Interview

多和田任益から溢れる演劇愛。役者魂をさらに開花させる契機作「改竄・熱海殺人事件」<モンテカルロ・イリュージョン>を前に語る、変化の兆し

多和田任益から溢れる演劇愛。役者魂をさらに開花させる契機作「改竄・熱海殺人事件」<モンテカルロ・イリュージョン>を前に語る、変化の兆し

ずっと芝居に対する苦手意識の塊だった男は、いつしか“芝居変態”を自認するまでに、芝居のことが大好きになった。
多和田任益、26歳。この春、「改竄・熱海殺人事件」のうちの1本、<モンテカルロ・イリュージョン>で木村伝兵衛 役に挑む。元棒高跳びのオリンピック日本代表選手で、バイセクシャル。俳優・阿部 寛の当たり役として演劇界で語り継がれる伝説的な役どころだ。
身も心も削られる難役を前に、彼は言った。この役をやり遂げたら、「もっともっと演劇が好きになる予感がします」と──。

取材・文 / 横川良明 撮影 / 冨田望


演劇に対する苦手意識が、重い扉になっていた

じゃあ、口火を切る意味合いも込めて、ざっくりとこの1年ぐらいのことを振り返ってもらいましょうか。

年々、1年があっという間になってきましたね。つい最近、24歳になったつもりだったのに、もう26歳だって。昔はどちらかと言うと1年を長く感じていたので、そこは不思議と変わってきたのかなと。

なぜ時間の流れを早く感じるようになったんでしょうね。

たぶん演劇を好きになったからだと思います。昔から誠心誠意やってはいたんですけど、苦手意識が強くてどこか心を開けていないところがあったので。

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演劇を好きになったきっかけは、今回の「改竄・熱海殺人事件」で演出を手がける中屋敷法仁さんとやったリーディングドラマ『ぼくらが非情の大河をくだる時―新宿薔薇戦争―』(2017年)がきっかけだったとよくおっしゃっていますよね。

最初に台本を渡されたときは読んでも意味がわからなくて一回台本を閉じたんですけど(笑)。不思議と幕が開くと、当時の自分ではあり得なかったような感覚になったというか。後半になるほどトランス状態。終わったあとは何にも覚えていないんですけど、ただ笑いが止まらなくて、それを見たやしきさん(中屋敷のこと)から「たわちゃん怖い~、好き~」って言われたのだけ覚えています(笑)。
僕、嫌なことがあるとすぐ扉を閉めちゃう癖のある人間で。マネージャーさんからずっと「あなたはそのかたい扉をどこかのタイミングで開けてもらわなきゃいけない」って言われていて。この仕事を始めてからは特に芝居に対する苦手意識が重い扉になっていたのが、あそこで開けた気がしました。

重い扉の理由は自分に自信がなかったから? それとも自分の感情を表に出すのが嫌だったから?

両方ありますね。今も自信は全然ないんですけど、昔は今よりもっとなくて。自信のなさが表現に出ていたというか。ダンスは好きだから技術が劣っていても楽しかったんですけど、その感覚を演劇ではなかなか活かせなくて。“どうせ自分はヘタやし”ってマイナスな感情ばっかり重なって、扉を閉じるみたいな感じでした、昔は。

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それが『ぼくらが〜』や舞台「文豪ストレイドッグス」の太宰 治という当たり役を得て、一気にお芝居の楽しさに目覚めた。

それこそ直近だと「天才てれびくん the STAGE〜てれび戦士REBORN〜」もすごく楽しくて。それまではアドリブが鬼嫌いだったんですよ。ほかの人がやっているのを見ると“面白い!”ってなるけど、自分が「やれ」って言われたら、“どうせ面白くないし……”と頭が真っ白になっていたんです。
それが「天てれ」はギアをはずしてやりたい放題できて。正解かどうかはわからないですけど、自分のやりたいことや感じたことをその場でバンって出せるようになったのは、この1〜2年の積み重ねがあったからかなと思いますね。

長江崚行くんとのアドリブは毎公演内容が違っていたんですよね。めちゃくちゃ大変だと思うんですけど、そういうことを楽しいと思えるように?

“怖い!”って一瞬思うんですけど、それも楽しいと感じられるようになったというか。たとえウケなかったとしても、“この900人とか1,000人のお客さんを一瞬シーンとさせられる俺らって逆にすごくない?”って(笑)。ポジティブにいろんなことを感じられるようになりました。
もちろんスベったら、ハケた瞬間、崚行と反省会ですけど(笑)。そういうのも楽しめるようになったのは、自分の中でかなり変わったなって感じがあります。

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まさに“芝居変態”になりつつあるような……。

ちょっとなっているなって思いました。演劇をやっている人なんてちょっとぐらい変人のほうがいいかなと僕は思うので、自分もそこに近づけているなら自信にもなりますね。

中屋敷さんなんてまさに“芝居変態”ですもんね(笑)。

ヤバいと思いますよ(笑)。もともと好きだったんですけど、そんなやしきさんのことを最近は“大好きです!”って両手を広げて言えるようになりました(笑)。

やっぱりどこかハモれるところがあるんでしょうか。

ありますね。それも今回でお互いの何かが更新されそうな気がして、楽しみです!

