モリコメンド 一本釣り  vol. 159

Column

Rude-α 沖縄出身、現在23歳。ヒップホップの枠を超え、進化し続けるニューカマー

Rude-α 沖縄出身、現在23歳。ヒップホップの枠を超え、進化し続けるニューカマー

いまさら言うまでもなく、世界の音楽シーンのメインストリームはヒップホップである。たとえば今年のグラミー賞でBTSとコラボレーションしたリル・ナズ・Xは、昨年あたりからTikTokの動画サイトで支持を集め、瞬く間にワールドワイドなスターになったラッパー/シンガーソングライター。代表曲「Old Town Road」のYouTubeでの再生回数は4億3,000万を軽く突破し、カントリーとラップを融合させたスタイルは世界的な流行になりつつある。2020年9月に初単独公演が決まったビリー・アイリッシュも当然、ヒップホップの影響を強く受けている。ゴリゴリのヒップホップ・アーティストだけでなく、“ポップミュージックにおいて、ヒップホップは必要不可欠”と言っていいだろう(世界的には)。

と、こんなことを書くと“日本には日本の音楽があるんだから、海外のマネをしなくてもいい”という意見が飛んできたりするのだが、ここ日本でも少しずつではあるが、ヒップホップのテイストを色濃く反映させたアーティストが登場している。宇多田ヒカルとの共演で話題を集め、世界的な評価を獲得している“KOHH”、J-POPやバンドシーンとも交流し、幅広いファンを得ている“SKY-HI”、リアルな実体験を反映した歌詞によって若いリスナーに強く支持されている“BAD HOP”、ジェンダーを超え、自分らしく生きよう!というメッセージが心に刺さる“あっこゴリラ”、アイドル並みのルックスとトラックメイクのセンス、ポップなフロウを兼ね備えた“さなり”。実力と人気を共存させたこれらのアーティストの作品やライブを体験すると、日本のヒップホップも負けてないな!と嬉しくなってしまう。

今回紹介するRude-αも、日本のヒップホップシーンを背負い、よりポップに展開できる(=めちゃくちゃ売れて、幅広い層のリスナーに浸透できる)可能性を持ったアーティスト。沖縄出身、現在23歳のニューカマーです。

地元・沖縄で多様な人種、多彩な音楽のなかで育ったという彼は、高校生のときにストリートダンスをはじめ、さまざまなダンスバトルやイべントに出演。さらに近所の公園でフリースタイルを仕掛けられたことをきっかけにラップに興味を持ち……というプロフィールが既にマンガみたいである。というか、カッコよすぎる。

マンガみたいなストーリーはさらに続く。ラップにハマったRude-αは徐々に才能を発揮し、第6回全国高校生ラップ選手権で準優勝を獲得、 2015年6月に1st EP「098 ORCHESTRA」を発表し、アーティストとしての活動をスタートさせる。翌年春に上京してからは、さまざまなスタイルにチャレンジ。ドラムとラップだけの楽曲「19」を皮切りに生楽器を取り入れ初め、2017 年 からはバンド編成でのライブをスタート。また、自主企画ライブイベント”TEEDA”を立ち上げ、韻シスト、Creepy Nuts、DATS、Lucky Tapes、SUSHIBOYS、ゆるふわギャング、Michael Kaneko、踊 Foot Works、Anly、SPiCYSOL、吉田凜音といった幅広いジャンルのアーティストと交流しはじめた。

2018年に全米7都市を廻るSXSW ジャパンツアーに参加したRude-αは、昨年5月にEP「22」でメジャーデビュー。ライブの規模も拡大し、コアなヒップホップ・ファン以外のリスナーにもアピールしている。

飛び跳ねるようなビートが特徴の“トラップ”、緻密なリズム構成の“ドラムンベース”などを取り入れたサウンド、身近な題材をキャッチーに描き出す歌詞とポップかつメロウなラップ。Rude-αの音楽スタイルは、2020年3月4日にリリースされる1stフルアルバム『23』によってさらなる進化を果たしている。

華々しいホーン・サウンドと鋭利なドラムンベースが重なるトラック、スピード感のあるフロウとともに恋愛の切なさ、苦しさを放ちまくるリリックを両軸にした「アイスクリーム」。昨今のオルタナR&B的な(低音をしっかり押し出した)リズムとともに“この場所でやるしかないんだよ”とメッセージする「wonder」。冒頭の2曲を聴いただけで、Rude-αのハイブリッドな音楽性――現行のヒップホップを軸に、J-POP的なテイスト、ダンスミュージックとしての機能を加えた――を感じてもらえるはずだ。

アルバムのタイトル曲「23」は、ヒップホップとの出会い(前述した“公園でフリースタイルを仕掛けられた”エピソード)、そのまま音楽の道に進み、ステージに立ち続ける日常をストーリー仕立てにした楽曲。自身の半生をそのままラップするオーセンティックなナンバーだが、ここで歌われていることに憧れ、「私も、俺もやりたい!」という思いを抱くティーンは必ずいるはず。Rude-αの物語に共感し、影響を受けた人々が自らのストーリーを歌詞にしはじめたとき、日本のヒップホップのすそ野はさらに大きく広がるだろう。

文 / 森朋之

オフィシャルサイト
https://www.rude-alpha.com

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