテム交換条件で婚約者となったフローラの近くで休憩して時間を過ごし、最後の6日目を迎えました。「凄い……本当に死んだ……」感想はこれです。どこかで考えませんでした? 「実は生き返ったり何か救いがあるんじゃないか?」と。安心してください、我々の思いをすがすがしいほど打ち砕いてくれます。生き返りません。粛々と葬儀のシーンへと移行します。

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▲5日間の過ごしかたによってヒロインたちが勇者に捧げる言葉に違いが……

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▲参加者数が多いのか少ないのかすらわからないまま、1周目が終わる

本作は周回プレイが前提とされているため、5日間の間にやり残したことがあれば何度でも最初の日に戻ることができます。1周目はクリアまでに個人差はあるかもしれませんが5~6時間ほどでした。周回プレイを念頭に考えると、無駄な移動やお金で解決できたことなどが目立つ1周目でしたが、避けられない”死”に向かってひた走る勇者を操作しながら非常に濃密な時間を体験できました。手探りな部分も多々ありましたが、2周目はもう少し落ち着いたプレイができるかな、と期待して再開したところ見事に裏切られました。

何度も繰り返す、愛する人を見つけるまで……

2周目も物語は1周目と同様にスタート。ただしヒロインが新たに2名追加され、さらに濃密で多忙な5日間を過ごすことになります。プレイ次第ではセーブ&ロードが重要になってきます。常に同じ場所にいるヒロインはそこへ行けば会えますが、ランダムで登場するヒロインもいるため、闇雲に街やダンジョンを彷徨っていては余命幾ばくもない勇者には厳しいものがあります。いかにして5日間でヒロインと出会い、依頼を達成してゆくのか。ここで1周目に登場済みのヒロインたちとの経験が生きてくるのですが、2周目になるとヒロインたちの依頼が簡略化されているため、周回しているうちにある程度パターン化されスムーズに物語を進められるようになるかと思います。

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▲勇者見習いのヨナ。彼女の依頼は勇者だけが操れる究極魔法を習得すること

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▲仲間にするヒロインによって、ヒロイン同士の特定の会話を見ることができる

ヒロインたちの依頼は多種多様ではありますが、「勇者の生き返った5日間を有効活用する!」という強い意志も持て、周回プレイが苦にならず続きが気になる仕様になっています。ヒロインたちの各依頼を1周目で達成した場合、2周目でもう一度各依頼を達成すると新しい依頼を受けることができるようになります。この新しい依頼をすべて達成していくことが当面の周回目標になります。2周目以降は新たに追加された機能がとても優秀です。戦闘中に対応したボタンを押すことで自動で戦ってくれるオート機能や戦闘の早回し機能、会話のスキップはフル活用することになります。

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▲戦闘で勇者が死ぬと、強制的に6時間の休息をとる。オート戦闘は便利だが死なせない注意が必要

以降、周回を続けて葬儀の数を重ねるとヒロインたちの言葉に変化があり、彼女たちの胸に秘めていた想いが良いも悪いも溢れ出します。ここにも周回したくなる要素が詰め込まれており、筆者は周回するにつれて葬儀が一番の楽しみになってしまいました。勇者としては複雑でしょうが、ヒロインたちの本心に近い言葉は何度見ても楽しいですし、追加されたその後の話も気に入っています。とはいえ、必ずしも勇者の体に鞭を打って依頼や問題を解決しなくてはいけないというわけではありません。5日間、釣りをしながらのんびり過ごしてもよし、共に魔王と戦った仲間たちと過ごしてもよし、依頼を達成しようがしまいが何をしても自由なのです。とはいえ1周につきひとりのヒロインと愛を交わし子どもを残すことができるので、お気に入りの娘がいたらぜひ告白することをおすすめします。ヒロインの言葉に明らかな変化があり、葬儀シーンをさらに楽しめると思います。追加されたシナリオでは、例えばその後国はどのように繁栄し衰退していったのかなどが説明されますが、子どもを残した場合は母子についても追記されています。

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▲ユリアの問いかけに答えられるのは何周目になるのか……

『勇者死す。again』は周回していると、突然エンディングルートに突入します。ネタバレになるため詳細は控えますが、通常周回とはオープニングから展開が異なるためすぐにわかります。物語の流れがすべて明らかになるルートになりますので、ぜひこのエンディングを目指して駆け抜けるのがいいと思います。というよりも、目指さなくてもプレイしていればヒロインたちの依頼や葬儀での言葉、その後が気になりすぎて次はこうしよう、ああしようとプレイしているうちにエンディングルートに突入してしまうと思います。その頃には各ダンジョンMAPを覚え、ヒロインたちの依頼達成順について効率よく回ることが考えられるくらい慣れていると思います。周回を重ねるごとに変化するヒロインたちの心情や感情を見逃さず、ひとつずつ集め積み重ねていってみてください。周回で見た葬儀シーンは”葬儀リプレイ”から何度でも見ることができます。さらに各葬儀タイトルにアイコンを付けることができるお気に入り機能まであったりします。葬儀をお気に入りって……と思いながら登録しているあなたがいることでしょう。

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▲エンドロールが流れ出した瞬間、これで終わると思い寂しくもあったが安堵もした

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▲葬儀リプレイでは周回の葬儀シーンを見直すことができる

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▲周回中、最も多くの参列者と涙した人を叩き出した回。全ての依頼を達成してエンディングを迎えたら、もっと多くの参列者を出せるかもしれない

ありきたりなのにありきたりじゃない『勇者死す。again』の魅力を少しでも伝えられたでしょうか? 死んだ人間が生き返るという展開はアニメや漫画、小説、映画などでいろいろと見てきたと思っていましたが、ここまでいい意味でプレイヤーに媚びていない世界の現実(リアル)を表現した作品はプレイヤーとしてやりがいがあり、とても惹きつけられるものがありました。エンディングルートをクリアしたあとは、さらに周回プレイが可能なのでやり残したことなども引き続きプレイすることが可能です。「エンディングを迎えてみんな幸せに暮らせる……なんて王道ハッピーエンドを求めてません!」 という方は、この機会に手に取ってみてはいかがでしょうか?

フォトギャラリー

■タイトル:勇者死す。again
■発売元:デジカ
■対応ハード:PlayStation®4、Nintendo Switch™、Steam®
■ジャンル:RPG
■対象年齢:15歳以上
■発売日:発売中(2020年2月26日)
■価格:ダウンロード版版 3,980円(税込)


『勇者死す。again』オフィシャルサイト

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