モリコメンド 一本釣り  vol. 157

Column

TAWINGS 音楽性、ファッション、ビジュアルを含めた“アートフォームとしてのバンド”の可能性

TAWINGS 音楽性、ファッション、ビジュアルを含めた“アートフォームとしてのバンド”の可能性

たとえばリーガルリリー(2月5日に1stフルアルバム『bedtime story』リリース)、羊文学(2月5日にEP「ざわめき」リリース)など、90年代のオルタナ、シューゲイザー、ニューウェイブなどの影響を感じさせるバンドが続々と登場している。コーラスやディレイなどのエフェクトを駆使したギター、どこか浮遊感があるメロディライン、シンプルにして鋭利なアンサンブルなどがその特徴だが、90年代のバンドの音をそのまま真似るのではなく、自らの音楽性やスタイルに沿って、個性的に取り入れているのが頼もしいし、新しい。これはどういう現象なのだろうか?と考えてみると、90年代あたりに10代〜20代だった音楽ファン(筆者もそうです)の子供にあたる世代がバンドを組み、その時期の音楽を取り入れているのだと思う。あとはやはり、ストリーミングやYouTube、SNSの影響が大きい。古いとか新しいとか関係なく、どんな時代の音楽もフラットに聴くことが出来る現在において、The Smashing PumpkinsやSiouxsie And The Bansheesのテイストを感じさせるバンドが登場するのはまったく不思議なことではない。

Cony Plankton(vo,g)、eliy(ba)、Yurika(dr)によるスリーピースバンド、TAWINGS(トーイングス)も、そんな文脈のなかでシーンに登場したバンドだ。結成は2016年。東京を中心にライブ活動をスタートさせ、2017年5月に1stシングル「Listerine/Dad Cry」を7インチレコードでリリース。翌年1月に2ndシングル「Invisible/UTM」をカセットでリリースした。その音楽性はコアなリスナー及び業界関係者の間で注目を集め、The Lemon Twigs、Hindsといった海外アーティストの来日公演をサポート。さらに2018年にはアメリカ・テキサス州で開催される「SXSW2018」(インタラクティブ、映画、音楽などの複合イベント)に出演するなど、海外を視野に入れた活動を続けている。

彼女たちの音楽性の特徴は、ガレージ、ポストパンク、ニューウェイブ、サイケ――つまり、70年代から10年代までを網羅した――幅広いバンドの音楽のテイストをナチュラルに反映させていること。Queen、Led Zeppelinといったクラシックロック、The Strokes、The White Stripesなどのロックンロール・リバイバルを代表するバンド、さらにDum Dum Girls(LA出身のインディー・バンド)、The Horrors(イギリス出身のインディー・バンド)など同時代のバンドの影響も加えながら、独自の音楽性を作り出していった。(そのスタンスは、70〜80年代の音楽をルーツに持ち、90年代のバンドとリアルタイムで繋がりながらシーンに登場した、ナンバーガール、くるり、SUPERCARとも似ている)

約3年間に及ぶ活動のなかで、既存の邦楽ロックシーンとは一線を画す存在感を放ってきたTWAINGS。その最初の集大成と呼ぶべき作品が、2019年12月にリリースされた1stアルバム『TWAINGS』だ。7インチやカセットに収録されていた楽曲の新ヴァージョン、先行シングル曲「水仙」「POODLES」などを含む本作によって3人は、ようやくバンドとしてのスタイルを提示できたと言っていいだろう。

きらびやかな浮遊感を描き出すギターフレーズ、どこかエキゾチックな雰囲気のメロディが絡み合う「Statice」から始まるアルバム『TAWINGS』には、際立った個性を備えた楽曲が揃っている。プログラミングされたビート、ヒップホップ的な手法とニューウェイブ的なテイストを交えたアレンジ、そして、プードルをテーマにしたキッチュな歌詞がひとつになった「POODLES」。オーセンティックなガレージロック、サイコビリーのテイストを色濃く感じさせる「Invisible」。冒頭の3曲を聴いただけで、彼女たちがきわめて幅広い音楽に親しみ、それをしっかりと身体の中に吸収していることがわかるはず。さまざまな要素をコラージュしながら、決して散漫にならず、“この曲では何をやるべきか? 何を伝えるべきか?”という焦点が絞られているのも、このアルバムの魅力。共同プロデューサーとして名を連ねているKlan Aileenの松山亮の手腕も見逃せない。

さらに特筆すべきは、このバンドが持つ優れたポップネス。ファンの間で人気の高い「水仙」をはじめ、すべての楽曲のメロディが秀逸なのだ。全編を通して美しい憂いを放ちながら、リスナーの耳を捉えて離さないTAWINGSの中毒性。その軸にあるのはやはり、洗練された旋律であり、それを的確に描き出すボーカルなのだと思う。

モノクロームのアルバムジャケット、サイケデリックな雰囲気のアーティスト写真など、ビジュアル/アートワークにも彼女たちの高いセンスを感じる。言うまでもなく、フェスで楽しく盛り上がるだけがバンドの良さではない。音楽性、ファッション、ビジュアルを含め、“アートフォームとしてのバンド”の可能性をたっぷり含んだTAWINGSがもっと強い存在感を獲得すれば、日本のシーンはさらに豊かなものになるはずだ。

文 / 森朋之

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オフィシャルTwitter
https://twitter.com/tttawingsss

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