Report

西銘 駿&神永圭佑&佐伯 亮らが濃密な人間ドラマを生み出す。“ダブルヘッダー特別公演”舞台『おおきく振りかぶって 秋の大会編』ゲネプロレポート

西銘 駿&神永圭佑&佐伯 亮らが濃密な人間ドラマを生み出す。“ダブルヘッダー特別公演”舞台『おおきく振りかぶって 秋の大会編』ゲネプロレポート

舞台『おおきく振りかぶって 秋の大会編』が、2月14日(金)東京・サンシャイン劇場にて開幕した。今回は“ダブルヘッダー特別公演”と称して、初演である舞台『おおきく振りかぶって』の再演と、舞台シリーズ第三弾であり新作となる『おおきく振りかぶって 秋の大会編』を同時上演。初演から引き続き三橋 廉 役を西銘 駿が演じ、大橋典之、渡邊安理らが名を連ねる。
2月14日(金)には再演のゲネプロとゲネプロインタビューが行われ、翌15日(土)には第三弾「秋の大会編」のゲネプロが実施された。ここでは、「秋の大会編」のゲネプロの様子をお届けする。

取材・文・撮影 / 高城つかさ


神永圭佑の強いオーラと目力に惹き寄せられる前半戦

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

舞台『おおきく振りかぶって』は、ひぐちアサが描いた同名漫画を原作に、2018年2月にキャラメルボックスの成井 豊が脚本・演出を手がけ、初演が上演された。

本作「秋の大会編」では、シリーズ第二弾「夏の大会編」の続きとして、県下の強豪校・ARC学園高校と榛名元希(神永圭佑)率いる武蔵野第一高校による夏の大会準決勝戦、主人公・三橋 廉(西銘 駿)や阿部隆也(大橋典之)を含む西浦高校と武蔵野第一高校による秋の大会の様子が描かれる。

なお、同時上演される再演に桐青高校・三星学園の選手として出演する越智友己、永岡卓也らが、「秋の大会編」では武蔵野第一高校またはARC学園高校の選手として登場し、総勢22名による熱い試合が繰り広げられる。

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

物語は、夏の大会で敗北した西浦高校が“チーム共通の目標”を持とうと、三橋 廉、花井 梓(白又 敦)をはじめとした各選手が“達成したいこと”を考えるシーンから始まる。

初めはバラバラな目標を掲げていたチームメンバーだが、あらためて考え直した結果、全員で“甲子園優勝を目指す”と決め、練習を開始。秋の大会へ向けた合宿や文化祭を経て、チームの絆を深めていく。

その一方で、武蔵野第一高校の榛名元希は、熱意を見せないチームメイトの秋丸恭平(佐伯 亮)をやる気にさせようと考えるが……。

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

野球に対しての熱い思いを抱えながらも、どこかほのぼのとした雰囲気が特徴的な西浦高校。その姿は、合宿中の会話や文化祭の様子からもうかがえる。
特に秋の大会へ向けて行われた夏休みの強化合宿では、練習はもちろんのこと、“どの程度食事を取ればいいのか”“糖質は何に含まれているか”といった、野球選手として必要な身体づくりのための講義を受けたり、それを踏まえて三橋 廉が夏の大会で負傷した阿部隆也とともに献立を考える場面もある。
これらの日常的なシーンのなかで野球に関するプチ知識も得られながら、彼らがチームメイトとして関係性を深めていく様子は見ていてとても爽やか。人間ドラマの奥深さを感じさせてくれる。

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

ARC学園高校と武蔵野第一高校による夏の大会準決勝では、武蔵野第一高校でバッテリーを組む榛名元希・秋丸恭平の姿に注目していただきたい。

投手・榛名のボールを受けるためだけに捕手をやっている秋丸は、プロを目指すわけでもなく、勝利に向かって一丸となるチームメイトと熱意の差を感じてしまう。榛名と同じ高校に進学したのも、野球を続けているのも、捕手をやるのも、すべては榛名がいるから。秋丸の行動原理にはいつも榛名がいて、いつの間にか榛名の一部になっていたのだ。一方で、榛名はプロを目指し、周囲からも実力を認められている。しかし、自分はこれまで補欠で、自らが野球にかける情熱を見失っている。榛名のボールを“サイン”を出さずとも受け止められる関係性にも関わらず、ずっとそばにいた幼馴染みだからこその葛藤を秋丸はこのとき抱えている。

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

そんな秋丸をやる気にさせようと奮闘する榛名を、神永圭佑が熱演。普段は秋丸に厳しく当たる榛名だが、彼のやる気について気にかける姿には、試合シーンで見せる強いオーラと目力とは対照的な温かい優しさが感じられた。しかも、他校からも一目置かれている榛名の放つオーラには、ステージ上で彼に対峙するチームメイトや対戦相手だけでなく、会場にいた誰もが引き寄せられたように思う。

武蔵野第一高校も、榛名・秋丸によるバッテリーの関係性だけでなく、チームメイトの感情の動きも細かく描かれており、徐々に絆を深めていく姿が印象に残った。

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

夏の大会の準決勝「ARC学園高校 VS 武蔵野第一高校」の試合最中には、阿部が三橋に解説をするシーンも。その試合後、榛名の筋肉に触れたことで刺激を受け、“おおきく振りかぶって”投げることを決めた三橋は、阿部やモモカンこと百枝まりあ(渡邊安理)らとともに投球フォームを修正するための練習を開始。阿部やモモカンが、成長していく三橋を見守る。

