山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 79

Column

小坂忠さん 愛を伝える人

小坂忠さん 愛を伝える人

1960年代後半。「ロック」も「バンド」もまだ借り物で、見た目重視のグループ・サウンズが人気を博していた時代にデビューした小坂忠。
彼が放つ“本物のソウル”は、その人生に降りかかる多くの困難や哀しみに、曇るどころか、むしろ磨き上げられ、輝きを増して、数多の人々を救ってきた。
2月8日同じステージに立った山口が、いまなお収まらない心の震えをペンに託して書き下ろす。

アイキャッチ写真 / 撮影:三浦麻旅子
※2月8日(土) 新日本製薬presents SONGS&FRIENDS 佐野元春「Café Bohemia」より


本物の定義ってなんだろう? ほんとうのところは僕にもわからないのだけれど。

それでも、ステージに誰かと立っていて、ときどきまぎれもなく本物としか呼びようのないスピリットに撃たれて震えることがあるのです。

先日、とあるコンサートでご一緒させてもらったレジェンド、小坂忠さん。彼から溢れ出てくるソウルとしか呼びようのないものに撃たれ、こころが震えました。

歌うって、こういうことなのか、と。

圧倒的なまでの覚悟、慈しみ。そして、優しさと厳しさ。ひとことで言うならば、愛。

その人の人生が奏でるのが歌。どんなに取りつくろったところで、船の航跡のように、歩んできた道が風景となって、中空に浮かんできます。恐ろしいのです。嘘をついたらすぐにバレる。

だから、忠さんから本気で受け取るものはその風景だけでじゅうぶん。そこにすべてがあるから。多少の誤解があったとしても、きっと許容してくれます。大きな大きな魂だから。

バックステージではくっだらない話や手品で笑わせてくれます。そのギャップとチャーミングさもたまりません。大きな小学生、忠さん。

一緒に歌わせてもらった曲は、この連載でいちばん最初に取りあげた、佐野元春さんによる再生の歌でした。

再生の歌は鳴りやまない〜佐野元春「君を連れてゆく」〜

再生の歌は鳴りやまない〜佐野元春「君を連れてゆく」〜

2016.12.03

人は何度でもやり直すことができる。簡単ではないけれど。

まず若造(56歳)の僕が歌います。それを受けて、忠さんが応えてくれる。声が出た瞬間の圧倒的な説得力。

歌が身体の中に入ってきます。こころを鷲づかみにされているのだけれど、決して緊張を強いられるエネルギーではありません。僕は忠さんの歌によって、解きほぐされていく。

数千人のオーディエンスをも含め、いちばん近いところでそのスピリットを体感しているのは僕。なんという幸せ。

撮影:三浦麻旅子
*2月8日(土) 新日本製薬presents SONGS&FRIENDS 佐野元春「Café Bohemia」より

魂から歌を奏でる人は空気という実体のないものを凍らせたり、握ったり、誰かに投げつけたり、伸縮させることができます。メディスンマンなのです。

随分前に江ノ島で古謝美佐子さんが歌いだした瞬間、上空のトンビ達が乱舞し始めたことがあります。

あの鳥たちの感覚に近いのかな?

なんにせよ、この体験はなにものにも代えがたく。僕はその歌にときほぐされ、描いてくれた風景の中を自由に舞うことができるのです。

コンサートを観にきていた若いアーティストはこう伝えてくれました。「忠さんの声が出た瞬間、訳もなく涙が溢れてきて、そこから音楽の源流が見えてきた。自分もそこを歩いていきたいと思った」と。

この場合、源流ってなんだろう? ルーツってなんだろう。忠さんの場合は、それは愛ではないかと、勝手に類推してみるのです。

ぜひ、体験してください。

これまでに体験されてきた喜びや悲しみ。それがあの歌を生み出すのなら、悲しみの使い道ってやつも確かにあるのかもしれない、と。

忠さん。身体に気をつけて、いつまでも歌い続けてください。その歌に込められたソウルを北極星に見立てて、僕も自分の道を歩いていきます。

感謝を込めて、今を生きる。


撮影 / 三浦麻旅子
*2月8日(土) 新日本製薬presents SONGS&FRIENDS 佐野元春「Café Bohemia」より

小坂忠(こさか ちゅう)

