モリコメンド 一本釣り  vol. 160

Column

Omoinotake ブラックミュージックを軸にした音楽性と感情豊かな歌。注目のピアノ・トリオバンド

Omoinotake ブラックミュージックを軸にした音楽性と感情豊かな歌。注目のピアノ・トリオバンド

2012年2月12日に東京・PLUSTOKYO(銀座のど真ん中にある、超おしゃれなライブスポットです)で行われた「ARBAN + TOKYO ♯02」で、Omoinotakeのライブを見た。ネオソウル、オルタナR&Bのテイストを取り入れたアンサンブル、そして、日本語の響きを活かした叙情豊かな歌のバランスがとても良くて、“グッと来ながら身体を揺らす”という楽しい時間を過ごさせてもらった。じつは筆者は竹内アンナが目当てだったのだが(彼女のライブも本当に素晴らしかった! 1stフルアルバム『MATOUSIC』もぜひチェックしてほしい)、Omoinotakeとの邂逅は音楽ファンとしてとても幸運だったと思う。

地元・島根で藤井レオ(Vo/Key)、福島智朗(Ba/Cho)、冨田洋之進(Dr/Cho) によって2012年に結成されたピアノ・トリオバンド、Omoinotake。2017年に活動を本格化させた3人は、この年の1月に1stフルアルバム『So far』を発表。さらに渋谷を中心にストリートライブを重ね、少しずつ実力と知名度を積み重ねてきた。

翌年10月にリリースの2nd ミニ・アルバム『Street Light』は、ブラックミュージックのテイストを軸にした、現在のOmoinotakeのスタイルに移行した作品だ。海外のアーティストとでいうと、ロバート・グラスパー(R&B、ヒップホップの接近し、21世紀のジャズを大きく変革した最重要ピアニスト)、ディアンジェロ(オルタナR&B、ネオソウルの先駆者とも言えるシンガーソングライター)、日本でいえばceroをはじめとする現行のR&Bを経由したバンド、さらにファンク、AORといった幅広い音楽を吸収しながら、独自の音楽性へと結びついたのだ。特にヒップホップ的なグルーヴとともに洗練されたボーカルラインが響く「Stand Alone」は、ミニ・アルバム『Street Light』を象徴するナンバーと言えるだろう。

本作のもう一つの魅力は、生々しい息遣いを感じさせる演奏。臨場感たっぷりのバンド・グルーヴは、おそらくストリートライブの経験から生まれたものだろう。ライブハウスやクラブではなく、あえて路上でのライブを選んだ彼ら。“道行く人の足を止めて、自分たちの音楽を聴いてもらうためには?”という試行錯誤のなかで3人は、聴く者の耳と心を一瞬で惹きつける強さを身に着けたのだと思う。そう、“おしゃれ”とか“洗練”という言葉だけでは語れない生身の音もまた、Omoinotakeの大きな武器なのだ。

2019年7月に配信リリースされた「惑星」は、歌詞の魅力、歌の力をさらに強調したナンバーだ。omoinotakeの歌詞を手がけているベースの福島は、この曲の制作にあたって、自らの恋愛体験、そのなかで生まれた感情をより深く掘り下げたという。離れ離れになってしまった恋人に対する思い、後悔や苦しさを、「部屋の隅で 飛べずに佇んでるピアスは/惑星の形で 並んで 浮かんでいたのに」という映像的なフレーズで描いたこの曲は、ドラマティックなメロディラインも相まって、ポップスとしての完成度もきわめて高い。コアな音楽ファンだけではなく、一般的なJ-POPユーザーを含めた幅広い層にアピールできる楽曲だ。

さらに2020年2月19日には、新作ミニアルバム『モラトリアム』を発表。「惑星」を含む本作は、ブラックミュージック経由のポップスというスタイルを追求しつつ、バンドとしてのスケール感を大きく広げた作品に仕上がっている。それを象徴しているのが、タイトル曲「モラトリアム」だ。劇場アニメ『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』(ヨネダコウの原作による人気BLコミックの映画版)のエンディングテーマに起用されたこの曲は、決して報われないことを知っていながら、それでも抑えることができない気持ちをテーマにしたバラードナンバー。力強さを増したトラック、エモーショナルに展開するメロディーなど、Omoinotakeの新たな表情が感じられるナンバーだ。アリーナやホールでも映えそうな「モラトリアム」は、このバンドの活動の規模を広げる大きなきっかけになるだろう。

その他、心地よく飛び跳ねるリズム、ハンドクラップやコーラスを効果的に使ったアレンジ、“葛藤や悩みを昇華し、輝く未来に進みたい”という意思を刻んだ歌が一つになったポップチューン「トニカ」、Shingo.Sをサウンドプロデューサーに迎えたトラックのなかで、気持ちがすれ違う恋人たちの感情を映し出す「Blanco」、遠い場所にいる友人に向けた思いをポジティブなグルーヴで表現した「So Far So Good」を収録。ブラックミュージックを軸に幅広い要素を融合した音楽性、思わず身体を揺らしたくなるバンドサウンド、そして、まさに“思いの丈”と呼ぶにふさわしい豊かな感情を備えた歌を共存させたOmoinotake。踊りながらグッとくる彼らの音楽はここから、さらに大きなフィールドに進んでいくことになるだろう。

文 / 森朋之

その他のomoinotateの作品はこちらへ。

オフィシャルサイト
http://omoinotake.com

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