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後藤恭路、滝澤 諒、松田 凌らの鍛え上げた肉体に滴る汗が本気を物語る。突き出す拳にドラマを込めたリアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!! 開幕

後藤恭路、滝澤 諒、松田 凌らの鍛え上げた肉体に滴る汗が本気を物語る。突き出す拳にドラマを込めたリアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!! 開幕

リアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!! ‏が上演中だ。原作は、累計発行部数9,600万部(2019年8月現在)を超える森川ジョージの大ヒットボクシング漫画。圧倒的な知名度と人気を誇りながらも、これまで決して実写化はされていなかったビッグタイトルが、連載30周年を記念し、ついに舞台化された。
文字どおり、生身の人間同士が拳をぶつけ合うリアルファイト。その興奮と迫力を、初日に先駆け行われたゲネプロをもとに紹介する。

取材・文・撮影 / 横川良明


認めてくれた人たちの声援を背に、一歩は戦い続ける

実は、ボクシングってちょっと苦手だった。人が殴り合っているのを見るのは怖いし痛い。だから正直に言うと、世界タイトルの試合結果がデカデカと報じられているのを見るたびに、チャンピオンに対するお祝いの気持ちより、どうしてこの人はこんなに傷だらけになってもなお戦うんだろうとか、家族や恋人はどんな気持ちで見守っているんだろうとか、そんなことばかりが気になっていた。

なぜ彼らは戦うのか。瞼が潰れるぐらいに顔が変形しても、全治1ヵ月の大怪我を負っても、それこそ命を落とすリスクがあっても、なぜ彼らは拳を交えるのか。

その答えの兆しを見せてくれたのが、リアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!!だった。

リアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!! WHAT's IN? tokyoレポート

ピュアで心優しい反面、内気でいじめられっ子の幕之内一歩(後藤恭路)は、プロボクサー・鷹村 守(滝川広大)と出会ったことからボクシングの世界へ。こんな意気地なしがボクサーになんてなれるわけない。そう言って、最初は誰も歯牙にもかけなかった。

けれど、そんな周囲の予想を跳ね返すように、一歩は眠れる資質を開花させていく。不良少年の梅沢正彦(神坂優心)にいたぶられても反撃ひとつできなかった一歩が、なぜボクシングという過酷なスポーツを前にして逃げ出さなかったのか。

きっと彼を変えたのは、強さへの憧れ。鷹村のように、自分も強くなりたい。ずっと母・寛子(久下恵美)を支えるために犠牲的に生きてきた一歩が初めて見つけた“なりたい姿”。強くなりたいという無垢な気持ちが、何度リンクに崩れ落ちても、もう一度立ち上がる力になった。

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もうひとつが、認めてもらえた喜び。真っ先に一歩のポテンシャルを見出したのは、鷹村だった。プロボクサーになりたいと志願する一歩を、一度は「簡単な思いつきでプロボクサーになろうなんて言われちゃ困るんだよ」と突っぱねるも、その努力とセンスを認め、最初の理解者に。入門テスト代わりの宮田一郎(滝澤 諒)とのスパーリングでは、セコンドで誰よりも大声でアドバイスを送ってくれた。

そして、入門テストまでは一歩を軽んじていた会長・鴨川源二(高木 渉)や、青木 勝(塩田康平)、木村達也(高橋奎仁)も、一歩の打たれ強さと戦いぶりを高く評価。ジムの一員として受け入れてくれるようになる。ずっと友達らしい友達もいなかった一歩に、初めて仲間ができた。初めて師と呼べる人ができた。認めてもらえたことが嬉しくて、まわりのエールに応えたくて、一歩はもっともっと強くなろうとする。

ペコペコしてばかりの弱虫だった少年が、“強さとは何か”という問いに真っ正面からぶつかりながら一生懸命強くなろうとする。その不純物がいっさいないまっすぐな姿が、「はじめの一歩」の最大の魅力。リングの上で光を浴びながら戦う光景が、一歩のハードパンチのように人の心を強く打ちつける。