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

西銘 駿が本作のテーマを的確に再現しながら物語はクライマックスへ

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

そして夏は過ぎ去り、秋の大会へ。シード権を得た西浦高校の対戦相手は武蔵野第一高校だ。

夏の大会を経て、野球で諦めた“野球への熱い想い”を試合によって取り戻し始めた秋丸は、勝利を目指し、ある行動に踏み切る。 神永と同じく舞台『おおきく振りかぶって』シリーズ初参加で秋丸を演じた佐伯 亮は、榛名にコンプレックスを抱いているときは肩を内側に入れていたが、次第に背筋が伸び、野球そのものを笑顔で楽しんでいる様子を、表情だけでなく全身で表してくれたように思う。その姿は、“榛名のために野球をする捕手”ではなく、ただ純粋に野球が好きな、ひとりの野球選手だった。

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

さらに、注目したいのは、初演から三橋 廉 役を続投している西銘 駿だ。入部当初は頼りなく気弱な少年で、阿部の言うことをそのまま受け取っていた三橋が、次第に自分の意見を伝えるようになり、西浦高校のチームメイトや他校の選手をはじめ、さまざまな出会いと試合を通して成長していくのだが、そんな三橋を丁寧に演じており、物語の核とも言える“成長主題”を一身に体現していて感動的だった。

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

オープニングとエンディングでは全キャストが登場し、Galileo Galilei「夏空」に合わせダンスを繰り広げる。テレビアニメ版の主題歌でもある楽曲に、感動を覚えた人もいるのではないだろうか。

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

また、舞台セットは前作と変わらず前に傾斜しており、白いラインにスコアボードなど、ひと目で野球の試合会場であることがわかる。そして、バッドにボールが当たったとき、その行く先を照らす照明や、ボールの補球音などを通して、どのくらいボールが飛んだのか、投手と捕手にどの程度距離があるのか、客席に自然と伝わる。舞台転換もなければ、実際に野球ボールを使用するわけでもない。けれど、そこはたしかに彼らの試合会場であった。

試合では「ボール!」「見逃しストライク!」など様々な専門単語も飛び交うが、野球を経験したことがない人でも試合を観戦しているかのような感覚で観られる、そして応援する気持ちになれる。カンパニーが一丸となって試合を“魅せたい”という気持ちが存分に伝わってきた。

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

なお、舞台『おおきく振りかぶって』の再演は、初演と比べブラッシュアップされた点もあるそう。再演では、三橋が阿部との出会いを通して、人間としてだけでなく、選手としても成長していく姿が描かれている。「秋の大会編」は第二弾の夏の大会準決勝から描かれているため、第一弾を観劇することでより『おお振り』の世界を知れるはずだ。

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

スポーツを主題として扱うと、原作好きであったり、もともと競技について知っていたりしなければ物語についていけないと感じることがあるかもしれない。だが、個人的にはこの作品を“スポーツもの”という言葉だけで括ってしまうのはもったいないと感じた。気弱な三橋が西浦高校に入り、阿部とバッテリーを組んだことで成長したように、幼馴染みの榛名・秋丸が試合で絆を深め、秋丸がコンプレックスを手放していけたように、人は人との出会いや行動を通して変わっていく。もちろん、“スポーツもの”ならではの“熱さ”も込められているが、きっかけをスポーツがつくってくれているだけで、これはひとつの“人間ドラマ”でもあるのだと感じた。そう感じられるのは、心理描写を丁寧に描いている作品だからこそ、だ。総勢22名の登場人物を通して胸躍らせる人間模様が描かれた舞台。ぜひ、劇場にて熱い2試合を見届けていただきたい。

おおきく振りかぶって 秋の大会編 WHAT's IN? tokyoレポート

ダブルヘッダー特別公演 舞台『おおきく振りかぶって』/舞台『おおきく振りかぶって 秋の大会編』は2月24日(月・休)までサンシャイン劇場にて上演。キャストによるアフタートークをはじめとするファン感謝祭も実施。初演にて田島悠一郎を演じた納谷 健の登壇回もある。詳細はオフィシャルサイトにて。

ダブルヘッダー特別公演『おおきく振りかぶって』/『おおきく振りかぶって 秋の大会編』

2020年2月14日(金)~2月24日(月・祝)サンシャイン劇場

原作:ひぐちアサ
脚本・演出:成井 豊

出演:
<西浦高校>
三橋 廉 役:西銘 駿
阿部隆也 役:大橋典之
百枝まりあ 役:渡邊安理
花井 梓 役:白又 敦
田島悠一郎 役:大野紘幸
泉 孝介 役:安川純平
栄口勇人 役:竹鼻優太
沖 一利 役:中村嘉惟人
水谷文貴 役:湯本健一
巣山尚治 役:齋藤健心
西広辰太郎 役:亀井賢治
篠岡千代 役:澤田美紀
志賀剛司 役:筒井俊作

<武蔵野第一高校>
榛名元希 役:神永圭佑
秋丸恭平 役:佐伯 亮
加具山直人 役:島野知也

<桐青高校>
高瀬準太 役:越智友己
河合和己 役:永岡卓也
島崎慎吾 役:松本祐一

<三星学園>
叶 修悟 役:西川俊介
織田裕行 役:鶏冠井孝介
畠 篤史 役:吉田英成

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@oofuri_stage)

©ひぐちアサ・講談社/舞台「おおきく振りかぶって2020」製作委員会