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世論を動かす快感と恐怖!『ヘッドライナー:ノヴィニュース』新聞記事で変わった世界は……

世論を動かす快感と恐怖!『ヘッドライナー:ノヴィニュース』新聞記事で変わった世界は……

読者の皆様は、新聞の編集長にどんなイメージを抱いているだろうか。筆者は過去に見たドラマや映画、マンガなどから「ダメだ、こんな記事は! ボツ!」なんて部下に叱責するけどやり手の人物、なんてイメージを抱いていた。新聞社につながりなどないので実際はわからないが、そんな新聞社の編集長になりきれるゲームが登場した。実際に自分の足で取材をするのか、それとも記事をチェックするだけのデスクワークなのか。プレイまえはそんな想像を抱いていたが、じつは“権力からの圧力と向き合いつつ、記事を掲載する責任の意味を知る”ことができる、かなり硬派かつシリアスな作品だった。いったいどんなゲームなのか、くわしく紹介していこう。

文 / 板東篤


編集長のオシゴトって意外と楽ちん!?

本作の舞台は架空の国“ノヴィスタン”。健康保険を国営化しようとしていたり、隣国との貿易に火種を抱えているような、政情が若干不安定な国だ。プレイヤーは、新聞社“ノヴィニュース”の新人編集長として仕事を行うことが目的となる。期間は2週間で、その間の行動によって同僚や知人との関係、ノヴィスタンの情勢などが変化していく。何度もプレイして事件やイベントの課程、結果の変化を楽しむアドベンチャーゲームだ。

ヘッドライナー:ノヴィニュース WHAT's IN? tokyoレビュー

▲まずはプレイヤーキャラクターを作成。名前や性別、一人称などを変更できるほか、多少の外観もカスタマイズできる

「(中途入社とはいえ)新人なのにいきなり編集長なのか……」と役職に戸惑いつつ、上司であるボスから仕事内容のレクチャーを受ける。なんてことはない、編集長の仕事は記者が作成した記事から掲載する原稿を選択するだけ。さっそく原稿に目を通してみると……、「ノヴィスタンは世界の影響を無視できない」、「遺伝子改良医薬品の新たな波」など小難しい見出しが並んでいる。社会に役立ちそうではあるけれど、正直あまり興味がある内容ではないなあと思っていたら、「ベターバッズとは?」という原稿を発見。「何やら新しいドリンクが登場する予定で、ワクワクするよね」という内容。おお、ええじゃないか。こういった息抜きできるライトな記事こそ大切なハズ! と、採用を即決。あとの小難しい記事はなんとなく気分で採用・不採用を決め、本日の仕事は終了。うーん、編集長って楽な仕事だなあ。

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▲編集長とはいえ、いちばん偉いわけではない。プレイヤーの上司としてボスが存在し、前日の掲載記事についてあれこれと小言を言われる

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▲編集長の仕事は、記者から上がってきた記事を承認するか却下するかだけ。選ぶだけの簡単なオシゴト

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▲新しいドリンクが登場するというホンワカな記事。執筆したのはお気楽提言家のスティーブン・クリンガーだそうだ。なんとなくシンパシーを感じるので気分で採用!

仕事が終わったら、退社の時間。新聞社から自宅であるマンションまで帰途につくことになるが、その途中で店に寄ったり、知人と会話することができる。同僚の外国人・エヴィは「焦らなくたって平気だよ!」と元気づけてくれるが、本人は言われなき差別に悩んでいたり、自分の兄であるジャスティンはコントのネタを練習していたりと少しずつ人間関係が明らかになっていく。また、ノヴィニュースの記事はすぐにネットで公開されるため、市民たちがニュースについて語っているシーンを目撃することもある。「そのニュース、俺が承認したんだぜ!」と少しばかりの優越感を抱きながら、ベッドに入って1日目は終了した。うん、なんとか編集長生活をやっていけそう。ちなみに給料は毎朝ボスから渡される。貯めたお金で、自宅に飾る装飾品やペットのおやつなどのアイテムを購入可能だ。