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また新しい扉を開けた手応えがあった

中屋敷さんと「熱海殺人事件」という意味では、去年の2月に戯曲探訪「つかこうへいを読む 2019春」と銘打って、朗読による発表会をされているんですよね。

そうなんです。当日まで内容を何にも聞かされていなくて。現場に入ったら、やしきさんから「たわちゃんは〈モンテ〉の伝兵衛ね」ってニマニマしながら言われて。読み合わせもなくて、軽く場当たりをやったらもう本番。みんな「ヤバくない?」って言いながら、本番までの間は楽屋で無言で台本を読んでました(笑)。

それが、やってみたら面白かった。

たぶんその緊張感に、みんなの熱量が加わって、2日間あったんですけど、1日目からすごいものができた感覚はありました。僕も不思議と迷いもなくできたというか。お客さんも笑うところはゲラゲラ笑ってくれるし、最後のほうは泣いてくれている人もいて。そしたら、やしきさんが“あなたが泣くなよ!”って言うぐらい誰よりも泣いていて、ちょっと笑っちゃったんですけど。あれは忘れられない経験になりました。

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木村伝兵衛というキャラクターにシンクロするところが?

2017年の「熱海〜」で熊田留吉 役をやって、みかてぃ(味方良介)が伝兵衛をやっているのを見ながら、いつか自分もやれたらいいなと憧れていたんですけど、もっと年をとってからだろうと勝手に思っていたんですね。
それが「モンテ」を読んだとき、この伝兵衛も好きだってシンプルに思ったというか。あの変人のやしきさんが(笑)、僕に伝兵衛をやらせたいと思った理由が直感的にわかったんです。
稽古もなしに直前に台本を渡されただけで、あそこまで気持ちを持っていけたのは、自分にとってもまた新しい扉を開けられたのかなという手応えがあって。発表会が終わった瞬間から速攻でやしきさんに「〈モンテ〉やりたいです!」ってずっと言い続けていました(笑)。

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「モンテ」の伝兵衛って、この一連のシリーズの中でも際立ってエキセントリックだと思うんですね。そんな伝兵衛を好きって思っちゃうところが面白いなと。

尋常じゃないことを言っているし、わけのわからないことをやっているんですけど、なんか愛せるって自然に思えたんですよね。
僕は人間の泥くさい部分が好きで。伝兵衛は人間の泥くささが前面に出ている役。それを自分の身体を通して表現できるのが幸せというか。大変な稽古になるでしょうけど、自分にとってもまたひとつ大きな節目になる作品になる気がするので、どちらかと言うと、今は楽しみのほうが大きいです。

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どんどん面倒くさい人間になってきています(笑)

「文豪〜」の太宰しかり、エキセントリックな人間に共鳴しやすいのはなぜなんでしょうね。多和田さんってベースとしてはいい子で真面目じゃないですか。そんな表層の奥に眠っている狂気みたいなものへの自覚はありますか?

ありますね。特にこういうちょっとこじれている役を演じるようになってから、より感じるようになりました。僕は表面に出ているものがその人のすべてとは思っていなくて。きっと人に言えない何かや、自分でもまだ気づいていない何かをみんな持っている。
たしかに僕も“好青年”って言われることが多くて。高校生の頃から近所の奥さんに「『MOCO’Sキッチン』に出てそう」って言われていたんですけど(笑)。もちろんそういう役ももっとやりたいですけど、舞台を観に行ったときに“あの役やりたい”って思うのはエキセントリックな役のほうで。こじれている人のことをどんどん好きになるようになってきて。それに引っ張られるようにして、自分もどんどん面倒くさい人間になってきているんですよね。最近はマネージャーさんからも「あの頃の可愛いあなたはどこに行ったの?」ってよく言われています(笑)。

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でも、今のほうが伸び伸びとしていそうです。

完全にそうだと思います。役者としても、人間・多和田任益としても、かなり伸び伸びできるようになりました。
でも、「モンテ」をやったらさらにパーンって何かがはずれそう(笑)。ちゃんとね、好青年でいたいんですよ! いつまでも料理番組の似合う人でいたいんですけど。そのうちヤバい役ばっかりすぎて、爽やかに振る舞っても“全然爽やかに見えないわ!”って言われたらどうしよう……(笑)。
まあでも、そんなふうに見た目の雰囲気で僕を爽やかだと思っている人が劇場に来て“私の知っている多和田はどこへ?”と思われるのも面白いですよね。それぐらい役者として振り幅が出せるようになりたいなって今は思っています。

