Interview

大原櫻子 これまでに見せたことのない表情で仕上げたアルバム『Passion』。アーティストとしてさらにアップデートした1枚について訊く。

大原櫻子 これまでに見せたことのない表情で仕上げたアルバム『Passion』。アーティストとしてさらにアップデートした1枚について訊く。

デビュー5周年を記念したベストアルバムを挟み、オリジナルとしては1年7ヵ月ぶりとなる4枚目のアルバム『Passion』をリリースした大原櫻子。シングルとしては初のダンスナンバーとなった「Shine On Me」をはじめ、作詞作曲に取り組んだラヴァーズマナーのR&B「Special Lovers」、ハワイアンテイストの「By Your Side」、ピアノと一対一でレコーディングした「コントラスト」、一青窈が作詞を手掛けたダークなバラード「電話出て」など、これまでに見せたことのない表情が詰まった作品が完成した。パブリックイメージを次々と塗り替え、“私らしさ”を軽やかに更新していく意欲的な姿勢をみせる彼女が「情熱」と名付けたアルバムに込めた思いとは。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 映美


自分が本能的に歌いたいなって思う曲をチョイスして

大原櫻子 WHAT's IN? tokyoインタビュー

ベストを挟んで、オリジナルとしては1年7ヵ月ぶりのアルバムになりますが、4枚目のアルバムはどんな作品にしたいと考えてました?

全く考えてなかったですね。楽曲を集めながらも、どんなアルバムになるかも決めずに作っていって。とにかく、自分自身がビビッとくるメロディや歌詞を選んだ感じなんですね。だから、ゴールを決めていたというよりかは、本当にその場その場で、自分が本能的に歌いたいなって思う曲をチョイスしていって、全部の曲が出そろったときに、1曲1曲、情熱的で力強いな〜っていう印象だったので、アルバムのタイトルを『Passion』に決めて。「電話出て」を最後の曲にしたことも、タイトルを『Passion』にした決め手にもなってますね。

では、そのキーとなっているラストナンバーの話からお伺いしたいのですが、「電話出て」はいつ頃に作った曲ですか?

前回のツアーが終わった8月くらいにメロディを上げていただきました。そのツアーでSiAの「シャンデリア」をカバーしたんですけど、ライブを見たディレクターさんが、自分の出せる音域が広がってるんだなっていうことを知ってくれて。だから、本当にSiAのイメージに近い音で曲を作ってもらったんですね。一青窈さんは今回、初めてだったんですけど。

どんな経緯でコラボすることになりました?

スタッフさんからの提案だったんですけど、お会いしたことがなかったので、直接、お会いして、私が歌いたいこととか、今、感じてることとかをお話しさせてもらって。

メロディラインを聴いたときに、心の叫びみたいなものを感じたので、何か訴えかけるようなものがいいですねっていう話をしました

大原櫻子 WHAT's IN? tokyoインタビュー

櫻子さんが今、歌いたいことっていうのは?

メロディラインを聴いたときに、心の叫びみたいなものを感じたので、何か訴えかけるようなものがいいですねっていう話をしました。あと、最近の自分にあった出来事とかも細かく話したし、私がふと、この曲のイメージから湧いた単語を送ったりして。……さっき、取材前に確認してみたら、「しぼんでいくのは苦しいって感じるけど、割れちゃったら苦しみも感じない」という単語を打ってました。

あはははは。結構、重い言葉を送ってますね。

ねぇ(笑)。当時、出会いと別れが多いときだったので、いろんなことで悩んでいたんですよね。そうして、自分の中から生まれた言葉も送りつつ、直接的に使っているわけではないけど、こういう曲が生まれたっていう。なんていうんだろうな……すごくストレートに言ってるというか。例えば、“死”という言葉とか。あえて避けてきたわけではないんですけど。

<死にたくなっちゃった>って歌ってますよね。

そうですね。この歌を聴くと、「この子、大丈夫かな?」って思うと思うんですけど、こういう感情になることって、みんなも人生で数回はあるんじゃないかなって思うんですよ。相手が電話に出てくれないことが、生きるか死ぬかの瀬戸際になってる。私が歌いたかったのはこういうものだなって思ってて。こんなにではないですけど(笑)。

