Interview

“『デジモン』世代は絶対観て” 太一・花江夏樹×アグモン・坂本千夏が明かすラストシーンの胸中、シリーズ完結編『LAST EVOLUTION 絆』が遺すもの

“『デジモン』世代は絶対観て” 太一・花江夏樹×アグモン・坂本千夏が明かすラストシーンの胸中、シリーズ完結編『LAST EVOLUTION 絆』が遺すもの

1999年から2000年にかけて放映され、流行や世相を敏感に取り入れた「デジタルワールド」という舞台で、胸がワクワクするような子どもたちだけの大冒険を描き、熱いファンを獲得したテレビアニメ『デジモンアドベンチャー』。その後、2000年から2001年にかけて続編『デジモンアドベンチャー02』が放映され、また、2015年から2018年にかけては、高校生になったキャラクターたちの姿を描いた『デジモンアドベンチャー tri.』が全6章のOVA作品として展開された。

そして、初代シリーズから20周年の節目を迎え、その集大成として、”選ばれし子どもたち“とそのパートナーである”デジモン”の「最後の進化」を描く『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』が、2020年2月21日(金)より全国の劇場で公開される。

作品の舞台は2010年。デジタルワールドに由来する世界の危機を何度も救ってきた、八神太一とそのパートナーであるアグモン。ふたたび起こった新たな事件に立ち向かう彼らは、鍵を握るエオスモンとの戦いの中で、やがて避けがたい「別れ」が訪れることを知る。そのとき、太一とアグモンの出した答えとは!? 気になる作品のみどころを、 『tri.』から太一役を務める花江夏樹と、シリーズを通じてアグモンを演じてきた坂本千夏に訊いた。

取材・文 / 前田 久 構成 / 柳 雄大
撮影 / 樋口 涼


主人公の個性やキャラクター性だけじゃない、“感情移入できるポイントの多さ”が魅力の根幹に

デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆 WHAT's IN? tokyoインタビュー

『デジモンアドベンチャー』のシリーズ開始から20年以上が経ち、今、またこうして、『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』という新作が劇場公開されようとしています。シリーズがこれだけ長く愛され続ける理由を、おふたりはどう考えておられますか?

花江夏樹 テレビシリーズの『デジモンアドベンチャー』は子供に向けてつくられていた作品ですけれど、今見返すと、大人になってからじゃないとわからないようなことがすごく表現されているんですね。そういうことって、子供の頃でも、何となくは感じられるものだと思うんです。

大人たちが本気で作っているものは、子供にもわからないなりに伝わる。それが記憶のどこかに残っていて、成長してから、「また観てみようかな」みたいな気持ちを呼び起こして、で、観ると昔はわからなかったことが、わかる。そうやって時代を超えて、長く愛されているんじゃないかなと、自分が大人になって、あらためて見返したときに思いました。

坂本千夏 『デジモンアドベンチャー』は太一が主人公だけれども、主人公の個性やキャラクター性だけで引っ張る作品じゃないですよね。“選ばれし子どもたち”にはいろんなタイプの子がいる。お勉強はできるけど、ちょっと引っ込み思案な子とか。そうした子たちのそれぞれに、いろいろと感情移入できるポイントがあると思うんですよ。思わず「がんばれよ!」と応援したくなったり、「こういう性格の子だから、こうなっちゃうよね……」と共感したり。さらにその子たちには、デジモンというパートナーもいる。

ひとりの子に感情移入するだけじゃなく、子どもたち同士やパートナーとの友情もわかちあえる。そんな一粒で二度おいしいところがある(笑)。そこが愛されているのかなと思います。みんながみんな、スポーツ万能な子に心惹かれるわけじゃないし、グループでいることで見えてくるよさだってある。そういうのが描かれているんですよね。

ひとりのキャラクターとしても魅力的ですが、カップリングのおもしろさもある作品ですよね。

坂本 そうなんです。ヤマトとタケルの兄弟とか、普通、小学校くらいの年頃って、小さい子が遊びについてくるの、すごくイヤじゃない?

