Interview

向井 理がコミカルでシリアスな難役に挑む。舞台『リムジン』が伝える、誰でも犯してしまう小さな“嘘”の積み重ね

向井 理がコミカルでシリアスな難役に挑む。舞台『リムジン』が伝える、誰でも犯してしまう小さな“嘘”の積み重ね

近年、数多くの話題の映画・ドラマ、舞台にも出演している向井 理が主演を務める、M&Oplaysプロデュースの舞台『リムジン』が5月23日(土)から本多劇場を皮切りに上演される。
主人公の男が保身のために思わずついた“嘘”が次の“嘘”を呼び、やがて取り返しのつかない事態を招いてしまう、悲喜交々の人間模様を描いた物語。田舎町で工場を営む主人公の男役を向井 理、男の妻役を水川あさみが演じ、小松和重、青木さやか、宍戸美和公、田村健太郎、田口トモロヲが共演する、7人による少数精鋭の舞台。
その舞台で主演を演じる向井 理に今作のことを聞く──。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶


100パーセントのコメディーではなく、シリアスも兼ね備えた作品

まず、今作に出演するきっかけを教えてください。

もともと、作・演出の倉持 裕さんの作品を拝見していて、“いつかご一緒したい”といろいろなところで話していたら、“どうやら向井 理は、倉持 裕さんと一緒に仕事をしたいらしい”とキャッチしていただいて(笑)、プロデューサーの方を含めて2年ほど前にお食事をしたのがきっかけです。

そのときの食事会ではすでに倉持さんに作品の構想はあったのですか。

すでに構想は描いていたようで、100パーセントのコメディーではなく、シリアスも兼ね備えた作品にしたいとお聞きしました。ただ、その時点では、具体的にどのような物語になるかは決まっていなかったと思います。

リムジン 向井 理 WHAT's IN? tokyoインタビュー

プロットを拝見すると、“嘘”を巡る心理サスペンスというお話ですね。

まだプロットの段階ですので、脚本をいただいて稽古をしてから作品のことを知っていくことになると思いますが、大切なのは“倉持色”になるということだと思います。人に嘘をついたり、誰にも言えない秘密を持つことは、大なり小なり、生きていれば皆さん経験されるので、今作ではそこが共感しやすいポイントだと思います。

サスペンス要素のある作品を演じるにあたって気をつけていることはありますか。

本当に日常で起こりそうなことを作品にするので、奇をてらったことを狙わずにリアリティーを生み出したいです。今作はどうやって“嘘”をごまかすのかがモチーフとなって、7人という少人数のコミュニティーで人間関係の移り変わりを表現するので、細かいお芝居が必要になります。お客様との距離が大切になると思うので、客席とちょうど良い距離感を保つことができる本多劇場のような劇場に合っている作品だと思います。

“嘘”に“嘘”を重ねるという意味では、タイムリーな話題でもありますね。

たとえば、寝坊をして学校や職場に遅刻したのを電車のせいにする些細な“嘘”は誰にでもありますよね。そして、実は知り合いが同じ電車に乗っていて電車のせいではないことがバレてしまい、さらに“嘘”で塗り固めなければいけなくなる。そんな日常にありそうなことをピックアップして、虫眼鏡で大きくして楽しむことも演劇には重要だと思います。おっしゃるように、時代の風刺もありますが、シチュエーションとしてはどこにでも起こり得る設定で、他人から見ればひと言で解決できることが、当事者は命がけで守らなければいけなくなってしまう。そういう姿が滑稽に見える舞台だと思います。

誰でも似たような経験をするかもしれない危機感を感じていただきたい

さらに、夫婦の物語でもあるということですが、現時点で倉持さんから言われていることはありますか。

俳優はあくまで脚本に沿って演じることが大切だと思っているのですが、今作についていえば、小さな“嘘”をついて、帳尻を合わせるためにさらに違う“嘘”をついて身動きが取れなくなってしまう人物を演じることになると思います。倉持さんとお話をすると、“笑いはつねに生まれるようにしたい”とおっしゃっていたので、笑いの中にシリアスな要素を入れながら、誰でも似たような経験をするかもしれない危機感をお客様に感じていただきたいです。

リムジン 向井 理 WHAT's IN? tokyoインタビュー

では、あらためて倉持さんの印象を伺えればと思います。

お仕事では、倉持さんが脚本を手がけているコント番組の『LIFE!presents忍べ!右左ヱ門』に出演したのが初めてご一緒したことになります。作品の印象は、とにかくいろいろなジャンルの劇作をされていて、コメディーに振り切っている『鎌塚氏』シリーズもあれば、『神の子どもたちはみな踊る after the quake』(2019)のような難しいファンタジー作品も、舞台装置を上手に使って違和感なく表現される。何かの色に染まっていなくて、作品を観たあとに“これは倉持さんの作品だったか”と気づくことがあって驚きます。

