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菅井友香が“愛”と“憎しみ”を糧に俳優として飛翔する。舞台『飛龍伝2020』絶賛上演中!

菅井友香が“愛”と“憎しみ”を糧に俳優として飛翔する。舞台『飛龍伝2020』絶賛上演中!

欅坂46のキャプテンである菅井友香が初主演を務める舞台『飛龍伝2020』が1月30日(木)(29日はプレビュー公演)より上演中だ。
故・つかこうへいの『飛龍伝』は1973年に初演、1990年に銀座セゾン劇場のプロデューサーだった岡村俊一との出会いで大きく変貌し、同年、読売文学賞の戯曲賞を受賞、つかこうへいの代表作となった。
本作で、これまで名立たる俳優が演じてきた主役の神林美智子の8代目を演じるのは、アイドルグループ“欅坂46”キャプテンの菅井友香。共演には、お笑いコンビ“NON STYLE”の石田 明や味方良介など、“つか作品”に常連の俳優や実力派が顔を揃える。
その舞台のプレビュー公演の前にゲネプロと囲み取材が行われた。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 岩田えり


菅井友香はこの舞台を通じてどんどん成長していく

舞台『飛龍伝2020』 WHAT's IN? tokyoレポート

時代に風穴を開けたいというカンパニーの熱い想いが感じられる、本気(マジ)の舞台がここに存在している。役者たちが“本気”で魂と魂をぶつけ合い、生々しいほどの“愛”と“憎しみ”が渦巻く。汗も、血も、涙も、唾も飛び散る。人間がぶつかり合うことでしか生まれない正も負も超えた感情の応酬に血がたぎる。

我々は日々、本気で人とコミュニケーションをしたいのに、そうできない不安やストレスを抱えている。この日常世界で何かに怯えている自分が暴かれてしまうのではないかとひるみつつ、今この瞬間、政治、社会、我々を取り囲むありとあらゆる環境について考えさせられるような切迫感にもさいなまれる。

しかし、てらいもなくストレートで強烈なアフォリズムとさえ感じる台詞が飛び交い、どこかやるせなさを感じさせるキャラクターたちのバックボーンが化学反応を起こして、それらは壮絶なカタルシスとなってもたらされる。さらに、ギャグやブラックジョーク、コメディー、ショーアップされた歌やダンスが絡み、笑って泣けるエンターテインメントショーになる。

舞台『飛龍伝2020』 WHAT's IN? tokyoレポート

今作は全共闘(全学共闘会議)、すなわち学生運動が物語の時代背景になっている。アメリカの社会学者であるウォーラーステインが著書『ポスト・アメリカ』(丸山 勝 訳)で“1968年の革命”と呼んだように、60年代末から70年代にかけて、日本だけでなく、アメリカ、フランス、チェコスロバキア、メキシコ、その他多くの場所で同時多発的に起こった、既存のシステムに対する異議申し立ての行動だ。いわゆる若者たちが抱える政治や社会に対する一種の批評とも言えるだろう。

全共闘運動に明確なスタートラインはないと言われているが、三里塚闘争、安全保障条約の改定、ベトナム反戦運動、早稲田大学の学費値上げ反対の闘争、第一次羽田闘争など、様々な社会や政治、そこに含まれる権力者・為政者への抵抗の連続が、日本中の若者を巻き込む一大ムーブメントにつながったと言ってもよい。

舞台『飛龍伝2020』 WHAT's IN? tokyoレポート

そんな時代背景のうえでストーリーは、四国の高松から上京した神林美智子(菅井友香)が、“全共闘”の作戦参謀の桂木純一郎(味方良介)に出会い恋に落ちるところから始まる。
しかし桂木には思惑があり、リーダー不在の“全共闘”において美智子は、東京大学で優秀な成績を収め、四国のお金持ちの美しい令嬢であることから、“全共闘”の頂点、リーダーの象徴にふさわしいと目をつけられたのだ。やがて、美智子は“全共闘”40万人を束ねる委員長にまつり上げられる。
そして、国会前での機動隊との最終決戦を前に、桂木は機動隊の内部情報をつかませるために、美智子をスパイに仕立て上げる。近づく相手は、機動隊の中核を担っていた第4機動隊隊長・山崎一平(石田 明)。しかも桂木と山崎には深い因縁があった。
桂木と山崎、そして美智子。奇妙な三角関係を描きながら、11月26日の最終決戦の日が近づいてくる……。