花江 (笑)

坂本 ああ見えて、ヤマトっていいお兄ちゃんだよなぁ……とか、ふたりが揃っているからわかる。そういうことがたくさん描かれているんですよね。

今作での太一とアグモンの魅力は、おふたりの目から見て、いかがですか?

花江 太一は前作の『デジモンアドベンチャー tri.』で、戦うことに対してのためらいとか、青年になったことで意識するようになった葛藤を乗り越えて、だいぶ成長しましたね。今回の『LAST EVOLUTION』では「別れ」という問題を乗り越えなければならないのですが、そこへの向き合い方も『tri.』の序盤のころよりはカッコよくて、どこか小学生の頃の太一のような、熱いハートを取り戻して来た感じがします。成長はしていても、性格の根本の部分は変わっていないんですよね。

……あ、ただ、今回は大人になったからこそのおもしろさが出ていますよ。お酒が飲めるようになっていたり、部屋にエッチなものを隠していたり(笑)。

坂本 隠しているものをアグモンが見つけちゃう、太一のお宅訪問のシーンは、私も楽しかった。若い男の子のお部屋をみせていただいて(笑)。みなさんもクスッとくる、美味しいシーンかなと思います。

花江 ともあれ、そういう部分が垣間見えるようになって、またさらに魅力的な男になったんじゃないかなと、僕としては思っています。バイト先も意外なんですよね。太一も大人になったな?と。

坂本 あれは意外だよねぇ(笑)。私の演じるアグモンは、ずっと変わらないです。まっすぐですね。私は「器がでかい」と思っているんですが、何があっても太一のことが大好きな、シンプルなやつです。くっきり太い線で、「漢ッ!」と書いてある感じがあります(笑)。

太一、アグモンにとうとう訪れた「別れ」の場面を演じて

今回、『LAST EVOLUTION』……「最後の進化」ということで、アフレコに臨まれる上での特別な思いはあられました?

花江 やはり「最後」といわれると、意識せざるを得ないところはありました。台本を読んだら、本当に、これまで『デジモン』というシリーズで積み重ねてきたことを踏まえて、その上で迎える「最後」だったんです。これは覚悟しないといけないな、と。

坂本 どうしても「これで最後」となると力が入ったり、これでもかと「別れ」を感じさせる何かを醸し出してムードでお芝居を持っていってしまいがちなんですが、アグモンを演じるのだからいつもどおりに、普通にしていようと思っていました。平常心、平常心、と。

アグモンという役の難しいところですよね。悲しい状況でも、ブレない。

坂本 そうなんです。でもそう演じても、当たり前のようだったものが当たり前ではなくなったときの痛みの感じ方を、観てくださる方とはきっと共有できるんじゃないかなと、私は信じています。

作品全体での見どころは?

花江 初代から『デジモン』シリーズを観てくださっていた世代に向けての「最後の進化」が描かれる作品です。だから『デジモン』が好きなほど、「おっ!」と思うシーンがあるんですよね。「ここは以前の作品とダブるな」なんてシーンもあったりして。あとはやはり、太一たちの成長度合いが、最後の物語なのでより現れています。そして、別れを乗り越えた先にある結末もみどころですし、「最後の進化」というからには、「進化」のシーンもとてもカッコよくて……とにかく、見どころだらけです!(笑)

デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆 坂本千夏 WHAT's IN? tokyoインタビュー

坂本 うんうん。私は……この作品がずっと好きでいてくださる方は、太一たちの成長をずっと見守ってきてくださっていた方たちなんだろうと思うんです。そうした方たちに向けて、「大人になって変わることってなんだろう? 変わらないことってなんだろう?」だとか、「大切なことって何なのか。それはモノ? それとも、もっと違う何か?」だとか、「大人になるのって嫌なことなの? 悲しいことなの?」だとか……いろいろと問いかけてくれる作品だと感じました。

誰だって、大人にはなる。でもそこで、気持ちが立ち止まってしまっている人たちもいます。そんな人たちにはすごくいい、一歩引いて、自分のことを考えるきっかけになるんじゃないかな。みんなの成長と進化を見届けてきた私としては、そこは感じてほしいです。

「これは!」という印象に残ったセリフやシーンはありますか?

