月曜の朝を待ちわびて。~「週刊少年ジャンプ」時評~  vol. 2

Column

ジャンプ「電子版」でしか読めない作品がある!? 多様化するジャンプの形と新人発掘のゆくえ

ジャンプ「電子版」でしか読めない作品がある!? 多様化するジャンプの形と新人発掘のゆくえ

月曜の朝を待ちわび続けて数週間、あっと言う間に第2回です。筆者の人生において文章の連載をした経験はなく、公開と同時に次回の締切が発生するという状況も初めてです。
新しいタイプの緊張感の発生に戸惑いを覚えていますが、週刊少年ジャンプ(以下ジャンプ)の連載作家が毎週のように新しい話を考えて漫画にしていることに比べたら、筆者のプレッシャーなんて大したものではないでしょう。ジャンプ作家への敬意をより高めつつ、指を滑らせページをめくる毎日です。

さて、何気なく「指を滑らせ」と書きましたが、これはタブレット端末に対しての行動です。そう、筆者は2014年秋のサービス開始以来、ずっと電子版でジャンプを読んでいます。

文 / おしこまん
イラスト / かずお


デジタル化の波に乗っていく

子供の頃、遊びに行った友達の家にうず高くジャンプが積まれていて、ついつい無言で読みふけってしまった……なんて経験、ある年代以上の方には「あるある」じゃないでしょうか。

今後紙から電子への移行が進むことで、あの文化がなくなってしまうとしたらちょっと寂しい気もしますが、社会人になった現在となっては、たまったジャンプを古紙回収に持っていく手間が省けるのがありがたいのも事実。

それに、電子版でもバックナンバーを読むこと自体はできます。2020年現在、過去に購入した電子版ジャンプはすべて、いつでも好きな時にダウンロードして読み返すことが可能です。

電子版週刊少年ジャンプの販売ページ(ジャンプBOOKストア!)

ジャンプ編集部の新たな一手

そんな電子版ジャンプの2020年11号から2号連続で、興味深い試みが始まりました。電子版限定で、小林英拳『レイブン無頼』と那波歩才『ハラキリゴメン』という、新たな連載作品が追加されたのです(いずれも短期集中連載)。
2名とも過去に読切作品の掲載はありましたが、連載は初めてです。

ジャンプのデジタル媒体といえば、無料で楽しめる「少年ジャンプ+」(以下ジャンプ+)があります。近年は『SPY×FAMILY』『地獄楽』、アニメ化もされた『彼方のアストラ』など、ジャンプ+発のヒット作も増えてきました。

少年ジャンプ+|少年ジャンプが贈る最強!無料!のWebマンガ誌

ここでの言及は最小限に留めますが、ジャンプ本誌での連載があまりふるわなかった作家がジャンプ+で人気を集めたり、反対にジャンプ+でヒット作を生んだ作家がジャンプ本誌で連載を始めたりというケースも増え、スタートから5年が過ぎたジャンプ+と本誌はポジティブな関係を築きつつあります。

作品の面白さ次第ではジャンプ+でも大きな支持を得られる状況が整っている中、あえてそうではなく、電子版の購読者のみを対象とした新連載を始めることに、どんな狙いがあるのでしょうか。

電子版限定連載、その狙いを考える

連載第1回でふれたアンケートシステム。電子版購読者にも投稿フォームが用意され、紙のジャンプと同様に面白いと思った3作品を投票することができます。電子版のアンケートの中には、上記の電子版限定の作品のタイトルも。

つまり、電子版のみという制限はありますが、期待の新人が歴戦の名プレイヤーと争っているかのような構図になるのです。読者からすれば、それ自体に少年漫画的な熱さが感じられますし、当事者である作家にとってもかけがえのない経験となるのではないでしょうか。短期集中連載といえど、週刊連載のペースがどういうものなのか、肌で実感できることになるからです。
週刊連載のペースをうまく乗りこなして勢いよくペンを走らせることのできる人もいれば、隔週や月一のペースでじっくりと描くことのほうが合っていると気づく人もいるでしょう(ジャンプ+は作品によって連載サイクルが異なる媒体です)。

まずは試してみる、というのは今の時代にも合っているように感じますし、そこで適性を見極めた上で掲載メディアを選べるとしたら、素晴らしいことだと思います。

読者がジャンプに求めるものは

いつの時代も新しい才能がこれまでの「ジャンプらしさ」を更新してきました。雑誌が売れなくなったと言われて久しいですが、そんな中でもわざわざ雑誌としてのジャンプを買っている読者はより一層、「ジャンプらしさ」が更新されるその瞬間を待ちわびているのではないでしょうか。

今回取り上げた電子版限定連載という試みは、第1回で扱った「もう10週で終わらない」という話題と同じ流れの、新人作家を長い目で見て実力を伸ばしていく方針の一環であるように見えます。
この新たなチャレンジがどう転がっていくのか、当事者である作家たちがこの経験から何を得るのか、『レイブン無頼』『ハラキリゴメン』の2作品を通して見守っていきたいと思います。

ただ、こんな風に思えるのは、どちらの作品も読んでいて素直に面白いと思えるからなんですよね。難しいことを考えるのも楽しいですが、やっぱりそれが何よりもうれしいです。

「時評」らしい話題もひとつ

電子版限定連載という、いささかニッチな話題に紙幅を大きく割いてしまいました。もう少し広い視野でジャンプについて考えるとなると、今月もやはり『鬼滅の刃』にはふれないわけにはいきません。

2020年2月4日、最新刊が発売されたタイミングで、単行本の累計発行部数が4,000万部を突破しました。最新刊は19巻ですから、単純計算で1巻当たり200万部以上刷られていることになります。

コミックス派の方のためにも詳細は書きませんが、本誌での展開もはまた新たな局面を迎えつつあり、目が離せません。

最後は次回の予告です

筆者は2015年12月から友人とふたりで、ジャンプの感想を話すポッドキャスト番組をやっています。毎週更新を目標に地道に続けているうちに気付けば200回を突破、番組は5年目を迎え、勢いに乗って去る2月22日(土)、番組の公開収録をしました。

ジャンプを読んだ上でポッドキャストも聴いてくれている方もいれば、ジャンプは読んでいないけど興味があってお越しいただいた方もいる……といった奇妙な空間で、ありがたいことにイベントは楽しく終えることができました。次回はこのイベントや番組のことを取り上げる予定です。どうぞお楽しみに!

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