ソムリエ推薦! アニメ原作マンガ  vol. 4

Review

2020春クールアニメの原作マンガを読む! 始まりの季節にぴったりな、元気な女性主人公が活躍する作品3選

2020春クールアニメの原作マンガを読む! 始まりの季節にぴったりな、元気な女性主人公が活躍する作品3選

2020年4月クールのアニメ放送がスタート。放送直前の更新となる今回は、新生活の始まりに元気をくれる、個性豊かな女性主人公が活躍する作品をご紹介。

文 / 兎来栄寿


ゆるかわ恐竜との楽しい日常にテンアゲ↑

©森もり子・トミムラコタ/講談社

『ギャルと恐竜』(原作:森 もり子、漫画:トミムラコタ)

私はこの『ギャルと恐竜』という作品が本当に大好きです。「週刊ヤングマガジン」での連載開始前のWeb公開時から好きだった恐竜(表紙のキャラクターです)を、毎週連載で見られるようになった時には心の底から歓喜しました。どこにでもいそうな大雑把だけれど根は優しい主人公のギャル・楓と、突然彼女のもとへやってくる恐竜の奇妙で楽しい同居生活を眺める時間は、月曜日の大いなる癒しです。

4月からは何とアニメと実写がダブルで始まるということで、また新たな楽しみが生まれ大いに喜びました。
カップラーメンを器用に箸で食べたり、楓より堅実に貯金をしていたりと、人間じみた所作の数々が笑いを誘う恐竜。恐竜にはセリフがない分、非常に豊かな表情を浮かべたりコミカルなオーバーアクションがあったりするところも魅力的です。私は密かに「今週のベスト恐竜1コマ」を心の中で毎回選定しています。映像化された際に動きも加わることで、かわいい恐竜の魅力に磨きがかかるのがとても楽しみです。

また、楓の住むアパートの大家さんや元カレである翔太、バイト先の先輩など、彼らと恐竜の絡みにもそれぞれの面白さがあります。「恐竜がいる」という非日常を一つ挟むことで、相対的に浮かび上がる日常の良さや大事さをキャラクターとともに読者も感じることができます。
子供から大人まで安心して楽しめるシンプルでかわいい絵柄と身近な日常を描いた内容は、テーマの軽重の差はあれど最近Twitterでバズりにバズっていた『100日後に死ぬワニ』に近しいものも感じます(余談ですが、作画担当のトミムラコタは『100日後に死ぬワニ』のきくちゆうきの高校の後輩に当たるそうです)。

PVで公開されたアニメ版主題歌「恐竜あげみざわ☆」も最高の一言でした。とりま、観てバイブス上げておきましょう。

アニメ『ギャルと恐竜』オフィシャルサイト
http://galkyo.com/

試し読みはこちら(コミックDAYS)
https://comic-days.com/episode/10834108156649497843

時代や社会に抗い、最高の仕事をする少女のお話

©大久保圭/コアミックス

『アルテ』(作:大久保 圭)

16世期のイタリアを舞台にした本作は、貴族の生まれでありながら画家を目指す少女・アルテの物語です。
当時はいい男性を見付けて家庭を築くことが女性の最大の幸せであり、それが当たり前とされていた時代。それ故に、アルテは家族の理解を得られぬまま家を飛び出して何とか絵の道で生きていこうとします。
しかし、技術があっても女であるというだけの理由で門前払いされたり仕事がもらえなかったりと数々の苦労を強いられます。さまざまな苦境に立たされながらも、常に前向きに努力して道を切り拓いていくアルテの姿は本作最大の美点です。
たとえ絵画やルネサンス期の西欧に興味がなかったとしても、一人の少女の奮戦記として、あるいは敷かれたレールの上で生きることを良しとせず、不条理を乗り越え自らの道を進む一人の人間の物語として、普遍的な共感を喚起してくれるでしょう。

