Interview

すべての女性が「自分の思う幸せ」を貫けるように。蜷川実花が『FOLLOWERS』に込めた、女性たちへのエール

すべての女性が「自分の思う幸せ」を貫けるように。蜷川実花が『FOLLOWERS』に込めた、女性たちへのエール

あなたにとっての“幸せ”とは? 生き方が多様化しているいまの時代、もっと自由に生きることができるんじゃない? 「これこそが女の幸せ」といった固定観念に囚われて、がんじがらめに生きるのなんてつまらない。だって、女性ってこんなにも楽しいんだから!

蜷川実花による完全オリジナルの新作ドラマ『FOLLOWERS』に登場する女性たちからは、そんなメッセージが受け取れる。ときに苦しみ、ときにもがきながらも、自分が思う“幸せ”を貫こうと奮闘する彼女たちの姿は、蜷川実花の視点を通して瑞々しく描かれる──そう、『FOLLOWERS』とはすべての女性に送られる、蜷川実花からのエールなのだ。

取材・文 / とみたまい 撮影 / 冨田 望


ずっと書き留めてきたメモのなかから、セリフのリアリティを拾う

FOLLOWERS 蜷川実花 WHAT's IN? tokyoインタビュー

『FOLLOWERS』について「長い間あたためてきた企画」とコメントされていましたが、具体的にはどのくらいあたためていたのでしょうか?

2013年ぐらいだったと思いますが、「こんな感じの、軽やかなリアリティのある話をやってみたい」とプロデューサーにイメージをお話したのが最初です。プロットになるようなショートストーリーを私が書いて。それをNetflixさんに持って行ったらスッと決まったんです。ご縁やタイミングもあったんだと思いますが、本当にスッと決まったのでビックリしました(笑)。

最初にNetflixに企画を持って行ったのはなぜですか?

この作品は、地上波ではなく配信がいいなと思ったんです。地上波だとできないことも多いし、できたとしても忖度してしまう可能性がある。地上波だとお金を払わずに誰でも観ることができるので……全員に寄り添える自信がないし、寄り添おうとすることで作品の角がどんどん取れてしまうような気もしました。それらを踏まえて考えると、選んで観てもらえるメディアで作品を作ったほうがいいんじゃないかなと思ったんです。それで「配信だったら、まずNetflixに行こう」と。世界的にみてもNetflixは市場規模が一番大きいので、「とにかく聞くだけ聞いてみよう」っていう感じでした。

その後はどの工程に一番時間がかかりましたか?

脚本ですね。二転三転して、2年ぐらいかかったと思います。撮影直前までずーっと書き直していましたし、撮影が始まってからもどんどん変えていきました。構造的なところは脚本家の方にやっていただいて、セリフに関しては私がほとんど書いているんですが、とくに最初と最後のスピーチにはこだわっていて、全部私が書きました。普段私が思っていることだったり、こういったインタビューでお話ししているようなことを、これでもかっていうぐらい詰め込んでいます(笑)。

本作に登場する女性たちのそれぞれが現代社会で生きるうえの葛藤を抱えていますが、一人ひとりの心の機微が丁寧に描かれているのが印象的でした。どんなところからああいったリアリティのあるセリフが生まれたのでしょうか?

友達の話から生まれたもの、自分自身の話から生まれたもの、完全に創作のものと、いろいろあります。私、結構“メモ魔”で、友人や周りの人たちのことをずっとメモしているんです。言われてウットリした言葉とか、面白かった言葉とか、「こういうことがあって、私はこう思った」とか。『ヘルタースケルター』(12)の頃から書いていたと思うので、7年分くらいのエピソードが溜まっていて、すごい量があるんです(笑)。そうやって書き留めてあるものを引っ張り出しながらセリフにしていきました。

自分が思う幸せを貫き通せることが、私は幸せだと思っている

最初のスピーチでリミが「仕事も女性としての幸せも、当たり前だけどなにも諦めない。そういう思いでここまでやってきました」と語っていたのが印象的でした。リミにとっての「女性としての幸せ」とは何だと思いますか?

