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今すぐ観られるTV未放送の名作ロボットアニメ――虚淵 玄の緻密な設定が光る『OBSOLETE』はロボットが弱い…でも、そこがいい

今すぐ観られるTV未放送の名作ロボットアニメ――虚淵 玄の緻密な設定が光る『OBSOLETE』はロボットが弱い…でも、そこがいい

小説『Fate/Zero』、アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS サイコパス』など、数多くの人気作を生み出してきたシナリオライター・虚淵 玄(ニトロプラス)。斬新なストーリーや設定で、多くのアニメ・ゲームファンを虜にしてきた奇才が、新たに原案・シリーズ構成を担当したロボットアニメ『OBSOLETE(オブソリート)』が、2019年12月よりYouTube Originalsとして配信されている。

地上波放送はされていないため、知らない方もいるかもしれないが、YouTube配信のうえ1話が約13分と手軽に視聴できる本作。虚淵はこれまでにも『翠星のガルガンティア』『楽園追放 -Expelled from Paradise-』といったロボットが活躍するアニメを生み出してきたが、『OBSOLETE』はそれらとひと味違ったリアリティーと魅力があり、ロボットアニメ好きは食いつくこと間違いなしだ。本稿では、そんな隠れた名作の魅力を紹介していく。

文 / 長田雄太


舞台は現代!? 宇宙からやって来たロボットという“異物”

ロボットアニメと先述した本作だが、舞台となるのは2014年以降の架空の地球。技術的なレベルは私達が住んでいるリアルの地球と同じだ。レーザーやドローンといった、ここ数年で運用され始めた最新鋭の兵器が使用されることはあるが、ビーム砲のようなトンデモ兵器は登場しない。では、なぜロボットがあるのかというと、ある日、突如現れた異星人からもたらされたのだ。

そのため、ロボットアニメといっても、多くの人が想像するような近未来の風景はなく、現代の戦場にロボットという異物が紛れ込んでいる、いびつな状況になっている。

▲2014年、宇宙よりもたらされた2.5mロボット“エグゾフレーム”の素体。異星人・ペドラーは政治干渉、文化交流は一切せず、交易だけを望んでおり、そういった設定が絶妙なリアリティーを生み出している

戦車よりも弱いロボット

ロボットアニメといえば、やはりかっこいいロボットが活躍するシーンが醍醐味。しかも、固定の主人公が存在しておらず、突如もたらされたエグゾフレームに世界が翻弄されていく様子を毎話異なる時間・場所・キャラクターの視点から描かれる『OBSOLETE』は、もはやロボットが主人公の作品と言ってもいいだろう。

しかも、エグゾフレームは未知のテクノロジーが使われているため、今のところ人類の手で生産することはできない。異星人の兵器の登場に人類はなすすべもない……かと思いきや、なんと実際はその真逆。エグゾフレームは戦車の砲撃で、あっけなくやられているではないか! お世辞にも昨今のロボットアニメのような派手な見た目ではないのに、地球上の兵器よりももろい。そんな兵器が一体何の役に立つのだろうか? 小ぶりなうえ、一見すると低スペックで弱いエグゾフレームだが、実はうまく使いこなすことができると恐ろしい兵器へと化けるのだ。

▲エグゾフレームが最初に戦場で運用されたのは2015年。それまでは主に作業機械として利用されており、兵器として使われることになるロボットが、一般生活にまで普及している描写は独特の世界観を作り出していて面白い

▲パンツァーファウストのような武器を片手に、エグゾフレームで突撃させられるアフリカの少年・少女達。戦車や戦闘ヘリを相手に逃げまどい、次々とやられていく様子はとにかく血生臭いが、これぞリアルロボットアニメ

というのも、このロボットには操縦桿やスイッチの類は一切なく、操縦席(サドル)の思考を読み取る機能でパイロットが考えた通りに動く。そのため、適した訓練を積めば、自分の体と同じ感覚で操縦ができてしまうのだ。弱いが、使い方を理解すれば大きく化ける。エグゾフレームは未知な部分が多いぶん、知れば知るほど惹きつけられる。

▲エグゾフレームと搭乗したパイロットの思考は、何らかの形で紐づけされるようで、ある程度の距離なら遠隔操作も可能のようだ。作中では、搭乗せずに銃を構えるジェスチャーでエグゾフレームを操作し、ヘリを狙撃する離れ技もみられた

後進国が先進国を脅かす! 戦場を一変させたエグゾフレームの廉価性

驚くべき潜在能力を秘めたエグゾフレーム。だが、最も恐ろしいその性能ではなく、圧倒的なコストの低さだ。なんと地球上にありふれた石灰岩1,000kgで、エグゾフレーム1機が手に入ってしまう。

そして、この設定が本作の最たる魅力といっても過言ではない。というのも、軍需産業で儲けている先進国にとって、石灰岩1,000kgの価値しかない兵器は商売の邪魔でしかない。先進諸国は産業保護を名目に、エグゾフレームを規制するザンクトガレン協定を結ぶが、そのいっぽうで後進国は積極的にこれを導入。その結果、石灰岩1,000kgの兵器が数百万ドルする兵器を圧倒する、ほかのロボットアニメにはない驚愕の戦場が生み出されてしまうのだ。