舞台『飛龍伝2020』 WHAT's IN? tokyoレポート

この舞台には弱肉強食のルールが貫徹している。弱き者は敗れ去り、強き者が生き残る。しかし、強き者と弱き者の立場は変幻自在に変わる。弱者が自分自身のコンプレックスを武器に、突飛な理論や感情論で強者にのし上がっていくのは、つか作品のテーゼであると思うけれど、か弱き者が強者を圧倒したかと思えば、その逆もあり得る。それは機動隊と学生の言い分、その存在意義、どちらが正しいのか答えを見つけろと言わんばかりだ。本当の敗者とは? 本当の勝者とは? この舞台では答えは出されず、舞台から溢れ出る熱量から感じとる必要がある。

このような背景は、1948年生まれのつかこうへいが学生運動に対して感じた距離感も表していると思う。あの時代、裕福な家庭の子供たちが大学へ進学し、日本とアメリカの政治家が勝手に取り決めようとする安全保障条約の改定に“安保反対”とシュプレヒコールをあげて国に盾つく一方で、貧しい家庭に育ち、安月給で生活は安定しない、安保という意味さえ知らない人たちが機動隊として国を守っている。当時の日本が抱えていた屈託と矛盾、あるいはねじれに思いを馳せていたのかもしれない。

舞台『飛龍伝2020』 WHAT's IN? tokyoレポート

ただ今作においては、学生運動はあくまでライトモチーフで、重要なのは、人と人との気持ちのぶつかり、熱気を帯びた台詞の応酬、歌とダンスから生まれる剥き出しの感情を“ありのまま”感じることがすべてだと思う。つかこうへい没後10年、2020年の“今、この時”に『飛龍伝』を上演することで何が生まれるかに力点をおいて、我々が本気でぶつかり合ったとき、どんな反応が起こるのか、それを見つめる舞台でもある。いつの時代でも、どうやって理想的な共同体をつくり、生きていけばいいのか? そもそもそんなことが可能なのか? そんな問いが時代を超越し舞台に蠢いている。だから、当時の時代を知らなくても、どんな人が観ても楽しめる仕掛けがふんだんに施されている。

舞台『飛龍伝2020』 WHAT's IN? tokyoレポート

役者陣は、あるものは理論武装し、あるものは感情的になって、ひたすら衝突を繰り返し、感情の軋轢を生み出していく。なかでも、近年のつか作品の常連である、味方良介と石田 明がつくり上げるグルーヴ感のある芝居には風格さえ漂っていた。ファンキーでノリがいい。つかこうへいが“役者はかくあるべし”と伝えたかった魂が彼らにきちんと受け継がれていると感じる。味方良介の説得力のある芝居や石田 明の熱血の台詞もギャグも堂に入っていた。個人的には、細貝 圭の一本木な性格の芝居が素晴らしかった。

舞台『飛龍伝2020』 WHAT's IN? tokyoレポート

菅井友香はこの舞台を通じてどんどん成長していくのだろう。底が見えないからどこまでも高みにいきそうな勢いを芝居から感じる。インタビューでは菅井も「最初は不安だった」といったことを正直に語っていたのはどこ吹く風で、つかこうへいの魂を受け継ぐ演出の岡村俊一と共に、過去の俳優たちをリファレンスしながら、8代目・神林美智子を演じ切っていた。やはりバージョンこそ変化しても何度も上演される舞台は、これまでの作品にアーカイブされた膨大な芝居から成り立っていると感じさせてくれる。つまり、彼女はつかこうへいの築き上げた“つか作品の歴史”と出会って成長したのだと思う。彼女の芝居を観れば、これまでの歴代の俳優たちに負けず劣らずのインパクトがあるだろうし、運命に翻弄されながらも力強く生きる美智子を健気に演じた菅井には凛とした佇まいがあった。なにより声が艶やかで、“神林美智子”が醸し出す暴力的な美しさを表現していたといえる。本番から千秋楽までどんな変貌を遂げていくのか、まさに、20年代に必要な新しい俳優が生まれる瞬間を目撃できる。

舞台『飛龍伝2020』 WHAT's IN? tokyoレポート

人間同士がぶつかり合う感情の行き先に100パーセントの答えは出せないかもしれない。でも、そうすることで浮かび上がる人間の真実の姿がそこにある。これこそ舞台の原初的な醍醐味だといえよう。これほど、美しく、はかなく、同時に汚くもある人間のあり様を描いた舞台はなかなか見当たらない気がする。つかこうへいは、人間は怖れることなくぶつかり合い、もがきながら、それでも等しく生きていくための答えを見つけ出せと、いつまでも叱咤激励しているようだ。

つかさんが伝えたかったことを、世代を超えて皆さんにお届けする使命がある

このゲネプロの前には囲み取材が行われ、菅井友香(欅坂46)、石田 明(NON STYLE)、味方良介が登壇した。

舞台『飛龍伝2020』 WHAT's IN? tokyoレポート

初主演について問われた菅井友香は「自分が主役であることがまだ信じられなくて。歴代の素晴らしい俳優さんが演じた役でお芝居をすることも、偉大なつかさんがお亡くなりになられて10年という節目の年に『飛龍伝2020』という舞台に挑戦させていただくことを誇りに思っています」とコメント。

