サザンオールスターズと昭和・平成・令和元年  vol. 30

Column

40周年を軽やかに…。むしろ初々しさが増したかのような5人衆だった

40周年を軽やかに…。むしろ初々しさが増したかのような5人衆だった

2018年にデビュー40周年を迎えたサザンオールスターズのバンド・ヒストリーを、彼らが生み出した数々の作品から改めて見つめていく。音楽評論家・小貫信昭が独自に紐解く、サザンオールスターズの魅力──。


今回は、ここ最近の動きを。2017年といえば、桑田が実に多忙であったのだ。なにしろソロ活動30周年の節目を迎え、それは大傑作『がらくた』というアルバムを軸に展開された。でも、そこには実験的ともいえる「ヨシ子さん」と、老若男女が肩を組み唱和できそうな朝ドラ主題歌「若い広場」が同居し、この音楽ベクトルがヤジロベイの両腕のように二方向のGを発揮する様が、まさに桑田ならではと言えたのだ。

翌年には、サザンオールスターズのデビュー40周年が控えていた。この年に助走は始まり、最初の便りがしてしゅわ〜っと届けらる。「三ツ矢サイダー」のCMへの38年ぶりの出演だ。この件に関して桑田に話を訊いた時に印象深かったのは、新人の頃は撮影の時に、何テイクも何テイクも容赦なくサイダーを飲まされたが、今回はそういうこともなく短時間で撮影が終了したという撮影秘話であった(笑)。

明けて2018年。ここからは、当然ながらバンドの動きが活発化する。初の配信シングルとして新曲「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」が届けられる。思い出したのは「ピースとハイライト」だ。いわゆる、世間一般がパブリック・イメージとして頭に描く“サザン調”というより、ここで再び、時代の空気や気分とバンドとの距離感を計り直し、制作された(その意味で、あの曲に似ていた)。なおこの「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」は、昭和の日本にはあった“中流意識”が消え去り、世の中が二極化していくなかで耐え忍ばなければならない立場の人々にこそエールを届ける歌だった。

6月25日の記念日と翌日のNHKホールで「キックオフライブ 2018『ちょっとエッチなラララのおじさん』」は、アリーナでしか観ることが出来ないバンドの久々のホール公演で、しかもオープニングには最初期のレパートリーから「茅ヶ崎に背を向けて」が選ばれた。この頃の桑田は、スペイン語のrrのような巻き舌を駆使し、日本語に独自の彩りを加え歌唱していたが、自身も当時を、思い出しつつのパフォーマンスしてるように思われた。でも、こんな近くでサザンオールスターズを観ることなどないし、始まって数曲の間は、あまりに近くて目のピントが合わなかった。

彼らの、彼らならではの40周年らしさは、「壮年JUMP」にも色濃かった。なんとこの歌は、アイドル讃歌だったのだ。もしこの曲に彼らの歴史を照らした部分があるならば、デビュー当時、ロック・バンドでありつつ歌謡番組に登場し、華やかなアイドル歌手たちと並んだ経験があるのだろう。そう。そのときに生まれた“ある種の傍観意識”のようなものが、この作品には活かされている、という解釈も可能だ。

実は「壮年JUMP」は、ライブのために制作されたとも受け取れた。受け取れた、どころか、それが証明されたのが、昨年の6大ドームを含む全国ツアー、『サザンオールスターズ LIVE TOUR 2019 “キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!”だと!? ふざけるな!!』だった。

しかし相変わらず(というと怒られるかもしれないが)まるでファンを続けるヒトへの“踏み絵”であるかのように、今回もコンサート・タイトルは長文であった。でも僕はこれも彼らのライブに通う楽しみでもあるのだ。開演前の陰アナで、おそらく会場関係者と思われる若い女性が、こうしたタイトルをさほど抑揚つけず事務的にアナウンスする時の、あの独特の空気感が好きだ(いやはや…。実にマニアックなサザン・ライブの楽しみ方を披露してしまったが…)。

このステージで披露された「壮年JUMP」は、より骨太なバンド・サウンドに成長を遂げていた。これぞ40年を迎えたサザンオールスターズの堂々たる“現役宣言”に思えたのである。実際、音源で聴いていたものに較べて、“あれ、こんな感じだったっけ?”と思うくらい印象が違う。音源は踝も軽くステップする感覚が爽快で、でもライブは各々の楽器の輪郭が露な上でギアとギアががしっと噛み合うがごとき推進力の演奏なのだった。

さて、そろそろシメの一言なのだけど、恐縮だが、この40周年に際して、すでに書いた文章の改訂版を掲載させて欲しい。以下、である。

サザンオールスターズというものを結論づけようとしても、それは実に難しい。まとめようとして“裏表紙”を用意した筈が、みるみるその先にページが増えていく。そこには「サザンらしさ」と「サザンらしからぬ」が同居し、「らしからぬ」が「らしさ」と認識された頃、新たな「らしからぬ」が出現し、再び繰り返されていく。そうやって、このバンドはこの先も更新され続けるだろう。

40年は長い。メンバーも、ここに至るまで一喜一憂してきたことだろう。自信作が、さほどウケなかったことも、反対に、思わぬモノが絶賛されたことも…。でも、サザンオールスターズのメンバーは知っている。一時の喜びが一時の憂いを上回ることがバンドの幸福ではなく、もっと大きなところに幸福があることを…。

サザンオールスターズの曲で、あなたが一番好きなのは? そう訊ねられたら、おそらくこう答えるだろう。「“ごめんねチャーリー”とかも好きだけど、一番好きなのは………。きっとそれは彼らの新曲!!」

文 / 小貫信昭

SINGLE「壮年JUMP」
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