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窪田正孝&二階堂ふみが奏でる“エール”という名の音楽。朝ドラ『エール』間もなくスタート!

窪田正孝&二階堂ふみが奏でる“エール”という名の音楽。朝ドラ『エール』間もなくスタート!

2020年3月30日(月)からスタートの連続テレビ小説『エール』。本作はNHK朝ドラ102作目であり、昭和という激動の時代に人々の心に残る名曲を残した作曲家・古関裕而と、その妻で歌手としても活躍した金子をモデルに描く、音楽とともに生きた夫婦の物語だ。

福島に住む青年と愛知に住む女学生が、文通によって愛を育み、駆け落ち同然で結婚。そして東京へ。音楽によって結ばれた2人は、戦前・戦中・戦後を生き抜き、多くの名曲を世に送り出していく。戦争、遠距離、不遇の時代……そんな数々の苦難をも乗り越え、夫婦二人三脚で紡ぎ出した珠玉のメロディ。それは激動の時代を生きる人々への“エール”となって日本中に響き渡っていく――。

本作で主人公の古山裕一を務めるのは、俳優の窪田正孝。福島で代々続く老舗呉服屋の長男で、気弱な少年だったが、音楽によってその才能を発揮し、独学で作曲を始めていく。そして、裕一の妻でヒロインの関内音には、オーディションによって選出された女優の二階堂ふみが登場。実力と人気を兼ね備えた2人の化学反応は想像以上にピュアで柔らかく、本作によって新たな魅力を開花させている。

今回、筆者はドラマ先駆けに行われた第1週試写に参加。本稿では実際に鑑賞してみての感想を交え、本作のみどころを紹介していく。音楽で人々を励まし、心に明かりを灯した古山夫婦の波乱万丈な物語は、世界中で混乱が起きている今の時代だからこそより胸に響くものがあったと思う。ぜひ筆者以外の多くの人にも、古山夫婦の“エール”を体感してほしい。


オリンピックマーチを作曲した男と音楽の運命的な出会い

記念すべき第1回目の放送は、1964年の東京オリンピック開会式。裕一(窪田正孝)は緊張のあまりトイレで吐いてしまうも、その姿を見た妻の音(二階堂ふみ)は「大丈夫。あなたの曲は素晴らしいから」と献身的に励まし、2人は手を繋いで開会式の会場へと足を向ける。お互いに同じ場所に向かって歩む様子は、とても微笑ましくなぜだかこちらにも希望が湧いてくる。それはまるで新しい時代の幕開けを、この夫婦と同じ目線で見ているかのような感覚に陥るほどだった。

そして第2話以降は、裕一の幼少期が描かれていく。福島の老舗呉服屋『喜多一』の4代目店主・古山三郎(唐沢寿明)の元に生まれた裕一は、夫婦が子宝を諦めかけていた時にようやく生まれてきた子だった。それゆえ、裕一(幼少期役・石田星空)は両親からの愛を受けすぎてしまったのか、心もとない子供に育ってしまう。緊張すると上手く言葉が出てこなくなるため、裕一は同級生からいつもバカにされていた。学校で疎外感に苛まれていたある日、裕一は三郎から「夢中になれるものを探せ。それがあれば生きていけっから」と諭される。そして三郎は蓄音機から西洋のレコードをかけると、裕一は今までにないくらいの関心を示した。そのまま蓄音機に引き込まれるように、流れてくる音楽に耳を傾ける裕一。この時、彼は全く言葉を発しないが、これが裕一と音楽の運命的な出会いなのが非常によく伝わってくる。それはキラキラと輝く裕一の目が何よりも物語っているからだ。悲しさなんて一切ないシーンなのに、その瞬間、筆者の目からはなぜか涙が溢れ出そうになったのを覚えている。それくらいジーンと心に響くものがこの瞬間に収められていた。

森山直太朗演じる藤堂先生にも大注目

先述の通り、裕一は上手く言葉が出てこない症状があった。ある日、そのことに苛立った教師が裕一に手を挙げようとすると、横からある先生が止め入った。その先生の名は藤堂清晴(森山直太朗)。藤堂先生は優しく微笑んでから、「君は何が得意なんだ?」と尋ねると「なっ、何にもないです」と答える裕一。すると藤堂先生は「そのうち見つかるさ」とニコリ。この藤堂先生は音楽教育に情熱を注いでおり、いち早く裕一の音楽の才能を見出した人物。藤堂先生と出会っていなければ裕一は音楽ではない道に進んでいたかもしれない。

