Interview

リーガルリリー ロックの未来を感じさせてくれるガールズ3ピースバンド。結成からの歩みと最新作『bedtime story』へと繋がる音世界を、たかはしほのかに訊く。

リーガルリリー ロックの未来を感じさせてくれるガールズ3ピースバンド。結成からの歩みと最新作『bedtime story』へと繋がる音世界を、たかはしほのかに訊く。

注目のガールズ・バンド、リーガルリリーが、満を持して初のフル・アルバム『bedtime story』をリリースする。昨年、1stシングル「ハナヒカリ」でメジャー・デビューした彼女たちだが、すでに3枚のミニ・アルバムを発表。現在は、たかはしほのか(Vo,G)、海(B)、ゆきやま(Ds)の3人で、国内外で精力的に活動。激しくも繊細なバンド・サウンドとイマジネーションを喚起する歌詞は、90年代のグランジやポストロックの影響が色濃いが、初期衝動だけでは収まらないロックの未来を感じさせてくれる。高校時代からリーガルリリーのオリジナルを紡いできたたかはしほのかに、バンドの結成から現在までと新作について訊いた。

取材・文 / 佐野郷子


フル・アルバムを出すのはずっと夢だったんです

結成6年目にして、初のフル・アルバムが完成しましたね。

フル・アルバムを出すのはずっと夢だったんです。その機会がやっと訪れて嬉しいです。

昨年のメジャー・デビューで変わったことはありますか?

メジャーになって関わる人たちが増えて、こういう風にCDがみんなの元に届いていくんだなと思いました。音楽的には大きく変化したわけではないと思うんですが、音質がすごく良くなったのは大きいですね。メジャーで良い音でアルバムがつくることができたのはよかったです。

リーガルリリーが結成されたのは、ほのかさんが高校時代の2014年とか。

それまでは中学で一緒だった男子とバンドをやっていたんですが、そのバンドをクビになり、わたしの曲を好きになってくれる女の子はきっとどこかにいると思って、次は女の子たちとバンドを組みたいと考えていました。

そこで、ドラムのゆきやまさんに出会った。

はい。高校は違ったんですが、渋谷のライブハウスで対バンした時に初めて会ったんです。ゆきやまはその頃、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)やチャットモンチーなどのコピーバンドをやっていたんですが、ドラムの叩き方がカッコよくて、「オリジナル・バンドを組まない?」って誘ったんです。

リーガルリリーを結成した頃はほぼ新宿JAMで鍛えられたと言っていいくらいでした

高校生の頃からライブハウスにはよく出演していたんですね。

ライブハウスには高1から出ていました。バンドをつくって、できるだけ場を重ねてライブの力をつけたいと思っていたんです。最初は友達や親・親戚を呼んでいたんですが、どこもノルマがけっこうキツくて。その中で、新宿JAMというライブハウスは高校生に良心的で、リーガルリリーを結成した頃はほぼ新宿JAMで鍛えられたと言っていいくらいでした。

新宿JAMは惜しまれながら、2017年にクローズしましたが、数多くのバンドを輩出した老舗でしたね。

そうなんですよね。そこで「高校生なのにオリジナルで頑張っていてスゴいね」と言われるのも嬉しかったし、励みになりました。

リーガルリリーというバンド名は?

中学2年生の時に、楽器をやっていない友達にバンドをやろうと言われて、わたしも当時はドラムがちょっと出来るくらいだったんですけど、中学生だからバンド名を先に考えるじゃないですか? それでお花の名前がいいなと思って、辞書で「リーガルリリー」を見つけたんです。リーガルリリーなら、たとえばフェスに出るときにサカナクションとか大御所のバンドと並んでいても変じゃないよねって盛り上がって(笑)。

名前の響きの良さや字面を優先したんですね。

そうなんです。高校生になってやっと念願のバンドを組んで、ガールズ・バンドらしくて、覚えやすいリーガルリリーという名前で活動していくことになりました。

「せっかくなら、ライブハウスでやったら」という父親のアドバイスに押されて、最初は弾き語りをやっていたんです

ほのかさんが元々バンドを志すようになったのは?

父親がバンドをやっていたんですけど、子供の頃はうるさくて、怖くて、全然興味がなかったんです(笑)。でも、中学の時に歌うことが好きになって、ギターを練習するようになり、「せっかくなら、ライブハウスでやったら」という父親のアドバイスに押されて、最初は弾き語りをやっていたんです。

ちなみにお父様はどんなバンドを?

いやぁ、ハードコア? ミクスチャー? そんな感じで。父もギター/ヴォーカルだったので、もしかしたら、わたしもその才能があるかもしれないと、ライブハウスに初めて出たんです。すごく下手くそだったし、カヴァーだったんですけど、お店の人に褒められて。

その時、カヴァーしたのは?

