Interview

ももすももす 1stアルバム『彗星吟遊』に描かれた独創的な世界観。儚さ纏う曲たちに注いだ切実な思いを訊く。

ももすももす 1stアルバム『彗星吟遊』に描かれた独創的な世界観。儚さ纏う曲たちに注いだ切実な思いを訊く。

2018年にソロ活動を始めたシンガーソングライター・ももすももす。2019年2月にメジャー・シングル「木馬」でデビューを飾り、続いて同年11月にリリースした2ndシングル「アネクドット」表題曲がTVアニメ『旗揚!けものみち』エンディング・テーマに起用。そして、このたび全12曲入りのメジャー1stアルバム『彗星吟遊』を完成させた。透き通るようなハイトーン・ボイスを武器に、ソロ作ならではアイデアを散りばめた楽曲には彼女の独創的な世界観が開花している。今作に触れた人の生き様や物の見方が少しでも変わればいいと願う、彼女の切実な思いが詰まった作品について、じっくりと話を訊いた。

取材・文 / 荒金良介 撮影 / 持田薫


誰かを音楽で救えたらいいなと思います

ももすももす WHAT's IN? tokyoインタビュー

ももすさんはシンガーソングライターになる前にもともとメランコリック写楽というバンドで活動されてましたよね。今振り返って、バンドをやっていた頃はどんな時期だったと思います?

学校に通っていたような感覚ですね。今はその学校を卒業して、学校で学んだことを活かしているので、自分にとってかけがえのない期間でした。

「ヨーロッパ返して」とかすごくいい曲ですよね。曲名もそうですけど、楽曲も中毒性が高くて。

聴いてくれたんですね?ありがとうございます!ただ、バンドの頃はこのメンバーはこのフレーズが好きだから、それを入れてみようとか、いろいろ考えることがあったので。今はベースやドラムも打ち込みでやっているし、一人で演奏しているような感じだけど、今作はエレキシタール、バグパイプ奏者さんも呼んで、アドリブで弾いてもらった曲もあるんですよ。だから、また違う意味でバンドになっているなあと感じます。

なるほど。ももすさんはメランコリック写楽を脱退して、その後にバンド自体も解散したようですね。

う〜ん、私は人と何かを協力してやるのがあまり向いてないみたいで。誰かを傷付けているんじゃないかと気にしちゃうし、自分も傷付きやすかったりするんですよ。でも曲自体は残って欲しいから、もしメンバーが私の作った曲をやり続けたいと思うのであれば、バンドは続けて欲しいと思ったんですけどね。私が脱退すると言ったら、じゃあ、解散しようという流れになりました。ただ、今もメンバーとは仲が良くて、たまにご飯に行くし、遊びにも行くんですよ。かけがえのない友達ができたので、それは良かったです。

ももすさんの現在の音楽に関して、何か感想を言われることもあります?

「かっけー!」って(笑)。「ドラムの打ち込みって面白いんだねえ」って、こんな口調で言ってくれます。

はははは。ももすさんは一人で音楽活動する上で不安はなかったんですか?

曲を作ることに関してはバンド時代と変わらないし、いままで通りに作ってますからね。

もともと歌手になりたいという気持ちは昔から持っていたんですか?

なかったです。もともと私はギターを弾いてて、ある時から自分の好きな曲を作って、自分で歌いたいなあと急に思い始めたんですよ。自分が書いた曲を忠実に表現するためには、自分で歌うしかないなと。まさか子供の頃は歌う人間になるなんて思ってなかったです。小学校の卒業文集の将来なりたいものに「ユニセフに入って子供を救いたい」と書いてましたからね。だいぶ方向性は変わりましたけど(笑)、誰かを音楽で救えたらいいなと思います。

自分の心の中にある渦を外に出す行為がたまたま音楽だった。それは表現したいというより、体の内容物を外に吐き出したいという感覚なんです

ももすももす WHAT's IN? tokyoインタビュー

様々な音楽に触れる中で私だったらこういう風に歌うのに、という気持ちが強くなったとか?

いえ、そうではなくて、自分の中に溜まっているものを形にするような作業なんですよ。例えば絵を書くとか、曲を作るとか、いろんな手段があるじゃないですか。自分の心の中にある渦を外に出す行為がたまたま音楽だったという。それは表現したいというより、体の内容物を外に吐き出したいという感覚なんです。目に見えない液体を耳に聴こえる音に変換する作業というか。

ももすさんは表現の仕方が独特ですね(笑)。

私は音楽を作って発表しているけど、それが何百年後にも残るのかなと考えたら、最近この作業が好きになりました。どこかの宇宙人が日本に来て、CDを見つけて、自分の曲を再生してくれたら嬉しいなって。そうすることで宇宙人の生活が豊かになって、それに貢献できたらいいなあって。夢があるじゃないですか。

有意義なものをこの世に残したい

ももすももす WHAT's IN? tokyoインタビュー

なるほど。生きた証を残したいという気持ちもあるんですかね?