この物語を作るときにすごく気をつけたことなんですが、「子どもを持つことがいいことだ」っていうふうにはしたくなかったんです。だからこそ一概には言えないですが、“リミにとっての”というのであれば、彼女は子どもがほしかったから、子どもができたことは幸せなんだと思います。でもそれはあくまでリミの場合であって、みんながそれぞれに「幸せだ」と思うことを貫けたらいいなっていうメッセージを入れたかったんです。子どもがいる・いないではなく、女性たちがそれぞれ幸せを感じられるような世の中であってほしい。そこだけは間違って伝わらなければいいなと思っています。

「これが正しい幸せ」というものはなく、登場人物のそれぞれが自分にとっての幸せを追求していたのが印象的でした。

そう感じていただけて嬉しいです! 自分が思う幸せを貫き通せることが、私は幸せだと思っているんです。「お金があるから」とか「パートナーがいるから」とか「子どもがいるから」ということだけが“幸せ”ではなくて、本人が自分のことを「幸せだ」と思えるかが重要なんですよね。そのために、戦うときには戦って、楽しむときには楽しんで、いろんなことにがんじがらめにならないで、情報に踊らされないで、「自分にとっての幸せ」を見つけるためのひとつのきっかけに、この作品がなれたら本当に嬉しいです。

FOLLOWERS 蜷川実花 WHAT's IN? tokyoインタビュー

なかなか戦えない女性たちもいると思いますが、この作品の持つエネルギーこそが、いま頑張っている女性たちへのエールになるのではないでしょうか。

尖った表現もある作品なので難しいんですが、「この作品を観る女性たちの誰一人として傷つけたくない」という思いがありました。ただ、それを気にするあまり表現が曖昧になるのもイヤだったので、葛藤はいつもありました。それでも、根っこにある思いとしては、みんな毎日大変なので。私も含めて(笑)。「大変だけど頑張ろうね」って少しでも言い合えるようなドラマになっていたらいいなと願いながら作っていた感じです。

ちなみに、監督はそういった“大変”をどうやって乗り越えますか?

ちょうど昨日、温玉15個とローストビーフを作りました(笑)。物理的に生産性があることをして気を晴らすかなぁ(笑)? あとは、ちょっと高い入浴剤を使う、女友達と岩盤浴に行く、子どもを触りまくるとか、そういった小さな喜びで地味に乗り越えています(笑)。仕事が原因の辛さやしんどさって、仕事でしか癒せないと私は思っていて。そこから逃げないというのが大前提なんです。美味しいものを食べるとかっていうのは、所詮“絆創膏”にすぎない。もちろん絆創膏も貼るけれど、根本的なことに目を背けていると、どんどんズレが生じていって取り返しがつかない大怪我になったりするので、しんどくても、逃げずに向き合う。そうやって向き合う元気を養うために温玉を作る、みたいな感じです(笑)。

Instagramに載せていらっしゃった温玉はそういう背景があったのですね(笑)。

ふふふ(笑)。私のInstagramを見ている方の中には、私って悩みもなく、毎日シャンパンを飲んで「うぇーい!」ってやっている人みたいに思ってる方もいるって最近気づいたんです。そもそも私はシャンパンが飲めないんですけどね(笑)。でも、基本的には仕事と子育てがベースなんです。仕事をするのが好きなので、ずっと仕事しているし。ただ、やっぱりSNSって楽しいことをアップするほうが多いですから……そういった楽しい部分ばかりを見て、自分と比較するようなことはしてほしくないんです。「自分はダメだ」なんて、絶対に思わないでほしい。当たり前のことですが、どんなにキラキラしている人だってしんどいこともあるし、悩みもあるし、死ぬほど頑張ってるから、「みんなで頑張ろうね」って。『FOLLOWERS』でお伝えしたいメッセージも、まさにそういったことなんです。

本作の主人公で人気写真家・奈良リミを演じるのは中谷美紀さん。女優を夢見て上京して、挫折を味わいながらも成長していく百田なつめを演じるのは池田エライザさんです。おふたりをキャスティングした理由は?

中谷さんはご自身のスタンスが確立されていて、あまりブレないというか、周りに振り回されない感じがあって。そういった芯の強さみたいなところがリミに近いと思いました。金髪にしていただいたのも、リミの芯の強さが一目でわかるので、すごく成功したんじゃないかと思います。エライザはなつめよりもたぶんずっと大人で、私もなにかあったら相談したくなるぐらいしっかりしているんです。彼女はデビューも早いですから、迷ったり、がむしゃらだったり、生意気だったりした時期もあったと思うんですが、そういったものを思い出しながら、自分が通ってきた道を彼女なりに逆戻りして演じてくれたんじゃないかなと思います。

フォトグラファーを演じる中谷美紀さんに、フォトグラファーとしてアドバイスされたことなどはありますか?

