Interview

ビッケブランカ 本性をリアルにさらけ出した3rdアルバム『Devil』。稀代のポップクリエイターの自信作とその先を訊く

ビッケブランカ 本性をリアルにさらけ出した3rdアルバム『Devil』。稀代のポップクリエイターの自信作とその先を訊く

ビッケブランカがオリジナル3rdアルバム『Devil』をリリース。
ミュージカルのような構成と溢れんばかりのポップネスが炸裂する「Ca Va?」(Spotify TV CM曲)、アニメ『ブラッククローバー』のOP曲として話題を集めた「Black Catcher」を含む本作。ロック、ポップス、EDMなど自由に行き来する奔放な音楽性はさらに進化し、既存のフォーマットを超越したビッケブランカのスタイルが大きく広がっていることが実感できる。歌詞では彼自身の感情や人生観が露わになり、“本性”がリアルに伝わってくることもこのアルバムの魅力だろう。
稀代のポップクリエイターとしての存在感を発揮し続けているビッケブランカに、アルバム『Devil』の制作と現在のモードについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 持田薫


自分のモードというか、そのときの旬なものを形にした感じですね、今回も

ビッケブランカ WHAT's IN? tokyoインタビュー

少し前の話になりますが、昨年10月に行われた東名阪のZeppツアー(「Vickeblanka Ca Va Tour」)、素晴らしかったです。

あ、良かったです。好き放題やっただけですけど(笑)。

バンドで演奏する曲、DJスタイル、弾き語りなどがあって、すごく自由度の高いステージだなと。

曲が優先なんですよ。「どうすればこの曲がいちばんカッコ良く伝わるか」を考えて、とにかく中途半端にならないように、ロックはロック、エレクトロはエレクトロでしっかり振り切って。なので自然とバリエーションが増えていくんですよね。だいぶやりたいことが実現できるようになったので嬉しいですね。

3rdアルバム『Devil』にも、いま現在のビッケブランカのモードが反映されいると思います。制作に入るときは、どんなテーマがあったんですか?

毎回そうなんですけど、特にコンセプトはないんですよ。11曲入れるって決めたら、11曲しか用意しないし(笑)。100曲作ってディレクターが選ぶみたいなやり方は絶対イヤですね、やったことないけど。いま言ってくれたように、自分のモードというか、そのときの旬なものを形にした感じですね、今回も。アルバムも3枚目で、以前よりも肩肘張らずにやれるようになってきたんですよ。前作(2ndアルバム『wizard』)までは、曲単位で自由に作りながらも、だいぶ真剣にやっていて。今回は良い意味でそこまで真剣じゃないというか、「自然に出てくるものをやればいい」という。

マーケットやトレンドは意識せず?

そうですね。狙いすまして作ってた時期もあるんですよ、じつは。4年くらい前なんですけど、そのときの曲はあまり良くないというか、自分の魂胆が見えちゃうんですよね。「キャッチ—にしたかったんだな」とか「聴きなじみのいい言葉を入れようとしたな」とか。曲に「親しみやすいでしょ?」と言われてるような気がするし、それってサムいじゃないですか。

まあ、意図が見え見えだと、ちょっと引いちゃいますよね。

そうそう。自然とキャッチーな曲になったら、それはそれでいいと思うんです。たとえば「このメッセージを言いたい」というものがあれば、自然とメロディがシンプルになったり。今回のアルバムに入っている「白熊 – Main Version」がそうですね。

「Ca Va?」こそホントに適当というか(笑)、思いのまま作った最たるもので

シングルとしてリリースされた「Ca Va?」はどうですか? フランス語で壮大に歌い上げて、ポップに展開する楽曲ですが、特に“狙った”わけではない?

「Ca Va?」こそホントに適当というか(笑)、思いのまま作った最たるもので。それが浸透してくれたことで、めちゃくちゃ救われてますね。パリに行ったとき、「みんな“Ca Va?”って言ってるな」と思って、サビだけ作ってたんですよ、もともとは。その後、Spotifyさんから「CMの曲として、奇抜な曲が欲しい」という話があって、Aメロ、Bメロを作って3分半くらいの曲にして。何をしてもいいというか、ルール無用のバーリテゥードみたいな感じで作ったから、たくさんの人が「いい」と言ってくれたのはホントに嬉しくて。

ライブでも冒頭のパートをお客さんが合唱していて。

フランス語で合唱って、意味わかんないですよね(笑)。ただただ楽しいし、それでいいと思うんです。それも音楽の根本なので。

アルバムの新曲「Shekebon!」は、どことなく「Ca Va?」の雰囲気を引き継いでいる感じもしますが…。

あ、そうですね(笑)。「Ca Va?」をおもしろがってもらえたから、「同じようなやり方で、それを2回できるのか?」という自分へのクイズみたいな感じです、「Shekebon!」は。

