LIVE SHUTTLE  vol. 394

Report

DAOKO バンドの生きた音の中で、過去と未来を繋ぎ、いまの自分を表現しきったステージ

DAOKO バンドの生きた音の中で、過去と未来を繋ぎ、いまの自分を表現しきったステージ

二〇二〇 御伽の三都市 tour
2020年2月10日

ラッパー/シンガーとして次々を新しい扉を開けてきたDAOKOが、「二〇二〇 御伽の三都市 tour」を東京・大阪・名古屋で開催した。昨年は初の生バンド編成でのライブを行い、新たなフェーズに突入したDAOKO。今回のツアーも気鋭のミュージシャンを迎え、さらにその先を感じさせるライブパフォーマンスが期待されていた。ここでは昨年からの彼女の新しい挑戦を振り返りながら、2月10日の東京・リキッドルームでライブレポートをお届けしよう。

2019年は、DAOKOにとって大きな変化が訪れた年だったといえるだろう。15歳で動画サイトに投稿を始め、インディーズでの活動を経て、2015年にメジャーデビュー。今までにない斬新なアプローチと米津玄師、岡村靖幸、中田ヤスタカ、MIYAVIといったアーティストたちとのコラボレーションで話題作を発表。彼女の独創性溢れる音楽と比類なき個性は常に注目を集めてきたが、2019年に入り、これまでとは異なる動きを見せ始めた。その第一歩が、2月にギャラリーKATAで開催された展覧会『DAOKO×SHINKAI BABA 気づき EXHIBITION「Enlightening my world」』で行われた初のアコースティック・ライブだった。そこで「初めて生で歌う楽しさに目覚めた」ことからDAOKOの新しいドアが開いたのだ。

あれから1年。DAOKOは自らデザインしたという真っ白のドレスに身を包み、リキッドルームのステージに現れた。今回のサポートメンバーは、網守将平(Key)、永井聖一(G)、鈴木正人(B)、大井一彌(Dr)の4人。網守将平は、昨年7月の「DAOKO 2019 “気づき” LIVE – Enlightening my world」からライブをサポート。DAOKOのこれまでの曲をリアレンジしたキーパーソンでもある。また、相対性理論、Little Creatures、DATS、yahyelといったバンドでも活躍するメンバーが強力な布陣であることは間違いない。

DAOKO WHAT's IN? tokyoライブレポート

ライブは今年の1月に配信限定リリースされた「御伽の街」で幕を開けた。サウンド・プロデューサーに小袋成彬を迎えたクールなトラックをバンドでフィジカルに再構築し、御伽の街=トキオを彷徨うDAOKOのリリックをフロアに響かせる。続く「脳内DISCO」は、彼女が15歳の時にリリースしたインディーズ時代の1stアルバム『HYPER GIRL -向こう側の女の子-』(2012)から。かつて〈あこがれのディスコ 脳内で踊るの〉と歌っていた少女は、バンドを従えてステージで踊る自由を手に入れた。小悪魔的でもあり、ガーリーでもあるウィスパー・ヴォイスは十代から彼女の魅力であり、武器でもある。

「あらためましてDAOKOです。今日は最後まで楽しんで最高の夜にしましょう」。すでに名古屋、大阪公演を終え、この夜はツアーの最終日。映像を駆使したステージのスクリーンの影で歌っていた時のDAOKOとは違い、いま、この時間を観客と共有したいという想いがストレートに伝わってくる。

メジャー移籍後1枚目のアルバム『DAOKO』(2015)から「かけてあげる」が披露されると会場から歓声が上がる。少女の揺れ動く気持ちをささやくようにリリカルにラップするこの曲は、鈴木正人のスラッピングベースと永井聖一のギター・ソロを配したライブならではのヴァージョンだ。エレクトロサウンドとキャッチィな歌メロに彩られた「さみしいかみさま」は、「ShibuyaK」と共にメジャーデビュー・シングルの両A面を飾った曲。

