Interview

竹内アンナ 初のフルアルバム『MATOUSIC』で魅せた輝くばかりのポップな伸びしろ

竹内アンナ 初のフルアルバム『MATOUSIC』で魅せた輝くばかりのポップな伸びしろ

2018年のメジャー・デビュー以降、ポップに鮮やかに新しい扉を開け続けてきた竹内アンナが、初のフルアルバム『MATOUSIC(マトージック)』をリリースした。巧みなアコースティック・ギターを披露しながら、可憐な歌声を響かせ、これまでのシンガー・ソングライターの枠に収まらない音楽性と可能性が評判になっていた彼女。”身にまとうような音楽でありたい”という希望を込めた初のアルバムは、21歳の等身大の彼女の溢れんばかりのポップネスが弾けている。エレクトリッック・ギターやラップ、ドラマの主題歌にも挑戦しつつ、日常をカラフルに彩るような彼女の曲と歌は、この春にこそ必要なものに違いない。まさに伸びしろしか感じさせない竹内アンナの眩しい未来がここからは確実に見えてくる。

取材・文 / 佐野郷子 撮影 / 板橋淳一


インプットとアウトプットを繰り返し、いまの自分がありのままに。

2018年にメジャー・デビューして、ようやく1st アルバムが完成しましたね

アルバムを録り始めたてから1年がかりで完成しました。この1年の間に自分の音楽性も変化したし、もっとこうしたいというアイデアもたくさん出てきたので、それをリアルタイムで曲にしていきながら完成したアルバムになりましたね。だから、いまの自分がありのままに反映されているアルバムだと思います。

アルバムにはデビュー曲の「ALRHGIT」も収録され、この2年のアンナさんの成長と変化が分かるような内容ですね。

そうですね。2018年にデビューしてから、短いスパンで3枚のE.P『at ONE』、『at TWO』、『at THREE』をリリースしてきたので、それぞれの作品で竹内アンナの色んな音楽やサウンドをお届けすることができたと思うんです。それを踏まえての1stアルバムなので、自分としては良いペースで来ているかなと。

まだ現役の大学生ですもんね。

そうなんです。京都と東京を移動しつつ音楽活動をしているので、バタバタすることも多いんですけど、卒業するまではこのペースで何とか頑張りたい。

記念すべきデビュー・アルバムはどういうものにしようと考えていましたか?

竹内アンナがどういう音楽を目指していて、どういうことを伝えたいかがよく分かるようなアルバムにしたいと思っていました。タイプの違うE.Pを3枚を出してみて、「こういう曲もやるんだ」とか、「こんなサウンドもアリなんだ」という反応を毎回いただいて、聴いてくれた方がワクワクした気分になってくれたのは嬉しかったですね。

アコースティック・ギターをプレイしながら歌うスタイルは崩さずに、E.P シリーズでは次々と新鮮なポップセンスを披露していきましたね。

リリースのたびにトライしてみたいことが増えて、それを次の曲でアウトプットする。デビューしてからの1年半は、そんなインプットとアウトプットの連続でした。「If you and I were,」や「Midnight Step」のように前からあったデモをアルバム用にブラッシュアップした曲もあるし、自分の頭の中のイメージを曲にしていくためにパソコンとソフトを買って、手探りで覚えながらカタチにしていった感じです。

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台本を読み、イメージを膨らませた初のドラマ主題歌「RIDE ON WEEKEND」

アルバムは、初のドラマの主題歌になった「RIDE ON WEEKEND」から軽快にスタートします。

「WOWOWオリジナルドラマ 有村架純の撮休」の主題歌で、映画やドラマの撮影の間にあるお休みを“撮休”っていうみたいで、有村架純さんの架空の休日を描いたオムニバスドラマなんです。1話ごとに監督さんもストーリーも違うんですけど、頂いた台本を読んで自分なりに発想を膨らませていったんです。