▲戦車数両に対し、死屍累々と転がるロボット。しかし、これらがスクラップになったドル札の塊と石灰岩の塊に見えた途端、筆者は戦慄した

▲スキーの要領で雪山を滑走したり、水上をホバー移動するエグゾフレーム。もとは同じ機体だが、組織や戦場によって外装、武装、戦い方が異なるため、リアルロボットが大好きな筆者は戦闘シーンのたびに興奮しっぱなしだ

そんな状況にもかかわらず、先進国は協定のせいでエグゾフレームを軍事利用できない。なりふり構っていられない後進国やテロリストは、どんどんエグゾフレームを使いこなしていく。低コストロボットという存在は、我々がよく知る現代の世界情勢が反映されているということもあって、異物でありながら非常に現実味あるものとして確立されているのだ。

▲訓練を積み、操縦技術も見違えたアフリカの少年兵達。エグゾフレーム自体を投てき武器として使用するといった搦め手で、リベンジを果たす。低コストのロボットならではの戦い方は、『装甲騎兵ボトムズ』のアーマードトルーパーを見ているようだ

虚淵 玄が手掛ける、オリジナリティー溢れるロボットアニメ『OBSOLETE』。現在は第6話までが配信されているが、2020年冬より後編エピソード(EP7~EP12)が配信。今までは、エグゾフレームの登場で戦場が激変していく2010年代が主に描かれていたが、後編では恐らく2020年代、少し未来の地球で物語が展開していくと思われる。

▲第1話では2023年、協定のしがらみがある中でアメリカ軍が秘密裏にエグゾフレームを初投入する作戦が描かれている。決して表舞台には立てない彼らが今後どのような活躍を見せるのか、気になるところ

エグゾフレームの運用で後れを取っている先進国はどう動いていくのか? 各地の戦場で暗躍するエグゾフレーム部隊の目的は? そもそもエグゾフレームは何のために作られたのか? 異星人の存在など、まだまだ気になる要素はたくさんあるが、だからこそ一度視聴し始めると、続きが気になって止まらなくなること間違いなし。特に、『ボトムズ』のような硬派な作品が好きな方にはオススメだ。ほかのロボットアニメとは異なる魅力が詰め込まれた、本作のリアルな戦場をぜひ自身で体感してほしい。

また、本編を視聴した方は、ぜひ作品のオフィシャルサイトの方もチェックしていただきたい。オフィシャルサイトではエグゾフレームの性能、異星人出現からの世界の動きといった、より細かい設定を確認でき、リアルロボット好きが釘付けになってしまうほどの情報が詰め込まれている。筆者のように、より『OBSOLETE』の世界へと引き込まれることだろう。

YouTube Originals『OBSOLETE(オブソリート)』

EP6までYouTubeにて無料公開中
2020年冬より後編(EP7~EP12)配信

【配信情報】
EP 1 OUTCAST
EP 2 BOWMAN
EP 3 MIYAJIMA REI
EP 4 LOEWNER
EP 5 SOLDIER BRAT
EP 6 JAMAL

【STORY】
2014年、突如、月周回軌道上に現れた異星人・ペドラーは、地球人類に「通商」を呼びかける。1,000キログラムの石灰岩と引き換えに彼らが提供したのは、意識制御型汎用作業ロボット「グゾフレーム」だった。その汎用性と廉価性ゆえに発展途上国を中心に爆発的に普及し始めたエグゾフレームは、やがて戦場でも有用性を発揮、既存の兵器を「時代遅れ」のものにしていく。一方、変わりはじめた世界に対し、アメリカ合衆国を初めとする先進諸国は、自国の産業保護などを目的に、エグゾの利用を規制。その軍事的可能性も目を背けるばかりだった。そんな政府の姿勢に危機感を抱いた合衆国海兵隊の一部隊員は、エグゾが世界に及ぼす影響の調査を独自に開始するが、彼らの前に、ドクロのエンブレムを付けた謎の部隊、アウトキャスト・ブリゲードの姿が見え隠れする。

【STAFF】
原案・シリーズ構成:虚淵 玄(ニトロプラス)
監督:山田裕城(武右ェ門)、白土晴一
メカニックデザイン:石渡マコト(ニトロプラス)
キャラクターデザイン:吉田明彦・永井悠也(CyDesignation)
設定監督:白土晴一
武器考証:鈴木貴昭
CG監督:中島智成(武右ェ門)
撮影監督:小久保将志(武右ェ門)
美術監督:谷口淳一(武右ェ門)
美術設定:曽野由大
デザインワークス:本田大助(オールサンデー)
編集:瀬山武司(瀬山編集室)
音響監督:鶴岡陽太(楽音舎)
サウンドデザイン:笠松広司(デジタルサーカス)
音楽:石川智久(TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND)
企画プロデュース:髙橋良輔
アニメーション制作:武右ェ門

【CAST】
ボウマン:田中正彦
ミヤジマ:森川智之
レブナー:山野井 仁
フェルナンド:高木 渉
ジャマル:本城雄太郎
カイラ:杉本ゆう
ザーヒル:大友龍三郎

【主題歌】
OPテーマ:「obsolete」Written and Produced by Skrillex and Nightwatch
EDテーマ:「ORB-SOLUTION」TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

©PROJECT OBSOLETE

『OBSOLETE』オフィシャルサイト
https://project-obsolete.com/

『OBSOLETE』オフィシャルTwitter
@obsolete_anime