このシングルのサウンド・プロデューサーであり、現在はDAOKOのライブ・プロデュースを務めているのが、GREAT3、Chocolat & Akitoで知られる片寄明人だ。二人が再びタッグを組んだのは、昨年3月に開催されたYMOゆかりのアーティストたちによるコンサート「Yellow Magic Children~40年後のYMOの遺伝子~」。DAOKOはそこで初めて生バンド編成でのライブを経験し、「高い壁には幾千のドア」と、YMOの「在広東少年」をカヴァー。彼女がイヤモニなしで生バンドで歌うことの楽しさに目覚めたのはこの時だったという。そのコンサートで鍵盤を担っていた網守将平を、片寄がバンマス/アレンジャーに抜擢し、昨年7月からのライブに繋げていった。

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「皆さんの楽しそうな顔がよく見えて、わたしも楽しいです」とリラックスした表情でMCを挟んだ後は、新曲「おちゃらけたよ」を披露。メロウなシティポップを彷彿とさせるメロディーとアレンジ、変わりゆく東京の街の情景をDAOKOの感性で活写したリリックも新鮮で、彼女が幅広く音楽を聴いていることがよく分かる。そういえば、開演前に会場に流れていた新旧取り混ぜた興味深いBGMもすべて彼女の選曲だったとか。

「Fog」(From『HYPER GIRL -向こう側の女の子-』)もバンドアレンジで大きく刷新された曲。永井聖一の轟音ギターやバンドの圧でドラマチックに盛り上げてゆく展開は、この曲のポテンシャルの高さを証明していた。<心のあたりがぐじゅぐじゅするの 膿んでは落ちる気持ち 水たまり 人間なんて肉の塊>というリリックは今なお鮮烈に響く。

インディーズの3rdアルバム『Dimension』(2015)は、実験性とポップが絶妙なバランスのアルバムだったが、この夜の「7日間創造」は、網守将平の巧みなアレンジとDAOKO独自の世界観が素晴らしいマッチングを見せていた。〈僕の世界では僕が神様 自由自在に生かして殺して〉という強烈な歌詞をすでに18歳で書いていた彼女のほとばしる才気をあらためて確認。シンセによるオーケストレーションが幻想的な「ゆめうつつ」(From『DAOKO』)ではDAOKOがケイト・ブッシュのように見えた。少女性と魔女性を併せ持つ存在感はどこか共通した雰囲気がある。

高校時代は部活の代わりにインディーズで活動し、卒業と同時にメジャーデビューしたという話を織り込み、「ここでちょっと懐かしい曲を」と、「そつぎょう」(From『Dimension』)を歌い出した時は客席がどよめいた。〈見に来てよいつか私のライブへ〉という18歳の頃に綴ったリリックを彼女は過ぎ行く時間を愛おしむように歌った。

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ヒップホップらしいビートを刻む「Ututu」(From『UTUTU EP』2013)は、16歳の時の曲。十代からラップ/ポエトリー・リーディングの新しい可能性を探求し、独自の音楽にしてきたDAOKOは「そこで自分に合う居場所を見つけることができた」と、昨年のインタビューで語っていた。ラップと歌の両輪を駆使して、彼女はすでに8年ものキャリアを築いているのだ。7年前の「真夏のサイダー」のポップでドリーミーな原曲のトラックは、新たなバンドサウンドによって鮮やかに彩色され、DAOKOの過去と未来を見事に繋いでいた。

イントロで大きな歓声が上がったのは、「水星」だった。tofubeatsの「水星 feat,オノマトペ大臣」をリメイクし、アルバム『DAOKO』のリードトラックにもなった「水星」は、東京に暮らすDAOKOからのアンサーにもなっていた。彼女が描く「東京」は、リアルとフィクションが交差する場所でもある。歌詞のサビにも出てくるミラーボールが回りだすと、会場はまさに、めくるめくクラブ空間へ。「音楽、最高!」。高揚したDAOKOが叫ぶ。クールでミステリアスなイメージが強い彼女がありのままの感情と笑顔を見せた。