花江 いろいろとあるんですけど……その、何かセリフそのものというよりも、太一とアグモンのなんでもない会話のやりとりが印象深いです。別れのときがいつ来るかはわからない状況で、アグモンと太一が「何食べたい?」とか、いつも通りの会話をしているシーンがあって、そこが演じている身としても、すごく切なく感じていました。

別れが来ることを分かっているけれども、努めていつも通りに、明るく会話をしているのが本当にツラい。アフレコの音声が入った映像を見返して、自分で演じたシーンなのに、すごく悲しい気持ちになってしまって、印象に残っています。

坂本 私ももちろん、そこのシーンは太一の声をしっかり聞いて、応えて……というのを大事にして演じたところなので印象に残っています。あとは、物語が終わったあとの、太一とヤマトの清々しい顔ですね。ああ、なんか、また一皮むけちゃったな、と。

今回、たしかに「別れ」が描かれて、悲しいことは悲しいけど、でもなんだか、そんな感じじゃないな、と。一種の清々しさを、若者の素敵な顔を見て思いました。すごくかっこよかった。いい顔でしたよ。

アフレコ現場での何かおもしろいエピソードがありましたら、教えてください。

坂本 『02』の人たち(『デジモンアドベンチャー02』からの出演キャスト。野田順子、高橋直純、遠近孝一、浦和めぐみ)はすごく楽しそうでした。

花江 登場シーンがほとんど楽しいシチュエーションなこともあってか、本当に、楽しそうに溶け込んでいましたよね。今回、太一とアグモン、ヤマトとガブモンの関係に割とスポットが当たっているので、出番的にはちょっと少なめなキャラクターもいたんです。その方たちが、「もう終わっちゃったよ~」みたいなことをおっしゃっていたのが印象に残っています。

坂本 しゃべり足りなさそうな感じだったね(笑)。

花江 そんなちょっとした言葉にも、作品やキャラクターへの愛情が爆発していたな、と。

『02』に登場したデジモンの演者のみなさんとは、坂本さんは役の上で久々の再会だったわけですよね。

坂本 その日はみんなでお寿司屋さんに行きましたよ(笑)。

デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆 花江夏樹 WHAT's IN? tokyoインタビュー

(笑)。花江さんは今回が初顔合わせで。どうでした?

花江 「デジフェス」(『デジモン』シリーズのイベント)で少しご一緒させていただいていて、そこでお話しさせていただいたことはあったんですけれども、たしかに『デジモン』のアフレコ現場でお会いするのは初めてで……お声を聞くとやっぱり、「本物だ!」という気持ちにはなりました(笑)。ファン心が湧いてしまう、じゃないですけど(笑)。でも『tri.』がありましたからね。あの最初のころよりは、だいぶ落ち着いた気持ちでアフレコできたかな、と。

『02』組では、“選ばれし子どもたち“は今作から初参加のキャストのみなさん(片山福十郎、ランズベリー・アーサー、朝井彩加、山谷 祥生)で。

坂本 すごい一生懸命でしたよ、ホント!

花江 すごいグイグイ来ている感じがあって(笑)。初参加だけど、存在感がすごかったです。意図して出そうとしているかは分からないですけど、まるでずっと前からそこにいたような感じがしました。

デジモンアドベンチャー「最後の物語」、その全力を見届けてほしい

では、取材も締めに向かおうと思うのですが、ひとつ、立ち入った質問をさせてください。『デジモン』の長い歴史の中では、初代のOP主題歌「Butter-Fly」を歌われた和田光司さん、太一役の藤田淑子さん、空役の水谷優子さんが亡くなられています。今作という、シリーズの節目の作品を世に送り出すにあたって、お三方への何か特別な思い、お言葉があられたら、うかがいたいのですが。いかがでしょうか……?

