サザンオールスターズと昭和・平成・令和元年  vol. 28

Column

世の中や、ファンとの新たな接点を探った「ピ-スとハイライト」

世の中や、ファンとの新たな接点を探った「ピ-スとハイライト」

2018年にデビュー40周年を迎えたサザンオールスターズのバンド・ヒストリーを、彼らが生み出した数々の作品から改めて見つめていく。音楽評論家・小貫信昭が独自に紐解く、サザンオールスターズの魅力──。


最初に書いておく。結果として、「ピ-スとハイライト」は様々な顛末を生んだ楽曲ともなった。でも、楽曲の一部や演出の一部を恣意的に切り取り、作品全体を批判をしたとしても、しょせんそれは、それだけのものだろう。そんなことよりも、改めてこの作品をまっさらな気持ちで聴いてみることにしよう。そこには実にしなやかな、誰もが感じる平和への願いが描かれているのだ。

さて、通常の書き方に戻ります。

アルバム『葡萄』、ツアー『美味しい葡萄の旅』へとつながる流れの出発点となったのが、2013年8月のシングル、「ピ-スとハイライト」だった。

ところでこの5年間。サザンオールスターズは無期限活動休止の宣言通り、バンド名義の公式な活動は一切なかった。でも、活動はなくても様々なメディアを通じ、“サザンの歌”なら四六時中、日本中のどこかで流れていたわけだ。特別なキッカケなどなくても、“サザンの歌”はもはや“日本の風景の一部”になっていることが(お休みしているからこそ)如実に感じられた数年間でもあったわけである。

とはいえ我々は、時間が経つにつれ、両手の指を所在なさげに組み直したりしつつ、ソワソワし始めるのだった。そろそろかもね、と、噂した。

ここで突然、一休さんだ。和尚から「無期限とは?」と問われ、「それは期限がないということです」と答えることも出来るのだけど、そこで一休さんだったら、「期限が無いのなら、いずれ期限は切れるのでござろう」と答えてみせたかもしれない。そして本当に、5年経ち、現実のものとなる。止まない雨はないし、切れない期限もない。発表されたのが、サザンオールスターズの未来と、「ピースとハイライト」だった。

その際、「サザンオールスターズ、始まる – 2013年・夏、熱い胸騒ぎ。」というキャッチコピーがドーンと出た。さらに35周年のツアーのタイトルが『灼熱のマンピー!! G★スポット解禁!!』であることも発表される。ご存じの通り、“熱い胸騒ぎ”は彼らが世にインパクトを与えたファースト・アルバムのタイトル。そして“マンピー!!(の)G★スポット”は、言わずと知れた、彼らのメガトン級限界芸術作品である(特にライブのパフォーマンスにおいて)」。

なぜ改めて、こられの語句がコピーやタイトルに踊ったのだろうか? 思うに、30周年の時はファンへの感謝をストレートに届けたが、35周年の今回は、改めて、バンドの存在意義を問い直したいからこそ、これらの言葉が並んだのではなかろうか? いやでも、これはほぼ、当たっていたのではなかろうか。

新曲が耳に届いてきた。「ピースとハイライト」は、ファンファーレを想わすイントロダクションから始まっていく。まさにまさに、再出発に相応しいものだった。

アルバム『葡萄』がリリースされた際に添付された「葡萄白書」のなかの「セルフライナーノーツ」で、桑田はこう書いている。

イントロが出来た時、それがファンファーレの
ようにも聞こえたことからリード・トラックに
決めた…部分もあるかもしれない。サザンが復
活する狼煙のようなイメージだった

“決めた…部分”と表現しているということは、無意識も介在してのことだったということだろう。しかし、モノを作る人というのは大体において、確信という名のレゴブロックをただ積み重ねていくだけではないのだ。お告げの様なものを感じ、リードされていくこともある。ファンファーレのようなイントロは、たまたま、だったかもしれない。でもそれを、桑田は確信に変え、35周年の第一歩としたのだ。

この歌は、国際情勢の緊張関係という時事問題から目を背けず、その上で平和を探る内容である。音楽ジャンル的には“トピカル(時事ネタを歌う)・ソング”ともカテゴライズできる作品とも言えるのではないだろうか。なので実際のところ、通常のポップ・ソングの枠を越え、様々な反響があったわけである。

でもこの歌が一番言いたいことは、モノゴトは、よく知った上で判断すべき、ということだろう。この歌詞のなかで最も重要なのは、[教科書は現代史をやる前に時間切れ]というフレ-ズに違いない。そう。よくぞ歌ってくれましたと、思わず膝を叩きたくもなった。

楽曲がリリースされた時にも書いたことだが、例えば工作用粘土を渡されて、「縄文と弥生、それぞれの土器に似たものを作りなさい」と言われたら、みんななんとなくなら指は動くだろうけど、「朝鮮半島がなぜ二分されることになったかの経緯を細かく説明しなさい」と言われたら、自信がないのだ。

なお、先程引用させて頂いた「葡萄白書」のなかの「レコーディングレポート」には、こんなことも書かれていた。桑田は「ピースとハイライト」を、「イマジン」というより「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」的に捉えていたそうなのである。ではこの曲のどこが「ア・デイ~」的なのかというと、それは歌の登場人物がニュースに触れ、そこから想いを膨らませていく点である。ビートルズ(ジョン・レノン)の場合は読んだ新聞が契機となり、桑田が書いた歌の方は、テレビの時事解説番組が契機となっている。

文 / 小貫信昭

SINGLE「ピースとハイライト」
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