前回の『enlightening trip 2019』ツアーは、まだぎこちない部分もあったが、原曲とはかなり印象が異なるアレンジで、あえてメジャーの代表曲を中心にしたライブとは別のセットで挑み、確かなものを掴んだのだろう。バンドの演奏の中で歌う醍醐味を知ったという彼女は、彼女らしい自由で、才気に溢れ、チャレンジングなスピリットをいま一度注入したに違いない。

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多くのファンが期待していた「打上花火」が今回のセットリストに入ったのも、彼女が新しい局面をライブで思い切って出せたからではないか。前回のライブでは外した大ヒットナンバーをここで歌い、迷うことなく次のステージに向かう。そんな彼女の凛とした姿勢がこの夜の「打上花火」からは感じられた。本編ラストの「Cinderella step」は、(From『THANK YOU BLUE』2017)は、ヴォーカリストDAOKOの変幻自在の魅力を伝え、腕利きのミュージシャン揃いのバンドの中にいても、それに負けない声と歌をDAOKOは伸びやかに放っていた。

アンコールに「イエーィ!」と、ご機嫌な様子で出て来た彼女は、バンドのメンバーを紹介。「初めてグルーヴというものを体感した」とDAOKOが言うように、この4人のメンバーの達者な上に火花が散るほど熱いプレイは、聴き手のイマジネーションを喚起する彼女の世界をさらに深く掘り下げる役割を果たしていた。この日2曲目の新曲「帰りたい」は、先鋭的なサウンドと大井一彌が生み出す最旬のビートが融合した曲だったが、最前線で音楽をつくり続ける彼女にとって彼らは最強の味方になったようだ。

最後の曲「きみ」(From『DAOKO』)では、タンバリン片手にポップでポジティブなラブソングを歌い、観客との距離の近さを楽しみながら、踊り、跳ねた。バンドの生きた音の中で、いまの自分を表現しきった晴れやかな笑みと、「手洗い、うがいはしっかりね」という言葉を残して、ステージを後にした。

3月にはビルボードライブ東京・大阪で、チェロを含めたアコースティック編成でのライブと、大森靖子 x DAOKOのライブを控えているDAOKO。ライブでも自身の表現の領域を開拓し続ける彼女の新作が待ち遠しい。

文 / 佐野郷子 撮影 / Shinkai Baba

二〇二〇 御伽の三都市 tour
2020年2月10日

SETLIST

1.「御伽の街」
2.「脳内DISCO」
3.「かけてあげる」
4.「さみしいかみさま」
5.「おちゃらけたよ」
6.「Fog」
7.「7日間創造」
8.「ゆめうつつ」
9.「そつぎょう」
10.「Ututu」
11.「真夏のサイダー」
12.「水星」
13.「打上花火」
14.「Cinderella step」
EN1.「帰りたい」
EN2.「きみ」

ライブ情報

3月6日(金) 東京・ビルボードライブ東京
3月11日(水) 大阪・ビルボードライブ大阪

大森靖子 x DAOKO LIVE powered by SONG LIST
3月20日(金・祝) 東京・Zepp DiverCity Tokyo

DAOKO

1997年生まれ、東京都出身。ラップシンガー。15歳の時にニコニコ動画へ投稿した楽曲で注目を集め、2012年に1stアルバム『HYPER GIRL- 向こう側の女の子 -』をリリース。2014年には映画『渇き。』の挿入歌に「Fog」が抜擢され、庵野秀明氏率いるスタジオカラーによる短編映像シリーズ「日本アニメ(ーター) 見本市」の第3弾作品『ME!ME!ME!』の音楽をTeddy Loid と担当し、世界から大きな注目を集める。2015年には1stアルバム『DAOKO』でメジャーデビュー。2017年は映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の主題歌「打上花火」をDAOKO × 米津玄師で発表し、大ヒットを記録。2018年には3rdアルバム『私的旅行』をリリースし、第69回NHK紅白歌合戦に出場。昨年は初のバンド編成でのツアー「enlightening trip 2019」を東京、大阪で開催。また、小説や絵、自主企画イベントなど多彩なクリエイティブ活動を展開。今年1月に配信リリースした新曲「御伽の街」のMVでは、コンテ・企画・衣装を自ら手がけている。

オフィシャルサイト
https://daoko.jp/

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