1948年、東京都生まれ。シンガーソングライター、作曲家、ゴスペル・シンガー、牧師。本名は小坂正行(こさかまさゆき)。1966年、ロック・バンド、ザ・フローラルでデビュー。69年、細野晴臣、松本隆らとエイプリル・フールを結成。71年、ソロ・アルバム『ありがとう』リリース。72年、林立夫、松任谷正隆、後藤次利、駒沢裕城と「小坂忠とフォージョー・ハーフ」を結成。バンド活動の他、CM音楽やNHK「おかあさんといっしょ」の作曲も手掛け、日本のロック/ポップ・ミュージック黎明期を拓いた。75年、ティン・パン・アレー(細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆)演奏によるオリジナル・アルバム『HORO』をリリース。「日本におけるR&Bの始祖にして金字塔」と高い評価を得る。
76年にクリスチャンとなり、78年には日本初のゴスペル専門レコード会社「ミクタムレコード」設立。ゴスペル・シンガーとしての活動に軸足を移す。2001年、細野晴臣プロデュースでアルバム『People』をリリース。2004年ゴスペル・アルバム『き・み・は・す・ば・ら・し・い』、2009年高橋幸宏や小原礼らをメンバーに迎えた『Connected』(プロデュースは佐橋佳幸)を発表。2009年には、これまでの音楽活動をまとめた10枚組『Chu’s Garden』をリリースし、2010年には鈴木茂らとともにフジロックフェスティバルにも初出演した。同年、発見された『HORO』の16chマルチトラック・マスターテープにヴォーカルを新たに録音して『HORO2010』を発表し、話題に。2011年4月以降は東日本大震災被災者支援コンサートを継続的に行っている。
2018年には『HORO』を全曲再現したライヴを行い、ステージの模様は『HORO 2018 SPECIAL LIVE』としてリリースされた。今年2月には、鈴木茂と「茂忠(しげちゅう)」名義で新曲「まだ夢の途中」をリリース。なお、新日本製薬presents SONGS&FRIENDS 佐野元春「Café Bohemia」の模様は3月28日(土)午後0時30分よりwowowライブでオンエアされる。

小坂忠オフィシャルサイト
http://www.chu-kosaka.com


茂忠「まだ夢の途中」

<配信>
COKM-42612 ¥250(税込)  主要音楽ダウンロード/ストリーミング配信サービスにて配信中
<LIVE会場限定販売CD>
CEG-29 ¥1,000(税込) 3月11日(水)より、小坂忠・鈴木茂が出演する各LIVE・イベント会場で販売開始

小坂忠と鈴木茂のユニット、 “茂忠(しげちゅう)”の新曲。小原礼、Dr.kyOn、西海孝が参加。2月~3月のNHKラジオ深夜便「深夜便のうた」としてオンエア中

小坂忠『HORO 2018 Special Live』

COCB-54264 ¥3,200+税 日本コロムビアより発売中

2017年8月に緊急入院・手術した小坂忠が2018年3月にビルボードライブ東京で行った復活ライヴを収録。鈴木茂(g)、小原礼(b)、屋敷豪太(ds)、Dr.kyOn(key)、斉藤有太(key)、Asiah(cho)という豪華なメンバーで名盤『HORO』を全曲再現し、ファン垂涎のステージとなった。2018年リリース


著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。90年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。“ミュージシャンズ・ミュージシャン”としてその名を挙げるアーティストも多く、近年は野外フェスやR&Rイベントへの出演も多い。1995年発表のアルバム『1995』に収録された「満月の夕」は阪神・淡路大震災後に作られた楽曲で、25年を経て現在も多くのミュージシャン、幅広い世代に歌い継がれている。バンド結成40周年となった昨年は、40thツアーとして全国を廻り、スタジオ・アルバムとしては2年ぶりとなる新作『Blink』をリリース(オフィシャルサイト、レコード店、大手通販サイト、配信等で販売中)。2月16日青森県弘前市 Robbin’s Nest (ロビンズネスト)から始まった山口洋 (HEATWAVE) solo tour『Blink 40』は4月8日横浜THUMBS UP (サムズアップ)まで全国12ヵ所を廻る。6月にはバンドで東京、仙台、京都を廻るHEATWAVE TOUR 2020”Blink”と2011年東日本大震災直後に始めたプロジェクト“MY LIFE IS MY MESSAGE”の開催が決定。今年は“Brother&Sister”として、仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳、おおはた雄一とステージに立つ。

オフィシャルサイト
http://no-regrets.jp/index.html

ライブ情報

山口洋 (HEATWAVE) solo tour『Blink 40』


3月14日(土) 茨城県水戸市 Jazz Bar Bluemoods (ブルームーズ)
3月26日(木) 京都府京都市 coffee house 拾得 (Jittoku)
3月28日(土) 高知県高知市 シャララ
3月30日(月) 香川県高松市 Music&Live RUFFHOUSE (ラフハウス)
4月1日(水) 大阪府大阪市 南堀江 knave(ネイブ)
4月3日(金) 愛知県豊橋市 HOUSE of CRAZY (ハウスオブクレイジー)
4月8日(水) 神奈川県横浜市 THUMBS UP (サムズアップ)
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※3月12日に予定されていたイベント“ASYLUM2020 in Fukushima”は新型コロナウィルス感染症の影響で中止になりました。

「ミスター・アウトサイド」#001(イベント)

3月17日(火)古書ほうろう ※SOLD OUT
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HEATWAVE TOUR 2020 “Blink”

6月4日(木) 東京 duo MUSIC EXCHANGE
6月6日(土) 仙台 CLUB JUNK BOX
6月17日(水) 京都 磔磔
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MY LIFE IS MY MESSAGE 2020|Brother&Sister

6月12日(金) 山口洋(HEATWAVE)×矢井田瞳@横浜THUMBS UP(サムズアップ)
6月13日(土) 山口洋(HEATWAVE)×おおはた雄一×仲井戸”CHABO”麗市@横浜THUMBS UP(サムズアップ)
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