大好きだった椎名林檎さんや、ユーミン(松任谷由実)さんの曲を歌いました。いまと違ってすごくつくった歌い方だったんですけどね。

「君はバンドをやった方がいいよ」とライブハウスの人に言われたのが大きかったですね

そのままシンガー・ソングライターという道もあったわけですよね?

「君はバンドをやった方がいいよ」とライブハウスの人に言われたのが大きかったですね。バンドはギターが上手じゃないと仲間に入れてもらえないし、音楽の会話にも入れないじゃないですか? それでギターをめっちゃ練習していたんですが、その頃、ニルヴァーナの音楽を知って、「わたしにも出来るかもしれない」と思ったんです。

ニルヴァーナに強く惹かれた理由はどこにあったと思いますか?

たぶん、テクニック的にはそんなに難しいことをしているわけではないのに、圧倒的に個性があってカッコイイことですかね。父親はテクニック重視のロック好きなタイプでしたが、母親がニルヴァーナやウィーザーが好きだったんです。

ニルヴァーナの影響はいまのリーガルリリーにも引き継がれていますね。

はい。カート・コバーンはわたしが生まれる前に亡くなっているんですけど、好きな音楽は両親の影響は確かにありますね。でも、ギターは「自分で覚えるものだ」って、父親はGとEmのコード以外は教えてくれなかったんです。それも今思えばやる気を起こしてくれたのかもしれない。

今回のフル・アルバムは『the Post』に近い衝動があったんです

2016年にリリースした1stミニアルバム『the Post』を、いま振り返るといかがですか?

『the Post』には当時あったオリジナルをほぼ全曲入れたんですが、やっぱり原点ですね。今回のフル・アルバムは『the Post』に近い衝動があったんです。その中でいちばん古い「魔女」という曲は、高校生のときにしか書けない歌だなと自分でも思います。

1st シングル「ハナヒカリ」のカップリングも「魔女」でしたね。

そうなんです。やっぱり、その時にしか書けない歌ってあるし、十代の頃は毎年が違うし、自分も変わっていくから。『the Post』を出した後、ちょっと迷子になっていた時期があったんです。音楽を続けていくか悩んだこともあり、とりあえず大学に進んだんですが、今回のアルバムは自分の中で『the Post』と重なるものがあるんです。

高校から大学の変化の目まぐるしい時期に、同じバンドを続けてきたのは強いモチベーションがあったからでは?

そうですね。このまま楽しいことばっかり続くのかなという不安もあったりしたんですが、このバンドを続けていきたいという気持ちは強かったですね。いまもそれは変わらないです。

音楽を聴いて、「この曲はここでこうくるんだ!」という瞬間って鳥肌が立つじゃないですか? わたしが感動するのもそこなんです

2018年に現在の3人体制になり、昨年のメジャー・デビュー前にアメリカのフェス〈SXSW〉にも参加しましたね。そこで得たものはありますか?

ありました。わたしたちのことをまったく知らない人が、初めてリーガルリリーのライブを観て、自然に楽しんでくれたのは嬉しかった。日本だとここで手を上げて盛り上がるとか、集団行動っぽいところがあるけど、海外では個人個人で音楽を受けとめてくれるんですよね。音楽を聴いて、「この曲はここでこうくるんだ!」という瞬間って鳥肌が立つじゃないですか? わたしが感動するのもそこなんです。

今年の新年も中国のバンド、Chinese Footballと中国四都市をまわるツアーがありました。

最高でした! 800人キャパくらいの会場がすべてソールドアウトで、Chinese Footballのファンもリーガルリリーですごく盛り上がってくれて、わたしたちのことは知らなくても音楽そのものを楽しみに来ている人が多かった。日本のライブ・シーンも、もっとそうなればいいなと思います。

全曲違うバンドみたいなバンド・サウンドを意識したんです

初のフル・アルバム『bedtime story』は、どういうアルバムにしようと考えていましたか?

去年の夏くらいから曲作りを始めて、シングルの「ハナヒカリ」以外の11曲はすべて新曲です。今回は自分がいままで影響を受けた色んな音楽をアルバムに入れようと、全曲違うバンドみたいなバンド・サウンドを意識したんです。

タイトルの『bedtime story』は、アルバムのテーマだったんですか?