リミを私に似せなくていいと思っていましたが、美紀さんが「実花さんはどうやって撮るんですか?」と聞いてくださって。私、普通の持ち方と逆の持ち方をするんですね(縦位置の写真を撮る際、蜷川さんはレンズの下にシャッターがくるように構える)。カメラが重いから、逆持ちのほうが安定するんです。美紀さんも今回その持ち方で演じていらっしゃるので、撮っている姿がどうやら私っぽいみたいです(笑)。そういったカメラの持ち方や撮り方、アシスタントにカメラを渡すタイミングなどをお伝えしました。

リミの友人で実業家の田嶌エリコを夏木マリさん、同じくリミの友人で人気女性歌手の辣腕マネージャー・群青あかねを板谷由夏さんが演じています。おふたりのお芝居も抜群でした。

本当に(笑)! マリさんがいてくださったのは大きくて。あんなに素敵に年齢を重ねているカッコいい女性ってなかなかいないと思うんです。世界に発信したときに自信を持って「カッコいい」と言えるような女性だと私は思っているんですが、今回演じていただいて、説得力がすごくあったのでよかったなと思います。それでいて、温かさがあるところも素敵ですよね。

板谷さんの役柄は、働いている女性たちが一番共感できるんじゃないかなと思います。あかねが出ているシーンはどれもすごく面白いです(笑)。実は板谷さんとは今回が初めてのお仕事だったんです。今回のキャストさんのほとんどが写真でご一緒したことのある方たちでしたが、板谷さんはなかったので、ご一緒できて本当に楽しかったですし、あかねがあれだけチャーミングになったのは板谷さんだからこそですよね。板谷さんの可愛らしさが、そのままあかねに乗り移ったような感じがします。

今回は初のドラマ制作ということで、映画とドラマの違いを感じたところはありましたか?

あまり意識していなかったのですが、全然違いました。ありとあらゆる誘惑がある家のなかで、どれだけ飽きないでドラマを観続けてもらえるか。後半に面白いポイントがあっても、そこへ到達するまでにいくらでも離脱できちゃいますから。次の話を見てもらうためにはどうしたらいいかを考えるのがすごく難しかったですし、勉強にもなったし、面白かったです。

全体としての尺もかなり違います。

そうですね。でも、Netflixがすごくいいなと思ったのが、ちょうどいい尺でいいんです。話数によっては40分ないものもあるし、40分を超えるものもある。地上波のドラマだと尺がきっちり決まっていますが、「これでいい」と思ったものを提出できるのは自由度が高くて、ものすごく助かりました。映画でもそうですが、私は短くするのが好きなので、どんどん短くなっていっちゃうんですね(笑)。そういう意味で、今回はだいぶ短くできたので満足度が高いです。

CHAIやラヴ・タンバリンズ、コーネリアス、スーパーカーなど、最近の楽曲から懐かしい楽曲まで、幅広い挿入曲も印象的でした。セレクトは監督がされているのでしょうか?

既成曲については9割方、「この曲はここに入れたい」と指示しています。どんな映画を撮るときもそうですが、脚本の開発時からプレイリストを作って、ずっと聴いているんです。その、私のすご~く長いプレイリストを(笑)、「この世界観でいこうね」ってみんなにシェアするところから始まっています。

今回はどういうポイントでプレイリストの曲を選んだのでしょうか?

まずは「90年代の曲がいいなあ」と思いました。後付けにはなりますが、リミたちがなつめぐらいの年齢のときに聴いていた曲だろうから、なんとなくブリッジになるんじゃないかって。実際、私自身も90年代の曲を聴くと、当時のことを思い出すので(笑)。いま聴いてもまったく古く感じませんし、むしろいまの空気感にすごく合うような気がしたので、90年代の曲を最初に多めに入れて、それらの曲とシンクロできるような、いまの曲をどんどん足していった感じです。