かなり危機迫ってますよね。

本当に必死ですよね。でも、なくはないのかなって思うんです。この主人公は恋愛云々だと思うんですけど、愛していて、裏切られて、音信不通になって、うわーってなっちゃった。逆に人は、表面上はここまでなれないかもしれないけど、それこそ心の叫びとしては、全然あるんじゃないかなって思います。

ちょっと裏切るっていう意味でも、あえての「電話出て」がいいかなって

この曲を最後にしたのはどんな理由ですか。

最初はリード曲でもいいのかなって思ってたんですけど、あまりにもインパクトが強烈すぎるし、最後に心に残ればいいかなって思って。水野さんの「きらきらきら」で終わっても私っぽいけど、裏切るのが好きなので、ちょっと裏切るっていう意味でも、あえての「電話出て」がいいかなって。アルバムを全部聴き終わったときに余韻に浸ってもらえるといいなと思いますね。

この曲が最後にハマったことで、アルバムのタイトルも決まったんですよね。

そうですね。合ってるなと思って。曲順を決めた日にタイトルも伝えて。ずっとタイトルが決まらなかったんですよ。最初は『Amazing!』がいいなと思ってたんです。去年の10月に一人でニューヨークに行って、ブロードウェイでお芝居を見たときに、いろんな人が役者さんに“Amazing!”って言ってて。「今日のパフォーマンス、素晴らしかった」って。すごくいい言葉だなと思ったし、このアルバムにも合ってるなって思ってたんですけど、1曲目が「Amazing!」だったので、『Passion』の方がいいかなって思って。

いろんな挑戦をした分、熱も注いだなっていう思いで、『Passion』にしました

大原櫻子 WHAT's IN? tokyoインタビュー

改めて、どんな思いで付けたタイトルですか。

やっぱり挑戦的な曲が多かったんですよね。ピアノと一対一でやった「コントラスト」は、すごい緊張感の中で映像を撮っていただいたし、ハワイアンの「By Your Side」は一番軽い曲だと思ってたんですけど、一番難しい曲だったし。いろんな挑戦をした分、熱も注いだなっていう思いで、『Passion』にしました。私の情熱が詰まってるアルバムですね。

今、話にあがった新曲について聴かせてください。1曲目の「Amazing!」はチアガールっぽいポップロックになってます。

ファンクラブのイベントでちょっとやったんですけど、ライブで生かせる曲だなって思って。途中ラップっぽかったり、すごくノリのいいポップな曲だけど、ここまでアゲアゲな曲を最近歌ってなかったので、また新鮮かなって思いますね。歌詞はすごく可愛らしいなと思いました。

洋楽のようですよね。サビも英語ですし。

原曲は全部英語だったんですよ。サビの英語をなくそうっていう話も出たんですけど、プロデューサーの丸谷マナブさんと私で「いや、ここを生かさなきゃ!」って説得して残りました。

(笑)MVはシェアハウスで共同生活をしている4人の女友達という設定になってます。

ちょっと物語チックにしてもらいつつ、可愛らしくて覚えやすいダンスもしてて。前回の「Shine On Me」はガッツリ踊ったんですけど、これはみんなでも踊れるのかなって思います。ただ、ダンスの振り付けの映像が来たのが前日だったんですね。当日でも覚えられるくらいの簡単な振り付けって聞いてたけど、全然そんなことなくて。必死に覚えてやったので達成感がありますし、結果、すごく可愛く仕上げていただいたので、よかったなって思いますね。

そして、JUJUやCHEMISTRYでもお馴染みの川口大輔さん作曲で、映像ではジャズピアニストの林正樹さんが演奏した「コントラスト」はピアノとヴォーカルのみのバラードです。

歌詞もすごくいいんですよ。「By Your Side」を書いていただいた(永山)マキさんの歌詞が素敵だったので、「コントラスト」も書いてほしいって、私がお願いして。曲が出来上がって聴いたときに、すごく懐かしい感じがしたし、イメージがふわっと浮かんできたんですよね。