特に胸が熱くなったのは、運動会で裕一が転倒してしまうシーン。この時、裕一は観客の笑い者にされてしまうのだが、藤堂先生による指揮でハーモニカの演奏が急遽行われると、会場は一転し応援ムードに。その一体感に煽られ、観ているこちらまで「裕一、頑張れ頑張れ…」と涙ながらに応援してしまう。そして何より、そんな機転を利かせてくれた藤堂先生に感激せずにはいられない自分がいた。

初恋の瞬間は思わず胸キュン

5年生のクラス替えで裕一は藤堂先生の担任のクラスになる。音楽の楽しさを教えてくれる藤堂先生の授業はとても楽しく、裕一の表情も以前よりぐっと生き生きしているのが印象的だった。ある日、休みの日に母親と川俣に出掛けた裕一は、その近くの教会から聞こえてくる歌に耳を奪われる。そっと教会に入ってみると、聖歌隊の中の1人の少女に目が釘付けになった。裕一は胸を手で押さえトキメキを鎮めようとするも、鼓動はますます高まるばかり。「この一目惚れの瞬間は、誰しも1度は経験したことがあるのでは?」と思わずにはいられないくらい、一目惚れの瞬間がありありと描かれていた。

裕一が一瞬にして心奪われたこの少女は一体誰なのか――。音楽活動はもちろん、裕一の恋模様にも目が離せなくなりそうだ。

しかしその一方で、不況の煽りを受け、『喜多一』の経営が傾き始めていた。三郎は妻・まさ(菊池桃子)の兄・権藤茂兵衛(風間杜夫)に融資を頼もうとするも、ある条件を提示される。そして、そのことに悩み胸を掻き毟る三郎。これまで明るく前向きな様子しか描かれてこなかった彼が、こんな葛藤した姿を見せるとは筆者も思っていなかった。幸せそうだった古山家に、とてつもない展開が待ち受けているのかもしれない。そう感じてしまうほど、三郎の切羽詰まった表情が強く心に残った。

物語に寄り添った妥協なきキャスティング

試写を通して筆者が特に気になったのが、藤堂先生を演じたシンガーソングライターの森山直太朗だ。朝ドラに出演するのは初で、歌手のイメージが強い森山だが、最初登場した際は「この爽やかな俳優は誰だろう?」と思うほど、演技に違和感がなく役にぴったりとハマっていた。まるい眼鏡をかけ、髪型も七三分けだったためしばらく気が付かなかったが、作品にナチュラルになじむ俳優・森山直太朗の表現力には驚かされた。藤堂先生が裕一に微笑む姿は、まるで朝陽のように柔らかく、穏やかで、観ていて非常に気持ちが良い。彼の持つ清潔感のある印象も相まって、今回は朝ドラにピッタリの大抜擢と言えるだろう。

また、裕一の幼少期を演じた石田星空も、夢中で追いかけてしまった俳優の1人だ。裕一の持つナイーブさやまっすぐな目をそのまま表現しており、まだ子供と言えど恐ろしいほどの才覚を感じた。彼が放つ唯一無二のピュアさは間違いなくドラマを観る者への“エール”となる。そして窪田との共演は『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(19/CX)以来。今回はオーディションを経ての出演だったというが、これもまた運命的な出会いだったのかもしれない。これから彼が俳優として成長していく姿を見届けるのが楽しみだ。

これは余談になるが、放送1話目で窪田がミューカル風のダンスを披露するシーンがある。こういった音楽とリンクした遊び心ある演出も『エール』だからできたことだろう。また、作中には数々の名曲が登場し、その瞬間は思わず童心に帰らずにはいられない。オリンピックイヤーにオリンピックマーチを作曲した男のドラマとは一見すると実にわかりやすいと思うが、蓋を開けてみるととてつもなく波乱万丈な物語。しかし、それでもずっと明るい気持ちで観ていられるのは、コント仕込みの笑いと不意打ちの感動が物語の中で上手く共存できているからだろう。前代未聞のことを成し遂げた、前代未聞の朝ドラ『エール』。第1回の放送まで乞うご期待。

文 / 近藤加奈子


主人公・古山裕一を演じる窪田正孝からコメントが届いた。

【窪田正孝コメント】
Q.第1週をご覧になった感想は?

