Interview

富野由悠季はなぜ『Gのレコンギスタ』に、アニメにこだわるのか。「いまだにスペースコロニーを信じている人に“もっと気をつけてほしい”」

富野由悠季はなぜ『Gのレコンギスタ』に、アニメにこだわるのか。「いまだにスペースコロニーを信じている人に“もっと気をつけてほしい”」

<劇場版『Gのレコンギスタ Ⅱ』「ベルリ 撃進」 富野由悠季×荒木哲郎スペシャル対談・後編>

富野由悠季総監督による15年ぶりのTVアニメシリーズとして、2014年に放送された『Gのレコンギスタ』(『G-レコ』)。SFロボットアニメの金字塔にして、シリーズの原典となる『機動戦士ガンダム』の生みの親が久々に取り組んだ作品だ。そんな『G-レコ』が劇場版としてリブートされ、富野監督みずからの手により、なんと全5部作として再構成。2019年11月からの上映を順次スタートさせた。

第2部となる劇場版『Gのレコンギスタ Ⅱ』「ベルリ 撃進」は、『G-レコ』TVシリーズ全26話中、第6話~第11話に相当するエピソードを再構成したもの。ここに含まれる第10話「テリトリィ脱出」は、アニメ『進撃の巨人』監督として知られる荒木哲郎が絵コンテ・演出を担当した回としても知られている。そこで今回は劇場上映を記念し、荒木哲郎をゲストに迎える形で富野由悠季とのスペシャル対談企画(全2回)を実施。後編では、ガンダムファンの枠を越えて話題となったDREAMS COME TRUEによるまさかの楽曲提供や、『G-レコ』を通して富野監督が語ろうとしていることについてあらためて話を聞いた。

取材・文 / 山下達也(ジアスワークス)
構成 / 柳 雄大 撮影 / 松浦文生


インタビュー前編はこちら
『Gのレコンギスタ』異例の全5部作リブートの理由 富野由悠季、『進撃の巨人』荒木哲郎と語りつくす“劇場版総集編”の面白さ

『Gのレコンギスタ』異例の全5部作リブートの理由 富野由悠季、『進撃の巨人』荒木哲郎と語りつくす“劇場版総集編”の面白さ

2020.02.28

「ドリカムにモビルスーツって言わせるとは思いませんでした」(荒木)、「僕はあれが大嫌い(笑)」(富野)

劇場版『Gのレコンギスタ Ⅱ』「ベルリ 撃進」は、エンディングロールでかかるテーマソングを国民的アーティストDREAMS COME TRUEが担当したことでも話題になった。もちろん既存曲の提供ではなく、本作のための新曲として「G」が描き下ろされている。ガンダムとドリカム、日本人なら知らぬ者のいない2大ビッグネームのコラボレーションにはどのようなストーリーがあったのか。ぜひ、本稿を読まれた上で、改めてエンディングロールをご覧いただきたい。

Gのレコンギスタ 富野由悠季 荒木哲郎 WHAT's IN? tokyoインタビュー

富野由悠季 エンディングロールと曲の関係はどう思った?

荒木哲郎 すごく面白かったです。ただびっくりはしましたね、やっぱり。DREAMS COME TRUEという名前がすぐにガンダムや『G-レコ』に結びついたわけではないので、初めて聞いた時は「えっ!?」って思いました。ただ、いざ流れてみたら自然にするっと入って、何ならメチャメチャなじんでいるように思えました。朗らかな、楽しく終わる感じがすごく良かったです。

富野 まったくもってその通りなんだけど、でもこれ半分は結果論なんだよ。なにせ当初届いたのがインストゥルメンタルだけだったんだから。これだけを頼りに画を構成しなければならないとき、正直、どうごまかそうか1週間くらい悩みましたね。インストゥルメンタルだけでもリズム感だけはわかるので、テンポを殺さないように画を付けていかないといけないんだけど、僕はこれまで最低でも1楽節ごとにはきちんと画を合わせてきた人間だから、何となく流すなんてことはできなかった。

また、ありがたいことにスケジュールもなくてさ(笑)、エンディングロールのために新規作画をやることもできない。でも、スピード感だけは映像上でフォローしなくちゃいけない……それで思いついたのが、アイリス(アイリスワイプ)でやるってこと。これならアイリスを動かすだけでスピード感を出す事ができるでしょう? それで「勝てる!」って思った。