現実と物語が自分のなかで“入れ子”になるような体験

FOLLOWERS 蜷川実花 WHAT's IN? tokyoインタビュー

撮影期間が3か月半ということで、映画と比べたら長かったと思います。

そうですね。撮っていてすごく楽しかったけれど、フォトグラファーの仕事と並行していたのがしんどかったですね。普段はフォトグラファーの仕事を止めてからクランクインするんですが、今回は撮影期間が長かったのでそういうわけにもいかなくて。週2、3日はフォトグラファーの仕事をしたり、午前中に雑誌の撮影をしてから現場に入ったりしていました。さらに脚本も直していったので……集中力を保つのがすごく大変でした。

でも、だからこそ今回のような作品が撮れた気がします。主人公もフォトグラファーなので、さっきまで自分が撮影していたのに、現場でも撮影シーンを撮っていて、数日前に別の撮影で一緒だった子が今日はカメオ出演してくれているとか(笑)。いろんなことが入れ子になっていたのですごく面白かったし、混乱もしたし(笑)、そういった地続きの感じが画にも出ているんじゃないかと思います。

セリフのリアルさだけでなく、監督ご自身ですら混乱するほどの“地続き感”はリアリティをより増しますね。

現実と物語がごっちゃになっている感じは面白かったです。クラブやパーティーシーンも、実際にクラブで遊んでる子に声をかけて出演してもらったりしているので、リアルになっていると思います。パーティーシーンに出演してもらった人たちと、数日後に実際のパーティーで会って「この間はありがとうね!」なんていうこともありましたし(笑)。この物語が私の未来日記みたいになって、物語に自分が巻き込まれていくような感じもあり、そういう意味でも今回はリアリティが映し出せているんじゃないかと思います。

観る人にとって『FOLLOWERS』はどんなドラマになりそうですか?

新しい女性像が提案できたんじゃないかと思います。もちろん、女性っていろいろと大変なこともありますが、日本のドラマを見ていると「もっと大人って楽しいのに。女性って楽しいのに。働くことって楽しいのに」っていう思いがすごくあって。そういうところに光が当たっている物語があまりないですよね。そういう意味でも『FOLLOWERS』は「それぞれ大変だけど、でも大人って楽しいよね。女性って楽しいよね」と伝えられるドラマになったらいいなと思います。

ところで『FOLLOWERS』というタイトルにもあるように、今作は著名人やインフルエンサーのSNSとの付き合い方にもスポットが当たっています。監督はSNSとどのように向き合っていらっしゃいますか?

映画や作品を発表したときは結構エゴサーチするんです。もちろんネガティブなものも目に入りますが、基本的には全部見ています。自分でなにかを発信するときは、基本的にはポジティブなことしかアップしないようにして……さっきの温玉みたいに(笑)しんどかったりすることも、笑える範囲でアップするようにしています。

結構頻繁に更新していますが、炎上したこともないし、SNSが原因で体調を崩すこともないので、私はたぶんSNSとの付き合い方が上手なほうだと思います。本当はネガティブなものは見ないほうがいいんでしょうけれど、映画が公開したらやっぱり気になっちゃうんで見ますよね(笑)。それをどうやってプラスに転換していけるかを考えます。

作風に影響が出たりはしませんか?

ちょっとずつ降り積もっているかもしれません。批判的な意見のなかにも「たしかに」って思うことがなくもないので、拾えるものは拾うし、拾う必要のないものは拾わないっていう感じで付き合っています。あと私、なにかを作るときの原動力が“怒り”だったりもするので、ネガティブな意見がエンジンになったりすることもあります(笑)。

蜷川実花

東京都生まれ。写真家で活躍する一方、2007年に『さくらん』で映画監督デビュー。その後、映画『ヘルタースケルター』(12)、『Diner ダイナー』(19)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(19)を製作。今作『FOLLOWERS』は初のドラマ監督作となる。

オフィシャルサイト
https://mikaninagawa.com/

オフィシャルTwitter
@ninagawamika

オフィシャルInstagram
@mikaninagawa.official / @ninagawamika

フォトギャラリー

Netflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS』

2020年2月27日(木)
Netflixにて全9話全世界190ヵ国へ独占配信

監督:蜷川実花
出演:中谷美紀、池田エライザ、夏木マリ、板谷由夏、コムアイ、中島美嘉、上杉柊平、金子ノブアキ、ゆうたろう ほか

オフィシャルサイト
http://netflix.com/followers