女の子特有の浮き立つ気分が歌詞にもサウンドにも溢れていますね。

台本を読んでいく中で、休日がなんで楽しいのかわたしなりに想像したら、人の目を気にせずにありのままの素顔の自分でいられるからなんだろうなと感じたんです。やっぱり、主演の有村架純さんのイメージはありましたね。ドラマの打ち上げで、ご本人と会って少しお話させていただいたんですが、普段わたしたちがTVで観ている以上にめちゃくちゃ可愛かった! なんかもうオーラが違うんですよ! 「大学、頑張ってね」って声をかけていただいて、ホントに頑張ろうと思いましたもん(笑)。

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ただポップというだけでなく、曲の中でドキッとさせる部分が欲しかった。

2曲目の「B.M.B」は昨年11月に配信シングルで発表された曲ですが、これも新しいポップネスを感じさせる曲ですね。

そうですね。「B.M.B」は自分の中でも思いきってポップに振り切った曲になりましたね。ここまで振り切った曲は初めてだったんですけど、リスナーの方のリアクションも良くて、自分でも新しい面を出せたかなと思います。この曲のMVのように私はメイクをする時に音楽を聴くんですけど、何かをしながら、その1日の気分を上げてくれるような曲にしたいなと思って。

コードや転調、リズムも実はかなり凝っていますね。

そうなんです。ただポップというだけでなく、曲の中でドキッとさせる部分が欲しかったんです。何かをしながらサラッと聴いて気分を盛り上げるのもいいし、イヤフォンでしっかり聴いて、曲の面白さにハッとしたり、一粒で2度おいしい曲になったと思います。

メイクをして、〈最大級で最上級〉の〈とびきりキュートなわたし〉でデートに出かける主人公のイメージはアンナさんの日常や素顔とも重なりますか?

歌詞は自分の体験や感覚をベースに書くことが多いんですけど、アルバムをつくる時にあらためて自分の曲がどう聴かれたいか考えたら、わたしの曲はどこか遠い世界や場所に連れていくものではなくて、当たり前の日常に寄り添えるような歌でありたいなと。わたし自身がそういう曲の方が好きというか、しっくりくるからなんですけどね。

「B.M.B」は、歌詞にも出てくる〈Be My Baby〉ですよね?

そうです。でも、この曲に登場する女の子は〈Be My Baby〉ってストレートに言えるタイプじゃないなと思って。自分も含めて(笑)。

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歌詞もサウンドと、いちばん新しい自分が表現できた「I My Me Myself」

アンナさんの歌詞は日本語の中に英語を交えながら、韻を踏むなどリズミカルなところが特徴ですね。

韻は意識していますね。ずっと聴いてきた洋楽の影響もあるし、耳障りのよさや語感は大事にしています。わたしはメロディー先行で曲をつくるので、そこにぴったりハマって、なおかつ韻を踏む言葉を見つけるのは難しかったりするんですけど、それをひねり出す時間もまた楽しいんです。

なおかつギターをプレイしながら歌うわけだから、ハードルは高くなる。

そうですね。韻や語感であんまり無理をすると歌えなくなっちゃうから、何度も試しに歌ってみて、違和感があるところは変更したり、改善して整えていきます。

アルバムの先行配信曲「I My Me Myself」は、「J-WAVE TOKIO HOT 100」で3位をマーク。最旬のサウンドにアンナさんのテクニカルなギターソロ、ラップまで盛り込んだ攻めた曲ですね。

曲をつくるときは最初にいつもデタラメな英語を乗っけているんですが、その段階から「I My Me Myself」は入っていました。歌詞もサウンドも、いまのいちばん新しい自分が表現できた気がします。制作時にルイス・コールやノウワー(KNOWER)をずっと聴いていたので、展開の面白い緩急のつけたポップ&エレクトロになりました。

2002年生まれの話題のシンガー・ソングライター、崎山蒼志さんがファズギターで参加していますが?

