ソムリエ推薦! アニメ原作マンガ  vol. 3

Review

2020冬クールアニメの原作マンガを読む! 人ならざるモノに惹かれるアナタにお薦めの3作品

2020冬クールアニメの原作マンガを読む! 人ならざるモノに惹かれるアナタにお薦めの3作品

2020年冬クール放送開始のアニメも折り返し地点を過ぎたところ。キャラクターや世界観にまつわる意外な事実が明かされたり、新展開を迎えてさらに盛り上がる作品も。

今クールのターム最後の更新となるアニメ原作マンガの紹介は、「人ならざるモノ」に焦点の当たる3作品をご紹介。人とは違う生態や文化を持つキャラクターたちの描写が生き生きと描かれたこれらの作品を通して、人間社会も新しい角度で見れるようになるかもしれませんよ。

文 / 兎来栄寿


美しすぎる世界の優しく切ない機械と少女の旅

©暮石ヤコ/NSP 2015

『ソマリと森の神様』(作:暮石ヤコ)

アニメ化第一報のPVを見た瞬間から、とにかく背景美術の美しさに目を奪われました。ここではないどこか別の世界が、主線のない極彩色で鮮やかに存在感を持って現出していました。この街やこの森やこの原野を自由に歩き回ってみたい、と思わされるような魅力的な世界です。特にエンディングでCGで美しく描かれる流星群の風景には、主人公のソマリ役である水瀬いのりさん自らが情感を込めて歌う優しいメロディの「ココロソマリ」もあいまって心が洗われる思いになりました。

アニメ版では1話からかなり構成を練り直して世界観の把握をし易くしていました。まず冒頭から1,000年の寿命を持ち森を守るゴーレム、そしてゴーレムが守る森の生態系についての設定をかなり細かく紹介していたこと。そして、要であるこの世界での人間という種の扱いについてもしっかりと最初から言及していたこと。

とりわけ本作においては人間の設定は重要な要素です。過去に人間とそれ以外の種族による大きな争いがあり、基本的に人間を快く思っている者は少ないという世界。ただ、人間はペットとして飼われたり食糧としては非常に美味であったりと、利用価値のある存在ではあります。

絶対数自体が少なくなっているため人間を食べた経験のある者も多くはないですが、そうした事情からソマリは人間であることがバレてしまうとまずいためミノタウロスの子供に扮して旅をします。それ故に常に生まれる緊張感も、物語を盛り立てるポイントとなっています。

心を持たないはずのゴーレムが、ソマリと擬似家族のようになり旅をする過程で少しずつ感情のようなものを得ていく様子は感動的です。残り僅か1年しかないゴーレムの寿命を、ソマリは知らないまま旅をする切なさも堪りません。アニメ版ではゴーレムと手を繋ぎたがるソマリの描写などに、二人の間の絆を丁寧に情感を込めて描いていこうとする様子が見て取れます。

当然のものとして人外が存在する世界観が好きな人には、強くお薦めしたい上質のファンタジーです。白黒の線で描かれるマンガ版の絵もまた違った魅力があり、アニメでは見られないエピソードもあるので気になった方はぜひ原作の方にも手を伸ばしてみて下さい。

アニメ『ソマリと森の神様』オフィシャルサイト
https://somali-anime.com/

試し読みはこちら(ゼノン編集部)
https://comic-zenon.com/episode/10834108156688949272

和ファンタジーとミステリの上質な融合

©城平京・片瀬茶柴/講談社

『虚構推理』(原作:城平 京 / 漫画:片瀬茶柴)

今年で20周年を迎えるマンガ『スパイラル 〜推理の絆〜』の原作者としても知られるミステリ作家の城平 京原作の小説を元に、片瀬茶柴の魅力的な絵でコミカライズされている『虚構推理』。アニメ版は『輪るピングドラム』や『一週間フレンズ。』のブレインズ・ベースが制作、シリーズ構成を『黒子のバスケ』や『ゴールデンカムイ』の高木 登さんが担当するということで、放映前から盤石な安心感がありました。