花江 僕としては……やはり、藤田さん、水谷さんは、小さい頃から当たり前のように、太一や空の声として、お声を聞いてきた方です。『tri.』でキャストが変わるとなったとき、自分が太一を演じていいものなのか、すごいプレッシャーがありました。でも藤田さんは「新しく若い役者が、成長した太一たちを演じる」ということに対して、とても優しい言葉をかけてくださった。背中を押していただけた。

そして和田さんの歌われた「Butter-Fly」。『デジモン』ファンはもちろん、作品を知らない人たちも歌えるぐらいの、本当にものすごい曲です。お芝居や歌の力、「魂」はずっと、曲やキャラクターに宿っていくものだと思います。……言葉では表しづらい感覚ですけれども、ずっとその作品が存在している限り、「魂」は未来永劫続いていくものなのかな、と。あらためて、そんなことを感じました。

僕はお三方に何か言葉を投げかけられるような立場にはないです。ただ、本当に一ファンとして、みなさん、『デジモンアドベンチャー』という作品になくてはならない存在だったな……と。

坂本 私は……トコさん(藤田淑子さん)は本当に、私にとっては「姉」なんです。『デジモンアドベンチャー』のときも、毎週の収録のあと、アフレコスタジオから新宿までふたりで歩いて、お買い物をして、一緒に電車に乗って帰っていたくらい、親しかった。トコさんは『デジモンアドベンチャー』の現場で、他の“選ばれし子どもたち“より大先輩で、とってもカッコいい座長だったんですよ。トコさんがいると、現場がグッと締まる。

あれから20年が経って、私はあのときのトコさんよりもちょっと年上になっているのに、全然ダメ。優子ちゃんは、アフレコ現場でいつもニコニコしていて、みんなに気を遣ってくれていて、「なんて優しいんだろう」とずっと思っていました。

そして「Butter-Fly」は、その曲を聴いただけでみんなの心にスイッチが入るような、宝ですよね。和田さんがご病気で、声が出なくなる恐怖と戦っているのを、声の仕事をしている者として、こんなに辛いことはない……と感じながら見ていました。亡くなられたあとも曲はずっと愛され、今回の映画で、また最初の形で、オープニング曲としてみなさんにお届けできる。こんな風に、私たちのところに帰ってきてくれることを、きっと和田さんも、とても喜んでくれていると思うんですよね。

はい。

坂本 きっと、みんなね……この作品を観て、「がんばったね」と、言ってくれるんじゃないかなと思いますよ。

ありがとうございます。では最後に、公開を楽しみにされているファンの皆さんに、一言メッセージをお願いします。

花江 本当にこれが、『デジモンアドベンチャー』の最後の物語ということで、(田口智久)監督もとても気合が入っています。監督も僕と同じ、『デジモン』を観て育った世代で、その方たちに向けて、全力で作っています。僕としても本当に、当時の『デジモン』の映画の雰囲気がすごく出ている、重なる部分が多い作品で、今から公開日が楽しみです。作品の内容に恥じないよう、全力で太一を演じたので、ぜひいろんな方に観ていただきたいです。よろしくお願いします。

坂本 小さかったときに『デジモン』を観てくださって、今、大人になったお友達も、そして今までこの作品に触れてこなかった方も、太一たちの成長を、このシリーズの最後の物語ということで、一緒に見届けていただけたらうれしいです。

フォトギャラリー

劇場用アニメ『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』

2020年2月21日(金)公開

【キャスト】
花江夏樹 細谷佳正 三森すずこ 田村睦心 吉田仁美 池田純矢 榎木淳弥 M・A・O
坂本千夏 山口眞弓 重松花鳥 櫻井孝宏 山田きのこ 竹内順子 松本美和 徳光由禾
片山福十郎 ランズベリー・アーサー 朝井彩加 山谷祥生 / 野田順子 高橋直純 遠近孝一 浦和めぐみ
小野大輔 / 松岡茉優

【スタッフ】
原案:本郷あきよし
監督:田口智久
脚本:大和屋 暁
キャラクターデザイン:中鶴勝祥
デジモンキャラクターデザイン:渡辺けんじ
総作画監督:立川聖治
音楽:富貴晴美
スーパーバイザー:関 弘美
オープニング曲:和田光司
挿入歌:宮﨑 歩
エンディング曲:AiM
アニメーション制作:ゆめ太カンパニー
配給・宣伝:東映
製作:東映アニメーション

©本郷あきよし・東映アニメーション

オフィシャルサイト