崎山くんとは坂口有望ちゃんと3人で、イベント(『メッチャドスエダモンデ ~2019 SUMMER~』)を企画したり、彼のギタープレイの素晴らしさはよく知っているので、すごく刺激を受ける存在なんです。崎山くんのライブを観ていて、〈未完成な感性は果てしない〉という歌詞が閃いたので、この曲に参加してくれたのはすごく嬉しかった。

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好きな自分も嫌いな自分も全部認めてあげれば、自分らしくなれる。

〈I My Me Myself どんなわたしもわたしなの〉には個人的な主張が込められていそうですね。

この歌をつくったきっかけは、インタビューやラジオ出演の時に「趣味は何ですか?」と訊かれて、答えに困ったことなんですよ。デビューしてから最近まで、わたしには趣味と呼べるものが何もなくて、音楽はいまは仕事でもあり、趣味でもあるんだけど、自分から音楽を抜いたら何があるんだろうと気づいて、ちょっと落ち込んだことがあったんです。

趣味がないことで自分がつまらない人間に思えたんですか?

そうなんです。自分の嫌いなところや苦手なところって認めたくないじゃないですか? でも、そういう自分も認めてしまえばいいんだと。好きな自分、嫌いな自分、みんなの知らない自分、自分でも知らない自分。色んな自分がいるんだけど、その全部を認めてこそ、アイデンティティ=「自分らしさ」がちゃんと輝くようになるのかなと思えるようになってきたんです。

学業と音楽活動を両立させていると趣味に費やす時間は取りにくいですよね。

でも、この機会に何か趣味を見つけてみようと色々手を出してみたら、案外マニア気質だったみたいで(笑)、アニメ、漫画にハマって、最近は舞台も観に行くようになったし、日本の近代建築に興味が出て来て、東京で時間がある時は明治・大正時代の名建築巡りをするようになったりして。それもゲームの聖地巡礼なんですけどね(笑)。

一気に趣味が爆発しているじゃないですか!

そうなんです。元々K-POPのアイドルにハマったり、マニア気質ではあったんでしょうね。それ以来、色んなことに興味を持つようになって、それを楽しめるようになった新しい自分にも出会えたんです。だから今はすごくポジティブです。

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フロウのコツが掴めてきたら、ラップが楽しくなってきた。

『at TWO』に収録されていた「TOKYO NITE」は、アルバムで聴くとアーバン・シティポップなアレンジが少し大人っぽい表情を引き出しつつ、アンナさんの抱く東京のイメージが浮かび上がってきますね。

14歳の時に京都の郊外から初めて東京に来た時は、「ここに来れば何かが起きそう」って漠然と夢見ていたんですが、プロになって東京に通うようになると、確かに東京はたくさんのチャンスがある街だけど、ここに来れば何とかなるわけではなくて、自分が動かないと何も始まらないんだなと痛感しました。そのギャップやせめぎ合いが歌詞には入っていますね。

〈Dancing in the crazy Tokyo night〉と歌っていますが、クラブには?

まだ行ったことないんですよ。クラブに近い会場のイベントに出て、そこでDJプレイを体験したことはあるんですけど、自分からクラブに足を運んだことはなくて。いまは、友達と遊ぶならご飯になっちゃうから(笑)。この前、キーボードの渡辺シュンスケさんのお誕生日イベントで、ちょこっとDJに挑戦して、大音量で自分の好きな曲をかけるのってこんなに楽しいんだって感じて、初心者用のCDJプレイヤーを買ったんですけど、まだ箱に入ったままで(笑)。

「I My Me Myself」に続いて「TOKYO NITE」でもラップパートがありますね。歌とラップがスムーズに調和しているのも驚きました。

初めてラップにトライしたのは『at ONE』で、TLCの「No Scrubs」をカヴァーした時で、最初はお経みたいになっちゃったんですけど、フロウのコツが掴めるようになったら面白くなってきて。歌詞を書くときに韻を踏むことを意識しているから、ラップを書く作業も言葉遊びみたいな楽しさがあるんです。ヒップホップに詳しいわけじゃないんですが、子供の頃からヒップホップの要素が入った洋楽を聴いていたせいもあるのかもしれないですね。

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ギターを弾くシンガー・ソングライターの枠に捕われずに新しい可能性を探る。

「伝えなきゃ、届かなきゃ、君に聞こえなきゃ。」は、アルバムの中では唯一の日本語タイトルになりましたね。

歌詞も初めて全部日本語なんです。書きたいテーマがあって、最初の一行が決まったら2、3時間で書けて、完成したら「あっ! 英語が入ってない!」って気がついて自分でも驚いたんです。

その書きたいテーマというのは?