実際に始まってみると期待通りのクオリティ。鬼頭明里が演じるヒロイン・琴子のかわいさ、宮野真守が演じる九郎のヤギっぽさと格好よさ。映像として動く彼らはますます魅力的になっていました。そして、彼らを取り巻く異形なる者たちもおどろおどろしさとかわいさに磨きがかかっています。

『虚構推理』がマンガ化される際には「なるべくコミカル」にというオーダーが城平からあったそうです。それに基づいて、劇中劇の「青春! 火吹き娘!」は原作小説では名前だけの登場だったにも関わらず、マンガ版では数ページにわたりノリノリでアイドル・七瀬かりんが主題歌の作詞作曲まで手掛けてヒロインを演じる姿が描かれます。今回のアニメでは遂にその主題歌「火炎放射器とわたし」を歌うOPがフルで映像化されました。七瀬ファン大歓喜の瞬間です。

ただ、アニメでも映像が出ながらセリフは一切なかった洗濯板子との熱く笑えるやり取りなど、マンガ版のみに存在する描写もあります。細かいキャラクターの動作など非常に原作再現度が高い作りをしつつも、雰囲気の整合性を取るためかアニメ版ではカットされているシーンは他にもかなりあるので、見比べてみると面白いでしょう。

城平の作風として、既存のジャンルが上手くミックスされ、単なるファンタジーでも単なるミステリでもない独特の味付けがなされていることが挙げられます。代表作の『ヴァンパイア十字界』や『絶園のテンペスト』も正にそういった内容で、大きく予想を裏切る展開が待ち受けているのが特色です。また、その中で生まれる恋愛を含めた人間ドラマに妙味があるというのも『虚構推理』にも共通している要素です。意外性ある展開を好む方には強くお薦めします。

アニメ『虚構推理』オフィシャルサイト
https://kyokousuiri.jp/

試し読みはこちら(マガジンポケット)
https://pocket.shonenmagazine.com/episode/10834108156642931474

カルチャーショックと性癖の宝石箱

©天原・masha/KADOKAWA

『異種族レビュアーズ』(原作:天原 / 作画:masha)

ここ最近のアニメの中でも最大の意欲作と言えるかもしれません。人間やエルフ、獣人、天使など様々な種族が混在して暮らす世界で様々な種族の風俗店に赴いては、その店のレビューを書くという内容です。

普通のファンタジーではスルーされてしまう、しかしながら確かにそこに存在するはずであろう感覚や機構を鋭敏なセンスでコミカルに描いています。たとえば、第一話では500歳エルフ・50歳人間の嬢に対してそれぞれの種族からの所見が出されます。人間にとっては何歳であっても美しい外見のエルフは魅力的な存在。しかし、エルフにとっては見た目がどうであれ自分の母親のような存在で抱くには無理があり、むしろ50歳の人間の方が若くて性愛の対象としては望ましい。獣人にとっても500歳エルフは加齢臭がしてきつい、といった具合です。

他にも目が小さいことが種族間では嘲弄の対象となる単眼娘が他種族にとっては「貧眼」はまったく欠点にならないことを知って喜んだり、産卵フェチである人魚やラミアに大人気の生産卵ショーのお店があったりと、種族や他文化圏における多様性が非常に的確かつ批評的に描写されています。

原作マンガは1話12ページ程なので、アニメ化するに際しては各話たっぷりと肉付けがなされています。天使クリムとハイエナ娘エルザによる女体化百合プレイの具体的な内容など、マンガ版では描かれていないシーン満載。また、サラマンダー焼肉屋の件など原作にあるシーンも更にパワーアップしています。

しかしながら、アニメ版よりエッジの効いた描写も原作マンガ版には存在するので、見比べると更に楽しめます。「願わくば世の青少年たちの性癖が健やかに歪まんことを」という作画のmashaさんの祈りが広く届きますよう。

アニメ『異種族レビュアーズ』オフィシャルサイト
https://isyuzoku.com/

試し読みはこちら(ComicWalker)
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_FS01000047010000_68/

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