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▲帰宅パート。道中で店に寄ったり、知人と会話することができる。市民の記事に対する反応を見られることも

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▲同僚記者のエヴィことエブリン・リベラ。外国人であるため、差別や医療問題などの気苦労も多いようだ。なかなかの美人

すこしずつ変化する社会と決断する恐ろしさ

2日目以降も編集長のライフスタイルは変わらない。記事をチェックして、掲載するかどうかを判断。仕事が終わったら帰途につく。こんな日常をくり返しているうちに、ノヴィスタンを取り巻く環境が少しずつわかってきた。この世界では遺伝子操作が一般的になっており、それを起因とする病気が発生している。その遺伝子操作技術は“レアリス”という別の国家がほぼ独占しており、ノヴィスタンの首相はそれを非難している。また、資格を有するノヴィスタン人が平等に医療を受けられる法案も市民は気にしている。街並みは普通の国家に見えるノヴィスタンだが、じつは国内外で大きな問題を抱えているわけだ。こういった社会的な話以外にも、個人的に気になっていた新ドリンク“ベターバッズ”に動きがあった。どうやら酔いを引き起こす毒素を全て取り除いた、人工的なアルコールドリンクらしい。うん、これは取り上げ続ける価値があるな。今後も採用!

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▲2日目以降は、各原稿の右上にテーマを表すアイコンが表示されるようになる。あ、ベターバッズの記事だ、採用!

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▲日によって承認に制限がかけられることもある。承認できる数に限りがあったり、似たような記事の一方だけを承認できる、といった具合

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▲ノヴィスタンでは危険な病気が流行しているらしく、ボスも危機感を抱いている。「トイレのあとはちゃんと手を洗ったか!?」と強い口調で言われることも

こんな感じでノヴィスタンの状況を少しずつ理解しながら、政治や医療関係の記事をフィーリングで選定。ベターバッズはおもしろそうなので好意的な記事を優先的に掲載していたら、発売元のドリンコープ社からボーナスをもらえた。これは嬉しい。
しかし、そんな脳天気に行動している筆者とは裏腹に、世間の様子は少しずつ変化していった。街では嘔吐する人が目に見えて増え始めるし、6人が同時にビルから飛び降りる集団自殺事件も発生。街には監視のドローンが飛び交い、S.W.A.Tの姿も見え始めた。見るからに怪しげな人物も接触してきて、「この国の真実を知るときが来た」と、いかにもなセリフを述べる。さらに政府関係者と思しき人物も登場し、「政府に有利な記事を掲載するよう編集部の方針を変更してほしい」と脅してきた。もしや、ベターバッズはあまりよろしくないドリンクだったのだろうか。いや、S.W.A.Tの出動や集団自殺の引き金になったのは、もしかして筆者が適当に選んだほかの記事が原因だったのだろうか……?

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▲6人がビルから集団で飛び降りる事件が発生。プレイヤーは帰宅途中でこの事件に遭遇してしまう

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▲街並みや行き交う人々も少しずつ変化。デモを起こしたり嘔吐する人も……

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▲怪しすぎる人物が接触してきた。彼が語る真実とはいったい……? 信じるべきか、無視するべきか

筆者はこのあたりから、自分が決断を下した記事のせいで世情が変化していくことに恐怖を覚え始めた。掲載する記事を適当に選んだ結果がこれだったら、その責任が筆者ひとりにあるとしたら……。編集長の仕事は掲載する記事を選ぶだけだが、その結果は責任がついて回る。ゲーム内の編集長としては減給されるぐらいだが、プレイヤーとしては自分の選択によって国家が悪い方向に変わっていく様子を体験させられる。これはなかなかにキツイ。

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▲懐いてくる犬と出会うことも。そのまま連れて帰り、飼うこともできる。ただし、犬の食事代がかかるようになる

