Review

映画化・アニメ化にも期待! 2020年注目の新作マンガ

映画化・アニメ化にも期待! 2020年注目の新作マンガ

映画やアニメ、今後の映像化に期待できる作品を、蔵書1万2千冊を誇るマンガソムリエ・兎来栄寿がご紹介。既刊1~2巻と、これからでも追いかけやすい作品を中心にセレクトしてもらいました。青田買いの成功、間違いなしです!

文 / 兎来栄寿


え、写楽の娘が春画を!? 江戸で開く創作の業の花

©会田 薫/秋田書店

『写楽心中 少女の春画は江戸に咲く』(作:会田 薫)

女性にはもちろんのこと、普段少女マンガを読まない男性にもお薦めしたいのがこの作品です。
江戸中期に活躍し、一世を風靡しながら僅か10ヶ月の活動期間で消えてしまった謎多き画家・東洲斎写楽。本作はその写楽と吉原の花魁の間にできた娘であるたまきの物語です。

このお話のもう一人のキーマンが、現在のTSUTAYAの名前の由来ともなっている蔦屋重三郎の二代目。彼がなかなかに危ない人物として描かれます。
写楽や歌麿などの本を出版した耕書堂、その二代目の主人である彼は、たまきにも絵の才があることを認めて身請けをし、彼女に絵を描かせようとします。ただしその絵の内容は「枕絵(春画)」。二代目はたまきに艶のある枕絵を描かせるために薬問屋の女将と間男が関係を持っている所を見させて描かせたり、たまきを好いている男の下に抱かれに行かせたりとやりたい放題。
しかし、結果としてたまきの才気はどんどん開花。創作における業を感じさせられます。

他にも葛飾北斎や渓斎英泉といった歴史に名を残す有名な画家たちが登場し、それぞれ強烈な個性を見せてくれます。
歴史物・クリエイター物としての面白さの一方で、たまきの母にまつわるエピソードは胸が詰まる描写もあり、人情物としても魅せてくれます。

2017年には葛飾北斎の娘を題材にしたドラマ『眩(くらら)~北斎の娘~』がNHKで放送されましたが、本作も同様に映像化されることがあるかもしれません。

試し読みはこちら(秋田書店)
https://www.akitashoten.co.jp/comics/4253264867

大注目の新星が描く、ワクワクが止まらないハートフルSF

©大石日々/小学館

『プラネットガール』(作:大石日々)

70年代には藤子・F・不二雄や萩尾望都の活躍により一世を風靡したものの、その後は長らく「売れない」というレッテルを貼られがちだったSFというジャンル。
しかし、ここ最近では『宇宙兄弟』が大ヒットしたり、『彼方のアストラ』がマンガ大賞2019を獲ったり、『NARUTO』の岸本斉史さんや『FAIRY TAIL』の真島ヒロさんの新作も共にSFであるなど、市民権を取り戻してきたと感じます。
個人的にも、SFというジャンルは特に好きなものの一つ。数十年前の作品でも現在使われている技術が的確に予見されているなど、人間の想像力の粋が詰まっているのが面白いのです。

そんな中、彗星のように現れた新鋭による期待のSF作品がこちらです。
15年前の遠い惑星の有人探査で父親が帰ってこなかった原因を探る兄弟の弟が主軸となる物語で、ある日父親が乗っていたと思われる船が発見されその中から幼い女の子の姿をした宇宙人が現れるところから話は始まります。
見かけはかわいい彼女ですが地球人にはない能力を持っており、父親の遭難との関連性など深まる謎の真相に興味をそそられます。

主人公が少女を星に送り帰すと共に父親の足跡を辿るために宇宙へ飛び立とうとするワクワク感、また彼と暮らす造船所の面々の人情味溢れる性格など読んでいて純粋に心躍ります。
青年誌掲載の作品でありながら、すべての漢字にルビが振られているのも特徴。ぜひ幅広い世代に触れてみて欲しい作品です。

見上げる星々の美しさは色彩豊かなアニメになった時にきっと更に映えて、宇宙への憧れを持つ子供たちを増やす一助となるでしょう。
初連載・初単行本とは思えない安定感のある大石日々さんの今後の活躍が楽しみです。

試し読みはこちら(小学館コミック)
https://comics.shogakukan.co.jp/book?isbn=9784098604791

世界の見え方が違う人への学びがある恋愛物語

©鈴木 望/双葉社

『青に、ふれる。』(作:鈴木 望)

