Interview

『映像研には手を出すな!』理想的なアニメ化&大ブレイクの要因とは? ラストへの展開、スタッフ・キャストの裏側…プロデューサーにまるごと聞く!

『映像研には手を出すな!』理想的なアニメ化&大ブレイクの要因とは? ラストへの展開、スタッフ・キャストの裏側…プロデューサーにまるごと聞く!

大童澄瞳による原作コミック(小学館「月刊!スピリッツ」連載中)をTVアニメ化し、2020年1月からNHKにて絶賛放送中の『映像研には手を出すな!』。3人の女子高生がアニメを作るという目的の元に「映像研」を立ち上げ、それぞれの個性と能力を活かして“妄想”を形にしていくさまが、アニメファンに留まらず老若男女幅広い層から熱烈な支持を集めている。

エッジの効いたアニメーション表現で数々の傑作を手掛けてきた湯浅政明監督&サイエンスSARUが映像制作を手掛けていることでも話題の本作。アニメファンならずとも「創作」そのものへの想いをかき立てられる作品として、現在もっとも注目するべきTVアニメの1つと言えるだろう。

本作の好評を受けて、今回はアニメ製作の中核を担う製作委員会の代表幹事プロデューサーである、ワーナー ブラザース ジャパン鶴岡信哉氏へのインタビューを敢行。本人曰く「作中における金森(カナモリ)的なポジション」だという鶴岡プロデューサーから見た、本作の魅力や成功の秘訣について語ってもらった。

取材・文 / 山下達也(ジアスワークス)
構成 / 柳 雄大


早くも世界に広がる『映像研』ブーム。海外のファンには予想外の部分が大ウケしている!?

TVアニメ『映像研には手を出すな!』は、今年1月の放送開始以降、SNSを中心に凄まじい反響が巻き起こっています。鶴岡プロデューサーは、この成功の理由をどのように分析されていますか?

鶴岡プロデューサー やはり湯浅政明監督とサイエンスSARUさんがとても素晴らしい映像に仕上げてくれたというのが第一の理由でしょう。あとは原作の力ですね。NHKでの放送ということで視聴エリアが圧倒的に広いこともありますが、どんなに間口を拡げても、中身がなかったら話題にならないですから。アニメ化によって作品の面白さがあらためて広がっていったのではないかと考えています。

実際、原作の単行本は売り切れにつぐ売り切れという状況のようですね。

鶴岡P 原作ファンがアニメを盛り上げてくださったというのはもちろんあると思うのですが、アニメを見て原作を手に取る人も多いと思います。原作は読み手に少し読解力を求める作品なので、アニメがその敷居を下げて、作品を理解しやすくなったのであれば、それは狙っていたことなのでうれしいですね。

原作の掲載誌は30~40代の漫画ファンをターゲットにした雑誌ですが、TVアニメはそれよりもかなり幅広い層に支持されているように感じました。こうした世代の広がりについてはどのように感じましたか?

鶴岡P 原作を読んだときから、この作品が内包する本質的な部分はとても多くの人に刺さるだろうと思っていました。創作をする上での苦しさとそれを上回る楽しさとか。あと浅草たちの妄想シーンって、誰もが子供のころにやることじゃないですか。妄想が実際にそのまま実現したら楽しいだろうなって思っていませんでしたか? 第5話の水崎のように「波動拳」の練習していた人、きっと多いですよね(笑)。

やっていました(笑)。そうした共感の輪は、日本国内に留まらず海外にも広がっているようですね。

鶴岡P そうなんですよ。 海外ではCrunchyroll(クランチロール)などネット配信という形で展開しているのですが、見てくださった人の評価もすごく高く、ファンアートもたくさん投稿されています。とりわけ、オープニングのキャラのポーズをいろいろなキャラクターで再現する動画をアップしたり、南米圏では「euzouken」(“eu”はポルトガル語で「自分」という意味)というハッシュタグで自身のキャラクターでオマージュしたりするのがちょっとしたブームになっているようです。

私も見ました。海外のアニメファンは、日本のアニメファンとはまた異なった盛り上がり方をしてくれて面白いですよね。あのオープニングのパロディは「一体何が刺さってああなったんだろう」って思いました(笑)。

鶴岡P 湯浅監督特有のカートゥーンっぽい動きがウケているのかもしれないですね。個人的にもその盛り上がりを楽しんでいます。

原作の“原石的な良さ”がアニメ化によって磨かれ、より多くの人に刺さるようになるのではないかと考えた

今や世界的なヒット作になったと言っても過言ではない『映像研には手を出すな!』ですが、このTVアニメ化企画が立ち上がった背景から教えていただけますか?