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公輝くんからのLINEにちょっと泣きそうになりました

個人的には、梅棒 EXTRA シリーズ『ウチの親父が最強』が、去年の多和田さんのベストアクトで。あのステージで見せた瞬間的な爆発力はすごかったです。

梅棒さんは単にダンスをするんじゃなく、表情や身体の動きでストーリーや役の気持ちを表現しなくちゃいけなかったので、あれを経て、表現の仕方がまた変わったかなと自分でも思います。
(擬音で大きく身振り手振りを交えながら)特にソロダンスのところは、やってて今までにないゾワゾワみたいなのがすごくあったんです。何かがブワーっと自分から飛び出していっているような感覚がビリビリとあって……ごめんなさい、急に語彙力失ったみたいになっているんですけど(笑)。

伝わるから大丈夫です(笑)。

本当、言葉にできない何かがブルブルってあったので、あの経験はすごく大きかったなって思います。

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そんなふうに表現できるようになったのは、何かレッスンをしたというよりも、これまでの積み重ねの結果ですか?

そうですね。それこそ、昔、感情解放のレッスンを受けたときとか、僕は全然泣けなくて。先生から「昔のつらかった記憶を思い出してみたら?」とか言われるんですけど、無理で。マネージャーさんからも「あなたは昔のつらかったことに蓋をするタイプだね」って心配されていたんですけど。だから、当時の自分に今の自分を見せたらびっくりするんじゃないかなと思います。その頃は本当に“役者に向いてないな。無理だわ”ってずっと思ってましたから(笑)。

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最初に“扉”という単語が出ましたよね。今回、伝兵衛をやることで、また新しい扉が開くとしたら、そのときの自分はどうなっていると思いますか?

たぶんもっともっと演劇が好きになる予感がします。あとは、こういうエキセントリックな役をやったからこそ、もっと極めたいという気持ちもありつつ、今度は普通の役をやりたいって思うようになっている気もしますね。
この間、「天てれ」で前田公輝くんと共演したんですけど、公輝くんのお芝居が本当にナチュラルで。その場で起きたことを瞬間瞬間で感じ取って、だから毎回芝居が違う。自分の求めているものはこういうことかもしれないって、稽古中、ずっと公輝くんのお芝居を見てました。
そしたら大阪公演の帰り道に公輝くんから、「ひでくんがいてくれたから、この「天てれ」に厚みが増しました」ってLINEをもらって。すぐスクショしてマネージャーさんに送りました(笑)。芝居が嫌だって思っていた自分が、公輝くんから「任益のこの台詞が良かった」「任益のこの間(ま)が良かった」って言ってもらえるようになるなんて信じられないというか。続けてきて良かったなって、ちょっと泣きそうでした(笑)。

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【募集終了】抽選で2名様に多和田任益さんの直筆サイン入りチェキをプレゼント!

多和田任益さん直筆サイン入りチェキ

※賞品はお選びいただけませんので予めご了承ください

応募期間

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2月23日(日・祝)~3月1日(日)23:59


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ニッポン放送開局65周年
つかこうへい演劇祭 ―没後10年に祈る― 第二弾
「改竄・熱海殺人事件」

東京公演:2020年3月12日(木)〜3月30日(月)紀伊國屋ホール
大阪公演:2020年4月4日(土)〜4月5日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA TT ホール
福岡公演(FM 福岡開局50周年・IMS SPRING 2020特別公演):2020年4月11日(土)〜4月12日(日)イムズホール
*公演日程により上演作品が異なります。詳しくはオフィシャルサイトをご確認ください。

<チケット一般発売>
東京・福岡公演:2020年2月23日(日)AM10:00〜
大阪公演:2020年3月1日(日)AM10:00〜

作:つかこうへい
演出:中屋敷法仁

出演:
<ザ・ロンゲストスプリング>
木村伝兵衛 部長刑事 役:荒井敦史
水野朋子 夫人警官 役:馬場ふみか
熊田留吉 刑事 役:佐伯大地
容疑者 大山金太郎 役:玉城裕規

<モンテカルロ・イリュージョン>
木村伝兵衛 部長刑事 役:多和田任益
水野朋子 婦人警官 役:兒玉 遥
速水健作 刑事 役:菊池修司
容疑者 大山金太郎 役:鳥越裕貴

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@2020atami)

多和田任益(たわだ・ひでや)

1993年11月5日生まれ、大阪府出身。2011年に舞台デビュー。ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン(手塚国光 役)、舞台「文豪ストレイドッグス」シリーズ(太宰 治 役)をはじめ、近年の主な出演作品には【舞台】「天才てれびくん the STAGE〜てれび戦士REBORN〜」、「イノサンmusical」、梅棒EXTRAシリーズ「ウチの親父が最強」、「PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice」【映画】『ひだまりが聴こえる』(主演)、『手裏剣戦隊ニンニンジャー』シリーズ【ドラマ】『RIDER TIME 仮面ライダーシノビ』、『仮面ライダージオウ』などがある。

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