タイトルのように、伝えたいことは相手にちゃんと届かないと伝えたことにならないなと思ったことがあって。例えば、小さい声で「おはようございます」と言っても、相手に聞こえていなかったら、「この人、挨拶もしない」と誤解されることもあるじゃないですか? コミュニケーションは相手に届いてこそ成り立つんですよね。〈大きな声ではっきり丁寧〉に伝えることはやっぱり大事だなと。こういう仕事を始めて色んな人と関わるようになって、自分も相手もハッピーになれるにはどうしたらいいのか。それがテーマになっていった。

アンナさんのギター・プレイも随所で聴ける上に、今回はエレクトリック・ギターもフィーチャーしたり、ミュージシャンとしての側面も発揮されていますね。

はい! ギターはこれからも頑張ります! 自分はギターを弾くシンガー・ソングライターだけど、そこだけに捕われずに新しいサウンドとパフォーマンスを目指していきたいんです。この1年、ソロのステージではギターを弾きながら卓上のルーパーやサンプラーを使ったり、色んな可能性を探ってきたんですが、それが面白い、新鮮な音楽として聴いてくれる人に伝わればいいなと思います。

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アルバムに込めた気持ちが上がるような感覚を音楽で共有したいという想い。

そんなアンナさんのパフォーマンス・スタイルは、配信映像でも評判になっていますね。

TLCの「No Scrubs」をギターとドラムだけで歌った映像は、英語圏からのコメントが多くて驚いたし、サブスクも含めていまは世界中で観て、聴いてもらえる環境なので、すごく励みになりますね。わたし自身もそうやって世界のチャートをチェックしたり、好きなアーティストのプレイリストを聴いたりしているし、SNSを通じてアーティスト同士が直接やりとりすることもできる。そういういままでにはなかった音楽の環境を楽しみながら、わたしも様々なトライを続けていきたい。

アルバム・タイトル『MATOUSIC』の”身にまとうような音楽でありたい”という造語の発想とも関係がありそうですね。

お気に入りの服を着て出かける時の気持ちが上がるような感覚を音楽で共有したい、それが「身にまとう」〜『MATOUSIC』という造語になったんです。皆さんの日常に寄り添うような音楽を届けたいという思いを込めて。竹内アンナが何がやりたいのかをこのアルバムには思いきり詰め込んだので、いまは世界が大変な時だけど、音楽を聴くことで気持ちをリフレッシュしてほしいですね。

その他の竹内アンナの作品はこちらへ。

ライブ情報

1st ALBUM Release BAND Tour『MATOUSIC』
5月16日(土)名古屋・SPADE BOX
5月17日(日)東京・渋谷 CLUB QUATTRO
5月23日(土)大阪・梅田 TRAD

竹内アンナ

1998年4月25日、アメリカ・ロサンゼルス生まれ日本・京都在住。幼少より親の影響で70年代や80年代の音楽に触れ、中学1年生でギターを弾き始める。アコースティック・ギターにスラッピングを取り入れたプレイスタイルと、透明感のある歌声が各所話題になり、2018年3月アメリカ・テキサス州オースティンで行われた大型フェス「SXSW 2018」に19歳で出演。帰国後、アメリカで販売していた「alright」を地元関西のCDショップ限定でリリース。同年、8月に4曲入りE.P『at ONE』でメジャー・デビュー。収録曲「ALRHGIT」のは全国22ヶ所のパワープレイを獲得。2019年1月には2nd E.P『at TWO』をリリースし「Free! Free! Free!」がサブスクリプションで支持をされ、多くのプレイリストで共有される。6月には『at THREE』、9月には”堂島孝平 with 竹内アンナ” 名義で「やや群青」、11月27日には初の配信シングル「B.M.B」をリリース。常に洗練されたサウンドと従来のイメージに捕らわれないアプローチで、ソロ・アーティストとしての開進を続けている。

オフィシャルサイト
http://takeuchianna.com/

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