「本当にいつも優等生だね(笑)」と石田 明は菅井のコメントに感心しながら、「最初は声がモスキート音で聞こえないのでどうなるのかと思っていたのですが(笑)、今はとても成長しています。飛行機が通ったあとのような声になったし、感情の振れ幅も広くなって、幕が開けてからも良くなると思います……なに偉そうに言うてるんやろ!? 芸人なのに!」と自分にツッコミを入れ会場を笑わせた。

それを受けた味方良介は「僕も最初はどうなるのかと思っていたのですが、彼女は多くを語らず、自分から率先して手本を示して周りを引きつけ、“神林美智子”がそこにいるような佇まいを感じさせる俳優になられたと思います。アイドルとしてだけではなく、俳優としても両立されているのですごいです」と感心しきりの様子で、石田も「心も綺麗ですよね」と相槌を打っていた。

稽古について問われ、菅井は「男性だけに囲まれて、台詞を聞くことにも慣れなくて、声量にも驚いたし、稽古のあと、寝るときに皆さんの台詞が脳内に響いて寝つけない日がありました(笑)。でも、今はそれが心地よいし、尊敬する俳優のお芝居に刺激を受けることに感謝して、皆さんに演技で恩返しができたらいいなと思っています。これから本番が始まるのに、終わるのが寂しいです(笑)」と素直な気持ちを語った。

欅坂46のキャプテンと座長の違いについて菅井は「座長の経験が初めてなのに、皆さんがサポートしてくださって感謝の気持ちでいっぱいです。座長は皆さんに気配りをしたり、引っ張っていける人がなる存在だと思うので、もっともっと力をつけなくちゃいけないと思います。今回の経験をグループに持ち帰って、キャプテンとして、美智子のようにみんなを引っ張っていきたいです」と語った。

最後に石田は「できる限りのことに挑戦するだけです。心残りは、つかさんにお会いできなかったので、つかさんに届くようなお芝居をして、芸人らしく笑いをどんどん取って、面白い舞台にしたいと思います」と熱い想いを述べ、味方は「つかさんの作品には何作品か出演していますが、やはり僕もお会いすることができなかった悔しさがあるので、自分のできる以上のお芝居をして、『飛龍伝2020』を後世に伝えていけるようにしたいです」と意気込んだ。

そして菅井が「いろいろな新しい挑戦をした舞台です。『飛龍伝2020』を通して、つかさんが伝えたかったことを、世代を超えて皆さんにお届けする使命があると思いますので、精一杯頑張ります。皆さん楽しみにしてください」と締め括り、囲み取材は終了した。

東京公演は2月12日(水)まで新国立劇場 中劇場にて上演。大阪公演は2月22日(土)から2月24日(月・祝)まで、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演される。

ニッポン放送開局65周年つかこうへい演劇祭 -没後10年に祈る-
『飛龍伝2020』

東京公演:2020年1月29日(水)~2月12日(水)新国立劇場 中劇場
※1月29日(水)はプレビュー公演
大阪公演:2020年2月22日(土)~2月24日(月・祝)大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

【STORY】
春、駿河台方向から聞こえてくるシュプレヒコールの中、一人の少女が進学のため愛と希望を胸にいだき上京した。
四国高松から上京した神林美智子(菅井友香)である。
しかし、時代は学生運動の真っ只中、やがて美智子は、全共闘作戦参謀の桂木純一郎(味方良介)に出会い、その理想と革命に燃える姿に憧れ、恋に落ちる……。
やがて、美智子は全共闘40万人を束ねる委員長に、まつり上げられてしまう。
11・26最終決戦を前に、作戦参謀部長の桂木の出した決断は、美智子を、女として機動隊員の部屋に潜入させる事であった……。
そして、その機動隊員とは、四機の狂犬病の山崎こと、山崎一平(石田 明)だった……。
革命の夢と現実と、美智子を愛する者達に翻弄されながら、11・26最終決戦の日は近づいてくる……。

作:つかこうへい
演出:岡村俊一

出演:
菅井友香(欅坂46)
石田 明
味方良介
細貝 圭
小柳 心
久保田創
小澤亮太
須藤公一
大石敦士
吉田智則
山田良明
友岡靖雅
草野 剛(北区AKT STAGE)
うえきやサトシ(劇団4ドル50セント)
和田慶史朗
岩上隼也
江浦優大
河本祐貴
米岡孝弘

主催:ニッポン放送/Y&N Brothers/サンライズプロモーション大阪(大阪公演)

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@rup_produce)