あえて“表現しない表現”が求められている

演出家としての倉持さんの印象はいかがですか。

演出家としては今作で初めてご一緒しますが、作品を拝見すると、繊細で緻密な演出をされる方だと感じます。今作でいえば、“嘘”をつくのは表面的なことで、その裏にある人間の感情を大切にしないと物語がつながらなくなってしまう。口で言っていることと考えていることが違うお芝居をしないと、うわべだけでは物語の奥行きが狭くなると思うので、あえて“表現しない表現”のようなお芝居が求められると思います。

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物語にわかりやすい答えを求めていらっしゃらないわけですね。

そうだと思います。たとえば、答えは“A”なのに“B”だと口で言っても、本当は“A”であることに変わりはない。ただ、倉持さんは、“A”だと本当の答えを言わせながら、“B”だと思い込んでいるような顔をさせることで混乱を起こし、本当と嘘の区別をつかなくさせてしまう。簡単な“嘘”を見せるだけではなくて、もっと深刻な状況になる“嘘”も表現しながら巧みなレトリックを使われて、多層的な物語をつくる方なので、役者としては難しい表現を求められると思います。

たしかに、倉持さんの舞台を拝見していると、答えがひとつだけではない、複雑なテーマが描かれている気がします。今作での難しい表現というのはどんなことになりそうですか?

去年僕が出演した舞台『美しく青く』は台詞が少ない役でしたが、演じることが難しかったんです。というのも、劇場の場所によって表情や所作だけではお客様がキャラクターに共感できない、伝わらないことが起きますし、どうしても、その役が何を考えているのかを台詞で補う必要が出てくるので困ったことがありました。そのときにどこまで僕たちのメッセージをしっかりお客様に伝えられるのかを考えましたし、今回もそれが大きなテーマになると思います。

ここまで生きてきたという証を舞台で表現できるように

映像と舞台では役へのアプローチは違いますか。

演目によるところもありますが、あまり差はないと思います。僕は小さいお芝居が好きなので、それにチャレンジをしていますが、やっぱり観ていらっしゃる方には伝わらないこともあります。つまり、テレビ・映画、舞台でも、観る方がどう捉えるかをコントロールすることはできないんです。そのなかで僕にできることは、僕の実年齢を役の年齢と照らし合わせながら、その役がここまで生きてきたという証を表現することだと思っています。

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ここまでお話を伺っていると、今作に対してだけでなく、舞台や映像へも明確に役者として意識があるんですね。

そうですね。僕は舞台では特にストレートプレイが好きですが、どういう稽古でも、そこからどんな作品になっても、お客様がいて成立すると思っています。お客様をなるべく物語に引き込んで、何かを感じていただければ嬉しいし、僕はどんな舞台でもエンターテインメントになると思っています。

向井さんにとって舞台は特別な存在でもある。

舞台は終演後、どういう人がどれくらいリアクションをしているのかわかるので、お客様の反応にいつも感動します。毎日いろいろな方がいらっしゃって、それぞれリアクションがあって、それは上演する土地によっても違うし、お客様の反応を直に感じるのは舞台でしか味わえないので貴重な体験だと思います。

舞台で演じるうえで気をつけていることはありますか。

幕が開いて閉じるまで、空気感や世界観をつくるのは、今作では板の上に立つ7人しかいないので、歯車がずれないようにしたいと思います。やはり舞台は初日に緊張して、2日目に力が抜けて失敗をしてしまう“二日落ち”が起きてしまうこともあるので、それは気をつけたいですね。初日から2日目、3日目と毎日、作品のクオリティーを超えていくことが、舞台で演じるうえでのハードルになるので、どの公演でも新しい発見があります。

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今作は地方公演もあってたくさんの劇場を回りますね。

僕はいろいろな場所を回ることが好きで、その土地の美味しいものが食べられるから楽しみですね(笑)。劇場が変われば“出ハケ”の位置も導線も違うし、舞台の大きさや見切りも違う。どこに行くにしても初日には必ず舞台裏を冒険するのですが、同じ演目でも初めて演じる感覚になるので新鮮味があって楽しいです。

共演者の印象はいかがですか。

水川さんを含めて舞台でご一緒するのは皆さん初めてですが、倉持さんは僕らを熟知していらっしゃるから、脚本は当て書きになるかもしれないので、僕と共演者の方々との化学反応で、見たことのない世界観をつくりたいです。舞台の醍醐味は稽古の時間があることで、稽古場で1ヵ月かけて作品をつくり上げられます。休憩中に俳優同士でプライベートな言葉を交わして濃厚な関係性を築く時間もあると思うので、役者としていろいろなことを吸収したいと思います。