生きた証というか、橋を建設したいみたいな気持ちです。意味がわからないかもしれないけど、有意義なものをこの世に残したいなと。この世にハサミがなくて、私がハサミを発明して、500年後にみんながハサミを使っていたらめっちゃ嬉しいじゃないですか。そういうものに曲がなったらいいなと。

何か人の役に立てるものを作りたいと。そういう気持ちは最初から持っていたんですか?

一人で活動するようになってから、すごく考えることが増えたので、それが大きいかもしれないですね。

そして、今作は素晴しいアルバムに仕上がりましたね。まずはアルバム名がいいですね、プログレの邦題っぽくて。

プログレ感はまさに出そうと思ってました。ピンク・フロイド感を出そうかなって。

「原子心母」(ピンク・フロイドの『ATOM HEART MOTHER』日本盤の邦題)みたいな?

そうです! 洋楽はそこまで聴かないんですけどね。何を聴いてそうですか?

逆質問ですね(笑)。ももすさんの音楽はいい意味でどこから影響を受けているのか見えないところがあるんですよね。

ヒップホップも好きだし、シンセ系も好きだし、わりと何でも聴くんですよね。山口百恵さん、Jロック、インストの曲、オーケストラの動画を観るのも好きなんです。ただ、青春時代に一番聴いたのはART-SCHOOLでした。

ART-SCHOOLのどこに惹かれたんですか?

人間の寂しいところが鮮やかに儚げに描かれているところが好きですね。

それはももすさんが作る音楽にも通じるところがありますね。

ただ、自分でも何に影響を受けているのかわからないんですよ。ある時はその晩に食べた超おいしい牛ヒレのことを考えていたかもしれないし、ある時は誰かとケンカした後かもしれないし、ある時はひらすら走り続けて疲れ切った後かもしれないし、あるときは花を見た後かもしれないし・・・何かしらに影響は受けているんでしょうけどね。

内容的には過去も含まれているし、夢の中の出来事もあるし、未来もあるし・・・時間軸はあまり考えてないんです

ももすももす WHAT's IN? tokyoインタビュー

今作は紙資料に「心の宇宙に浮かぶ彗星を、観測したアルバムです」と説明がありましたけど、作る上ではどんなことを考えました?

何だろうなあ、次のアルバムはどうなるんだろう?って想像できる作品にしたかったんですよ。内容的には過去も含まれているし、夢の中の出来事もあるし、未来もあるし・・・時間軸はあまり考えてないんですけどね。

楽曲について聞いていきたいんですが、「桜の刺繍」は昔の歌謡曲を彷彿させるメロディ・ラインが印象的でした。

影響は出ているのかもしれないですね。その曲は最後の方に桜が散る音をイメージしたコーラスを入れているんですよ。そこに注目して聴いてほしいですね。

あの儚げなコーラス・ワークもとても良かったです。そして、バラード調の「シャボン」も個人的に大好きな1曲で。

この曲は一番向き合うのが大変でした。これまでピアノを入れたことがなかったし、こういうバラードも作ったことがなかったから。でもこの作品には絶対必要な曲だなと思いました。今回はA面(1〜6曲目)、B面(7〜12曲目)という風に分けていて、「シャボン」はA面の終わりを飾るのに相応しい曲だなと。次の「隕石」を聴いてもらうためにも、いい流れになっているし、(「シャボン」が)キレイに締め括ってくれているなと。

ももすさんはもともとピアノをやっていたこともあり、「シャボン」のようなアプローチもやってみたかったことですか?

ピアノの弾き語りを聴くのも好きだし、そういう気持ちはあったんですけど、まさか自分が作れるとは思ってなくて。制作段階ではギターでもやってみたけど、ピアノが一番しっくり来たんですよ。

そういう意味では今作の中でもチャレンジした楽曲?

はい。いままでの中で一番自分になかった要素ですね。

こうしたゆったりした曲調に歌を乗せるのは難しかったですか?