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後藤恭路は、“一生に一度の役”にここで出会った

これだけ王道のストーリーを生身の人間が演じるには、打算や駆け引きはむしろ逆効果だ。大切なのは、どれだけ一歩と同じようにまっすぐ前へ前へパンチを出していけるか。その点でも、一歩 役の後藤恭路は作品の魅力を最大限に引き出すベストキャスティングだったと思う。

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舞台に立つ後藤恭路はまだ初々しさが残るが、何の衒いも気後れもない。ただ自分にできるすべてのことをぶつけよう。その想いが、舞台の上から伝わってくる。本人のキャラクターが少し垣間見えるような、不器用でオドオドとしたところが、いかにも一歩らしくて微笑ましい。それでいて、最初の宮田とのスパーリングではまるでバラバラだったフォームが、試合を重ねるうちにどんどんシャープになっていって、幕之内一歩と後藤恭路がオーバーラップするような感慨が湧いてくる。

何よりハッとさせられたのが、その目だ。日常シーンは純朴そうな一歩の目が、試合になると鋭くなる。それも後半になればなるほど、その目は闘争心とある種の執念が炙り出されていて、これはただの演技じゃない、男と男のリアルファイトなんだと突きつけられる。

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メインキャストは今回が初めて。そんな中での初主演。きっとこの景色に辿り着くまでの間に、その目はいろんなものを映し出してきただろう。もしかしたら悔し涙を流す日もあったかもしれない。だけど、リングの上に立ったあのときの目は、間違いなく一歩の目だ。これから先、いろんな役を演じていくことになったとしても、幕之内一歩という役は、後藤恭路にとって“一生に一度の役”だったと強く記憶にとどめておきたい演技だった。

全試合がベストバウト。瞬きも許さぬ男たちの戦いのドラマ

一歩の前に現れるライバルたちも個性的だ。宮田 役の滝澤 諒は聞き取りやすくて耳心地の良い美声が魅力。抑えたトーンで貴公子然としたキャラクターをうまく表現しながら、よく鍛え上げられた胸筋と上腕二頭筋で、ストイックな宮田の人間性に説得力を持たせた。

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千堂武士 役の松田 凌は尼崎出身らしくコテコテの関西弁も違和感なし。野性味溢れる台詞回しと目つきで「浪速のロッキー」感を引き立てていた。ファイティングシーンもさることながら、見どころは一歩との対戦を控えた試合直前の表情。火照る身体を鎮めるように首を回す。ずっと戦いたかった相手が目の前にいる。今度こそ自分のパンチで相手をリンクに沈める。神聖な闘争心とも呼ぶべき気迫は、役者のそれではなく、ボクサーそのものだった。

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ほかにも、貫禄の違いを見せつけた伊達英二 役の松本寛也、ヒールのようなファイトスタイルと妹想いな一面のギャップでドラマを盛り上げた間柴 了 役の岡本悠紀、好戦的な表情と踊るようなフットワークが印象的だった冴木卓麻 役の山口大地、輸入ボクサーならではの悲哀で観客を泣かせたヴォルグ・ザンギエフ 役の才川コージなど、いずれ劣らぬ好敵手揃い。個人的には、ちょっと別の方向性でインパクトを与えた速水龍一 役の橋本真一が痛快だった。「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stageの青山優雅 役もそうだけど、橋本真一はこの路線のキャラクターを演じると水を得た魚のよう。

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同じく、ミュージカル『テニスの王子様』の河村 隆 役からLive Musical「SHOW BY ROCK!!」のアルゴン 役など、パワー系/筋肉系のキャラクターにハマり役の多い滝川広大が、無敗のチャンピオンらしい豪快さと俺様感で、しっかり鷹村のキャラクターを確立していた。