いえ、後づけなんです。12曲目の「bedtime story」もいちばん最後にセッションで出来た曲で、ベースの海が「これ、アルバム・タイトルにしたらいいんじゃない?」って。ちょうど「ベッドタウン」という曲もあったんで、「ベッドタウン」から始まって、「bedtime story」で終わる流れは美しいなと思って。

母親がベッドで眠る子供に絵本を読み聞かせるイメージが浮かんで

1曲目の「ベッドタウン」は、その夢の入口のような役割になっていますね。

この曲をつくった時は絶対にいつか出すアルバムの1曲目に入れたいと思っていたんですが、それをすっかり忘れていて、「bedtime story」のおかげで思い出すことができたのは奇跡でしたね。後づけコンセプトではあるんですけど、母親がベッドで眠る子供に絵本を読み聞かせるイメージが浮かんで、アルバムの曲も絵本のタイトルみたいな感じにしようと。母親が絵本好きだったので、その影響はかなりありますね。

静かに始まって、徐々にエモーショナルに爆音になってゆく展開はリーガルリリーらしいですね。

はい。自分でも好きな展開ですね。想像力が働きやすいというか、その方が自由になれるんです。

「GOLD TRAIN」も、どこか宮沢賢治を彷彿させる世界ですね。

そうですね。宮沢賢治も好きですね。この曲は、川の近くに住んでいた時に書きました。夜、電車が川面に映ると、それが光って「GOLD TRAIN」のように見えて、すごく幻想的で。そこから発想を膨らませていきました。

人生は山手線のようにぐるぐる回るのではなく、片道切符だと気がついて

「1997」は、もしかして?

はい。生まれた年です。自分の生まれた年の曲をつくってみたかったんです。

「私は私の世界の実験台」という歌詞にはドキリとさせられました。

歌詞はいろんな言葉の断片のストックがあって、これは「1997」に使ってみようと思ったんです。レコーディング中に、ふと、この先が不安になる時があって、人生は山手線のようにぐるぐる回るのではなく、片道切符だと気がついて、わたしはこの世界の実験台で、その実験ができるのも自分自身だけなんだと。だからこそ、大切にしたいなと。

わたしが福生という基地の街で育ったこともどこかで関係している気がします

ほのかさんの書く歌詞には、「1997」では「催涙弾」、「林檎の花束」には「前線から見上げた空」、「ハナヒカリ」には「戦闘機」や「兵隊さん」など、穏やかではない言葉が出てきますね。

たぶん、わたしが福生という基地の街で育ったこともどこかで関係している気がします。米軍の飛行機がうるさくて人の声が聞こえない時もあるんです。一度だけ、学校で先生が怒って説教している最中に戦闘機の爆音がその声をかき消してくれたのは痛快でしたけど。そんな空の下で育ったから、いつの間にか潜在意識に刻まれているのかもしれないですね。

「そらめカナ」は何かにインスパイヤーされて出来た歌詞ですか?

「この水溜まりで足を失くした」は、映画『この世界の片隅に』の影響もあります。「ハナヒカリ」もそうですが、わたしは大切な人を失いたくないだけなんです。みんながそう思っていれば、戦争は起きないのにと思って。

聴いてくれる人が自由に絵を描けるような世界になるといいなと思っている

リーガルリリーの音楽には童話やファンタジーの中に怖い要素が含まれているようなところがありますね。それをほのかさんの透明感のある歌声が別世界に連れてゆく。

そうですね。淡々と歌っていますね。聴いてくれる人が自由に絵を描けるような世界になるといいなと思っているので。

「キツネの嫁入り」、「猫のギター」、「子守唄のセットリスト」など、タイトルは絵本のようですが、描かれる世界と音は聴き手の想像を超えていますね。

そうだと嬉しいですね。わたしも想像力を膨らませてくれる音楽が好きだし、そういう音楽をこれからもしっかりつくっていきたいですね。やっとフル・アルバムが出来て、ここからリーガルリリーを聴いてくれる人もいると思うので、ライブもぜひ来てほしいですね。

その他のリーガルリリーの作品はこちらへ。

ライブ情報

リーガルリリーpresents『bedtime story』

3月1日(日) 札幌Bessie Hall
3月6日(金) 金沢vanvan V4
3月7日(土) 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
3月14日(土) 広島セカンドクラッチ
3月15日(日) 福岡BEAT STATION
3月19日(木) 仙台enn 2nd
3月27日(金) 名古屋CLUB QUATTRO
3月28日(土) 梅田CLUB QUATTRO
4月3日(金) 高松DIME
4月8日(水) マイナビBLITZ赤坂

リーガルリリー

たかはしほのか(Vo,G)、ゆきやま(Dr)、海(B)。
東京都出身ガールズ・スリーピースバンド。
儚く透明感のある詞世界を音の渦に乗せて切り裂くように届ける。
2014年に当時高校生であったVo.Gt.たかはしほのかとDr.ゆきやまが出会いリーガルリリーを結成する。
10代の頃より国内フェスや海外公演に出演するなど精力的にバンド活動を行う。
2019年3月世界最大級の音楽フェスティバル「SXSW 2019」に初出演し、9月には映画『惡の華』主題歌として書き下ろした1st Single「ハナヒカリ」をリリース。そして2020年2月5日リリースの1st Full Album『bedtime story』引っ提げて、3月より全国10箇所ワンマンツアーも開催予定。国内外問わず唯一無二の世界観と壮大なライブパフォーマンスに注目が集まっている。

オフィシャルサイト
http://www.office-augusta.com/regallily/