第1回の冒頭から、軽快かつコミカルに“はるか昔から音楽がいかに人生の中に存在しているか”を描いていて、大きなインパクトがありました。そして、主人公の裕一が生まれて喜ぶ古山家まで登場人物のキャラクターが際立っていて、何よりテンポがすごくよかったです。第2回以降も、子どもたち独特の純粋だからこそ、周りに少しいじわるをしてしまうという人間関係の描き方が丁寧で、また、幼少期を演じる皆さんの演技が本当にすばらしくて、正直、衝撃を受けました。

Q.幼少期を演じられた石田星空くんの印象は?
石田くんとは以前共演したことがあって、ピュアな心を持っていて、求められた役をきちんと演じるという印象がありました。今回、裕一のまっすぐな目やナイーブなところを表現していて、運動会のシーンもつい応援してしまいました。唐沢さんとの父子の基盤もしっかりと作ってくれたと感じています。幼少期のシーンは、できあがった映像で初めて見たのですが、石田くんはじめ幼少期の三羽ガラス(裕一・鉄男・久志)みんなが、大人になってからのおもかげをちゃんと残していて、僕たちのパートにつなげてくれていると思いました。今、ちょうど半分くらいまで撮影が進んでいる中、このタイミングで幼少期の裕一に出会えたことで、また初心に戻ることができました!

2020年度前期
連続テレビ小説『エール』

3月30日(月)~9月26日(土)

【毎週月曜日~土曜日】
総合:午前8時00分~8時15分
BSプレミアム・BS4K:午前7時30分~7時45分
総合:午後0時45分~1時00分(再)
※土曜日は一週間の振り返り。

【毎週月曜日~金曜日】
BSプレミアム・BS4K:午後11時00分~11時15分(再)

【毎週土曜日】
BSプレミアム・BS4K:午前9時45分~11時00分(再)
※月曜日~金曜日放送分を一挙放送。

【毎週日曜日】
総合:午前11時00分~11時15分(再)
BS4K:午前8時45分~9時00分(再)
※土曜日放送分の再放送。

出演:窪田正孝 二階堂ふみ 薬師丸ひろ子 菊池桃子 光石 研 中村 蒼 山崎育三郎 森山直太朗 佐久本 宝 松井玲奈 森 七菜/柴咲コウ 風間杜夫 唐沢寿明 ほか
音楽:瀬川英史
主題歌:GReeeeN「星影のエール」
語り:津田健次郎

【STORY】
日本が生糸輸出量世界一となった明治42年、急速に近代化がすすむ福島の老舗呉服屋に、のちに多くの名曲を生み出すことになる作曲家・古山裕一(窪田正孝/子ども時代:石田星空)が誕生する。老舗の跡取りとして育てられた裕一だが、少々ぼんやりしていて、周りには取り柄がない子どもだと思われていた。ある日、父の三郎(唐沢寿明)が買ってきた蓄音機から流れる音楽に心奪われ、音楽に興味を抱く。裕一の幼なじみで、のちの音楽仲間となる鉄男(中村 蒼/子ども時代:込江大牙)と久志(山崎育三郎/子ども時代:山口太幹)、そして担任の藤堂先生(森山直太朗)との出会いにより、音楽に目覚めた裕一。独学で作曲の才能を開花させていく。
青年になった裕一は、一度は音楽の道をあきらめようとするが、ある日、鉄男の勧めで、家族にはないしょで海外の作曲コンクールに応募し、なんと上位入賞を果たす。それをきっかけに、裕一は歌手を目指している関内 音(二階堂ふみ/子ども時代:清水香帆)と手紙を通して知り合う。福島と豊橋――、遠く離れた地に住みながらも、音楽に導かれるように出会った二人。裕一は音とともに、音楽の道に進むため、駆け落ち同然で結婚し、東京へ。
そして不遇の時代を乗り越え、二人三脚で数々のヒット曲を生み出していく。しかし時代は戦争へと突入し…。
戦後、混乱の中でも復興に向かう日本。古山夫妻は、傷ついた人びとの心を音楽の力で勇気づけようと、新しい時代の音楽を奏でていく―― 。

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