その隣りにいるのは、青木 勝 役の塩田康平と木村達也 役の高橋奎仁。ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」の田中龍之介 役や「PERSONA5 the Stage」の坂本竜司 役などお調子者のヤンキーキャラを得意とする塩田は、今回も十八番の役柄。コミカルパートだけでなく、試合に敗れたあと立ち去る背中に敗北の悔しさがにじんでおり、スポットライトの当たらない場所でも役として生き抜く彼の役者魂に胸が締めつけられた。高橋奎仁もこれからの活躍を期待したい、清潔感ある佇まい。鴨川源二 役の高木 渉を含め、鴨川軍団なくして、本作は語れないだろう。

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試合シーンはもちろんのこと、それぞれが背負っている人間ドラマの部分で心を掴まれるのが「はじめの一歩」だ。それは舞台でもまったく変わらない。ミュージカルが歌で感情を表現するならば、今作は拳が各々の内面を雄弁に語ってくれる。原作ファンはもちろん、原作未読でもスピーディーな試合展開に身を委ねていれば、自然とアドレナリンが騒ぎ始めるはず。全試合ベストバウトのスポーツドラマの金字塔。DVD化の予定はないそうなので、ぜひ劇場で観戦して欲しい。

真面目な後藤に、思わず周囲が「一歩やな〜」とツッコミ

囲み会見には、後藤恭路、滝澤 諒、松田 凌、滝川広大、塩田康平、高橋奎仁、高木 渉、そして作・演出の喜安浩平が登壇。

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後藤は「あまり初日っていう実感がなくて、緊張はあんまりないんですけど、取材に対しての緊張はすごくあります」と初々しく挨拶。「練習でやってきたことをうまく今日は出せればいいなと思っています」と全力の舞台となることを宣言した。そんな真面目ぶりに周囲からは「一歩やな〜」とツッコミ。初座長を支える座組みのチームワークが感じられる囲み会見だった。

見どころのひとつである筋肉については、滝澤が「(稽古場の)ケータリングがタンパク質のビュッフェみたいになっています」と裏話を披露。「大量の肉がケータリング場に置いてあり、それを貪り、筋トレをし、そしてまた食べての繰り返し」と話すと、塩田が「こんなに恵まれたケータリングはないよね」と同意。贅沢とも過酷とも言える稽古現場だったことを明かしてくれた。

なお、カンパニー内では筋肉に関する豆知識が多数シェアされたようで、「一番の筋肉博士は?」と質問が飛ぶと、全員一致で「(冴木卓麻 役の)山口大地くん」と即答。数々の舞台で肉体美を披露してきた山口は、今作でも筋肉面でしっかり仲間たちを引っ張ってくれたようだ。

リアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!! ‏は、2月9日(日)まで品川プリンスホテル ステラボールで上演。

リアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!!

2020年1月31日(金)~2月9日(日)品川プリンスホテル ステラボール

原作:森川ジョージ「はじめの一歩」(講談社「週刊少年マガジン」連載)
作・演出:喜安浩平
音楽:和田俊輔
振付:HIDALI
ファイトコーディネイト:冨田昌則

出演:
幕之内一歩 役:後藤恭路

宮田一郎 役:滝澤 諒
千堂武士 役:松田 凌

鷹村 守 役:滝川広大
伊達英二 役:松本寛也
間柴 了 役:岡本悠紀
青木 勝 役:塩田康平
木村達也 役:高橋奎仁
速水龍一 役:橋本真一
冴木卓麻 役:山口大地
ヴォルグ・ザンギエフ 役:才川コージ

梅沢正彦 役:神坂優心
間柴久美 役:未来
幕之内寛子 役:久下恵美

鴨川源二 役:高木 渉

アンサンブル:
久保雅樹 アブラヒム・ハンナ 竹内健史

監修:講談社(「週刊少年マガジン」編集部)
主催:ネルケプランニング

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@ippo_stage)

©森川ジョージ/講談社・ネルケプランニング