難しかったです。この歌を練習したことでかなり成長できたと思います。いままでは早口の曲が多かったんですよ。だから、この曲で新しい技を得た感じですね。レベルが2ぐらい上がりました(笑)。

神様も愛も目に見えないし、シャボンも割れたら目に見えなくなるじゃないですか

ももすももす WHAT's IN? tokyoインタビュー

「神様に蹴飛ばされても 愛を叫び ろうそくの火のようにじんじんと燃え尽きる」の歌詞もストレートで力強い描写ですよね。

神様も愛も目に見えないし、シャボンも割れたら目に見えなくなるじゃないですか。そこはリンクできて良かったと思います。

「でも届きそうで届かなくなってもまだ好きなの あの子に惹かれてしまうところも」の歌詞はあまり他人には見せたくない感情まで曝け出してますよね。

「あの子に惹かれてしまうところも」みたいな歌詞は私も歌いたくないです。だけど、自分が見せたくない気持ちの方が誰かの心に残ったり、誰かを救うことができるのかなと思いました。あと、私は飽き性だから、ゆっくりな曲を作っていると、1小節が終わるのにこんなにかかるの?と思って。そういう意味でも頑張った曲ですね。

またこうしたバラード・ナンバーも聴いてみたいです。

忍耐力を身に付けます(笑)。自分でそういう曲を聴くのが好きなんですけどね。

あと、最初の方にも話してくれましたが、「ハネムーン」はいろんな楽器が入ってて、新しいタイプの曲調ですよね。

ソロになって初めて3拍子の曲を作ったんですよ。「ハネムーン」、「シクラメン」もそうなんですけど、こういう曲を作ることで制作の幅も広がりました。バンドじゃないから、いろんな音を入れても大丈夫だし。バグパイプだけじゃなく、シンセやピアノも入れてますからね。歌詞も気に入っているし、歌うのが楽しくて、メロディも好きですね。今回、バグパイプの音階を知れたこともすごく勉強になりました。バグパイプはドの音が出せないから、「ハネムーン」のキーが出せなかったんですよ。どうしようと思って、一度曲のキーを変えて、バグハイプに合わせて、その後にバグパイプのキーを元の曲のキーに戻す作業をやったんですよ。音楽って楽しいなと思えた瞬間でしたね。

もともと制作段階でバグパイプは入っていたんですか?

最初は打ち込みで入れてたんですけど、イマイチ音が違うなと思って。曲にパンチを出したくて、世の中にバグパイプ奏者さんがいることを知って、それでお願いしたいなって。あの音で運気が上がりそうだなって思いました(笑)。聴いた人も運気が上がると思います。私はバンド形式でライヴをやっているんですけど、ギタリストとベーシストにもレコーディングで弾いてもらったんですよ。この曲はいろんな人のいろんな味が詰まっているので、それも気に入ってます。

「ハネムーン」は切なさがありながらも、明るいサウンドに仕上げた曲調ですね。今作の最後を締め括るのに相応しい楽曲だなと。

聴く人によっては悲しい気持ちになる人もいるかもしれないけど・・・日常から離れられる作品になったらいいなと思いました。一度、換気してみるというか、そういう作品になったらいいなと。あと、次のアルバムはこうしたいから、今回は入れないでおこうと思った曲もあるんですよ。やっぱり最初はストレートなロック作品にしたいと思ったから。

ちょっと生き方だったり、物の見方が変わってくれたら嬉しいですね

これからまた音楽的な可能性は広がりそうですね。今作の楽曲はライヴでどんな風に届いたらいいなと思ってます?

ライヴのときは重力を忘れて生きたいし、観る人もそういう風に感じてくれたらいいなって。自分の曲を好きでいてくれる人は・・・いきなり変わることは難しいかもしれないけど、ちょっと生き方だったり、物の見方が変わってくれたら嬉しいですね。

その他のももすももすの作品はこちらへ。

ライブ情報

1stアルバム『彗星吟遊』リリース記念インストアライブ
3月8日(日) タワーレコード梅田大阪マルビル店 17:00〜
3月22日(日) タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース 12:00〜

「ひつじウォーズ2020」
3月29日(日) 梅田ライブハウス5会場(大阪) OPEN / START 12:00
詳細はこちら

ももすももす

1995年9月11日生まれ。
埼玉県出身。シンガー・ソングライター。
学生時代にバンドを組み、作詞・作曲を始める。
2018年よりソロ活動を開始。
日本コロムビア「TRIAD」より2019年2月シングル「木馬」でメジャーデビュー。

オフィシャルサイト
https://www.momosu-momosu.com/
https://columbia.jp/momosu/