僕自身が満足することがないから役者を続けている

向井さんは、映像や舞台に限らず、様々な作品に出演されていますが、役者の面白さはどういったところに感じますか。

僕たちのお仕事は、オファーやオーディションにしろ、選んでいただいて成立するので、そういう声に応えたい想いが大前提としてあって、そして観てくださるお客様の存在も大切です。もちろん役者として僕の表現欲求もあるのですが、まずは皆さんの気持ちに応えたい。新しい作品に出演するごとにその想いは更新されるので、僕自身が満足することがないから役者を続けていると思います。

リムジン 向井 理 WHAT's IN? tokyoインタビュー

役者として普段意識されていることはありますか。

僕自身の役者としてのキャリアを問わず、どの作品でも初めて出演する気持ちで演じているので、毎回新しい壁や問題が出てきて、それにチャレンジすること、クリアしていくことに面白さを抱きます。もちろん経験を積んでいけば、テクニックが身について引き出しが増えていくのですが、作品ごとに新しい脚本になり、それに見合ったお芝居を求められるのは、新人でもベテランでも同じことなので、役者の挑戦はいつまでも終わりがないです。

それでは最後に、意気込み聞かせてください。

突拍子もないお話のように見えて、実は誰にでも起きることを描いた物語になると思います。お客様には7人のコミュニティーを覗きにくる感覚で劇場に来ていただいて、僕たちはどんなシーンでも皆さんが思わず笑ってしまうようなお芝居をしたいです。僕たちにとって最も大切なのは、お芝居がうまいヘタに関係なく、お客様が観終わったあとに何かを持って帰れるようにすることなので、稽古をしながら日々精進して、いろいろな想像を膨らませていただける舞台にしたいと思います。肩肘張らずに日常の延長線上の舞台だと思って楽しんでご覧になってください。

ヘアメイク / 晋一朗(IKEDAYA TOKYO)
スタイリスト / 外山由香里


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向井 理さん直筆サイン入りチェキ
応募期間

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3月14日(土)~3月22日(日)23:59


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M&Oplaysプロデュース
『リムジン』

東京公演:2020年5月23日(土)〜6月14日(日)本多劇場
富山公演:2020年6月16日(火)富山県民会館ホール
大阪公演:2020年6月18日(木)〜6月19日(金)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
愛知公演:2020年6月20日(土)〜6月21日(日)東海市芸術劇場大ホール
島根公演:2020年6月23日(火)島根県民会館 大ホール
広島公演:2020年6月25日(木)JMSアステールプラザ 大ホール
福岡公演:2020年6月27日(土)〜6月28日(日)ももちパレス・大ホール
愛媛公演:2020年6月30日(火)松山市民会館 大ホール
仙台公演:2020年7月3日(金)電力ホール
新潟公演:2020年7月5日(日)りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場

<チケット一般発売>
東京・広島・福岡・仙台公演:2020年3月21日(土)AM10:00〜
富山公演:2020年3月14日(土)AM10:00〜
大阪公演:2020年3月29日(日)AM10:00〜
愛知公演:2020年3月28日(土)AM10:00〜
島根・新潟公演:2020年4月25日(土)AM10:00〜
愛媛公演:2020年4月13日(月)AM10:00〜

【STORY】
小さな田舎町で、親から受け継いだ小さな工場を営む主人公の男(向井 理)。彼は町の実力者に気に入られ、自分の後継者にと、推薦されていた。その地位につけば、名誉と、特別な待遇が与えられる。妻(水川あさみ)と共に喜ぶ男。しかし、喜びも束の間、彼は誤って、昇進に尽力してくれた恩人に怪我を負わせてしまう。「一言謝れば済む話よ」と、ためらう夫に妻は言うが、掴みかけた未来が遠のくことに耐え切れずついた嘘が次の嘘を呼び、夫婦は取り返しのつかない事態を招いてしまう。重ねた罪に比べて実入りの少ない、あまりに非効率な夫婦の悲喜劇。

作・演出:倉持 裕

出演:
向井 理
水川あさみ
小松和重
青木さやか
宍戸美和公
田村健太郎
田口トモロヲ

主催・製作:株式会社M&Oplays

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@moplaysproduce)

向井 理(むかい・おさむ)

1982年2月7日生まれ、神奈川県出身。主な出演作品に【舞台】『ザ・シェイプ・オブ・シングス〜モノノカタチ〜』、『悼む人』、『星回帰線』、劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season 風、『美しく青く』【テレビドラマ】『ゲゲゲの女房』、『とと姉ちゃん』、『永遠の0』、『S-最後の警官-』、『きみが心に棲みついた』、『リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子〜』、『わたし、定時で帰ります。』、『10の秘密』【映画】『小野寺の弟・小野寺の姉』、『いつまた、君と 何日君再来』、『ザ・ファブル』、『引っ越し大名!』などがある。現在、大河ドラマ『麒麟がくる』に出演中。4月〜放送のWOWOW連続ドラマ『鉄の骨』にも出演する。

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