あくまでも自分自身の興味によって動いているという。

いかに聴き手を意識しないかが重要なんですよ。曲を作るときに「リスナーに喜んでもらおう」なんて思っちゃダメ。だって受け取り側には、いろいろと楽しいことがあるじゃないですか。音楽よりもフカヒレ食べるほうが楽しいだろうし。

こっちが好きなように作った曲を好きなように楽しんでもらうのが一番いい

ビッケブランカ WHAT's IN? tokyoインタビュー

(笑)。

いまの例えはアレでしたけど(笑)、こっちが好きなように作った曲を好きなように楽しんでもらうのが一番いいと思っていて。最初から「役に立ちたい」「応援したい」みたいな感じで作ったり、「みんなが求めている言葉は何だろう?」と考えるんじゃなくて、もっと音楽の本質を突き詰めたいんですよね。そのためにはやっぱり、自分のなかから自然に出てきたものじゃないと。

アルバムには「TARA – 2020 Mix」のような切なすぎるラブソングも収録されていますが、これも自然発生的な曲なんですか?

それはもう僕の根本的な性質ですね。「TARA〜」に限らず、最後の最後まで救いのない歌詞がけっこうあるんですけど、「そういう人間なんだろうな」と。「TARA〜」はねえ、すごい好きなんですよ。だいぶ昔の曲なんですけど、初めて実体験をもとにして書いて、自分の作詞の歴史を変えた曲なんです。ライブでも歌いたいから、ミックスし直して収録したんですけど……ここで矛盾が生じるんですよね。「ライブで歌いたい」って意識してるわけだから。

制作のときは自分のことしか考えず、ライブになると「あなたに笑ってほしい、楽しんでほしい」ということに集中するのがベスト

いいことじゃないですか(笑)。

いや、違うんです! 制作のときは自分のことしか考えず、ライブになると「あなたに笑ってほしい、楽しんでほしい」ということに集中するのがベストで、そこが混ざり合うと純度が下がる気がするんですよ。だけど「TARA〜」に関しては、どうしてもライブで歌いたいと思ってしまって。なんでそうなったかというと、最近、ライブが楽しすぎるからなんですよね。去年のZeppツアーもめちゃくちゃ楽しかったし、制作していてもライブの絵が浮かんでくることがあって。リスキーですね。

「Avalanche」もライブ映えしそうな壮大な曲ですね。

アルバムの最後に自然の驚異とか、大自然の力みたいなテーマの曲を入れるという流れがあって。1stアルバム『FEARLESS』の「THUNDERBOLT」、2ndアルバム『wizard』の「Great Squall」があって、今回は冬や雪をテーマにして、雪崩という意味の「Avalanche」を作りました。あと、この曲には「みんなの代表として、どんなことが言えるだろう?」というテーマもあって。“俺たち”を主語にした歌詞というか。

“最低の人間として/最善の手本として/叫ぶよ助けを呼ぶように”という歌詞がすごいなと。

ついに認めてしまいましたね、自分で。「自分は最低だな」と思ってた時期がホントにあったんですよ。大学を辞めて、事務所に所属までの宙ぶらりんの2年間があって。インタビューとかでは「ピアノを一から学び直して…」みたいなことを話しているんですけど、死ぬ気でやってたか? と言えば、そうでもなかったわけで。週に1回は徹夜でマージャンやってましたから。

微妙な絶望感を感じてる人に向けて、「ゆっくりでもいいから歩を進めれば、最低でも自分くらいにはなれるよ」と言いたくて

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誰かに「曲を書け」と言われるわけでもないし、自分のやる気だけが頼りですからね。

そうそう。自分の状況に目を背けていたし、心が晴れなかったんですよね。同じような状態の人って、意外と多いと思うんですよ。絵を描きたいとか、芸術の方面に行きたいとか、やりたいことがあるんだけど、いまいち進めないっていう。そういう微妙な絶望感を感じてる人に向けて、「ゆっくりでもいいから歩を進めれば、最低でも自分くらいにはなれるよ」と言いたくて。いまはいろんな人のおかげで活動できてるし、いい時間を提供できてる自負もあって。「あきらめぬ者たち/全てに幸あれ」と今だったら歌えるかなと。

サウンド的には、EDMに振り切った「Save This Love」「Heal Me」が印象的でした。

EDMは聴くのも大好きで。ダンスミュージックって、歌が重要なんですよ。音数が少ないなかでしっかり歌を聴かせて、サビのパートに入っていくじゃないですか。なので歌詞とメロディがすごく大事で、完璧に歌わなくちゃいけないし、じつは弾き語りに近いんですよね。

