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Chara+YUKI 20年ぶりに復活したユニット、初のミニアルバム。二人のヴォーカリストが生み出すケミストリーを紐解く。

Chara+YUKI 20年ぶりに復活したユニット、初のミニアルバム。二人のヴォーカリストが生み出すケミストリーを紐解く。

90年代から女性アーティストのフロンティアを切り開いてきたCharaとYUKIが、Chara+YUKIとして20年ぶりに復活した。

二人が、Chara+YUKI名義でシングル「愛の火 3つ オレンジ」をリリースしたのは1999年。その当時の二人の状況を振り返ると、Charaは同年3月に6枚目のアルバム『Strange Fruits』を発表後に産休に入り、YUKIはJUDY AND MARYの活動休止中に、元プラスチックスの佐久間正英と島武実、B-52’sのケイト・ピアソンと結成したバンド、NiNaに参加、同年11月にはアルバム『NiNa』を発表した頃になる。

すでに押しも押されぬ存在となっていた二人が、この時期に突然、ユニットを組んだのは驚きだったが、共に唯一無二の個性を持つCharaとYUKIが「愛の火 3つ オレンジ」では互いの持ち味はそのままに見事にハモっていたのはさらなるサプライズだった。しかし、Chara+YUKIとしての活動はそのシングルのみに留まり、幻のユニットとして記憶されていたのだが、まさかの20年ぶりの再共演! 1月31日の7インチアナログシングル「楽しい蹴伸び」に続いて、2月14日には初のミニアルバム『echo』をリリースした。

「またいつか一緒にやりたいね」。二人の間でそんな会話が交わされていたことは想像に難くない。90年代のデビュー以降、同じレコード会社に所属していた時から親交を温め、Chara+YUKI後も2001年にガールズバンド、Mean Machineを結成。CharaとYUKIがツインドラムを務めるという大胆な発想と自由な姿勢が評判となったが、YUKIも2002年からはソロ活動をスタート。

それぞれが自らの音楽活動を続けながら、「またいつか」のタイミングが訪れたのは2018年の春。YUKIのアルバム『forme』にCharaが「24hours」という曲を提供。二人でCharaのスタジオで曲作りをしていた時に、「これ、Chara+YUKIでやるといいんじゃない?」という曲が生まれたことが、今回のChara+YUKIに発展したという。ソロ・デビュー15周年を経て、「2回目のソロ・デビューのような気持ち」で挑んだ『forme』は、YUKI自身が全曲アレンジにも関わったセルフ・プロデュース作だった。1stアルバムの時と同様に、YUKIが今一緒に仕事をしたいミュージシャン、尾崎世界観(クリープハイプ)、川本真琴、津野米咲(赤い公園)、西寺郷太(NONA REEVES)、堀込泰行、細野晴臣、吉澤嘉代子らに作曲を依頼、その中にCharaの名前もあったのはお互いのファンにとっても嬉しい出来事だったに違いない。

Chara+YUKIとして20年ぶりに届いた新曲は、7インチアナログシングルと配信で先行リリースされた「楽しい蹴伸び」。CharaとYUKIのウィスパー・ヴォーカルが絶妙なアーバン・ソウルに仕上がっており、作詞はYUKI、作曲はTENDREが手がけている。河原太朗のソロ・プロジェクト=TENDREは、今最も注目を集めているシンガー/マルチプレイヤー/プロデューサーで、Charaの2018年のアルバム『Baby Bump』でも「Chocolate Wrapping Paper」と「Twilight」のサウンドプロデュースを担当。メロウで艶やかなトラックと、二人の歌い分けや、ハモり具合が抜群に心地良いグルーヴを生んでいる。

今回のミニアルバム『echo』で特筆すべきことは、Charaがトータル・サウンド・プロデュースを、YUKIがトータル・リリック・プロデュースとしてクレジットされていること。近年、Charaは気鋭の若手クリエイターとのコラボレーションを重ね、YUKIも自身の作品のセルフ・プロデュースするなど、より深く音楽の制作にコミットしているのも大きい。

「Charaは、歌詞やサウンド、リズムも含めた全部で立体的に作る」、「YUKIの詞の良いところは、日本語の力の強さ」と互いのストロング・ポイントを認め合い、二人になると起きるケミストリーを確信しているのだ。

ミニアルバム『echo』の1曲目を「愛の火 3 つ オレンジ(2020version)」にしたのも、二人の今をヴィヴィッドに伝えるためだろう。ドラムラインを入れたA.G.O(CIRRRCLE)の新たなサウンドメイクと小西遼(CRCK/LCKS)のブラスアレンジ、YUKIが即興で作ったというラップのようなおしゃべりも楽しい。〈Chara+YUKI 始まりの物語from 2020〉は、〈愛の秘密 湯がくの〉という“言葉番長”の名リリック(!)を呼び起こすに至っている。