レコーディングではピアノと一対一で録って、映像はブースも同じ部屋で、2回だけ録音して。とてもいい緊張感の中で歌わせてもらいましたね

大原櫻子 WHAT's IN? tokyoインタビュー

それはどんなイメージだったんですか。

陰と陽の自分がいて、そのコントラスが生きている上ですごく大切になってくるっていう。結局は、その「コントラスト」がテーマにはなってるんですけど、「目に見えないことをテーマに描いていただきたいな」ってお願いして、すごく素敵な歌詞が出来上がりまして。レコーディングではピアノと一対一で録って、映像はブースも同じ部屋で、2回だけ録音して。とてもいい緊張感の中で歌わせてもらいましたね。

歌声が力強くなってますよね。

そうですね。ただ、力強さの中にある優しさを大事にしたいなって思ってました。マキさんからは、<私を呼ぶよ>っていう最後のフレーズを大切に歌ってほしいって言われて。ポイントポイントを話し合いながら歌いましたね。この曲は、自分の内面との対話ではあるんですけど、暗い曲ではなくて。私のイメージでは、暗闇に光がパーッと差し込んできてる前向きさがあるので、逆に、ここまで優しい曲ってあんまりなかったかなって思いましたね。きっと、誰しもがふとしたときに考えることなんじゃないかなと思います。

そして、「By Your Side」ですが、なぜハワイアンに?

いつもアルバムでちょっとお気楽な歌というか……。

あ! そういえば、今回はないですね。「のり巻きおにぎり」や「いとしのギーモ」(砂肝の曲)に連なる楽曲が。

そうなんですよ。そのためにハワイアンをって思ったら、いい曲が出来ちゃいまして(笑)。最初は、パイナップルをずっと連呼してるような曲を聴かせてくれて。こんな感じのお遊び系だよねって言ってたんですけど、だんだん変わり、しっかりした、真面目な曲になっちゃいました(笑)。

本当にこのアルバムの中で一番難しかったです

大原櫻子 WHAT's IN? tokyoインタビュー

(笑)ハワイアンは歌ってみてどう感じました?

メロディが半音ずつ上がっていったりとか、アップダウンが激しかったりしていたので、本当にこのアルバムの中で一番難しかったです。

リスナーとしては一番リラックスできる曲になってますけどね。

そうなんですよ。私も仮歌を聴いた時点では、すごい楽しそうだなって思ってたんですけど、自分でいざ歌ってみると、音程が微妙に難しくて、結構、戦ってましたね。

リスナーとして難しそうに感じるのは、作詞作曲に参加してる「Special Lovers」の方です。

確かに高いですよね(笑)。この曲は、シングルのカップリング「Let Me Go」でお世話になったSakaiさんと一緒に作った曲で。ずっと歌いながら作っていったから、なんの計算もしてなくて。出来上がったときに、「これ歌えるのかな?」とは思ったんですけど(笑)、自分が歌う上で、壁はちょっと高い方が良かったり、楽しいって感じたりするんですよね。自分の新しい良さが発見できたりしていいなと思っていたので、ハードルはすごく高い曲ですけど、すごく気に入ってますね。

歌詞も一緒に作ってますね。

最初に来たのがすごく可愛らしいラブソングだったので、夢物語よりはリアルな方がいいなって言って。日本語のイメージがあんまり分からなくて、全部英語でもいいくらいだなって思ってたので、Sakaiさんに所々に英語を入れていただき。簡単にいうと、片思いの曲ですね。恋愛したてで、もしかしたら一番楽しいときの感情を歌ってます。でも、ちょっと振り向いてもらえないっていう寂しさもあるっていう。MVも物語的な感じなので、キュンとしてもらえたらいいな。しかも、終わり方が微妙で分からないっていう。

私は分からないようにしましょうって言って。微妙なところでカットをかけてもらいました

大原櫻子 WHAT's IN? tokyoインタビュー

あのあと、二人はどうなりましたかね。

ご想像にお任せします(笑)。監督は「ハッピーエンドにしていい?」って言ってたんですけど、私は分からないようにしましょうって言って。微妙なところでカットをかけてもらいました。あのあと、どうなってるんだろうなって想像してもらえたら嬉しいですね。

この曲を含め、「未完成のストーリー」や「REALITY SHOW」など、片思いの女の子の恋愛を応援する曲が多い中、水野良樹(いきものがかり)作詞作曲の「きらきらきら」はウェディングソングと言っていいくらいの愛を歌い上げてます。