ソングライティングの技術、シンガーとしての力量、フロアを盛り上げるトラックが揃っていないといけない。

そう。それって、自分がやりたいことが全部詰まってるんです。ただ、日本はEDMのマーケットがないんですよね。海外のリスナーは日本語のEDMを聴かないだろうし、国内のEDM好きは海外アーティストの曲を聴いてるので。だけど「自分にはもっとやれる」という自負もあるので、ビッケブランカとは別のプロジェクトを立ち上げて、EDMはそっちでやろうと思ってるんですよ。世界標準の発音、歌唱、アレンジ、音圧で曲を作って、どんどん海外に出ていきたくて。有力なプレイリストに入って、EDMフェスに出るっていう明確な目標があるし、DJランキングに入る初めてのアジア系アーティストになりたいなと。

ビッケブランカとの活動ははっきり区別すると。

そうですね。ビッケブランカはさっきも言ったように、自分がやりたいことをやり続けたいので。そこは明確に違いますね。

より真剣にレベルアップするためには忌憚なき意見を伝え合わなくちゃいけないし、そのなかで「悪魔だな、おまえ」と言われたりするんですよ

ビッケブランカ WHAT's IN? tokyoインタビュー

『Devil』というアルバムタイトルについては?

なんかね、最近、僕の性格が悪くなって言われてるみたいなんですよ、風の噂で。

(笑)そう言われる心当たりはあるんですか?

ありますね(笑)。いまはもっともっとステップアップしなくちゃいけない時期で、みんなの感覚を鋭敏にしてほしくて。より真剣にレベルアップするためには忌憚なき意見を伝え合わなくちゃいけないし、そのなかで「悪魔だな、おまえ」と言われたりするんですよ。で、「だったらタイトルは『Devil』だな」って。

全体を通して、本性をさらけ出してるかもしれないですね

なるほど。それは性格が悪いというより、シビアに物事を見て、実行しているということですよね。

そうなんですよ。バンドもスタッフも一段階上げる必要もあるし、みんなもそれを分かってくれて。そのおかげで、歌詞でも本性を出せるようになってきたんですよ。さっきも話に出た「白熊〜」でも、慰めるのではなくて、「やっぱりそいつは許せない」って歌っていて。全体を通して、本性をさらけ出してるかもしれないですね、今回は。

アルバムのツアーもあるし、EDMプロジェクトもあって。2020年は大きく飛躍する年になりそうですね。

新しいチャレンジは多くなりそうですね。今までは「いい曲を書いて、いいライブをやる」ということに集中していたんですけど、EDMプロジェクトでは「こういう段取りで上がっていこう」という目標もあるので。自分でも楽しみですね。

その他のビッケブランカの作品はこちらへ。

ライブ情報

Tour de Devil 2020

4月3日 宮城・仙台Rensa
4月12日 石川・金沢EIGHT HALL
4月18日 北海道・札幌PENNY LANE 24
4月29日 大阪・オリックス劇場
5月1日 愛知・日本特殊陶業会館フォレストホール
5月3日 広島・広島クラブクアトロ
5月4日 福岡・福岡DRUM LOGOS
5月9日 東京・中野サンプラザ ※SOLD OUT
※詳細はオフィシャルサイトで

ビッケブランカ

2016年ミニ・アルバム『Slave of Love』でメジャーデビュー。
2018年2ndアルバム『wizard』収録曲「まっしろ」がドラマの挿入歌に抜擢され、同アルバムツアーを全国7都市開催し、各地SOLD OUTを記録。
2019年にリリースした3rdシングル「Ca Va?」が音楽配信サービスSpotifyのTV CMに起用され、2019年度6月度銘柄別CM好感度トップ10入り(CM総研調べ)。
そして、東名阪ZEPPで開催された「Vickeblanka Ca Va Tour」は全SOLD OUT。同年10月からFM802「MUSIC FREAKS」のレギュラーDJを隔週で担当。12月4日には新曲「白熊」をデジタルリリースする。
2020年は東名阪ホールツアーを含め全国ツアー「Tour de 2020」を開催。
独創的なピアノスタイルとジャンルレスな作風が魅力のシンガーソングライター。
“Zoff”サングラスコレクションのビジュアルモデルに起用、Twitchの公式パートナーに認定され「FORTNITE」を不定期にストリーミング配信するなど、音楽以外の分野での活躍も目覚ましい。

オフィシャルサイト
https://vickeblanka.com

オフィシャルTwitch
https://www.twitch.tv/elk_virch

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