決断の結果を受け止めつつ、真実へ歩み続ける

めまぐるしく変化するノヴィスタンの街並みを見守りながら迎えた14日目の朝、上司より突然の解雇を告げられる。無責任に記事を承認してきた後ろめたさを感じていたので、納得もできる。編集長の仕事である記事の承認もこれで終わりだ。一抹の寂しさと責任から解放される清々しさを同時に感じながら、1日目とは大きく変化した街を歩き家路につく。結局、集団自殺は何が原因だったのか。遺伝子操作を巡る国家の対立や病気の真相は何だったのだろうか。真実は何ひとつわからないまま、この物語はいったん幕を閉じエンディングとなる。筆者の決断によって人々の暮らしは悪くなったようだが、良いこともあった。兄のジャスティンが開催したお笑いライブは筆者の宣伝で大盛況を納めたし、少し気になっていた同僚のエヴィは病気を克服できたようだ……。

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▲兄であるジャスティンがライブを開催。筆者が「お笑いライブ開催!」という宣伝記事を掲載したので多くの人が訪れてくれた。しかし、その記事が市民の寄稿によるものだったためボスに怒られ、減給されてしまう

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▲14日目の帰路は半分エンディング。これまでの決断による結果が次々と表示される

というわけで、筆者の初見1周目プレイをお届けしたが、いかがだっただろうか。1周にかかる時間は約2時間ほどだった。本作の魅力は、プレイヤーが下した決断によってノヴィスタンの様相が大きく変わっていくことだ。しかし、正しい選択を選んでグッドエンディングを目指すことが目的、とは言い切れない。正しい選択がどれなのかは一見わからないし、正解自体が存在しないのかもしれない。いや、そもそも正解とは何だろうか。ノヴィスタンが良くなること? ノヴィスタンの市民の暮らしが向上すること? そのために別の何かを捨てなければならないとしたら……。
もし正解があるとすれば、何度もプレイして、まずは数々の事件の真相を解明することだ。人々を悩ます病気の原因はどこにあるのか。また、突然接触を図り「この国の真実を知るときが来た」と言う人物、その組織の正体や目的はなんだろう。不穏な組織が跋扈し、政治の歪みが蔓延する世界でこうした真相を求め、自分が理想とする結末になる選択を選ぶことが正解かもしれない。そして、理想とする結末はプレイヤーごとに異なるだろう。本稿でノヴィスタンという国や数々の登場人物たち、彼らを取り巻く物語の未来が気になったら実際にプレイして、自分が理想とする未来にたどり着いてほしい。筆者も事件の真相が気になるので、解明するためにプレイを続ける予定だ。

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▲2周目以降は新キャラクターが登場し、新たなストーリーも展開していく。複数回プレイのモチベーションとなる

さて2周目以降はというと、新キャラクターであるヘレン副保安官と彼女が担当する殺人事件のイベントが増える。単に独立したイベントなのか、それともノヴィスタンを取り巻く事件に関係があるのかは、プレイしてからのお楽しみ。また、ボスが「以前の編集長は……」と語ったり、エヴィが「ある人を思い出すな……」と口にするなど、1周目の続きであるかのようなセリフも飛び出す。かと思いきや、店にいる少女が「あなたがしてきたことは、何度も何度も見た」と世界がループしているとも取れる言葉を口にする。事件の真相に近づくつもりが、“この世界はループしている?”という新たな謎が増え、余計にこんがらがってしまった。はたして筆者は、真相にたどり着けるのだろうか……。

フォトギャラリー
ヘッドライナー:ノヴィニュース ロゴ

■タイトル:ヘッドライナー:ノヴィニュース
■発売元:コーラス・ワールドワイド
■対応ハード:PlayStation®4、Nintendo Switch™、Xbox One
■ジャンル:アドベンチャー
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2019年12月12日)
■価格:パッケージ版 3,980円+税、デジタル版 1,600円(税込)
※Xbox One版はデジタル版のみ


『ヘッドライナー:ノヴィニュース』オフィシャルサイト

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