友達のウェディングの場で歌ったら熱い曲ですよね。この曲はシングル「さよなら」のときに楽曲自体はいただいていて、今回、歌詞を仕上げてくださって。熱いし、綺麗だし、まっすぐだし、すごく水野さんぽい曲ですよね。私、最後の切ない感じ、キラキラと消えていくメロディも好きですし、水野さんの曲はやっぱり歌いやすいんですよね。私の音域もわかってらっしゃるし、綺麗に出せる音もわかってくださってるから。

最後はライブで会場が1つとなって合唱している風景が浮かびます。

みんなで歌いたいですね。「Sing Sing Sing」もライブで踊りたいなと思ってて。途中、リズム刻みながら歌うのが難しかったんですけど、フレッシュにガン!って気持ちいいところで歌えるので、すごく楽しかったんですよ。……でも、本当にこのアルバムの曲を歌えるのはいつになるんだろう。

海外でレコーディングしてみたいなって思うようになりましたね

大原櫻子 WHAT's IN? tokyoインタビュー

アルバムリリース後にツアーの予定は?

予定はまじでないですね。『ミス・サイゴン』のおかげで私の1年は終わるんじゃないかなって思います。本番では30何曲かあるうちの、私が出ない曲が数曲しかないんですよ。もう恐ろしいですね。ライブを1日に3回やるくらい喉を使ってて。ツアーと変わらないくらい歌ってるので、今はツアーの代わりに舞台に来てね、としか言えないです(笑)。『ミス・サイゴン』が終わるまではツアーに関しては温めておくしかないけど、間違いなく、絶対にスキルは上がると思うんですね。ただ、心身ともにやばそうなので、とにかく今はまだ怖いっていうだけですね。

ツアーを待ちながら、アルバムを聴き込むしかないですね。

ぜひ聴き込んでください。本当に心から聴いてほしいって思えるアルバムになったし、毎回、更新するんですけど、今までで1番のアルバムって胸を張って言えますし。1年7ヵ月開いてしまったからこそ、確実にステップアップができているなって感じる1枚になったなって思います。

これまで以上にクリエティブな部分にも積極的に関わったことで今後は何か見えました?

今回、洋楽チックな曲もやらせてもらったんですけど、海外でレコーディングしてみたいなって思うようになりましたね。Sakaiさんとの曲は家が揺れるくらい低音を効かせてもらったんですけど、海外でレコーディングすると、もっと音が違うんだろうなと思うし、1回、チャレンジしたいと思ってます。その前に、『ミス・サイゴン』が待っているので、干からびないように気をつけます(笑)。

その他の大原櫻子の作品はこちらへ。

ミュージカル『ミス・サイゴン』

【上演日程】2020年5月23日(土)~6月28日(日)
※プレビュー公演 5月19日(火)~22日(金)
プリンシパルキャスト出演スケジュールはオフィシャルサイトをご確認ください。

大原櫻子

1996年、東京都生まれ。日本大学藝術学部映画学科卒業。2013年、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』全国ヒロインオーディションで5,000人の中から抜擢され、スクリーン&CD同時デビューを果たす。
2014年、女優として「日本映画批評家大賞 “新人賞”」、歌手として「第56回輝く!日本レコード大賞”新人賞”」を受賞。以降、歌手活動と並行して、数々のテレビドラマや舞台へ出演。
2018年「新感線☆RS『メタルマクベス』disc2 」ランダムスター夫人を好演。
2019年2月、戸田恵梨香さんとのダブル主演映画『あの日のオルガン』(平松恵美子監督)が公開。
5月~7月にかけて、全国10か所で5th Anniversary コンサート開催。
7月3日からテレビ東京にて放送されるドラマパラビ『びしょ濡れ探偵 水野羽衣』にてドラマ初主演・初主題歌。
7月NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』に山田天陽の妻・靖枝役で出演。
7月31日10枚目のシングル「I am I」リリース。
9月~10月には、新作ミュージカル『怪人と探偵』に出演。
2020年5月6月には帝国劇場『ミス・サイゴン』ヒロイン キム役に決定。

オフィシャルサイト
https://oharasakurako.net

フォトギャラリー