Chara+YUKIならではの冒険に挑んでいるのは、テクノ・チューン「You! You! You!」。とびきりDOPEなサウンドはCharaの「BabyBump」も手がけたSeihoが担い、〈Come into my dance floor with you〉とフロアに誘い出す二人。「Charaも私もやっていないことに挑戦をするということがすごく面白い」というこの攻めのスピリットこそ、CharaとYUKIが90年代からずっと多くの女子に支持されてきた所以でもある。

「ひとりかもねむ」は、作曲とサウンドプロデュースに大沢伸一を迎えたナンバー。大沢伸一はChara と「Junior Sweet」などの名曲を生んでいるが、YUKIとは初タッグ。〈ローファイなビートはマシュマロ 苺のチョコレイト・ト〉という摩訶不思議なYUKIのリリックも聴きどころだが、「百人一首」にヒントを得たという〈ながながし夜を ひとりかもねむ〉(ひとりぼっちで長い夜を過ごす)が秀逸。YUKIのヴォーカルに寄り添うように歌うCharaの声も印象的だ。二人のヴォーカリストとしての個性の違い、その差異から生まれるケミストリーをこのアルバムではたっぷり味わうことができるのだ。Charaのバンド、Aurora Bandや、YUKIの近年のライブメンバーでもお馴染みの白根賢一が作曲した「YOPPITE」は、YUKIの「ウィスパーもやってみたい」という希望から生まれた曲。ウィスパーといえばCharaの十八番のイメージがあるが、ここでは二人のユニゾンでささやくように甘い歌声を響かせている。

作詞がYUKI、作曲がCharaのドリーミーなポップロック「鳥のブローチ」は、バンドサウンドで聴かせる。THE NOVEMBERSの小林祐介と吉木諒祐、高桑圭(Curly Giraffe)に加え、Charaはキーボード、YUKI もドラムで参加。Kan Sanoのアレンジによってカラフルな絵本のようなファンタジーが広がる世界観は、CharaとYUKIの歌が重なることでさらにスケールアップ。この曲で〈愛と勇気〉という言葉が何かに導かれるように出てきたのは、それが二人の音楽の根幹にあるものだからに違いない。

作詞・作曲はYUKI、サウンドプロデュースはmabanuaという興味深い組み合わせが実現したのは、「Night Track」。mabanuaとCharaは『Dark Candy』(2011)以来の付き合いだが、トラックメーカー/プロデューサーとしても大活躍するmabanuaが、とびきりハッピーなトラックに仕上げてきた。子供たちのコーラスから始まり、Chara とYUKIが笑顔で歌う様子が伝わってくる。冒頭の〈なんかChara と踊りたいんだよね〉というYUKIの肉声をmabanuaがこっそり録音していたのもグッジョブ!

ラストを飾るのは本作で唯一Chara+YUKI が歌詞を共作した「echo」。ギターとベースは岸田繁(くるり)、Chara は作曲・サウンドプロデュースに加えアコースティックギターとキーボード、YUKI はドラムを担当。シンプルなアレンジがCharaとYUKIの歌心を際立たせ、〈歌につけた 永遠や 愛したいを 私から響かせたいの今〉と、二人の音楽への溢れる想いを綴る。そして、ラストヴァースの〈さなぎが ちょうちょうになり 花へと移る 愛は流れ こだまする〉が深い余韻を残す。

ガーリーな感性をキープしながら、豊かな音楽経験を重ねてきたCharaとYUKI。常にチャレンジングであろうとする二人が共鳴しあい、Chara+YUKIだからこそ生まれた音楽が『echo』には詰まっている。

文 / 佐野郷子

その他のChara+YUKIの作品はこちらへ。

ライブ情報

「Chara+YUKI LIVE “echo” 2020」

4月8日(水)東京都 Zepp Tokyo
4月9日(木)東京都 Zepp Tokyo
4月22日(水)大阪府 Zepp Osaka Bayside 
4月23日(木)大阪府 Zepp Osaka Bayside

Chara

1991年9月シングル『Heaven』でデビュー。
一貫して「愛」をテーマに曲を創り、歌い続けている日本で唯一無二の女性アーティストである。
オリジナリティ溢れる楽曲と独特な存在感により人気を得て、1992年には日本レコード大賞ポップ・ロック部門のアルバム・ニューアーティスト賞を受賞。
2020年1月初の台湾単独ライブを開催。
5月6日(水・休)には初の日比谷野外大音楽堂での単独ライブ開催が決定。
デビュー28周年を迎えてもなお感覚と感情に素直に突き動かされ、精力的に活動している。

YUKI

JUDY AND MARYのヴォーカリストを経て、2002年にシングル「the end of shite」でソロ活動を開始。
現在までに、音楽チャートで1位を獲得したアルバム5枚を含む、9枚のオリジナルアルバムをリリース。
前衛的でありながらポップに仕上げる独自の世界観、独特の歌声、唯一無二のライブパフォーマンスで圧倒的な存在感を放ち続けている。今後も、振り幅の大きな音楽活動とそれに伴うライブ、アートワークの全てから目が離せない。

Chara+YUKIオフィシャルサイト
https://www.charayuki.com