モリコメンド 一本釣り  vol. 161

Column

NYAI(ニャイ) 90年代オルタナやギターポップを血肉化! 福岡在住の男女混成ロックバンド

NYAI(ニャイ) 90年代オルタナやギターポップを血肉化! 福岡在住の男女混成ロックバンド

“オルタナ”“ギターポップ”“パワーポップ”という言葉を目にするだけで、とりあえず聴かねば!と思ってしまうのは、90年代に青春を過ごした音楽ファンの生理だろうか。ペイブメント、スマッシング・パンプキンズ、ブラー、ヴェルヴェット・クラッシュ、ソニック・ユース、ウィーザー、ティーンエイジ・ファンクラブ。日本だとスーパーカー、ナンバーガール。いまも眩い光を放ち続けるこれらのバンドは、ギターを中心としたアンサンブル、優れたポップネスを備えたメロディなど、ロックバンドというスタイルの理想形だったと思う。もちろん、ノスタルジーも含めて……なのだが、あれから20年くらいがあっという間に過ぎ、“あの頃”の音楽の匂いを感じさせるバンドが次々と登場しはじめた。“親が聴いていた音楽を小さい頃から聴いていた”とか“YouTubeやストリーミングサービスが浸透して、過去の音源にリーチしやすくなった”とか色々と理由はあるのだろうが、90’sのバンドの音楽にヤラれまくった人間としてはこれほどうれしいことはない。繰り返すが、ノスタルジーも含めて(90年代こそが最高だ!なんていうほど視野は狭くないつもりです、念のため)。

NYAI(ニャイ)の楽曲を初めて聴き、ライブ映像をYouTubeで観たときも筆者は、“あの頃”を強く感じた。感じたのだが、ただ懐かしいだけでも、90年代オルタナの焼き直しでもなく、多彩なリズム・アレンジ、豊かなコーラスワークなどを含めて、現代的なポップミュージックとして成立していることに興味を持った。ローファイなバンドサウンド、メンバーの自然なふるまい(“ゆるい”と言ってもいいかも)も個人的にはめちゃくちゃツボだった。

NYAI(ニャイ)は、福岡在住の男女混成ロックバンド。 メンバーは、takuchan(vo,gt,song writing)、 ABE(vo,key)、たにがわシュウヘ イ(ba)、 showhey(gt)、アヤノ・インティライミ(dr)の5人だ。地元を中心にライブ活動をスタートさせると、ポップかつオルタナティブなギターロックサウンドによってイベンターや媒体関係者から注目を集め、少しずつ活動の規模を広げていった。NYAIの音楽的ルーツは前述した通り、80年代末から90年代にかけて、UK、US、日本を中心に巻き起こったオルタナティブ系のバンドやアーティスト。00年代の日本のバンドシーンには、4つ打ちのダンスビートを軸に“フェスでオーディエンスを盛り上げる”ことに特化したバンドが数多く登場したが、10年代後半に入って、新たな潮流が生まれつつある。その一つが、90年代オルタナやギターポップを血肉化し、独自の日本語ポップスに結びつけるNYAIのような存在だろう。

2016年9月に1stフルアルバム『OLD AGE SYSTEMATIC』、さらに2019年7月に2ndフルアルバム『HAO』(7月度タワーレコード【タワレコメン】に選出)を全国流通でリリース。福岡に拠点を置いたまま、全国各地のライブイベント/サーキット、ツアーバンドのゲストなどのオファーが絶えず、マイペースに活動を継続。ラジオ『SPITZ草野マサムネのロック大陸漫遊記』やSPITZのファンクラブ会報誌で紹介されたり、雑誌『POPEYE』2019年11月号「特集:いま、聴きたい音楽ってなんだろう?」で、NYAIの大ファンであり、90年代カルチャーに詳しい漫画家・渋谷直角氏のコミック形式のライブレポートが掲載されるなど、幅広いメディアで取り上げられたことも、バンドの知名度アップにつながっている。上京せず、地元を中心に活動を続けるスタンスもまた、DIY精神を感じさせるこのバンドの特徴だろう。

現在は音楽レーベルLD&Kに所属しているが、“自分たちでやれることは全部やる”というスタイルはそのまま。MVもメンバーが制作していて、今年に入ってからも、シュール&キッチュなイラストをメインにした「Pomson」、レトロ・フューチャー的な映像とノイジーなサウンドが一つになった「tape drug」を発表。この“わかる人にはわかる”センスもまた、NYAIに惹かれるリスナーが増え続けている理由だと思う。

さらに2020年4月22日(水)には、2ndアナログ7inchシングル(初回製造限定)「Yumeshibai/Chinese daughter」を発売する。2曲ともアルバム『HAO』の収録曲のアップグレード・バージョンで、独創的なポップネスを感じさせるメロディ、ヒネくれと爆発力を併せ持ったバンドサウンドはさらに進化している。好きな音楽を好きなスタイルでやり、まったくムリすることなくリスナーの支持を得る――バンドの理想の形を追い求めているNYAIはここから、ゆるやかな上昇気流に乗るはず。オルタナ好き、ギターポップ好きはもちろん、幅広い層のリスナーに届いてほしいと心から願う。

文 / 森朋之

オフィシャルサイト
https://takumahatensi.wixsite.com/nyai-on-web

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