「人の顔を上手く認識できない人がいる」ということ、そしてその症状が相貌失認という名前であることを知識として知っている方はそれなりにいると思います。
しかし、相貌失認が数十人に一人という意外と多い割合で発症しているものだと知っている方はどれくらいいるでしょうか。
実際になってみないと解り辛い感覚や苦しみがマンガという形で可視化されることによって他者への理解が格段に深まるという意味で、非常に意義深い作品です。

本作は、顔に生まれつきの太田母斑という大きなアザがあり悩んできた高校生の少女・瑠璃子が相貌失認の男性教師・神田と出逢い惹かれていく物語です。
からかいや憐みの対象であったアザをポジティブな特徴として捉えてくれる、生まれて初めて出逢う男性。しかも美男子で笑顔を褒められたとあっては、好きになるなという方が無理というもの。

しかし、彼にアプローチする美人教師の影もあり、芽生えたばかりの小さな恋の行方は波乱の様相を見せます。
自分の努力ではどうしようもないことに翻弄され傷つきながらも、特別扱いはされたくないと心を強く持って前向きに努力する二人を応援せずにはいられません。

また、彼らを支えてきてくれた周囲の深い優しさにも胸が温かくなる作品です。
特に瑠璃子の命名の由来となる両親のセリフにはグッときます。実写化もし易そうな内容なので、今後更に多くの人に触れて欲しい物語です。

試し読みはこちら(双葉社)
https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-85328-5.html?c=20897&o=&

心と体を激しく美しく揺さぶる熱き青春の舞踏

©珈琲/講談社

『ワンダンス』(作:珈琲)

吃音で人よりコミュニケーションに苦労する高校に入学したての少年・花木が一人の少女・湾田に、そして同時にダンスという表現に出逢うところからスタートする物語です。
言葉を扱うのが苦手で世界に窮屈さを覚えていた少年が、言葉を用いずに感情や想いを自由に表現していけるようになっていく様子に胸が昂ります。

そして、何と言っても作者の珈琲さんの描く女の子がかわいいのが強みです。この『ワンダンス』では女の子がただかわいいだけではなく、かわいい上にスタイリッシュでカッコいいのが素晴らしいところ。
第一話で湾田が学校内でアグレッシブにキレキレのダンスをしているシーン、その美しさに主人公が見惚れる瞬間をセリフなしの数ページのダンスアクションで見事に表現し切ったシーンに、まず心を掴まれました。

その後もダンスシーンの迫力とカッコよさはどんどん進化していき、「ここまでやるか!」と驚かされます。
ヴィジュアルだけでまず魅力的であり、スポ根的な努力を繰り返しての技術的な成長と人との関わり合いを通しての精神的な成長、そして新しい世界を見せてくれたヒロインへの憧れと今後の関係性と楽しめるポイントが多数存在する作品です。

毎回早く続きを読みたいと思わせられる内容で、ダンスシーンは実写でもアニメでも映えるはず。今後の展開がとても楽しみです。

試し読みはこちら(マガジンポケット)
https://pocket.shonenmagazine.com/episode/10834108156642499219

天才はかくも危うく脆く、故に狂おしいほど蠱惑的

©野田彩子/ヒーローズ

『ダブル』(作:野田彩子)

天才。その天性の才気を以って、常人には成し得ない領域にいとも容易く辿り着く者。時にその圧倒的なパフォーマンスは一角の才能を絶望させてしまうほど。ある種の残酷さを感じながらも、酔いしれてしまう。そんな天才を描いた物語はいつだって私たちの胸を熱くさせてくれます。

本作『ダブル』は、天才とその才能を支える者の二人を「役者」というテーマを用いて描き出す物語です。そして、2019年に出た新作の中でも最も濃密な男性二人の関係を描いた物語であるとも言えるでしょう。
物語の主役は、人見知りで社会生活を一人で営んではいけないダメ人間でありながらも、天性の役者としての才能を持つ宝田多家良(たからだ・たから)と、彼に出逢い自分との才能の差に絶望しながらも、彼の才能を世に送り出す方向で頑張ろうと決意し、日常生活から役作り、現場での代役まで完璧にサポートする鴨島友仁(かもしま・ゆうじん)の二人。その支える力が強すぎて、多家良は半ば友仁に存在ごと依存するような危うさを抱えているのが『ダブル』の核心です。

よく「マンガはキャラクター」と言われることがありますがそのお手本のような作品で、主役の二人だけでいくらでも話を作れそうな存在感があります。また脇役も皆一人一人濃く、ヒリつくようなセリフや展開が連発され引き込まれます。

びっくりするぐらい面白く、仮に実写化する際には「天才役者・多家良」役の演技に相応の力量が要されますが、確実に人気が出るであろう内容です。

試し読みはこちら(ヒーローズ)
https://viewer.heros-web.com/episode/10834108156642488617