鶴岡P 原作の細かな造形や設定のすごさに惚れ込んだNHKエンタープライズの坂田さん(坂田淳プロデューサー)がこの作品をアニメ化したいと考え、小学館に企画を持ち込んだのが始まりですね。実は当時、私はNHKエンタープライズさんと別の企画を検討していたのですが、その話を聞いて、ぜひ『映像研』を一緒にやらせてほしいと名乗りを上げました。

TVアニメでは、あの湯浅政明さんが監督を務めるということでも話題になりましたが、こちらはどういった経緯で起用されたのでしょうか?

鶴岡P 原作コミックは、当時はまだ知る人ぞ知る作品だったのですが、早い段階からいろんな賞を受賞していてコアな人気があり、Twitterなどで「アニメ化するなら湯浅監督がいい」という声が上がっていました。当然“エゴサ”王(笑)で知られる原作者・大童澄瞳先生もそうしたファンの意見を見ていて、同じように感じていたのだとか。

そこで坂田さんが湯浅監督が代表を務めるアニメ制作会社、サイエンスSARUに『映像研には手を出すな!』TVアニメ化の企画を持ち込んだところ、実は湯浅監督もエゴサしていて、作品に興味を持たれていたことがわかり……という流れです。

ここでSNSが出てくるのが今どきですね(笑)。ちなみに鶴岡プロデューサーご自身は、この作品(原作)のどういう所が面白いと感じていますか?

鶴岡P 皆さん同じように感じていると思いますが、浅草たちの妄想世界がシームレスに拡がっていくところですね。そういう描写はほかの作品にもあるのですが、無邪気な子供の“ごっこ遊び”の延長線上で妄想世界の中にスッと入っていって、それが現実世界とリンクしながら広がっていくのが単純に面白い。これを上手にアニメ化できたらすごく良いものになるだろうと思いました。

すごくよく分かります。

鶴岡P ただ、この原作には良い意味で粗削りなところがありますよね。多くの人が共感できる、感動できる要素が詰め込まれているんですが、“行間”がすごく広く、話もダイナミックに展開していくので、読み手の側にもスキルが要求されるところが少しあるんです。能動的に読み込むと気づく要素が多いというか……。これを、漫画と比べて受動の要素が強くなるアニメにすることで分かりやすくできるのではないかという思いもありました。原作の持っている原石的な良さが、アニメ化によって磨かれ、より多くの人に刺さるようになるのではないかと考えたんです。

湯浅監督って、芸術性が高くて、スタイリッシュなアニメをオリジナルで作る人というイメージを持たれることも多いですが、実は作品理解度もすごい方です。私は『マインド・ゲーム』の前から(『THE 八犬伝 ~新章~』第4話:作画監督など)ずっと湯浅監督の関わっている作品が好きで追いかけてますが、作品の本質的な部分を分かりやすく演出したり、伝えることに長けているとずっと思っていました。湯浅監督作品には「原作通り」ではないシーンも多いのですが、それは作品自体の本質をより伝わりやすくするためなんです。そういう意味でも、『映像研には手を出すな!』が湯浅監督の手でアニメ化されることには価値があるだろう、と。

なるほど。たしかに、TVアニメ『映像研には手を出すな!』は原作から大胆に変更されているところも多いですが、そこには全く違和感がありません。むしろ、描きたかったことが、より強く伝わってくるように感じました。

鶴岡P 紙(漫画)と映像(アニメ)は表現手法として全く異なります。映像にしたときにどういうふうにすれば伝わるかは映像なりの工夫が必要です。この際、分かりやすくするために、ただかみ砕いてやればいいのかというとそうではありません。面白くするには、そこにアニメならではの“アイデア”が必要なんですよね。もちろん、その上で“着地点”は一緒でなければいけません。TVアニメ『映像研には手を出すな!』はそのあたりがとても上手くいっていると思っています。

ちなみに湯浅監督ってどんな方なんですか?

鶴岡P 普段はとても物静かで丁寧で、多くは語らずという印象なんですけど、シナリオ会議やアフレコ時などに、突然アイデアをパーーっと話し出すことがあるんですよ。まさに今、天からアイデアが降ってきたというような感じで。

こういう言い方をすると、その場の思いつきで喋っている人のようにも聞こえてしまいそうなのですが、もちろんそんなことはなく、監督がずっと考え続けてきたからこそ出てくるアイデアなんです。もちろん、そのプロセスは僕らには見えないので、言われた直後は意図が汲み取れないこともあるのですが、後でよくよく考えてみると、きちんとした意図があって、筋道が立っているんですよね。

そんな湯浅監督が、『映像研には手を出すな!』をアニメ化するにあたって最も重視していること、伝えたいと考えていることはなんだと思いますか?

鶴岡P 以前の記者会見などでもお話しされていましたが、『映像研には手を出すな!』に詰め込まれている「葛藤、難しさもあるけど、それを越えて創作するのは楽しいことなんだ」、そういうことを伝えたいと考えていると思います。これは企画が動き出した当初から全くブレていません。

1 2 >