画家として創作意欲を刺激される原体験的な感動や、身を粉にして作品創りに勤しむ姿、その作品が世に出て評価された時の嬉しさの描写など、クリエイターなら共感できる部分が多いであろう作品でもあります。
自らの仕事に正当な価値を付けて営業し交渉することの大切さを説くエピソードなどは、ビジネスを行っている人にも感じるところが多いでしょう。

また本作自体、特に「絵」としての魅力が強い作品でもあります。キャラクターはもちろんのこと、作者の大久保 圭がどうしてもルネサンス期のイタリアを描きたいという欲求から始まった物語ということで、フィレンツェやヴェネチアの街並みや荘厳な教会が愛をこめて美しく描かれています。アニメ版ではカラーでイタリアの街や美しい絵画たちが描かれることで、更に目を楽しませてくれることになりそうです。

なお、今回のアニメ化ではシリーズ構成を『ガールズ&パンツァー』シリーズや多数の京都アニメーション作品などを手掛けてきた吉田玲子が務めています。脚本面のクオリティに関しても一抹の不安もありません。

作者によるイタリア取材ルポや「最初あえて『アルテ』のパンを美味しくなさそうに描いていた理由」などのおまけマンガも楽しめる原作の単行本も、アニメ版と併せてお薦めします。

アニメ『アルテ』オフィシャルサイト
http://arte-anime.com/

試し読みはこちら(コミックゼノン)
http://comic-zenon.jp/magazine/arte.html

パワフルすぎる失恋女の言葉が世界を変えていく

©沙村広明/講談社

『波よ聞いてくれ』(作:沙村広明)

木村拓哉主演による映画化で話題になった『無限の住人』の作者である沙村広明。その鬼才ぶりが遺憾なく発揮された傑作が『波よ聞いてくれ』です。一話目を読んだ時からほとばしるセンス、疾走感と殺意に痺れてしまう作品でした。

沙村広明作品の魅力といえば、まず何と言っても高い画力が挙げられます。ラフさも味へと昇華された線や陰影、高いデッサン力から生み出される大胆で迫力ある構図、射殺すようなクールな目力や表情、惚れ惚れするようなスタイリッシュなアクション……。雄弁に心に訴えかけてくる絵の魅力の虜になります。

しかし、それ以上に唯一無二の魅力が圧倒的な言語感覚、セリフのセンスです。「一体何を食べていたらこんな面白く歯切れのいいセリフが無限に湧いてくるのだろう」と思わずにはいられません。
沙村広明は『無限の住人』や『春風のスネグラチカ』など極めてシリアスな作品や時代物も素晴らしいです。ただ、個人的には『おひっこし』や『ハルシオン・ランチ』といったコメディ要素があり、時代性や雰囲気の制約に囚われずパロディネタなども好き放題に盛り込める現代物にこそ、真価があると感じています。

現代の北海道を舞台にした『波よ聞いてくれ』では、『無限の住人』のように派手なアクションなどは形を潜めます。その代わりに、ラジオ業界という正に「言葉」を扱う世界を舞台にしているために、読んでいて脳内麻薬が分泌されるようなドライブ感のあるセリフが、大量に波濤となって読者に浴びせかけられます。

本作を映像化する際に鍵となるのは、何と言ってもパワーワードメーカーである主人公・ミナレのマシンガントークを肉声でどう演じるか。アニメ版ではミナレ役に抜擢された杉山里穂の熱演に期待がかかります。

失恋した20代半ばの女性が立ち直りながら元カレへの殺意を高らかに宣言しつつラジオ業界入りしていく、というあらすじからは想像もできない傑出した作品です。アニメ化を機に、ミナレが生み出すビッグウェーブに気持ちよく呑まれて欲しいと思います。原作のセリフ量がどこまで再現されているか、見比べてみるのも面白いでしょう。

アニメ『波よ聞いてくれ』オフィシャルサイト
https://namiyo-anime.com/

試し読みはこちら(コミックDAYS)
https://comic-days.com/episode/13932016480029579367

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