荒木 この作品には水の玉だったり、ノベル(ハロビー)だったり、ボール状のものがたくさん出てきますから、アイリスっていうのは相応しいアイコンだと思います。

富野 それを思いついたから、後はどんなボーカルが来ても絶対に逃げ切れるとは思った。それでアイリスに入れる画(え)を選び始めたんだけど、ここでまた愕然とした。絵コンテを何度見直しても、ベルリとアイーダのカッコいい決めカットがどこにもない。なんだこの絵コンテは、誰が描いたんだって本当に腹が立った。

荒木 でも俺、あそこのセレクト良いなって思いました。浜辺でメカマンがコンテナに顎をぶつけるようなところをけっこう大きく使っていたりして、これは富野さんらしい仕事だなって思いました。

富野 であれば、もう1つほめてほしいのが、第10話(荒木が絵コンテ・演出を担当)の鹿のカットを使っていること。これはもう荒木さんへのごますりだから(笑)。そして、なんでこういう幅広い選び方をしたのかっていうと、歌詩カードが来ないし、決めカットもない以上、バイプレイヤーで持たせるしかないって考えたから。ところで荒木さんは、歌詩に「シェイクスピア」って入ってるの知ってる?

荒木 あ、すみません。それは気がつかなかったです。

富野 曲のサビの部分に「even Shakespeare musta tasted~」(直訳:シェイクスピアでさえ味わったに違いない)って入ってるんです。シェイクスピアだよ? 当然、これに対応できるカッコいい画なんてどこにもないわけ。それでもう、あえて歌詩から遠い方が、マッチングしないからこその意味が発生するかも知れないって考えたのね。後はもう、野となれ山となれですよ。

Gのレコンギスタ 荒木哲郎 WHAT's IN? tokyoインタビュー

荒木 歌詩で言うと冒頭に「モビルスーツ」って入っていますよね。ドリカムにモビルスーツって言わせるとは思いませんでした。

富野 僕はあれが大嫌い(笑)。仕方なくモビルスーツの画はいれましたけど、ビームが光りまくってて、なんだか分からない画にしてやりましたというのはウソで、うまくいった!

荒木 すごい(笑)。いやしかし、歌詩と画の対応をそんなにもしっかり気にしていたんですね……。

富野 気にはしていても、聞ききれていなかった……(苦笑)。

荒木 そんな風には全く見えませんでしたが、でもほら、歌詩を全く気にしないという演出もあるじゃないですか。

富野 いや、曲をもらったからには、こちらから要請した上で引き受けてくれたものに対しては、受けて立ってみせるということをやらなくちゃいけない。ほとんどの映画が黒いバックのスタッフロールにただ曲を載せているだけっていうのを知っているからこそ、正面切って使ってみせたいんですよ。そして何より、吉田美和さんに嫌われたくないわけ(笑)。彼女に激怒されたらどうしようっていうのも背負った上でやっているわけだから、それは気にしましたよ。

荒木 たしかに、手伝ってくれた人がやりがいを感じてくれたかなっていうのは、普段俺もすごく気にします。

Gのレコンギスタ 富野由悠季 WHAT's IN? tokyoインタビュー

富野 それで言うと、エンディングロールにはもう1つ嫌われる覚悟が必要な要素があるのよ。(同席した制作メンバーの方をふり返って)気がついてないでしょう? それは作画スタッフから袋叩きにあうって覚悟。あの映像で自分の名前がどこにあるか読めるヤツがいたら教えてほしい。

荒木 ああ、なるほど。確かにスタッフの名前の所に画が重なっていると読みにくくなりますよね。でもそんなに読みづらくないんじゃないでしょうか? 僕は自分の名前をちゃんと見つけられましたよ。もちろん、それはそれとしてエンディング全体も楽しめましたし。

富野 これは袋叩きにされるんですよ。とは言え、今は本編が終わった瞬間にお客さんが席を立つという時代。だからこちらはスタッフに対して落とし前を付けるという覚悟であれを作った。文句があるヤツはブルーレイ買え、買って好きなだけ一時停止して読めって。

荒木 じっくり確認したい人はブルーレイで見てね、っていうのは僕もやっちゃってますね(笑)。

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